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『リンゴが教えてくれたこと』
- 2016/01/31(Sun) -
木村秋則 『リンゴが教えてくれたこと』(日経プレミアシリーズ)、読了。

リンゴの無農薬・無肥料栽培を実現した農家さんのお話。

9年間収穫ゼロの時期を乗り越えての成功というのは、
並々ならぬ努力というか、忍耐というか、想像を絶します。
そこについてきてくれた家族の存在も素晴らしいです。

一方で、近隣の農家の方たちとは、無農薬のために虫が湧くと文句を言われたり、
それが続いても改善しないと村八分のような状態になったりと、
素直に書かれていて、農業という、土地と強く結びついた職業の難しさも分かりました。

ただ、残念なのは、作品として見たときに、
ストーリーがきれいに整理されていないので、読みづらいということです。

どんな問題が起きたのか、どんな努力をしたのか、どんな切っ掛けでヒントが得られたのか、
そしてどうやって改善し、成功に至ったのか。
このプロセスが、体系だって理解するのが困難でした。
話が前後するというか、緩急がうまく付いていないというか。

ま、ゴーストライターさんが付いていないということの証明にもなるんですけど。

とにかく、ロジカルさは別として、
農業とリンゴにかける熱い思いがとめどなく伝わってくる一冊です。


リンゴが教えてくれたこと (日経プレミアシリーズ 46)リンゴが教えてくれたこと (日経プレミアシリーズ 46)
木村 秋則

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『ふむふむ おしえて、お仕事!』
- 2016/01/30(Sat) -
三浦しをん 『ふむふむ おしえて、お仕事!』(新潮社)、読了。

しをんさんが、働く代女性に行ったインタビューの雑誌連載をまとめたもの。
会社員から企業家、職人、フリーランス、研究者まで、
まさに様々な仕事が登場します。

こうやって、仕事の話を聞いてみると、
独立した人は、思わぬ人生の転機を自分のものにしたんだなということが分かりますが、
企業勤めの人であっても、異動や転職で、自分の意志とは異なる転機を迎えている人が多く、
安定なんていう言葉はないんだなと実感。

給料という形で安定した収入があるという意味では、
企業勤めの安心感ではありますが、自分が納得のいく仕事の仕方が出来るかという点では、
企業勤めもフリーランスも変わらない不安定さがあるなと思いました。

一方で、どんなにマニアックな仕事でも、やり方次第で、生計を立てていくことは
可能なのだということも分かりました。
もちろん、本人の努力や、市場をきちんと読んでツボを突くということは必要ですが、
人が居る以上、仕事はどうにでも形作れると腹を括れば、
どんなことでも仕事にできるのではないかと明るい気持ちになりました。

自分で、自分の仕事を誇れるようになること、誇りを深めることが
仕事と向き合う上で、大事であると、再認識しました。

少なくとも、こうやってインタビューの申し入れがあったときに、
「やりましょう!」と応えられるだけの自信を持ちたいなと思いました。


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三浦 しをん

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『ダイオウイカは知らないでしょう』
- 2016/01/30(Sat) -
西加奈子、せきしろ 『ダイオウイカは知らないでしょう』(文春文庫)、読了。

『anan』で連載されたという短歌挑戦シリーズ。

西加奈子×せきしろという組み合わせが、
なんとも予測不可能な短歌を生み出しております(笑)。

中学校の国語の授業などで、私も短歌づくりに挑戦したことがありますが、
「五・七・五・七・七」の定型に当てはめることを最優先に考えてしまい、
何とも味気ない文句しか思いつかなかった思い出があります。

しかし、せきしろさんは、思いのたけをぶちまけることを最優先にし、
字余り・字足らずどころか、破調の短歌から入っていきます。
うーん、なんとアグレッシブな!
まず型に囚われてしまう自分からすると、この自由さが羨ましいです。

そして、ストーリー重視の西さん。
小説家という職業柄なのは分かるものの、そのストーリー設定あまりに斬新。
オバマ大統領との不倫の歌とか(笑)。

笑いを狙いすぎじゃない?と思う歌もあれば、
次にいきなりキレイな情景描写の歌を作ったりして、
油断も隙もあったものじゃない。

そんな2人を見守るゲストが登場しますが、
最初は本職の穂村弘さん、東直子さんによる入門指導のような感じで、
褒めつつも型についてポイントは指導するという方法により、
読んでいる側も短歌の基礎が分かったよかったです。

そして、最後に再び穂村弘先生登場。
2人の成長の度合いが良く分かる解説で、面白かったです。

短歌は、1人で作って満足するよりも、
複数人でお題を決めて披露しあうのが楽しいスタイルなのかもしれませんね。


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一橋ビジネスレビュー・スタディセッション
- 2016/01/28(Thu) -
『一橋ビジネスレビュー・スタディセッション』(2016年1月28日受講)

