『造花の蜜』
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- 2013/04/30(Tue) -
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連城三紀彦 『造花の蜜』(ハルキ文庫)、読了。
本作を絶賛している書評を何かで読み、 上下二巻だったのでしばらく積読だったのですが、GWということで挑戦。 とある誘拐事件を巡り二転三転する状況。 警察をあざ笑うかのような犯人からの指示。 そして、人質は無事に解放、一時的に消えていた身代金も戻り、 一体この騒動は何だったのかと思いきや・・・・。 事件の構造は、いくつもの要素が絡み合い、 加害者と被害者が目まぐるしく交錯する展開に、 「よく、こんな事件を考え出したなぁ」と感心しました。 ただ、小説としての出来は、イマイチなように思いました。 感情移入できる登場人物が見当たらないのです。 誘拐された子供の母親は、取り乱して可哀想ではあるのですが、 自分が過去に犯した罪を隠そうとして、子供の危険を事前に察知しながら手を打ちません。 子供が居なくなってからも、警察への協力は、あくまで自分の保身優先です。 この行動には、どうにも共感できない「嫌らしさ」が付きまといます。 離婚した父親はわがままの極みで、こちらも言わずもがな。 誘拐事件の実行犯として関わった男についても、 何で事件に関わろうとしたのか、その動機が腑に落ちません。 こんな思考回路の人いるのかなぁ?と思えてしまいます。 そんな男を勧誘した黒幕の行動も同様に不思議。 なんで、そんな説得の仕方でこの男が参加すると判断したのか、 これまた納得的ではありません。 なんで?なんで?なんで? 登場人物それぞれの、キーポイントとなる行動一つ一つに 大きな疑問符がついてしまうんです。 だから、共感できませんでした。 複雑なプロットの作品ほど、登場人物の誰かに肩入れできなければ 非常に読みにくいものになると思うのですが、 まさに、私にとっては、そういう作品でした。
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『リアル・スティール』
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- 2013/04/28(Sun) -
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『リアル・スティール』
Yahoo!ではかなり評価が高いのですが、私はダメでした・・・。 男性受けするテーマということなのでしょうか。 受け入れられなかった大きな理由は、 2020年の世界のあり方に魅力が感じられなかったことに尽きます。 あれだけのロボット技術ができながらも、 それを見て楽しむ人間たちの文化の程度の低さに愕然。 知性の二極化が激しく進展してます。 というか、これはもう知性の大きな後退です。 こんな世界に住みたくない・・・・それが最初の印象です。 なので、主人公の親子に共感できませんでした。 どんなに親子の絆が深まっても、生きる環境があれでは・・・・。 その他にもいろいろ気になってしまい、本題に気持ちが入らず。 例えば、ロボット技術は進んでますが、 車の技術には全く進展がみられなかったり、 生活を取り巻くインフラも目立った進歩が感じられませんでした。 ここでも享楽的な技術だけが突出して投資されるというアンバランス感。 これは、世界の知性そのものの歪みを表しています。 日本で活躍してたというノイジー・ボーイのペイントが とても日本人のセンスと思えない見てくれだったのもガッカリ。 あれでは、アメリカ人が間違って認識してる中国文化ですよ。 そもそも、ロボット文化が、これだけアメリカで熱狂されるのかも疑問。 それこそアトムやマジンガーZ、ドラえもんを生んだ日本でならば、 ロボット文化が根付いているので、このようなエンタメが盛り上がるのもわかりますが、 大抵のアメリカ人には、ロボットは労働力という認識しかないように思います。 ロボットの性能そのものに熱狂するアメリカ人というのがイメージできません。 アメリカ人って、意外と、人間そのものに感動する文化だと思っています。 親子劇だと思って見れれば感動できたのかもしれませんが、 登場人物に肩入れする前に、あれこれ疑問を持ってしまい、世界観に浸れませんでした。
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『ボクたちの交換日記』
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- 2013/04/28(Sun) -
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『ボクたちの交換日記』
