『偽隠居どっきり日記』
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- 2015/12/31(Thu) -
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中野翠 『偽隠居どっきり日記』(文春文庫)、読了。
前回の読書が思いのほか面白かったので、早速次の一冊をば。 本作に収録されたエッセイは、1994年10月~1995年9月のものが収録されており、 1995年の年明け~春といえば、阪神大震災に始まり、サリン事件、そして強制捜査という まさに自然と日本社会の異常事態が続いた時期であり、 改めて週刊誌のエッセイという形で読み返すと、その非日常的な雰囲気が濃縮されて伝わってきます。 以前にもブログに書いたことがありますが、 オウム真理教の強制捜査の日、高校1年生だった私は、学校の教室でみんなでニュースを見ました。 英語の授業の時間に見たように記憶していたのですが、 当時の担任が英語の先生だったので、もしかすると臨時ホームルーム的な扱いで、 どのクラスもニュースを見るように学校側が指示したのかもしれません。 それぐらい、当時の社会を象徴する事件だったのだと思います。 (今思えば、ちゃんとした社会性の感覚を持った担任の先生と学校だったんだなと感謝) 著者は、その震災やオウム事件が現在進行形の状況であるときに、 混乱する情報を整理しながら、言葉を選びながら、しかし感じたことを素直に書いており、 その姿勢ひとつとっても、信頼に足る社会センスと人間感覚をもった方だなと分かります。 今後、もし何か大きな事件や災害が起きた場合に、 中野翠サンはどう感じているのだろうか・・・・と参照したくなる感じです。 最近読んだ2冊は比較的古い時代のものだったので、 直近のエッセイではどんなことを書かれているのか気になるところです。
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『戦略は直観に従う』
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- 2015/12/31(Thu) -
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ウィリアム・ダガン 『戦略は直観に従う』(東洋経済新報社)、通読。
ひらめきというのは、ゼロから何かを思いつくのではなく、 既にある何かと何かを上手く結びつけたときに起こるもの・・・・・ この考え方は、私も賛同します。 だからこそ、対象をよく観察し、その特徴を掘り下げて分析するとともに、 普段から周囲に興味関心を持つようにし、知識のストックを作っておく必要がある、 その2つをいかに面白く結び付けられるかが、勝負どころ。 私も、これまで何か発表したり報告したりするときに、 このテクニックを使って乗り越えてきました。 ま、苦し紛れの切り貼りになることも多かったですが(苦笑)。 本作では、このひらめきの仕組みについて解説しているのですが、 脳科学的な話よりも、具体的なビジネスでの実例を読みたかった私としては、 ちょっと物足りない感じでした。 ビジネスの実例も紹介はされているものの、もっと1つ1つのケースを深掘りして欲しかったなと。 ま、あとは自らの実践あるのみということですかね。
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『ハミングバード』
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- 2015/12/31(Thu) -
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『ハミングバード』
またまたMovie Plusで鑑賞。 この年末、何もしてませんわ(苦笑)。 さて、ジェイソン・ステイサム主演の映画ということで、アクションものかと思ったら、 思いの外、渋い社会問題を扱った作品でした。 アフガン戦線での強烈な体験がトラウマとなり、 軍法会議から逃走、ホームレスとなってロンドンの路上で死んだように生きる男。 路上を仕切るギャングと言い争いになったために路上さえ追われ、 炊き出しを行う修道女だけが心の支えとなっていく・・・・・。 ストーリー展開は、かなりご都合主義なところが多く、 また世界観もロンドンの路上の話から広がっていかないので、 アクション映画を期待するとがっかりすると思います。 チンピラのケンカ以上のことは起きませんから。 でも、アフガン戦線で起きていることは一体何だったのかというそもそもの話に始まり、 監視社会として第一級のロンドンの町の様子や、 中国人マフィアが白人を用心棒に雇う時代になったという国際経済の情勢、 修道院が行う炊き出しが本当にホームレスを助けることになっているのかという問題、 その修道院での務めも任期が来れば別の地域に移れるという仕組みと奉仕の心のギャップ、 様々な社会の現状が取り込まれている作品であり、 考えながら観始めれば、いろいろと気づくことがある作品になっていると思います。 ただ、問題提起というところまでは至っていないように思いますし、 なんら解決の糸口も見えてきません。 それでも、先進国といわれる社会においてさえ、これだけの問題があるのだということを 端的に知ることができるという意味では、渋い作品だと思います。
