『ジミー、野を駆ける伝説』
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- 2015/01/31(Sat) -
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『ジミー、野を駆ける伝説』
テアトルからもらった無料券の有効期限が今日までだったので、 映画館へと行ってきました。 何にしようかな?と迷ったところで、 学生時代に社会構造論という講義の題材だったケン・ローチ監督の名前を見つけ、 「懐かし~ぃ!」と選ぶことに。 ニューヨークからアイルランドの片田舎に戻ってきた主人公。 内戦後の混乱は収まったかに見えるものの、人々の間には対立が残り、 庶民は行政機構や教会などの権力から抑圧されている。 庶民は、自分たちの生活を取り戻したいと願い、主人公に集会場の再会を期待する・・・・・。 この集会場で行われているのは、 ダンスや歌のレッスン、詩の読書会、ボクシング教室、 そして、夜は大人から子供までが集まってのダンスパーティ。 もうね、アイルランドの人々の文芸への思いの強さがひしひしと伝わってきます。 以前、ロシアが舞台のオーケストラの映画を観たときも思ったのですが、 今は苦しい生活を強いられている人々であっても、 歴史を持っている国は、庶民が持つ文化の層が厚いですよね。 そして、知識欲なり教育熱なりが素晴らしく高いです。 そんな土壌に、爽やかに、しかし熱い弁舌を振るう男が戻ってきたら、 確かに、支配階級側は恐れるでしょうねぇ。 共産主義への漠然とした恐怖も相俟って、大した罪も無いのに国外追放なんて暴挙に出るのも それはそれで分かる気がします。 主人公と対立する神父は、最初、自分の権力を守りたい保身一心でなのかなと思ったのですが、 だんだんと、これはこれで、彼の共産主義に対する信念なんだなと思うようになりました。 同僚神父が、弾圧をやりすぎだと嗜めるシーンがありましたが、 かといって彼は何か行動を起こすわけでもなく、反対意見を言うだけで終わり。 キレイゴトの意味の無さのようなものを見てしまいました。 最後は、淡々とエンディングを迎えますが、 その見せ方がまた、庶民的な英雄の人生にぴったりなように感じました。 |
『世の中意外に科学的』
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- 2015/01/31(Sat) -
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櫻井よしこ 『世の中意外に科学的』(集英社文庫)、読了。
雑誌の連載をまとめたものです。 BSE、ミトコンドリア、ポリオ、DNAなど、 科学的な時事ネタを、相応に専門的な内容まで踏み込んで解説しているのですが、 それが筆者の手にかかると、なんと読みやすい文章になることか。 専門用語もそれなりに出てくるのですが、 その解説が文章の中で上手く消化されていて、 大きなつまづきをすることなく読み進められます。 BSEなど社会問題になるような規模の科学時事ネタは、 当然のごとく政治的な意味合いや経済的な意味合いでも重みのある話題であり、 科学、政治、経済といったジャンルの壁も、飛び越えるというか、 上手く融合させた解説になっています。 この視点の広さ、高さは、どうやったら手に入れられるのでしょうかね。 私自身、自然科学と社会科学の接点に非常に興味があるのですが、 興味を持って追うことができる分野は限られており、 幅広く世の中を眺めるには、エネルギー不足です。 効率的に世界を捉えられるだけのフレームを 著者は身につけているからこそ、大きく、幅広く、俯瞰できるのだとは思うのですが、 そのような理想像と今の自分を結びつける線が、私にはまだ見つけられていません。 このような読書を続けていくと、いつか視界が開けてくるものなのでしょうか・・・・。
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『だから、あなたも生きぬいて』
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- 2015/01/31(Sat) -
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大平光代 『だから、あなたも生きぬいて』(講談社文庫)、読了。