さてさて、満を持して感想を書かせていただきましょうか(笑)。 内村光良映画監督作品第2作ですが、 映画に対する真摯な思いが伝わってくる良い作品でした。 お笑い芸人が監督をし、売れないコンビの姿を描いたとなると、 お笑い要素満載を期待したくなるところですが、 むしろ、「夢を追いかける人生と現実」という人間ドラマを しっかりと正面から描いた作品に仕上がっていて、映画として良い作品だなと感じました。 (お笑い目当てで見に行くと物足りないと思います・・・) 監督自身は、若くして売れっ子になり、20代半ばで冠レギュラーも持ち、 苦しい時代は何度かあったとはいえ、客観的に見ればずっと第一線で活躍してきたと言える 華やかな経歴の持ち主です。 そういう意味では、主人公の房総スイマーズのような「売れない」「芽が出ない」という 経験をしていないわけで、それなのに、ここまで彼らの葛藤をストレートに描けるのは、 多くの若手芸人さんの姿を温かく見守ってきた先輩芸人としての愛情なんでしょうね。 そして、当事者ではないから冷静に描けたという面もあるでしょうね。 甲本と田中のコンビ2人が主人公ですが、私は完全に甲本目線で見てました。 いやぁ、小出恵介さん、素晴らしい俳優さんですね。 『キサラギ』で認識したのですが、ここまで表情の表現が上手い役者さんだとは、 今回、認識を深くしました。 夢をあきらめても、守るべき家族がいるという現実は、 甲本にとって、それはそれで、生きている実感のある人生なのではないかなと思います。 もちろん悔しいでしょうし、諦めた、負けたという事実は残ります。 でも、十数年後の田中の、豪邸だけれど生活感の乏しい家よりも 家族が寄り添ってくれる甲本の姿の方が、幸せなように見えました。 (ただ、十数年後の甲本の置かれている状況は、ありきたりな展開だと思ってしまいましたが) 一方、田中の描き方は物足りなかったです。 もっと真剣さとか怒りとか持っている人のはずなのに、 感情を抑制し過ぎているように感じました。 最後、自宅からテレビ局にとって返すシーンでも、「気づき」の瞬間が分かりにくかったです。 奥さんの言葉がそれほど内容があるものに思えなかったので・・・。 芸人さんだと共感できるのかな。一般人には分かりにくいと思いました。 ただ、全般的には上手くまとまっていたと思います。 無駄を省いて、コンパクトに仕上がってます。 あまり斬新な演出はなく、やや小ぶりな感もありますが。 舞台はお笑いという世界でしたが、観た人それぞれの人生に置き換えて、 自分のこととして受け止められる普遍的なテーマを上手く扱っていると思います。 良い作品でした。
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『北斎と暁斎 奇想の漫画』
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- 2013/04/28(Sun) -
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『北斎と暁斎 奇想の漫画』
本日は、良いお天気の中、原宿の太田記念美術館に出かけてきました。 浮世絵の美術館なのですね。 こんな都会の一等地にあるなんて、初めて知りました。 さてさて、尋ねた目的は、河鍋暁斎が展示されているから。 今回は「漫画」がテーマなので、 暁斎のユーモアあふれる作品が多々見られました。 そして、北斎の作品を手本にした作品もあり、浮世絵の系譜も確認できました。 脈々と引き継がれながら、新しい技術や着想が取り入れられていく、 これぞ日本文化の面白さですよね~。 妖怪や骸骨も面白いのですが、 やっぱり私は、暁斎の描くカエルが好きです。 鐘馗様や閻魔様といった面々の表情も大好きなのですが、 本日の展示の中には少なかったです。 展示内容は、やや北斎側に力が入っているようで、やや残念。 ま、それはこの美術館の立場上、そうなってしまうのでしょうが、 暁斎にも、もっと面白い漫画作品はあるぞ!と言いたくなりました。 今後の展示予定も、結構、面白そうなものが見られたので、 今後、要チェックの美術館ですね。
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新宿末広亭 4月下席 夜の部
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- 2013/04/28(Sun) -
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新宿で2時間ほど時間が空いちゃったので、
