『流れる』
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- 2007/02/28(Wed) -
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幸田文 『流れる』(新潮文庫)、読了。
自分の中で思わぬヒット作でした。 独特なリズムを持った文体で、 読んでいて「楽しい」と感じることができます。 解説でも触れられているように、擬音語が多用されており、 また、ありきたりな表現ではなく、それぞれが非常にユニークです。 「恋でへぐへぐになる」だなんて、現代のようなノリの言い回しです。 そしてまた、キャラクター設定が面白い! かつては良いところの奥様だったという主人公の 臨機応変な身のこなしと、鋭い観察力による描写とで 芸者置屋の日常を見事に抉っています。 そして、芸者連中やその取り巻きの人間模様も 山あり谷あり事件続出で、休まる時がありません。 物語の結末は、話の流れからすると已む無しの展開なのでしょうけれども、 なかなかに寂しいものがありました。 梨花さんは、このあとどうなっちゃったんでしょうかねぇ。
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内村さまぁ~ず
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- 2007/02/25(Sun) -
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『内村さまぁ~ず #8』
第7回を見逃してしまいました。 何たる不覚・・・。 さて、ケンドーコバヤシ氏を迎えての第8回。 初見ですが、いい声してますなぁ。 登場の際のプロレスネタで、男性ファンが多いんだろうなぁと予想されましたが、 アクシデントに爆笑。プロレス知らなくても笑えました。 今回のテーマは「アルバイトの達人」。 明らかに御門違いの方が1名混じってますが(苦笑)、 本人曰く「早々にバイトというものを見切ったから」。 人生における総バイト日数が5ヶ月にも満たないなんて、 芸人さんにはあるまじきお姿。 一方で、さまぁ~ずはバイト経験豊富+2人共通の思い出も豊富(笑)。 でも一番面白かったのはケンコバさん。 テント設営のバイト話は、涙無しには聞かれません。強制送還だなんて。 ところで、内村さんの履歴書にあった「趣味:ベランダの花の水遣り」って、 お前は鈴木イチローか!?と思わず突っ込んでしまいました。 そういえば徳ちゃんのキャラって、飛鳥ちゃんに近いかも。 まずは託児所にてベビーシッター体験。 三村さんは親バカぶりを随所で拝見するので心配ないですが、 内村=大竹コンビは不安ですね~。 まずは、別室にて笑顔の練習。 内村さんが「大事なのは微笑み」なんて振るから、 微笑みのジョージを思い出したのに、重い!。 さまぁ~ずのツッコミは言い得て妙、重いよ!。 そして、さまぁ~ずもケンコバの笑顔もビミョー・・・。 「置物かと思った」(内村氏談)笑い上戸の先生は、 ピアノの前で何待ちだったんでしょうかね?コーナー1つカットされた?? いよいよ託児室に登場ですが、案の定、自己紹介から室内に不穏な空気が(苦笑)。 ご本人もキャラ設定に困ってる様子。 つらい空気だなー。 「全然笑わない子供を笑わせよう」企画では、 1人目は普通に笑顔を見せてくれる(むしろゲラ?)男の子でしたが、 次の双子ちゃんは相当手強かったですね。 というか、若干、見てるこっちが心配になっちゃうぐらい表情無かったですよね。 演技しているようでもありませんでしたし・・・現代っ子?! でも、必死の3人に逐一フォローを入れてるケンコバさんが面白かった! 負け空気のままで次はスポーツジムへ。 まずは面接からって・・・内Pの企画そのまんまじゃん! ちょっとこれには鼻白んでしまったかも。 3人だとこじんまりしてて、相乗りギャグがちょいと物足りないですが、 でも、回答は面白かったです。 特に有酸素運動。ミムさん、駅のホームでその動きはアブナイ人ですよ。 そして内村氏の強引なお尻アピール。 草野さんと組んでの有酸素運動もやっぱり一人でお尻アピール(笑)。 セクハラ系には行かない(行けない?)人ですね。 「ジムの会員さんからの質問に答えよう」企画では 危機的状況回避バトルのようでしたが、3人ともお見事。 特に、三村さんの「ニューヨークに行きたいかー!」に爆笑。 あと、内村さん、老いというより鈍ってきてるんじゃないですか? 『ウリナリ』みたいなムチャは求めませんが、 適度に体を動かす番組があってもいいですよねー。 ケンコバさん、ほぼ初対面の状況で結構馴染んでいるように見えて、 実はお互い探り探りという裏の緊張感が滲み出てましたね。 多分、いつもの芸風とは違うんだろうな~と思いつつ、 面白かったのでこれはこれでOK。
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『生きとし生けるもの』
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- 2007/02/22(Thu) -
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山本有三 『生きとし生けるもの』(新潮文庫)、読了。
正直なところ、描かれている世界に違和感がありました。 作品が書かれた時代のせいかしら? 夏樹が仕事で失敗をしてしまう過程、 その失敗に対する父であり創業者の周作の態度、 経理処理のミスを問われた民子の処遇など、 特に会社組織の描き方に、現実味が無いように感じました。 もっと組織は冷徹に合理的に動いていくものではないのかと。 一方、ゆき子という不思議な女性が登場して 物語の展開が面白そうになってきたところで、作品は終了・・・。 新聞連載中に作者が体調を崩して、執筆中断となったとか。 やむを得ない事情とはいえ、拍子抜け。
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『挑戦の時』
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- 2007/02/20(Tue) -
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P.F.ドラッカー、中内功 『挑戦の時』(ダイヤモンド社)、読了。
