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『ウランバーナの森』
- 2016/04/30(Sat) -
奥田英朗 『ウランバーナの森』(講談社文庫)、読了。

世界的なポップスターが、軽井沢で隠遁生活。
便秘に悩まされて病院に行った帰り道で、過去に自分が殺したはずの男に出会い・・・・。

明らかにジョン・レノンとオノ・ヨーコを模した主人公夫妻。
そして、軽井沢の地に夏だけ現れる心療内科医。
彼らを中心とした問答のような会話で話は進んでいくのですが、
作品の中で、会話の座り心地が不安定な印象でした。

心療内科医が主人公に投げかける問いは、
私たちの思い込みを払おうとする思わぬ問いかけが含まれていて
その視点は面白いなと思ったのですが、
その問いを受ける主人公の描写が、何とも幼い印象を受けて、
問答としては面白みが欠けてしまっているように感じました。

夫婦の会話も、家政婦とのやりとりも、
深いようでいて、意外と軽いのではないかと思ってしまい、
あまり腹に落ちてきませんでした。

罪は償うものにあらず、背負って生きるものなり

この言葉は良いなと思い、印象に残りました。

ビートルズ・ファンが読んだら、
もっといろいろ楽しめる作品だったのでしょうかね。


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『ナショナル・トレジャー』
- 2016/04/29(Fri) -
このシリーズは間違って2作目から観てしまったのですが、
ようやく第1作をば。

フリーメイソンとかテンプル騎士団とか、
私の理解が及ばないキリスト教の世界です・・・・・・。
一般のアメリカ人って、こういう類の話を
どれぐらい理解して・・・・というか、どういう風に理解してるんですかね?
そういう社会学的な考察の方に興味があります(苦笑)。

本作は、これらのモチーフを、人類学的に解釈して
エンタメ作品に仕上げてみました!というところでしょうか。

前半は、なんだかもっさりした展開でしたが、
後半の宝探し競争になってからは、一気に話が動き出して
単純にエンタメ作品としてハラハラドキドキ楽しめました。
お宝の内容は、意外と貧相な想像力のような気がしてしまいましたが・・・・。

第2作を先に観てしまったときに感じたご都合主義も、
第1作で、主人公親子の位置づけが頭に入っていれば
それほど違和感を覚えなかったかもしれません。
やはりシリーズ物は順番に観ないといけませんね。


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『銀座開化おもかげ草子』
- 2016/04/28(Thu) -
松井今朝子 『銀座開化おもかげ草子』(新潮文庫)、読了。

お初の作家さんです。
直木賞受賞作家ということで、とりあえず100円で見つけたものを読んでみたのですが、
イマイチ刺さってきませんでした。

思わせぶりな感じで、主人公の背景に関わる情報を小出しにしながら話が進んでいくので、
前半は正直読みづらかったです。

明治の大きく生活が変化していく様子を
市井で生きる人々の生き生きとした様子や、キリスト教の表立っての布教などで
小説の中に盛り込みながら、日常の事件を追っていく主人公。

事件の謎ときとしては緊張感がなく、
明治という時代を描くには、事件の存在がちょっと邪魔だったりして、
中途半端な印象を受けました。

連作短編集としてよりも、長編としてどっしりとこの時代の市井を描いてほしかったなぁと
感じてしまいました。


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『贖罪』
- 2016/04/27(Wed) -
湊かなえ 『贖罪』(双葉文庫)、読了。

湊かなえ節全開です!

5人の人物による、様々なシチュエーションでの独白で構成されていますが、
その設定は『告白』を想起させます。

しかし、そのドギツさは、『告白』以上かも
なぜなら、本作の中で5人も殺されてしまうから。

小学校で起きた少女の強姦致死事件。
被害に遭った少女と一緒に遊んでいた4人は、
犯人が少女を連れていく場面に居合わせながら、
事件後に犯人逮捕につながるような情報を提供できず、
怒り狂った被害者の母親は4人に贖罪を求める・・・・・。

20年前なら、このような物語は、リアリティがないとされていたかもしれません。
しかし、現在、このような展開はありうるのではないかと思えてしまいます。
4人が辿ったその後の人生が、いずれも殺人というところに行きついてしまったのは
さすがに小説世界の話だとはしても、
被害者の母親がヒステリックな行動を起こしたり、
その行動がきっかけになって4人の少女の人生が大きく歪んでしまったりということは
十分にありうることのように思います。