なんとなく名前を聞いてたことがあるなぁ・・・・・ととりあえず買ってみたものの、 裏表紙のあらすじが、「いじめを苦に割腹自殺を図った・・・」で始まり、 なんか凄そう・・・・としばらく積読になっていました。 転校を機にいじめに遭い、いじめられている状況を誰も助けてくれないことに絶望して自殺未遂、 その後も周囲から白い目で見られ、非行の道へ、そして極道の妻へ。 しかし、養父との再会により、資格試験の勉強を通じて立ち直っていき、最後は弁護士に。 うーん、あらすじを書くと、何なんだこの話は!?という感じですね(苦笑)。 小説だったら受け入れられないようなストーリーです。 あまりの展開の急激さに、一気に読めてしまいました。 しかし、落ち着いて考えると、何だか大きな転機のところが良く分かりませんでした。 著者の決断が、腑に落ちないというか、必然性が共有できないというか。 「いじめを苦に自殺未遂」というのは、残念ながら時々起こってしまうことですが、 ここで「割腹」という方法を選ぶ人って珍しいと思うんですよね。 なぜ、そんな方法を選んだのか、著者の価値観が共有できませんでした。 そして、非行の道への進み方も、何だか急に道を外れた印象が。 何かちょっとしたきっかけで感情が決壊することはあると思うのですが、 そのきっかけが良く見えてきませんでした。 そして、最大の謎が、極道の妻の時代を経た後に、 養父との再会という大きな変化があったことは分かりますが、 そこから「資格を取ろう!」「宅建だ!」「司法試験だ!」となっていくプロセスです。 不良な生活から脱しようと決断することと、資格を取ることの間に もう少し何かあるような気がするのですが、本作では、この2つの行動が直結しているので この局面での著者の気持ちが上手く共有できませんでした。 タイトルからすると、著者は当然、同じような苦しい境遇にある人たちに 参考にして欲しいという思いで本作を書いたのだと思いますが、 転換期の描写が曖昧だと、本当に参考になるのかな?と思ってしまいました。 こんな風に、客観的にあーだーこーだ述べてしまう私は、 苦しんでいる方々からすると平和ボケに映るのかもしれませんね。
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『渋沢栄一100の訓言』
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- 2015/01/30(Fri) -
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渋澤健 『渋沢栄一100の訓言』(日経ビジネス人文庫)、通読。
渋沢栄一の孫の孫が解説した訓言集。 身内なりの厳しさや重さを期待したのですが、イマイチでした。 そもそも、渋沢の道徳経済合一説の面白さは、 経済だけでも、道徳だけでもダメだという、表裏一体の関係にあるのだと思います。 が、この本の訓言は、どうも、道徳の方に偏っているような気がして、 ちょっとキレイゴトの臭いがしてきます。 もっと、現実世界の「生活するとは」「儲けるとは」というところを しっかりと捉えて、なおかつ外に向けて発信していた人だと思うので、 その要素が薄い解説になっているのは残念でした。 また、名言、訓言というのは、 それが語られた文脈の中でこそ重みをもって生きてくるのであり、 取り出してしまうと味気ないですね。 なーんて感想を、訓言集に対して持っても仕方がないのですが・・・。
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『想像力なき日本』
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- 2015/01/29(Thu) -
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村上隆 『想像力なき日本』(角川ONEテーマ21)、読了。
あまり現代美術は得意ではないのですが、 その理由の一角を担っているのが、本作の著者です(笑)。 嫌いというのではなく、何が良いのか良く分からないのです。 Mr.DOBや花のシリーズは、確かに目に止まるし、何か惹きつけるものを感じて眺めてしまいます。 でも、フィギュア系の作品は、正直良く分かりません。 不快感とかはないのですが、奇をてらってるだけのような気がして。 で、100円で本を見つけたので、試しに読んでみました。 本書で何度も繰り返されるメッセージは、 私の理解では、芸術を業として成り立たせることの重要性というところでしょうか。 著者に対しては、世間から商業主義的だという批判があるように思いますが、 ここまでの信念を持ってやっているということは初めて知りました。 確かに、狩野派にしろ、ルネサンス期の芸術家にしろ、 権力者や金持ちのパトロンがいたからこそ、あれだけの作品数を残して、 かつ、技術的な面でも高度化が進められたのだろうなと思います。 お客であるパトロン側のニーズを汲み取って、芸術作品という形に仕上げる技術、 その活動が認められて、作品が評価され、後世に残り、私たちも楽しめるという。 これは、歴史が証明している芸術家のあり方ですね。 貧乏な生活を強いられ、死後に評価された芸術家という話が好まれますが、 ま、レアケースだからこそ、悲哀の部分が取り沙汰されるんでしょうね。 俺の作品を見ろ!というエゴだけではなく、 歴史を踏まえたうえでの作品展開をしているというのは、 非常に面白い考え方だなと思いました。 ただ、現代美術への理解は、本作では深まりませんでした・・・・・。