久々に末広亭に行ってきました。 GWで他の営業があるのか、残念ながら一之輔師匠と円丈師匠は代演でした。 入船亭扇治師匠の落語の終わりから聞き、続いては太神楽の翁家勝丸さん。 結構、ボトボトとモノを落としております(苦笑)。 途中で、「もしや、これはネタで落としてるのかも!?」と疑ったのですが、 最後まで見て、やっぱり技術が伴ってないのだと思いました。 ま、それをカバーできる話術があったので、面白かったですが。 林家錦平師匠は、「片棒」。 なんだか、慌てて詰めまくったような印象でした。 桂才賀師匠は、上野のお爺ちゃん・お婆ちゃんをぶった切る漫談。 まー、相当毒を吐いてますが、この方『笑点』に出てた時代があったんですね。 テレビで流せないようなネタだったのですが・・・・。 でも、本日、一番面白かったです。 続いて、紙切りの林家二楽師匠。 わたくし、イロモノの中では紙切りが一番好きかも。 お客さんから出たお題は「権助魚」。 今日、このネタが演じられたそうですが、残念ながら私は見られず。 これまでにも見たことがないネタなので、話の内容は分かりませんでしたが、 でも、切られた作品はキレイでした。 金原亭馬の助師匠は、百面相というモノマネ芸。 こういう芸があることを初めて知りました。 小道具を巧みに使うところに伝統を感じました。 中入り前は、三遊亭歌司師匠だったかな・・・・ 今日はメモを取らずに見てたので、噺も忘れちゃいました。 てなわけで、ここで退席いたしました。
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『タンノイのエジンバラ』
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- 2013/04/27(Sat) -
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長嶋有 『タンノイのエジンバラ』(文春文庫)、読了。
芥川賞受賞後の第一作ということで、 パワーダウンしてないかな?と思いつつ読んだのですが、全くの杞憂でした。 むしろ、本作の方が面白いぐらいでした。 解説で「居心地の悪さ」というキーワードが出てきますが、 まさに、「居心地の悪さ」を主人公が冷静に受け止めているところが この作品の面白さかなと感じました。 居心地の悪さにブー垂れるわけでもなく、 私の人生とはこういうものだと受け入れ、でもちょっと変化に挑戦してみて、 新しい自分を手に入れる。 なんだか親近感を覚える主人公たちでした。
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『雲の楽しみ方』
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- 2013/04/24(Wed) -
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ギャヴィン・プレイター=ピニー 『雲の楽しみ方』(河出書房新社)、読了。
久々にお天気の本です。 雲の観察を楽しむための本、かつ雲を楽しむ人の喜びがあふれる本。 喜びが溢れすぎて、やや鼻につく修飾ではありますが、 でも、やっぱり、雲の観察は楽しいですよね、 昔、小笠原の父島で、展望台のベンチで海と空を眺めつつ 本を読んで過ごした日を思い出しました。 雲が生まれ、形を変えて流れていくさまは、ずっと見ていられますよね。 あと、私は雷の日も好きです。 オーストラリアのダーウィンという町は、 雷を見に行ってみたいなと思っていたのですが、 モーニング・グローリーを見に、バークタウンにも行ってみたくなりました。 昔、モーニング・グローリーの写真を見たときは、 「なんだこの映画みたいな光景は!?」と驚きましたが、 一度でいいからこの目で見てみたいです。 本作は、観察の手引きとしても、使える本だと思います。
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TBS&S革
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- 2013/04/21(Sun) -
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『内村TBS』(2012年3月29日放送)