今回は、「中国マクロ経済の光と影」ということで日中産学官交流機構の田中修研究員と、
「コミュニティ・キャピタルによる温州企業の反映と限界」の一橋大学イノ研の西口敏宏教授による
セッションでした。

前半の講義は、正直、現状の分析記事のような感じだったので、
あまり刺さってきませんでした。

が、後半の西口先生の講義は、非常に面白かったです。
まずは、先生自身のエネルギーの高さに圧倒され、怒涛の45分間でした。

そして、集団が個の集合を超える働きするメカニズムを捉えた
「Small World Network」「Community Capital」という概念が興味深かったです。
しかも、社会学的には存在すると言えそうだが、数学的には証明できていないという
この発展途上な感じも面白いです。

今回は、中国がテーマだったので、温州人のビジネスモデルについて
「Small World Network」「Community Capital」で検証するというものだったのですが
ある種、同族集団の中で非常に閉鎖的な人間関係を土台にしながら、
ときに外の世界へジャンプする人間が出てきて、彼らは母集団からドロップアウトするのではなく、
成功すれば母集団の仲間を自分のもとに呼び寄せ、ともに成功しようとするという
その凝集性が特異だなと感じました。

この閉鎖性って、日本の田舎と呼ばれる地域にありがちだと思うので、
東京や大阪やさらには世界にジャンプする人をいかに育てるか、
そして、彼らが世界との橋渡し役になったり、地元に戻って成功体験を還元したりという
コミュニティの活性化の素となるような仕組みをどうやって作っていくのか、
参考になるところが多いのではないかと思いました。

そのあたりは、西口先生の著作でしっかり勉強してみたいと思います。


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『歴史を動かした意外な人間関係』
- 2016/01/28(Thu) -
日本博学倶楽部 『歴史を動かした意外な人間関係』(PHP文庫)、読了。

お気楽歴史ネタ本です。

どのネタも2ページ弱の分量で、
話の小ネタにしかならない程度の内容ですが、
人間関係というポイントに絞っているので、
そんなに物足りなさを感じることなく読めました。

ただ、この程度の薄さの本なら、
日本史だけでネタを集めて欲しかったなぁというところ。
徳川吉宗の話を読んでたら、次のページで急にクレオパトラになると驚きます(苦笑)。


歴史を動かした意外な人間関係―親子・男女・師弟・ライバルたちの秘められた事実 (PHP文庫)歴史を動かした意外な人間関係―親子・男女・師弟・ライバルたちの秘められた事実 (PHP文庫)
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『Discover Japan 2016年2月号』
- 2016/01/26(Tue) -
『Discover Japan 2016年2月号』

三重県熊野市に移住した方のインタビューが載っていたので買ってみました。

三重、和歌山、奈良の紀伊半島に移住することについての小特集というか、
どちらかというと大型広告のような感じでした。
和歌山や奈良の移住者の生活が、かなり小洒落た感じの写真が多く、
ちょっと敷居が高そうな印象だったのですが、熊野の方は郵便局パート勤務という
非常に親近感の湧く生活ぶりで、お会いしたくなりました。

カバー特集は、「日本のものづくり」ということで、
民藝品の特集だったのですが、これも面白かったです。

やはり、モノというのは、機能性と日常性だと思うんですよね。
美しいものを眺めるもの、たまには楽しいですが、
モノは使ってなんぼだと思うので。

使用している中に、機能美があったり、手へのフィット感があったり、
色彩の鮮やかさがあったりすることが、幸せなんだろうなと。

手作りなので、多少、値が張ってしまう部分があるのは仕方がないのですが、
極端な付加価値をつけるためのこだわりよりも、
多くの人が日常的に使える気安さを、是非、民藝品には追求して欲しいなと
そう願います。


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『実朝の首』
- 2016/01/26(Tue) -
葉室麟 『実朝の首』(角川文庫)、読了。

鎌倉幕府3代将軍・源実朝の暗殺事件の後の展開を追った作品。

どうやら、実朝の首の行方は、歴史上きちんと確認されていないようで、
その謎について著者なりの推理をめぐらした作品となっているようです。

歴史ミステリ的な側面があるので、歴史好きな人には面白い作品なのでしょうが、
私はあまり作品の世界に入っていけませんでした。

そもそも、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけての、
武士の文化がそれほど好きではないのだと、本作で実感しました。

室町時代以降の、武士としての矜持や心構えのようなものが
まだ鎌倉時代ですと確立されておらず、非常に無骨で生々しい感覚で判断をしている様子に、
どうしても野卑な感じを覚えてしまい、好きになれません。

