『コミュニティ』
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- 2015/05/31(Sun) -
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篠田節子 『コミュニティ』(集英社文庫)、読了。
ちょっと寄せ集め感のある短編集ですが、ホラーな味付けの作品が面白かったです。 人間の悪意なのか、魔が潜んでいるのか、 ギリギリのラインを描かせると、本当に上手いですよねー。 「恨み祓い師」では、「妖怪」という表現が出てきて、魔を払うような役割の人物も登場しますが、 しかし、老女2人の生活の描写に存在感がありすぎて、 現実世界で、こんな空間が存在していてもおかしくないような印象を受けました。 反対に、東京郊外の寂れた公団で生活する人々を描いた「コミュニティ」は、 非科学的なものは登場しないにも関わらず、 そこで生活する人々の思考が不気味すぎて、私にはホラーに感じられました。 あれほど忌み嫌っていた広江が、ある夜を境にコミュニティに溶け込み、 しかも、その理由説明の描写がほとんどなされないというところが、 恐怖を想像させてくれます。 久々の篠田作品だったのですが、すっかり堪能させていただきました。
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『不幸な国の幸福論』
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- 2015/05/31(Sun) -
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加賀乙彦 『不幸な国の幸福論』(集英社新書)、通読。
お初でしたが、あんまり刺さってくる言葉がありませんでした。 なんだか、どこかで誰かが言っていたような印象の 古ぼけた内容のように感じてしまいました。 また、自身の患者さんなど特定の個人の経験を事例として紹介されると 確かに分かりやすくはなりますが、1事例を一気に一般化させるような論理展開は ちょっと合理性に掛けるような気がして、ついていけませんでした。
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『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』
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- 2015/05/30(Sat) -
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万城目学 『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』(角川文庫)、読了。
挑戦3作目にして、ファンタジー的な要素満載の小説! いやぁー、これが一番面白かったかも(笑)。 直木賞の選考コメントを読むと、なかなかに辛辣なものが多いですが、 変にこだわりのある小説よりも、すんなり読めて、面白かったです。 時間軸が前後したり、マドレーヌ夫人の能力が思いがけずハイスペックだったりしますが、 それらを含めて、「あれっ!?どうなってるんだろう?」という驚きが 心地よい着地点を見出すので、ワクワクしながら読み進めることができます。 若い猫の奥さんと年老いた犬の主人、 そして彼らを見守る小学校1年生の少女、 なんとも微笑ましい風景ではないですか。 小学校1年生という狭い人間関係の中においても、 やっぱり気を遣いあい、心を配りあいながら毎日を過ごしているという描写も、 自分自身の子供の頃を思い起こしながら、 そうだったよなぁ・・・・・・という余韻に心地よく浸れる小説だと思います。 こういう作品も手にするのであれば、無視できない作家さんだなぁ・・・・・と 3作目の読書にして要注意です。
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『中学英語を5日間でやり直す本』
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- 2015/05/30(Sat) -
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小池直己、佐藤誠司 『中学英語を5日間でやり直す本』(PHP文庫)、通読。
実家のお店に置いてあった本。 お客さまからいただいたとのこと。 タイトルどおりの本でした。 中学英語の基礎の基礎をざくっと解説しています。 むしろ、この内容で、読むのに5日間も要らないだろう・・・・・・と思ってしまうのは 多分、この本の読者層に私がマッチしてないからですね。 いかりや先生とジャイ子の掛け合いという形で話は進みますが、 かなりべらんめぇなB級マンガ調のやりとりで、最初は疲れちゃうのですが、 ま、こういう極端な味付けがなければ、ただの教科書と変わらないな・・・・と思い、 許せるようになりました(苦笑)。
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『新・日本の七不思議』
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- 2015/05/30(Sat) -
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鯨統一郎 『新・日本の七不思議』(創元推理文庫)、通読。
静香&宮田コンビによる珍説・異説の応酬を期待して手に取ったのに、 いつの間にか2人は恋人同士になっていて、 しかも特段の論争も起きないままに話が終わっていきます。 な、な、な、何が起きたのか!? あれ、シリーズで何か読み飛ばしたのかしら? と思ったのですが、これがシリーズ第3弾のようです。 いや、もう、内容が云々ではなく、 シリーズモノでこの展開は有り得ないだろう!というガックリ感が強すぎて、 内容が頭に入ってきませんでした。 読者、置いてきぼり・・・・みたいな。 何の説明もなしに、強引にこのような展開に持っていく必然性も感じられず、 本作の面白さがグレー後アップした感じも得られず。 むしろ、これまでのシリーズで登場した説の焼き直しというか、 後追いのような話もいくつかあり、新鮮さに欠けるものでした。 どうしちゃったんでしょうか!? というか、編集部、なぜこれでOKを出すんだ!?