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『さあ、才能に目覚めよう』
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- 2015/01/27(Tue) -
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マーカス・バッキンガム、ドナルド・O・クリフトン 『さあ、才能に目覚めよう』(日本経済新聞出版社)、読了。
いただきものの本です。 自己啓発系の本はあまり読まないので、 こういうのを他の人からいただくと、意外な気づきがあったりして面白いです。 自分の強みをいかに活かすか、それにより組織内でどれだけ成果を上げるかという ポイントに焦点を当てた本です。 弱みの克服ではなく、あくまで強みを伸ばすことに集中! ま、確かに、弱みの克服のために勉強したり実習したりするのは、 結構、忍耐を要するものが多くて、ストレスフルですよね~。 弱みについては、赤点を取らない程度に補うというように割り切るほうが 効率的だし精神的にも健康な気がします。 ただ、なかなか割り切れないところもあるんですよね。 自分の周りの特に同じような年代の人が、自分にはできないことを上手くやっていると うらやましく、時には妬ましく思ってしまうものです。 自分が無関心な領域なら放っておけばよいのですが、仕事の領域だったりすると 何だか自分が出来の悪い子のように思えて、卑下してしまいます。 ここは、何でも完璧にこなせる人は世の中に居ない!と自分を納得させて、 これまでウジウジ悩むことに使っていた時間と体力を、 他の人にはない自分だけの強みを手に入れ、その活用の仕方を身に付けることに向けるべきです。 ・・・・・・と、自分を説得するための読書となりました。 まずは、強みというものを「常に完璧に近い成果を生み出す能力」と定義し、 まぐれによる成功の可能性を排除し、コンスタントな能力発揮を要求します。 確かに、これは大事な要素ですね。 その能力について、自分自身が常に信じることができるかというのは、 自信を持って行動できるか否か大きな分かれ目になりそうです。 そして、著者が所属する組織がインタビューを行った8万人のマネージャー層の分析結果から、 強みを34のパターンに分類しています。 そして、インタビュー対象のマネージャーの具体的な行動様式を紹介することで、 なるほど、こういう特性が結果に繋がるのか!と理解しやすい解説がついています。 このあたりは、読み物として非常に面白かったです。 で、何よりも、この本の売りは、自分自身の強みの分析をWEB上でできるということ。 約180個の質問に回答することで、34のパターンのうち当てはまる上位5つの強みが分かります。 私自身、挑戦してみましたが、ま、結果は事前に自分で予想した範囲内に収まりました。 なので、「えっ!本当はこれが強みだったの!?」みたいな新鮮な発見はありませんでしたが(苦笑) でも、自分が思っていた優先順位とは少し違っていたところもあり、 自分がどういう順番で判断軸を置いているのかは、少し認識を改めました。 自己認識の再整理には、面白い読書&経験になると思います。
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『国家情報戦略』
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- 2015/01/26(Mon) -
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佐藤優、高永喆 『国家情報戦略』(講談社+α新書)、読了。
佐藤優氏と元韓国海軍少佐の対談です。 この元少佐は、政権による軍部粛清に遭い禁固刑を食らうという、 まさに韓国版佐藤優のような立ち位置です。 佐藤本には、非常に高いところから世界を俯瞰する視点を学びたいと思うのですが、 本作は過去の出来事の思い出話的な要素が少し強く、 全体感を捉えるという感じではなかったのは残念でした。 ただ、個別具体的な話は興味深いものが多く、 読み物として面白かったです。
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『ハーバード白熱日本史教室』
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- 2015/01/25(Sun) -
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北川智子 『ハーバード白熱日本史教室』(新潮新書)、読了。
