『パーフェクト・プラン』
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- 2014/09/30(Tue) -
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『パーフェクト・プラン』
保険代理人の主人公は、 妻と別居状態で生活費を押さえ込まれ、苦しい日々。 保険会社の表彰式に出張し、部屋に連れ込んだ女に財布を盗られたのが不幸の始まり。 仕事も実生活も、歯車が1つずつ狂い出し・・・・・。 口だけで保険の成約をとってきたような適当さ加減に 行き当たりばったりで本質的には何の解決にもなっていない手当ての仕方と、 とにかく主人公の行動が共感できず、 しかも、結構、淡々と話が進んでいくので、退屈でした。 最後に明かされる真相は、たしかに大どんでん返しなのかもしれませんが、 その10分のために最初の80分が退屈すぎ。 なんだか、著者ひとり気合が入りまくりの叙述トリック作品を読んだ後の感覚に似てました。
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『いま、すぐはじめる地頭力』
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- 2014/09/30(Tue) -
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細谷功 『いま、すぐはじめる地頭力』(大和書房)、通読。
地頭力第2弾ということで、 勝手にフェルミ推定の話だと思い込んでおりました。 ま、ちゃんと確かめずに買ってくる自分が悪いんですけど。 ただ、第1弾の自分の感想を読み返してみると、 もともと、それほどフェルミ推定に寄った話なのではなく、 思考プロセスの話がメインだったんだなと分かります。 それを忘れていたことも自分の責任なのですが・・・・。 かなり初歩的な「考え方」についての本だったので、 あまり目新しさは感じられませんでした。 「地頭力」という流行フレーズで、よし勉強しよう!と思った人向けの本ということですね。
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『探偵はバーにいる』
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- 2014/09/29(Mon) -
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東直己 『探偵はバーにいる』(ハヤカワ文庫)、読了。
映画化されて盛り上がっていたので 原作も面白いんだろうなと期待して読んでみたら、イマイチでした・・・・・・。 謎解きとしての展開が、あんまりハラハラできなくて。 登場キャラクターたちは、そこそこ面白かったのですが。 うーん、札幌のローカル性が受けてた面が強かったのでしょうかね。 そもそも時代設定が良く分からなくて、世界観に入れなかったのが いけなかったのかもしれないです。
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『感染遊戯』
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- 2014/09/28(Sun) -
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誉田哲也 『感染遊戯』(光文社文庫)、読了。
姫川シリーズの第5弾。 うーん、まだ第2弾までしか読んでない・・・・・と思いつつ、 このシリーズの人間関係そのものにはあんまり興味を持てないでもいるので、 ま、いいか、と先に手をつけてしまいました。 そしたら、スピンオフだったようで、主人公は勝俣警部補。 シリーズの連続性を気にしなくても読めたのはラッキーでした。 最初にポコポコと、過去の殺人事件がいくつか語られます。 時代も、登場人物も全くバラバラなので、 「あれ?短編集だったっけ?」と思わず感じてしまうほどなのですが、 唯一の共通点は、被害者が元エリート官僚で今は天下りの悠々自適生活ということ。 サスペンスとして読んでしまうと、 大した謎解きは出てきませんし、真相も予想の範囲内で、面白さはあまり感じないかもしれません。 しかし、官僚組織に対する世間一般の憎悪という面を考えると、 この作品が描く社会問題は、非常に興味深いものでした。 私自身、官僚ではないですが、官僚のモノの考えに近いものを持っているという自覚があるので 国益のためには時には憎まれ役を買って出なければいけない、それが官僚だ、 もちろん、憎まれるような表立ったことにならないよう、水面下で仕組みを作るのが デキル官僚の姿だけれど・・・・みたいな考え方を持っています。 国益をもらたす官僚と、天下りで利権を吸う官僚とは 本質的に違うものだと私は思うのですが、 なかなか、そこは、世間様からは理解されずに、一緒くたになってしまっていると思います。 それを、世間とはこういうものだから、仕方がない・・・・・と割り切った瞬間に、 この本で描かれたような社会の憎悪を集約して行動に移させるような仕組みが 是認されてしまうというところに、この本が描いた内容の怖さがあるのかなと思います。 読んでいて、一番強く印象に残ったのは、 この憎悪を行動に移させる仕組みが、今の世の中であれば、 簡単に実現できてしまうという、その身近なリアリティ感でした。 現在、日本の空気が、右に寄っていっているのも、仕組みとしては同じような形で 空気が醸成されていっているのだと思います。 指示・命令されたわけではないのに、攻撃的な行動に移ってしまう、 攻撃的な行動を、善きものとして肯定できる思想をもっているかのように錯覚してしまう、 こういう社会は、一線を越えたときに、非常に恐ろしい事態になる可能性があります。 そういう怖さを読み手に想像させる作品でした。