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『ときどき意味もなくずんずん歩く』
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- 2015/12/30(Wed) -
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宮田珠己 『ときどき意味もなくずんずん歩く』(幻冬舎文庫)、読了。
著者のことを旅行エッセイを書く人で、旅行先でのシュノーケルやウミウシの話も書ける人 という風に認識していたのですが、本作では「ジェットコースター評論家」という肩書きもあることが分かり ますます何で食べている人なのか意味不明になってきました(笑)。 でも、こういうバイタリティ溢れる人というか、 周囲の期待に応えていたらよく分からない方向に成長しちゃう人というか、 ちょっと憧れます。その適応力の高さに。 本業(と私が思っている)旅行に関するエッセイも多数読めます。 1本1本が短いので、ガッツリ読めるというものではありませんが、 旅先でのおかしな経験や、そもそもおかしなところに旅をしている様子を サクッと楽しむのにちょうど良いです。 利尻島歩いて一周のくだりは、 海沿いを歩く=本当に島一周にこだわった結果、海を泳ぎ、断崖絶壁を登る羽目になるという 常識的にはありえない展開に笑いました。 会社員時代のキャリアプラン面談で上司が見抜いた希望キャリア「冒険家」、 まさにその通りになっております(笑)。 気軽に旅を楽しめる一冊です。
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『ダークナイト・ライジング』
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- 2015/12/30(Wed) -
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『ダークナイト・ライジング』
実家に帰ったらMovie Plusで放映していたので観てみました。 うーん、やっぱりバットマンシリーズは苦手だな。 主人公の正義の哲学が良く分からんのです。 殺人はしない銃なし主義ということなのですが、 ちんたらと肉弾戦をやっているがために大勢の街の住人が死の危険に晒されている・・・・ というか、実際、死んじゃってるし。 8年ぶりにマットマンとして復帰しようとしたきっかけも 何に価値を見出したのか、何がそれまでの放置という判断からの転機になったのか よく分かりませんでした。 そもそも物語の見せ方が、冒頭に劇的な飛行機アクションシーンをもってくることで 何が始まったんだ?このアクション凄いな!と見入ってしまいましたが (飛行機アクションや、その後のカーアクションなどは見ごたえがありました) 展開が全然頭に入ってこなくて・・・・・。 そもそも冒頭のシーンは障りの部分を切って前に出したということで、 終盤にならないと話が繋がってこないし、 悪役の狙いも分かりにくいし、そもそも黒幕そこかい!というありきたりな展開だし。 このシリーズにはまっている人にとっては バットマンの哲学中心に描いていく本作は非常に楽しめるものなのでしょうが、 単純に単発の1本の映画として観た私としては、 登場人物の誰もが、また製作側の誰もが、独り善がりな印象を受けてしまいました。 収穫は、アン・ハサウェイが格好良かったことですかね。 素性は結局よくわかりませんでしたが(苦笑)。
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『本能寺の変 431年目の真実』
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- 2015/12/30(Wed) -
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明智憲三郎 『本能寺の変 431年目の真実』(文芸社文庫)、読了。
なぜ明智光秀は本能寺の変を起こしたのか その真相に、光秀の子孫が挑むという作品です。 前半、他の歴史家が唱える諸説に対して、1つ1つ反論をしていくのですが、 外堀から埋めていくような作業で、多少退屈です。 が、中盤以降、著者の主張を説明していく段になると、 そのプロットにおける各要素、事件のつながりが明らかになっていき、 視野が開ける感覚を覚えました。 著者の説に主に関わってくる、秀吉、家康、土岐氏といった面々は、 そういう企みごとをしても違和感ないなと思えます。 そういう点で、著者の説には、変な突飛さがないので受け止めやすいです。 そして、いかにも彼らがそういうことを行いそうだというイメージがあることも、 本として読んでいく上で想像しやすくて読みやすいです。 そのように整理してしまうと、なんだか新鮮味のない説のように聞こえてしまいますが、 私としては、中国進出というキーワードが目新しく、秀吉ではなく信長を軸に 中国進出、そのまえの朝鮮出兵という展開を想定すると、 冷静な知性をもった武将には暗い未来しか想像できなかったということなんでしょうね。 最初は、娯楽性のない書きぶりに、ちょっと取っ付き難さを覚えましたが、 後半のプロットが動き出すと、下手にエンタメ性を味付けしていない分、 著者の主張の重みが感じられて、面白い読書になりました。