4人の少女も、被害者の母親も、
事件をきっかけに大きな傷を受けており、
可哀想だなと思う一面はありつつも、共感までは至らないのは、
保身の言い訳が言葉の端々に充満しているから。

そんな中で、真紀の話だけは、身に染みてきました。
「きちんとしなければいけない」「しっかりしなければいけない」という強迫観念は
少なからず子供のころの私も持っていたからです。
親の思いを受け止めなければいけない、周囲の期待に添うようにしなければいけない、
そういう思いに駆られて、今の私があるように思います。
この小説のように、変な方向に捻じれることがなかったので、
今の自分には満足できていることが幸いです。

もし、自分が真紀の立場になったら、
事件当時に上手く立ち回れなかった自分を反省し、悔しく思い、嫌いになったのではないかと。
そして、次に迎えた新たな事件において、自分を取り戻すべく、
英雄になるための行動をとるかもしれない、真紀のように・・・・・・と思いました。
(思うだけで、たぶん行動は無理ですけど・・・・)

子供は、子供なりの理屈で世界を捉えているんだな、
自分も、子供のころに自分なりの理屈で周囲の世界を捉えていたんだなと
再認識させてくれる本でした。


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『動乱の日本史』
- 2016/04/26(Tue) -
井沢元彦 『動乱の日本史』(角川文庫)、読了。

実家のお店にあった本なのですが、
歴史小話の本かな・・・ぐらいのつもりで持ってきたら、
かなりしっかりした内容で、面白かったです。

そもそも武士とはどういう存在なのかを、
西洋の文化と比較して解説していますが、
「日本は国家として軍隊を保持してこなかった」という視点での整理は
なるほどなぁと納得。

そして、武士の起こりである平安時代末期の状況が説明されますが、
わたくし、日本史の授業で最も苦手としていた時代が、
この平安末期の荘園を足掛かりに武士が力をつけていく当たりです。
400字で回答しようとしても、上手くまとめられませんでした。
本作を読んでいたら、もう少し理解が進んだでしょうかね。

日本史の授業で、平将門の乱には、歴史の流れの中で唐突な印象を受け、
これまたうまく理解できていなかったのですが、
最初に事を起こそうとする人は失敗するという歴史のセオリーの中で読めば、
斬新だったからこそ前の時代とつながらず、
失敗したからこそ後ろの時代ともつながらなかったのだなと
これまた納得できました。

頭の中がすっきりした歴史の良い解説本でした。


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『トランス』
- 2016/04/25(Mon) -
『トランス』

スタイリッシュな絵画盗難のシーンから始まるので、
「あれ?これってアクション系の泥棒映画??」と思ってしまいましたが、
中盤から一気に心理系サスペンスになっていきました。

絵画盗難の一味に加わったオークション会社社員の主人公は、
その過程で頭を殴られ、部分的な記憶喪失に。
盗んだ絵画をどこに隠したかを忘れてしまい、
仲間から拷問を受けるも思い出せず、ついに催眠療法に頼ることに・・・・・。

このあたりから、不気味な雰囲気が一気に画面を支配していきます。
そして、催眠療法士の操るがままに、トランス世界へと入っていきます。

そのトランス世界の描き方の微妙な歪みや揺らぎが
この作品の暗くて不安定な世界観を上手く醸し出していて、
映画の間中、その不気味さに浸っていることができます。

現実とトランス世界が混濁し、終盤は、どこまでが現実なのか分からなくなってきます。
ストーリーも難解になっていくのですが、そこをしっかりと魅せていくのが
主人公を演じるジェームズ・マカヴォイ、
犯行集団のリーダーを演じるヴァンサン・カッセル、
そして、催眠療法士を演じるロザリオ・ドーソンです。

特に、ロザリオ・ドーソンが、物語が展開していくに従って、
その多面性が見えてきて、妖艶さを増していくところが良かったです。

101分という時間の割には長く感じてしまったのは
途中、少し演出がもたついたということなのかもしれませんが、
全体的には面白く観られました。


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『透明人間』
- 2016/04/24(Sun) -
H.G.ウェルズ 『透明人間』(岩波文庫)、読了。

