『うつくしい人』
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- 2015/07/31(Fri) -
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西加奈子 『うつくしい人』(幻冬舎文庫)、読了。
3つ目の西加奈子作品でしたが、うーん、やっぱり読むのがしんどかったです。 会社を勢いで辞めたOLが離島のホテルでバーテン&ドイツ人と仲良くなり・・・・・ という設定で想像する明るい雰囲気は感じられず、 結構、世界観が暗くてどよーんとしてるんですよね。 さらに、どうも、この方の書く日本語が、私には合わないみたいで、 非常に出だしが読みにくかったです。 文意を解釈するということ以前に、文章自体を上手く読めずにてこずりました。 省略とか、代名詞とか、比喩とか、そういうところの感覚が違うのかなと思います。 てなわけで、世界感に上手く入っていくことができませんでした。 場面設定も、主人公の斜に構えて世界を見ているスタンスも、 家族への冷たいところがある視線も、結構、私好みのラインのはずなのに、 いじめの描写だったり、姉の描写だったり、ところどころ露骨なグロさが アンバランスな感じがして、作品の中で無理をしているような印象でした。 読んでいて居心地が悪いというか。 でも、島のホテルでの生活は、1週間で良いから、 こんな何もしない日々を、現実世界から隔離された場所で送ってみたいなぁと 心底羨ましく感じました。
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『社会派くんがゆく!維新編』
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- 2015/07/30(Thu) -
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唐沢俊一、村崎百郎 『社会派くんがゆく!維新編』(アスペクト)、通読。
100円でドカ買いしてきた中の一冊。 唐沢センセのお名前と、タイトルや表紙絵の狙った感じから、 斜に構えた時事ネタの対談エッセイかなと思っていたのですが、 のっけから暴言吐きまくりで辟易・・・・・。 村崎百郎という人が、政治家や実業家、犯罪者などを槍玉に挙げる以上に 犯罪の被害者をこき下ろしたり、侮辱したりしていて、 最初の章でリタイアしようかと思ったほど。 唐沢氏が冷静なツッコミで、軌道修正ではないけれども 少し温度を下げる調整役を担っていて、かろうじて読み進められました。 政治から経済、犯罪、芸能ネタまで、 2005年当時の時事ネタが1か月分一気にまとめよみでき、 10年前という時間の壁が、冷静にかつ具体的に振り返ることができる感じで、 段々と、村崎某との距離のとり方や読み流し方がわかってきたこともあり、 何とか最後まで辿り着きました。 ホリエモン大暴れとか、小泉郵政解散とか、政治経済ネタは印象に残ってますが、 結構、ドギツイ犯罪が毎月起きていたことを思い起こされました。 というか、私の記憶にない凶悪犯罪も出てきて、 「なんだ、この、気持ち悪い事件は・・・・」と、嫌~な気分に。 こういう話を嬉々として語る村崎某の露悪趣味は最後まで不快でしたが、 「一体この人は何者なんだ!?」と読了後にWikiってみたら、 なんと刺殺されているという・・・・・・。 日本も怖い国なんですなぁ。
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『のぼうの城』
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- 2015/07/29(Wed) -
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和田竜 『のぼうの城』(小学館文庫)、読了。
和田作品2作目ですが、これも面白かった! 一気読みです。 日本史を受験勉強の対象として見ることが多かったので あまり戦国時代の合戦のエピソードには詳しくありません。 本作の舞台となった忍城の水攻めの話も、きちんと読むのは初めてです。 2万人の石田軍に対して、500人で忍城に篭城しようという、 まあ、かなり無謀なことに挑戦するのですが、 始めからそのつもりであったのではなく、成り行きでそうなってしまった感じ。 このあたりの話のもって行き方が上手いです。 どこまで史実に沿っているのか分かりませんが、 それぞれの登場人物を、三成や吉継などの世間に知られたキャラクター設定を活かし、 また、成田一族側は上手く味付けをしてキャラクターを立たせたことで、 場面場面が、人間同士の対峙によって立体的にイメージできます。 