今回が一番面白かったです。 内村さんが好き勝手し放題で、良いときの内Pの雰囲気でした。 でも、内Pのコピーにするのではなく、それなりにこの番組らしい演出もあり、面白かったです。 あいだみつお美術館で、御子息を前にして傍若無人過ぎでしょう(笑)。 惜しむらくは、1時間しか枠がなかったということ。 1時間半ぐらいの番組になるぐらいの録れ高があったのではないでしょうか? オープニングもエンディングも、ほとんどトークをカットしてましたよねぇ。 もったいない・・・。 狩野さんが獲得した5000ポイントが、たぶん、どうにかして消滅してたはずなのですが、 そのくだりが見られなかったのは非常に残念。 芸人さんも10人に絞って、しかも無駄のない厳選メンバーだったので、 濃厚な大喜利を見られて楽しかったです。 アシスタントの大島麻衣さんも空気を読んだテキパキ仕切りで、良かったです。 この番組はレギュラーにするとエネルギーが落ちてしまいそうですが、 改編期ごとには見たいですねぇ。 『スクール革命!』(2012年4月15日放送) 日本語学第4弾ということで、金田一秀穂先生と椿鬼奴先生。 コーナーも、先生同士の役割分担も、鬼奴劇場も構成が固まっていて 安心して見ていられますね。 今回は、内村先生のボケをほめるときの言葉は?という敬語の問題に、 当然のことながら、前フリでボケをさせられる内村先生。 ま、こういうストーリーのない瞬間的な芸は苦手ですからね(苦笑)。 当然のことながら惨劇となりましたが、金田一先生の模範解答に助けられましたね。 なのに、そのあと、どんどんドツボにはまっていく内村先生。 J組のみんな、いじわるだなぁ(笑)。 あと、鬼奴先生は、本当にテレビが好きなんだなと再認識。 今回は、まおみちゃんと高知くんがお誕生日ということでお祝いしてましたが、 まおみちゃんへのプレゼントが腹話術人形って、怖すぎ・・・。
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モネアSP
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- 2013/04/21(Sun) -
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『ザ・イロモネアSP』(2012年3月29日放送)
前回はいろいろストレスが溜まる仕上がりだったのですが、 今回の3時間SPは満足できる内容でした。 場数を踏んでいることで、1分程度ならなんとか回せるわぁと手を抜きそうな芸人は排除し きちんとネタを仕込んでくる芸人さんに絞り込んでいたように感じました。 なので、メンバーの名前に華があったかというと地味目でしたが、 でも、中堅組を中心に、内容は非常に充実してたと思います。 特に最初の30分のピースからインパルスまでで、番組的に良い流れができてました。 ピース綾部さんは、この番組では完全にすべりキャラになってますが、 今回もその役回りをきちっと果たして、陰で又吉さんのアシストをし、 なおかつファイナルまでちゃんと進むという先頭バッターの大役も見事に果たしてます。 数回しか番組に出ていないのに、きちんとキャラ付できていて、 それが活かされているのを見ると、良い番組だなーって思います。 アンガや小島よしおさんも、きちんとネタを仕込んでいて安定感。 そしてインパルスが堂々の100万円。 板倉さん、やっぱり凄いわ。この人のセンス好きです。あんまり前に出過ぎないところも(笑)。 初出場の若手組は、初めて見る人もいて、視聴者として新しい芸人さんの勉強になりました。 ニッチェは完全に場に飲まれてましたよね。 ネタの面白さが全然伝わってきませんでした。もったいない。でもこれも勉強ですね。 ふがいなかったのはレッドシアターメンバー。 中堅組のような、真剣に準備してきたという空気が、あまり感じられませんでした。 悪く言うと、ややなめている感じ。甘えているように見えました。 ジャルジャルのこれでもかと繰り返すネタは、「らしさ」なので良いと思うのですが、 「らしさ」だけで押しまくるには、やや人気のピークが過ぎてしまっているような気がします。 一方で、「らしさ」を前面に出して、見事100万円を獲った劇団ひとりさんは、 さすがに場の空気感を作る力を持ってますよね。 自分のネタに馴染む空気に変えちゃってます。この技術は凄い。 あと、いつも2回戦で敗退するノブコブ、私は好きですよ。 綾部さんとともにガヤとしても、しっかり盛り上げてますし、番組に必要な人材です。 番組のキャラ的にも、このまま2回戦あたりをうろついてた方が、おいしいと思います。 と、まあ、芸人さんたちには満足したのですが、 番組のルールとして、ジャンルの線引きはどうなってんだ!?疑惑噴出。 ま、以前から私も大いに疑問を感じていたのですが、 今回は挑戦者の芸人さんたちから問題提起が! しかし、ウンナンさんは結論出さず、これで番組としてなし崩し確定です。 ちょっと残念。モノマネと一発ギャグとショートコントって、曖昧よねぇ。 あと、サイレントで声出したら、昔は即失格になってた印象があるのですが・・・。 少なくとも、最初からやり直しができるのは、笑いを取るのに優位になり過ぎでしょう。 芸人さんたちは真剣に取り組んでるんだから、 ルールは厳正に適用してほしいです。
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