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『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』
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- 2014/09/28(Sun) -
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『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』
30代独身女性3人の生き方をほわんと考える作品。 料理の腕を活かしつつロハス的なカフェで安月給で働くすーちゃん、 バリバリの営業マンとして能力を発揮するけどオンナであることを何かと意識させられるまいちゃん、 認知症の祖母と母と3人暮らしでWEB系フリーランスの仕事に介護に忙しいさわ子さん。 3人とも、頭の良い女性なので、 独身女性が直面する困難や偏見や悩みや皮肉や自己嫌悪、 それぞれに上手く折り合いをつけて、波風立たないようにやり過ごしていきます。 でも・・・・・それってやっぱり疲れます。 それをどう乗り越えるのか!というほど肩に力が入っているわけでもなく、 まいちゃんは自分の意思で進む道を一気に方向展開させましたが、 すーちゃんやさわ子さんは、客観的に見れば、環境変化に流されていきます。 でも、内面では様々な葛藤を経て、自分に自信をつけていったのではないかなと思います。 同じような境遇の自分としては、そう思いたいという願望もあります(苦笑)。 変わりたいと思っても、そう簡単に変われるものじゃないんだよ・・・・というところが 現実感があって、共感できました。 変化したまいちゃんも、過去の自分を捨てたわけではなく、 来るべき新しい自分と過去になりつつある自分との狭間で悩んでます。 こういう冷静な目を持っているところに共感できました。 ただ、作品として残念なのは、 彼女たちの周りの男どもがあまりにイケテナイこと。 自分勝手だったり、威張り散らしたり、反対に自信なさげだったり、顔色を伺ったり。 男性の中には、確かにそういう人も居て、嫌な思いをすることはありますが、 でも、それは少数であり、多くの人は女性に配慮もするし理解しようともしてくれます。 それが独身女性の目から見て100点満点ではなくても、それは当たり前のこと。 独身女性だって、我がままで、意地悪なことを男性に向かってすることはあるんですから。 女の目から見ても、この映画に出てくる男性の描き方は 逆に偏見の目で、ステレオタイプに填め過ぎているのではないかと思ってしまいました。 男性がこの作品を観たら、納得できないのではないかと思います。 そして、「女も男のことを偏見の目で見てるんじゃないか!」とあらぬ誤解を生みそうで。 というわけで、主人公3人には共感できましたが、 作品には共感できないモヤモヤ感が残ってしまいました。
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『ビジネスケースブック3』
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- 2014/09/28(Sun) -
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一橋ビジネスレビュー編集部 『ビジネスケースブック3』(東洋経済新報社)、読了。
100円で売っていたので、第3巻でしたが買ってみました。 『一橋ビジネスレビュー』誌に掲載されたビジネスケースを再録したものです。 オリンパス、ファストリ、キリン、エーザイと、 あまりにも有名な大企業が並んでいたので、 正直、目新しさという点では、「読んだことがある話だな」という感想になってしまい残念。 ただ、ニュートーキョーが開発した食材発注システムの話は 初めて聞くものであり、しかも、オープンソースで開発したというところが斬新で、 非常に興味深く読みました。 やっぱり、ビジネスケースは、こういう自分にとっての「発見」「新知識」が嬉しいですよね。 あと、オリンパスのケースでは、公開セミナーにおけるディスカッションが付録されており、 いわゆる自分と同じ立場の「ビジネスケースを勉強の材料として読んだ人」の目線で いろんな質問が投げかけられ、検討が加えられている様が面白かったです。 そういうところに着目するのか!という発見がありました。 ただ、残念ながら、この試みはオリンパスのケース独自のものだったようで、 他のビジネス・ケースでは試されていませんでした。 残念。
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内さま
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- 2014/09/27(Sat) -
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『内村さまぁ~ず #193』