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『放射能列島 日本でこれから起きること』
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- 2015/05/29(Fri) -
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武田邦彦 『放射能列島 日本でこれから起きること』(朝日新書)、通読。
武田センセの主張は、 みんなが何も考えずに思い込んでいる事柄に対して、 「自分の頭を使って考えなさい!」という投げかけをしてくれるという観点では 非常に有意義なものだと思うのですが、かといって、武田センセの主張自体を 信じてよいかということになると、私はちょっと疑問符。 数字の取り扱いが非常に雑というか、エモーショナルな印象を受けてしまいます。 例えば、本作でも、福島第一原発から漏れた放射性物質の量を80京ベクレルだと説明した後で、 「日本人1人あたりの量にすると80億ベクレル」と述べています。 日本人1人あたりに換算する意味って、何なのか、サッパリ分かりませんでした。 御丁寧にも直後、「漏洩した放射性物質が日本人1人1人の上に均等に降ってきたとして」と シチュエーションを解説しているのですが、こんな非現実的な仮定を置いて説明する意味が 理解できません。 これこそ、頭を使わない人々に向けて感情的に訴える手法そのものではないでしょうか。 原発問題と切っても切れない関係になってしまった感のある温暖化問題に関しても、 ICPPの報告書を気象庁は反対の意味に日本語訳をしている・・・・なんていう 暴論を展開しています。 私も、温暖化論には懐疑的な意見を持っていますが、この気象庁批判は暴論でしょう。 なんで、日本人というのは、専門家から、知識人から、一般人まで、 冷静で客観的な議論ができないのでしょうかねぇ・・・・・と憂鬱な気持ちになってしまいました。
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『COURRiER Japon 2015年 6月号』
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- 2015/05/29(Fri) -
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『COURRiER Japon 2015年 6月号』
出かけた先に置いてあったので、 時間があまりない中で、ざーっと斜め読みした感じです。 コンビニで見かけたときから、 特集記事のタイトル「誰もが信じているその「常識」を疑え。」は気になっていたのですが、 読んでみると、なんだか思っていたのと違う印象でした。 クリステンセン教授の記事は、もともとの「イノベーションのジレンマ」という考え方が面白いので やはり面白く読みましたが、でも、目新しさという意味ではどうでしょうか。 他の特集記事も、あんまり、視野がパーッと開ける印象のものはなかったように感じました。 私の読み方が足りないのでしょうか・・・・・。 あと、第2特集の「ジョブズは本当に「独裁者」だったのか?」も、 ジョブズの独裁者としての面ばかりを強調する伝記については 一面的な見方しかしていないんだろうなと私も思いますが、 かといって、この特集記事のように一生懸命持ち上げられても、 同じ穴の狢のような印象で、どっちもどっちという感じでした。 もっと、多面的にジョブズを語ってくれる人は現れないのでしょうかねぇ。
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『勝手にふるえてろ』
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- 2015/05/28(Thu) -
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綿矢りさ 『勝手にふるえてろ』(文春文庫)、読了。