読者としては、少数で戦うことになる成田側に肩入れしつつも、 しかし、石田側のやりとり、とくに三成と吉継のやりとりには 大名となる者のモノの見方のようなものを学ばせてくれます。 彼らと比較される長束正家は、少し可哀想な役回りでしたね。 成田一族側は、正木丹波、柴崎和泉、酒巻靭負といった武将たちの活躍が それぞれしっかりと描かれており、アクションモノとしても楽しめる作りになっていますが、 一つ難を上げるとすれば、作戦全体を指揮する人物の描写が少なかったこと。 丹波を中心に戦術を練ったような文章はありましたが、 これだけの多方面に渡る作戦を順次実行に移すのは並大抵の統率力ではできないと思います。 成田長親を、「のぼう様」というキャラクターにするがために、 合戦シーンは、少しファンタジーになってしまった感があります。 でも、それこそが、この作品のもつ味わいなのかも。 全体を通して面白く読めました。 あと、出版社に一言モノ申したいのは、この分量で文庫本を上下2巻に分けるのは非経済的だということ。 あこぎな商売は止めてもらいたいものです。
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『バ・イ・ク』
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- 2015/07/28(Tue) -
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柳家小三治 『バ・イ・ク』(講談社文庫)、読了。
『ま・く・ら』と同じような装丁だったので、シリーズものかと思って買ってきたら、 ちゃんとしたバイクい関するエッセイでした。 笑わせてもらおうという気持ち満々で読み始めてしまったので、 ちょっと肩透かしを食らった格好になってしまいましたが、 峠道でガードレール飛び越えちゃったり、自衛隊員と混浴したり、 やっぱり珍道中でございます。 ただ、『ま・く・ら』が高座からお客さんに向けて発せられた話であったのに比べて、 バイク乗りたちに向けて改まって話された言葉だと、 なんだか噺家さんとしての勢いがないように感じてしまいました。 私自身があんまり、運転とかスピードとかに興味がないからかもしれません。 男の人だと、バイクに乗らない人でも楽しめるのかな・・・・・。
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『駅路』
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- 2015/07/27(Mon) -
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松本清張 『駅路』(新潮文庫)、読了。
久々の清張短編集でしたが、イマイチ刺さりませんでした。 トリックだったり、推理のきっかけだったりがちょっと強引な気がして。 清張作品は、長編の方が社会性があって面白いですね。
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『張り込み姫』
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- 2015/07/26(Sun) -
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垣根涼介 『張り込み姫』(新潮文庫)、読了。
シリーズ第3弾。 リストラ請負人が主人公であることは変わりがないのですが、 シリーズが進むにつれて、段々と物語に占める割合が、 主人公の活躍譚から、彼の面接対象者であるリストラを迫られる人に移ってきています。 そのバランス感覚が絶妙。 リストラの物語は、それぞれのお仕事の物語なんだなと 今回は特に、それぞれの仕事にかける思いが伝わってきました。 業績は悪いけれども、その仕事に誇りやこだわりを持っている人々。 収録の4作とも、それぞれリストラの憂き目に合った人たちが 彼らなりのこだわりで次の人生を見つけていく姿に、 単純ではありますが、自分も頑張ろうと思いました。 東大を出て、純文学担当を希望して老舗の出版社に入ったのに、 写真週刊誌の編集部で、昼夜を問わない激務をこなす30歳手前の女子。 私は、もう、かなり前にそんな年齢を過ぎてしまいましたが、 しかし、それまでに蓄積してきた自分の経験値や学習知に対して、 足元の仕事の状況なり、そこに置かれた自分の姿なりを思うと、 彼女のことを他人事だと思えませんでした。 リストラの対象にされるというのは、 能力のある人にとっては、自分の人生を考え直す良い機会になるのかもしれませんね。 衝撃的であっても、そういう場に遭遇する機会がないと、 意外とダラダラとした日常に流されていくだけなのかもしれません。
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『マーケティング実践講座』