「最近どんどんオカシなコトになっているゴルゴ松本を何とかしたいレッド達!!」 ということで、なんとTIMコンビではお初の登場のようです。 レッドさんの仕切りの回は安心して見ていられるのですが、 ゴルゴさんが登場する回は、「この人、大丈夫かしら・・・・?」と不安な気持ちになります(苦笑)。 今回は、レッドさんが付き添い役というか、中和剤というか、 とにかく居てくれたことで見やすくなってました。 よかったです・・・・・・って、ベテラン芸人さんに言う言葉でもないですが。 ゴルゴさんが、いろんな世界を語り尽くす回・・・・・・・ というか、ゴルゴさんに電流が流れる企画の第2回。 漢字とか、数字とか、色とか、御託を並べていましたが、 メインは電流ですからね(爆)。 面倒くさい芸風になっちゃってますが、「最後は電流」ということを潔く受け入れるとことが この芸人さんの良いところですね。 ただ、最後の「トランプを教育」とか、そういう斬新な概念というか、 日常生活を送っている中で思い浮かばない概念を出されると、 やっぱり不安になります・・・・・・。
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『木洩れ日に泳ぐ魚』
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- 2014/09/26(Fri) -
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恩田陸 『木洩れ日に泳ぐ魚』(文春文庫)、読了。
久々の恩田作品。 同棲を解消する最後の夜、 1年前の旅行先でのガイドの転落事故の真相を知ろうと、 男と女は、お互いを相手に言葉をつむぐ・・・・・相手が殺人犯なのだろうと思いながら。 2人の会話を軸に、過去の場面に飛びつ戻りつ、 ガイドの転落事故の前後に起きた出来事を記憶の奥から掘り返していきます。 心理戦も伴う会話の駆け引きと、 新たな記憶が蘇ることで1つ1つ固められていく当時の様子。 だんだんと形になっていくプロセスを読んでいくのは面白かったです。 ところどころ、「その展開推理は強引だろう!」と思うところがあり、 会話の相手もすんなり受け入れていくことが多かったので、 思考に思考を重ねて真相を突き止めた!というスッキリ感はイマイチでしたが、 会話劇として楽しめました。 この2人の関係性も異様なところがあり、 会話劇というか、心理描写の濃い味付けになっていたと思います。
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『新しい哲学を語る』
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- 2014/09/25(Thu) -
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梅原猛、稲盛和夫 『新しい哲学を語る』(PHP文庫)、読了。
思想の大家と経営の大家の対談です。 それぞれの発言を1~2ページ程度にまとめているので、 対談とはいえ、結構、読みやすかったです。 ただ、内容は、なんだかキレイゴトのような印象でした・・・・・・。 9.11から数ヵ月後という時期のせいかもしれませんが、 世界に平和をもたらすためには良心が必要だ!なんて正論を吐かれても、 じゃあ、昨日の怒りは今日どうすればいいのよ!?という問いには 上手く答えられないのではないかと危惧します。 というか、ドギツイ言い方をすると、 安全地帯にいる人間が、高みから、混乱している人々を見下ろして コーショーな議論をしているようにも感じました。 正論と現実をつなぐ術が、この本からは見えてきませんでした。 そこは自分で考えろということなのかもしれませんが。 途中で出てきた「働くということの意義」というテーマでの議論は、 結構面白く読めました。
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『日曜日たち』
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- 2014/09/25(Thu) -
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吉田修一 『日曜日たち』(講談社文庫)、読了。
最近、吉田作品は長くて重い内容のものが続いたので、 連作短編集をば。 5人の人物の、彼らにとってごくありふれた日曜日の姿を描きます。 時には時間を遡って記憶を呼び出し、なぜ自分が今日、このような一日を送ることになったのか 考えを巡らせていきます。 最初の物語を読んでいたときの印象は、 著者の芥川賞受賞作を読んだときと同じような、 大したコトの起こらない日常を淡々と楽しむ作品なのかな?と思いましたが、 しかし、次の物語を読み進んで、兄弟に出会ったときに、 あ、そういう仕掛けなのか・・・・と。 段々と、この兄弟が幽霊のような感じを受けるようになり、 私の中では勝手にホラー要素が足されてしまう始末(苦笑)。 決して、そうではないのですが、何だか物語に出てくるその唐突感がなんとも幽霊的で。 この5つの物語を読んでいると、 今日という日は、いくつもの過去の積み重ねの上に必然的に乗っかっているものであり、 しかも、私の今日という日は、他の人の今日という日に繋がっているものなんだという、 極めて当たり前の事実を、非常に自然な感じで納得させてくれる作品でした。 面白かったです。
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