この後、執権の北條氏により御成敗式目が定められ、
武家として守るべきルールができたことで、武士の文化や教養が生まれていったのだと思うので、
武家文化の確率という意味では、鎌倉時代は大きな転換点だったのでしょうね。

というわけで、御成敗式目以前の話なので、
欲望に純粋な武士の姿が、少々野蛮に感じられて、登場人物たちに気持ちが寄せられませんでした。

ま、これは好みの問題ですから、仕方がないですね。


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葉室 麟

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『一橋ビジネスレビュー63巻3号』
- 2016/01/25(Mon) -
『一橋ビジネスレビュー63巻3号』

特集は「中国モデルの破壊と創造」ということですが、
「中国経済」ではなく、「中国でのビジネスモデル」という観点で捉えています。

なぜ、中国がこれほどまでに経済成長できるのか、
また、世界経済に影響力が持てるのか、
それを、ビジネスモデルで解説しているので、「仕組み」が分かって面白かったです。

そして、連載されている無印良品の話。
セゾングループって、センスの良さと人間のドロドロさとが混じり合っていて、
不思議な企業だなぁと思います。
堤清二の強さなのか、特異さなのか、異様さなのか。
その下で働いてきた人々が、異様さを分かりながら直接的には堤氏の批判をせず、
その後を継いだ経営者たちの批判は厳しく行うところが、何とも外目には面白いです。

次号の知財戦略の話も、あまり意識したことがない分野なので楽しみです。


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『孤舟』
- 2016/01/24(Sun) -
渡辺淳一 『孤舟』(集英社文庫)、読了。

会社でのポスト争いに負け、定年でキッパリと退職した主人公。
しかし、趣味もない60歳の男は、毎日何をすればよいのか途方に暮れ・・・・。

燃え尽き症候群、孤独な老人像、熟年離婚といった
社会問題レベルのものを扱っているにも関わらず、
掘り方が甘くて、単なる1人のおじさんの話で終わってしまっていて残念。

最後も非常に甘々な終わり方で、世の中のオジサンの理想を表現したのかもしれませんが、
現実味のなさに引いてしまいました。
結局、何も問題解決になっていないし、読者に対する問題提起にもなっていません。

というわけで、作品自体は不満足だったのですが、
一方で、自分の父親のことを思うと、少々心配に。

飲食店経営なので定年はないですし、お客様や近所の人たちとの付き合いも
きちんとこなして、お店で囲碁の会を開いたり、フランス語教室に通ったり好きなこともしているので、
本作の主人公のような心配はないのですが・・・・。

体力的なことを考えれば、あと3年ぐらいで仕事を辞めると言い出してもおかしくない感じで、
週6日、朝から夕方まで、母と2人でやっている店を閉めたら、
どんな生活が待っているのか、いまいち想像できません。

以前よりは、店の営業時間を短くして夜の時間を自由にしたり、
定休日以外に臨時休業を取って、2人で遊びに出かけたりもしているようですが、
毎日がお休みとなったら、どうするのでしょうか?

娘としては、生活の糧としてではなく、気持ちの張り合いという面で、
何らかの仕事を続けて欲しいなぁと思ってしまいます。
週3日とかでも、昼間だけのカフェ営業とかでも良いので。

そろそろ、こういう話も両親としていかなければいけないなと思う読書になりました。


孤舟 (集英社文庫)孤舟 (集英社文庫)
渡辺 淳一

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『マイ・ファニー・レディ』
- 2016/01/24(Sun) -
『マイ・ファニー・レディ』

浮気性な舞台演出家が買った娼婦が、
自分の舞台のオーディションを受けに来た。
そこには女優である妻も居合わせ、娼婦の演技を絶賛して採用決定!

というわけで、ここからは王道のドタバタコメディです。

でも、上手い役者が揃っているので、
「次の展開はどうなるんだろう!?」とワクワクして観ることができます。
90分があっという間でした。

オーウェン・ウィルソンも、ジェニファー・アニストンも、
期待通りのコメディアン、コメディエンヌぶりを発揮していますが、
それ以上に、主人公の娼婦を演じたイモージェン・プーツと、妻役のキャスリン・ハーンが
印象的でした。オーディションのシーンでの掛け合いとか。

イモージェン・プーツは、娼婦だった頃と、女優として成功した後とで
化粧の違いなのか、顔つきや佇まいが変化していて、そこも魅力的でした。

とにかく、機関銃のような怒涛の掛け合い
狭い人間関係の中で雁字搦めになるおバカな人たちの姿が
あまりに滑稽で笑ってしまいます。
もし、自分が当事者で輪の中に入らざるを得なくなったら耐えられないでしょうけど(苦笑)。

シンプルに出来の良いコメディだと思います。





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