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『死者の精度』
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- 2015/12/29(Tue) -
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伊坂幸太郎 『死者の精度』(文春文庫)、読了。
死神がターゲットの調査をしにこの世にやってくる。 1週間の調査で、「可」か「否」かの判断が下され、「可」となれば事故死や事件死で命を絶たれる・・・・。 枠組みとしては、他でも読んだことがあるような設定です。 基本的に「可」となることが前提だったり、 死神が特にターゲットに思い入れがあるわけではなく淡々と職務をこなすだけだったり、 死神がこの世に小慣れていないというキャラクター設定など 設定面での味付けはされていますが、 やはり伊坂作品なので、会話の面白さに惹かれました。 全部で6作品が収録されていますが、 教養のある人は映画の話などを踏まえながら自分の哲学を語り、 荒々しい世界を生きてきた人は、しかし真っ直ぐな目で世界のあり様を語り、 しかも、その言葉にはウィットがあるというところから、 作品の世界観に引き寄せられていきます。 死神に「否」という権限を与えながら、 乱発させないところも、世の中甘くないんだよ・・・・・と言われているようで 戒めになりました。
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『ビル・ゲイツの面接試験』
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- 2015/12/29(Tue) -
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ウィリアム・パウンドストーン 『ビル・ゲイツの面接試験』(青土社)、読了。
タイトルから想像していたものと全然違ったなぁ・・・・。 マイクロソフトの面接試験で有名になったパズルやクイズを多数紹介して解説した本かと思いきや、 そもそも、これらの試験で何が分かるのかということを知能指数の研究から紐解いてみたり、 マイクロソフトの企業文化の面から紐解いてみたり、 終盤は面接への対策テクニックを紹介してみたり。 ま、なんだか軸がない本です。 だから、読みにくい。 パズルやクイズ自体の紹介も、本文では問題にしか触れず、 最後にまとめて解答編という構成にしているのも、読んでいてもどかしいですし、 解答が掲載されていない問題もあり、ちょっとイライラしてしまいます。 で、私が最も興味を持ったのが、この面接を通してマイクロソフトが採用しようとしている人物像、 というか、マイクロソフトの採用方針です。 間違った不採用は良くないが、間違った採用は会社にダメージになり、 それを除去するには時間がかかる。 この割り切りは見事だと思いますし、 人材が集まってくる企業だからこそ吐ける上から目線の意見だと思いますが、 しかし、一つの組織として一緒に働く同僚という目線で見ても、 間違った採用はダメージを自分が受けるので、避けて欲しいと思ってしまう上から目線な私(苦笑)。
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『パーフェクト・ストーム』
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- 2015/12/29(Tue) -
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『パーフェクト・ストーム』
海、遠洋漁業、大嵐、レスキュー、 私の興味のある要素が詰まっているのに、 映画作品としてはイマイチでした・・・・。 ストーリー的には大した捻りがあるわけではなく、 最近、カジキ漁の成果が上がらないクルーが無理して遠出の漁を行い、 帰り道に大嵐に巻き込まれるというだけのもの。 無線が故障したり、大波にさらわれてクルーが落水したりと 王道ながらもハラハラする展開があり、見続けることはできるのですが、 しかし、「そんな離れ業での助け方は無理だろう」「普通これは死んじゃってるよ」という ちょっとリアリティに欠ける場面もチラホラ。 実話です・・・・と最初に紹介されるものの、劇画的に過ぎると思いました。 あと、ヨットの話とか、余計なストーリーが入り込んでいて、 しかも本題に大して影響を及ぼさないという、時間稼ぎか!?と思ってしまう場面も。 沿岸警備隊のプライドのある仕事ぶりは見事でしたけどね。 漁師の側も、漁師なりのプライドなのかもしれませんが、 ちょっと、この判断は、プロとして間違っているように思います。 無謀なだけ。 共感できなかったのが残念でした。
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