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- 2015/07/25(Sat) -
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須藤実和 『マーケティング実践講座』(ダイヤモンド社)、通読。
入門書としてはコンパクトにまとまった本だと思いますが、 「ケーススタディと演習で学ぶ」というサブタイトルほどには 突っ込めていないような印象を受けました。 様々な理論を簡潔にまとめていますが、 でも、理論を広く浅く知っても、実践には繋がらないですよね・・・・。 たしかに、最後にサントリー「DAKARA」の事例を使って 商品設計の流れを解説している部分は面白いと思いましたが、 この1事例だけでは物足りないです。 また、DAKARAの事例は、それなりに知られたものであり、 目新しさに欠けるという点もマイナスに働いたかも。
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『鹿男あをによし』
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- 2015/07/25(Sat) -
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万城目学 『鹿男あをによし』(幻冬舎文庫)、読了。
いやはや、一気読みでした。 東京の大学院で神経衰弱になり、 数ヶ月間だけ奈良の女子高で臨時教員をやることになった主人公。 初日にいきなり「マイシカで駐禁をとられたので遅刻した」と開き直る女子生徒にやりこめられ、 とんでもない教師生活が始まる・・・・・。 もう、この時点で面白いのに、さらに、公園で鹿が話しかけてくるという暴挙(爆)。 さらには、女子高の姉妹校同士の大和杯での剣道対決や 卑弥呼や大宝地震などの歴史の要素も絡まって、 もう、てんこ盛り。 でも、しっかりと全部のネタを拾って、 最後にきちんとまとめあげてみせる手腕は素晴らしいです。 正直、『鴨川ホルモー』は、ちょっとイッチャッてる感じがして その世界感に踏み込めない印象を受けたのですが、 本作は文句なしに面白かったです。 青春モノが好きな人も、謎解きが好きな人も、 歴史モノが好きな人も、変なモノが好きな人も、 どんな切り口で読み始めても、満足できるのではないかと思いました。 正直、奈良って、小学校の修学旅行や中学校の遠足以来、 きちんと訪れたことがないので(実家は隣県なのにね・・・・・)、 奈良に行って鹿と戯れたくなりました。
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『天才の栄光と挫折』
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- 2015/07/23(Thu) -
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藤原正彦 『天才の栄光と挫折』(文春文庫)、読了。
正彦センセによる偉大な数学者たちの人生を紹介した本。 単なる伝記ではなく、実際に著者が、数学者の生まれ育った地や研究に没頭した地を踏んで 感じたこと、考えたことを文章にしているので、その数学者のことが立体的に伝わってきます。 そして、偉大な数学の業績を残した人物の日常生活が 意外と寂しいものであったり、周囲に評価されない時代があったりと、 後世の人間が思うような華々しい数学者が居ないことに驚きました。 公私共に素晴らしい人生を送るというのは、よほどの幸運に恵まれないと、 もしくは当人自信が心にゆとりをもって人生と向き合う覚悟がないと、 なかなか実現できないものなのだろうなと学びました。 肝心の数学者としての実績の方は、正直私の数学レベルでは 何の話をしているのかさえ、さっぱり分からないものが多かったですが、 しかし、アンドリュー・ワイルズ教授が、フェルマーの最終定理を証明するための ヒントを思いついた瞬間を語ったシーンに触れて、ひらめきの瞬間の素晴らしい感覚を 感動的に語る言葉に、学問の面白さ、知的刺激の素晴らしさを感じました。 (私がこれまでに味わった感動とは、天地の差があるのでしょうけれど・・・・・) こういう、偉大な人が語る、感動の瞬間というのは、 次世代の偉大な学者を生み出すために、必要な要素だと思いますし、 語り伝え、また広めていく行為は非常に有意義なものだと思います。 今、同時代の数学を研究している人の中にも、 数百年後に「偉大な数学者」として語り継がれる人がいるんだろうなと想像すると、 それはそれで夢のある話だなと思いました。
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