透明人間というモチーフは、様々な作品で使われてきたと思いますが、
その元祖とも言うべき本作を読んでみました。

どういうストーリーの話なのか知らなかったのですが、
読んでみたら、何だか悲しい話でした。

過酷な研究の結果、ようやく透明になる薬を発明したものの
今度は透明な状態から戻ることができず、苦悩する透明人間。

その「元に戻ろう」とする過程で訪れた村での出来事を綴ったのが
本作になっています。

通常、透明人間という存在を考えるときには、
「透明人間になったら、アレをして、コレをして・・・・」という文脈になるのですが、
本作では、「透明人間であることから脱するには・・・」という文脈で構成されており、
あえて、そこを狙って書いたところが、上手いなぁと思わせます。

SFモノというのは、ただ斬新さや新規性を面白く見せるものよりも、
どこか悲しさがある作品の方が、読み手に深い印象を残すようですね。


透明人間 (岩波文庫)透明人間 (岩波文庫)
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ダイビング @尾鷲 行野浦
- 2016/04/23(Sat) -
今日は快晴の中を行野浦へ。
ぽかぽかの陸上に、ひんやりの海中と、
心地よいダイビングになりました。

が、油断したのか、カメラがド曇り・・・・・。

細かいものがいろいろ居たのに、
ほとんど撮れませんでした(悲)。

ポイントは、漁礁と一ツ石です。


漁礁は今日も賑やかです
キンメモドキ4 20160423 行野 (1024x768)
群れ群れ
クロホシイシモチ 20160423 行野 (1024x768)
そして美味しそう
マアジ2 20160423 行野 (1024x768)
ハタがたくさん居ました
オオモンハタ 20160423 行野 (1024x768)
逃げられた!
ハリセンボン 20160423 行野 (1024x768)
フリエリとの違いが分かってません(>_<)
タマゴイロイボウミウシ3 20160423 行野 (1024x771)
雑な写真ですみません
スミゾメミノウミウシ 20160423 行野 (1024x689)
かわいい色合いだったのに
コモンウミウシ 20160423 行野 (1024x791)
これも可愛らしかったのに曇って・・・
イガグリウミウシ 20160423 行野 (1024x758)
デカかったです
キイロイボウミウシ3 20160423 行野 (1024x795)
いつもの
オルトマンワラエビ 20160423 行野 (1024x768)
こちらは久々に会いました♪
ウミシダヤドリエビ3 20160423 行野 (1024x813)
春ですねぇ
行野 20160423 (1024x768)
ムーミンものんびりと
行野3 20160423 (1024x768)



↓海の写真はこちら
かもめ組図鑑



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『恋するローマ、元カレ・元カノ』
- 2016/04/22(Fri) -
『恋するローマ、元カレ・元カノ』

イタリア製のラブ・コメディです。
イタリアで大ヒットし、日本でもYahoo!のレビューは高かったのですが、
私にはあまり合いませんでした。

端的に言うと濃厚すぎるということでしょうか(苦笑)。

イタリアのお国柄を、さらに強調して描いている部分もあるのでしょうが、
基本的に、自分の気持ちに素直に感情表現をしていくので
気持ちのぶつかり合いが激しくて、
それが観ていてしんどかったです。

けんかなどの対立シーンだけでなく、
愛情表現としてのシーンでも、濃すぎて(苦笑)。
この濃さが一つのユーモアなんでしょうけれど。

ギャグとしては面白いシーンも結構あったので、
この濃厚さに当たらなければ、楽しめると思います。


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『遙拝隊長・本日休診』
- 2016/04/22(Fri) -
井伏鱒二 『遙拝隊長・本日休診』(新潮文庫)、読了。

大けがを負って復員したものの精神に支障をきたした陸軍中尉の話と
町医者に休診日にやってくるおかしな面々の話。

私が常々、精神異常を扱った作品が苦手だと感じている理由が、
本作を読んでいて何となく分かりました。

それは、罹患している本人が、自分の病気のことを正しく認識していないため、
「そんなことをしていては病気が悪化してしまう・・・・・」というモヤモヤが
読んでいて募ってきてしまうからだと思います。

「本日休診」に出てくる患者さんたちも、
診察日にきちんと来れば良いものを、何じゃかんじゃと理由をつけて先延ばしし、
のっぴきならない状況になってから休診日にやってきます。
この判断の甘さというか、錯覚が、読んでいて不安をもたらすのだなと思いました。

薄いユーモアに包んでいるとはいえ、
私にはやはり不安の方を強く感じてしまいました。

でも、もちろん作品としては読ませる内容に仕上がっています。


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井伏 鱒二

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