久々の綿矢嬢は、恋愛小説です。 でも、やっぱり、視点の置き方が変わってます。 これ、褒め言葉(笑)。 主人公は、彼氏が2人居ると申す。イチと二。 でも、読んでいくと、イチは片思い、二は告白されているけど自分自身が乗り気ではない。 そんな中途半端な関係。 どちらも客観的には恋愛関係ではないと思われます(苦笑)。 でも、この主人公に惹かれるのは、私自身共感を覚えるところが多いから。 二に対する冷静を通り越して冷たい評価をしてしまうところ、 しかも、その冷たさを一旦隠して二と普通に会話をしてしまうところなど私自身そっくりです。 ま、告白されたのに回答もしないままズルズルとデートを重ねるようなことはしませんが。 だって、後になって断るときに面倒だから(爆)。 でも、明確に告白されるまでは、ズルズルと一緒に出かけたりしてしまいます。 だって、お誘いを断る理由を考えるのが面倒だから(爆)。 私なら告白された時点で気持ちに整理をつけてお断りしてしまうと思いますが、 その手前での、二という男の思考回路や行動基準への評価の仕方が、非常に納得できます。 せっかく二が求めているであろう相槌を打ってやったのに 謙遜している風を装って即座に否定する回答を寄越してくることへの嫌悪感や、 自分の趣味は押し付けるけど、こちらの嗜好には興味がないことを隠さない幼稚さへの軽蔑とか・・・・。 何よりも、自分のプライドを傷つけられるのが嫌なので、 極力そうなることを回避しようとして、自分がベストを尽くさない理由をこしらえたり、 何かに積極的にアプローチすることを避けて見ているだけで、評論家に徹するようにしたり、 そういう行動の仕方が、主人公と非常に近いです。 なので、共感しつつも、自己嫌悪に陥る読書でした(苦笑)。 主人公は、思いを寄せるイチに対して、中学校卒業以来、 ずっと思いを抱えたままで何も行動してこなかったところまでは私と同じですが、 結局は、同級生に成りすまして同窓会を招集するなど、思わぬところで行動力を発揮し、 さらには、会社に、ニセの産休申請を出してしまったりと、なかなかなぶっ飛び具合を披露してくれます。 私自身は、何かのスイッチが入って、そのような行動力を発揮する自分が全くイメージできないのですが、 主人公がイチと話していた「ドードー鳥の絶滅の理由」から、 相手を選り好みしすぎて結婚できないのは絶滅と同じ・・・・つまりは、私が絶えること・・・・ と考えていったら、結構、深刻な気分になってしまいました。 この気持ちを突き詰めていくと、結婚しなきゃ!出産しなきゃ!と焦った気持ちになり、 主人公のように似非妊娠事件を巻き起こしたりしてしまうほどに慌てる事態に陥るのでしょうか。 ・・・・・・・・うーん、やっぱり自分自身のこととしては、イメージできない。 でも、「結婚しない」ということと、「絶滅」ということとが 自分の中で結びついたこの読書は、大きな発見を得られました。
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『上野谷中殺人事件』
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- 2015/05/28(Thu) -
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内田康夫 『上野谷中殺人事件』(角川文庫)、読了。
薄かったので気分転換に読んでみました。 上野駅周辺の再開発工事に際して 地元住民と建設会社を巻き込んだ事件が発生・・・・。 うーん、何だか、自分の要約は間違っている印象。 確かに再開発の問題は、 最初からずっと物語のネタとして扱われているんですけど、 殺人事件との関わりがハッキリしてくるのって、結構、後のほうなんですよね。 なので、物語内での再開発工事の取り扱われ方は、 利害関係の衝突とか、人間関係の悪化とかをもたらす原因としてではなく、 あくまで社会問題の一つとして、賛成か反対かを議論している感じで、 薄い割りに、理屈っぽくて面倒くさいストーリー展開になってます(苦笑)。 肝心の殺人事件は、なんだか浅見光彦シリーズに入れるための 添え物程度だったような気がしました。
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『雑学のすすめ』
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- 2015/05/26(Tue) -
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清水義範 『雑学のすすめ』(講談社文庫)、読了。
清水センセとサイバラ画伯のコンビによる教育シリーズ。 「雑学」と銘打ってますが、かなり社会科よりです。 やはり、それなりに掘り下げて論じようとすると、どうしても歴史の話に行かざるを得ず、 そうすると、地理方面も加味しながら、社会科になってしまうようです。 とっぴな雑学知識を期待するとアレですけど、 いろんな雑学がつながっていく展開を楽しむには面白い本です。 世界って、繋がってるんだなぁ~みたいな。 サイバラ画伯は、マンガではなく、イラストとしての参加だったので ちょっと存在感が薄くて残念でした。
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