あんたはサンデル教授か!というほどに 露骨な感じの乗っかりタイトルですが、ま、これはきっと編集部のせいでしょうね(苦笑)。 20代にして、ハーバード大学の教壇に立ったという著者。 しかも、自身が学生のときは数学と生命科学を専攻していたのに、 ハーバードで教えているのは日本史という不思議な経歴。 いや、不思議というか、スーパーウーマン過ぎて、驚異ですわ。 本作では、教壇に立つまでの経緯と、授業の内容の紹介が主ですが、 目標を定めた後の行動力が凄いです。 とにかく突進するというだけでなく、全時間を注ぎ込むぐらいの集中力を見せます。 結構さらっと書かれているのですが、真似できるものではありません。 そして、授業の内容も、かなり工夫を凝らしていて、 「若いから」「女だから」「日本人だから」というマイナス要素になりそうなところを 自分の創意工夫でカバーして、むしろ強みにさせていきます。 このあたりの頭の使い方は是非とも学びたいところです。 授業の内容は、サンデル教授ほどには白熱感が伝わらない描写でしたが(苦笑)、 最初に日本史への著者の思い読んでちょっと引っかかったのが、 「日本史の授業に女性が登場しないのはおかしい!」という問題提起の部分。 「ザ・サムライ」ってテーマの授業だったら、武士の話にフォーカスしても変じゃないよぉ、 うーん、フェミニズム系かぁ・・・・と距離をやや感じてしまいました。 でも、肝心の授業構成の話を読んでいると、そんなに女女している風でもなく、 宣教師たちの目で見た日本や、日本の外交思考など、 面白い着眼点での授業が多そうで、受講してみたくなりました。
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『THE21』
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- 2015/01/24(Sat) -
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『THE21 2015年2月号』(PHP研究所)、読了。
先日、米国の企業さんと電話会議を行ったのですが、 通訳担当として爆死してしまいました(苦笑)。 先方が英語で説明している内容は 手元資料もあったおかげで何とか理解できたのですが、 こちらからの質問を英語で話すときに、頭が真っ白になってしまい、しばし沈黙・・・・・。 その後は、たどたどしい短文での会話になってしまい、 「後は質問を整理してメールします!」と逃げの一手。 簡単な単語を使ってシンプルな表現をすれば良いんだと自分に思い聞かせて臨むのですが、 話そうとするその瞬間に小難しい単語が思い浮かんだりすると、 その後が続かずに思考停止に陥ってしまいます。 変にマニアックな単語が頭をよぎるのは、受験英語の弊害かも。 新年早々激しく落ち込む出来事となってしまい、 電車の社内広告で本誌の特集タイトルを見て即買い! とにかく英語を話して、失敗して、体で覚えろ! もう、この言葉を信じて、しばらくは恥ずかしいという気持ちをかなぐり捨てて ヘドモドしながら英語を口にしていくしかないですね。 半分広告のような英語教材の紹介ページも充実していたので、 試してみようかと思います。 1ヶ月ぐらいで、なんとかならないかしら(笑)。
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『M2 我らの時代に』
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- 2015/01/24(Sat) -
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宮台真司、宮崎哲弥 『M2 我らの時代に』(朝日文庫)、通読。
この2人の組み合わせは重そうだなぁ・・・・・・と思い、 買ってきたものの積読状態でした。 意を決して手に取ってみたものの・・・・・・難解! 以前、宮台センセの本を読んだときにも感じたのですが、 話のレベルがリーダーフレンドリーではないんですよねぇ。 非常に、読者を選ぶ感じです。 最後の方に、「この対談は啓蒙モードで始めた」との発言が出ていましたが、 新たな読者を獲得するための啓蒙というよりは、 以前より宮台センセの思想に興味関心がある人たちを引き上げるための啓蒙だなと。 つまり、私は読者層に想定されていない(苦笑)。 宮台センセと宮崎センセの間で繰り広げられるコムヅカシイ思想の応酬と、 一方で、非常にマニアックなサブカル的知識のひけらかし合いという 両極端なやりとりに、この中間を自分で探っていくのは無理だ・・・・・と 諦めてしまいました。 時事ネタを中心に対談をしているので、 思想の全体感を掴むのも難しく、これはファンじゃないと無理だなと流し読みで終わりました。
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