正直なところ、がっぷり四つに組んでほしかったなぁ・・・と。 往復書簡と銘打ちながら、 中内翁の手紙がキュー出しのような位置付けになっているのは ちょっと物足りない感じがしました。 それでも、ドラッカー博士の明晰な文章は、 非常に読みやすく、経済素人にはありがたい文章です。
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『落下する夕方』
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- 2007/02/19(Mon) -
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江國香織 『落下する夕方』(角川文庫)、読了。
とっても不思議な世界が淡々と広がっている作品だ・・・ という思いに浸りながら読み進んでいたら、 突然の変調。 「えっ!?」と吃驚しながら、 その後の展開を追いかけたくて先に進んだときの、 梨果の行動「でもその前に、ちょっと華子とかわっていただけますか」 これには、やられました。 衝撃を受けるとともに、 「あぁこの作品を読んでおいて良かった」と思わせてくれたシーンでした。 映画化もされているようですが、 華子を映像として形にしてしまうのは勿体ないような気がします。 小説として自由に心に描きたい作品です。
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『水の中のふたつの月』
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- 2007/02/18(Sun) -
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乃南アサ 『水の中のふたつの月』(角川文庫)、読了。
カバーのイラストからして、それほど期待していなかったのですが、 いやはや、面白かったです。 (僭越ながら、もっとモダンなカバーイラストにしたほうが良いかと・・・) 何かに追われるかのようにスケジュールを埋めて安心する亜理子、 見え透いた嘘をつき、辻褄が合わなくなってもとぼける恵美、 30分に1回は手を洗わずにはいられない梨紗、 偶然にも再会した仲良し3人組は、 小学生の頃には無かった特異な面を見せるようになっていた・・・。 3人がお互いの腹の中を探りながらも 表面上は仲良く付き合っている様子が空恐ろしいです。 そして、3人が心の奥深いところに仕舞いこんでいた 小学生のときの秘密の出来事が、再会を切っ掛けに、現実世界へ滲み出てくる。 そこには、コックリさんといったオカルト要素も絡んできて、 ややもすれば白々しい現在と禍禍しい過去とを行きつ戻りつしながら、 物語は進んでいきます。 過去の出来事については、早い段階で想像が付くのですが、 話を小出しにしながら書き進めていくところが憎らしいです。 ゆっくり読むつもりが、すっかり嵌ってしまいました。
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『十角館の殺人』
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- 2007/02/17(Sat) -
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綾辻行人 『十角館の殺人』(講談社文庫)、読了。
「現代の都会にかのホームズ氏が出現したとしても、おおかた滑稽さの方が目立つ」 と作者自身が登場人物に語らせていますが、 その有効な解消策として出てくるのが「嵐の山荘」とのこと。 で、本作は、その宣言どおり「嵐の山荘」パターンに突入するわけですが、 やっぱり、現実味の無い滑稽さは拭えないのかなという気がします。 「嵐の山荘」に陥るシチュエーションが非日常的ですし、 さらにそこで巻き起こる一連の騒動が、非常に特異な内容ですから。 その突飛さを受け入れて非日常性を楽しむのが、 この手の作品のオモシロさかなと思います。 さて、今回は、綾辻作品2作目だったのですが、 やっぱり叙述ミステリにしてやられました。 前回読んだ『迷路館の殺人』よりも、本作のトリックのほうが面白かったです。 しかしながら、最後の50ページでの興奮のために 最初の300ページがくっついているような印象も受けてしまい、 作品全体を通して緊張感を孕んでいるほうが 個人的には好きだなぁと感じてしまいます。
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『響灘』
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- 2007/02/16(Fri) -
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阿刀田高 『響灘』(文春文庫)、読了。
軽く読めて気晴らしになりそうな本を・・・と思い 阿刀田作品を手にしたのですが、 初っ端の表題作「響灘」が相当艶っぽい描写で愕いてしまいました。 その後に続く12作の短編集が、 さらっとしていて疲れた頭でも楽しめました。 日常を切り取って、さりげない作品に出来る才能に いつもいつも感嘆します。
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『姥ざかり』
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- 2007/02/14(Wed) -
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田辺聖子 『姥ざかり』(新潮文庫)、読了。
『芋たこなんきん』の放送は そろそろ終盤にさしかかってくる頃なんでしょうか? 連続テレビ小説には縁が無いもので、よく知らないのですが、 ふとそのことが思い浮かんだので久々に田辺センセの作品をば。 娘ざかり、女ざかりを過ぎて、姥ざかりを迎えた76歳歌子サンの物語。 持論を張ってシャキッと生きている姿に、 読んでいるこちらもスカッとします。 そして、歌子さんの魅力もさることながら、 脱線に継ぐ脱線で話がどんどん展開しつつも、 また元のところにスッと戻ってくる作家の筆捌きが絶妙。 読んでいてイライラしたり鬱陶しく感じたりすることがありません。 その脱線振りが、歌子サンのそこはかとないトシヨリ度合いを醸し出していて、 物語に面白いリズムを付けているように思います。 そして、いつも田辺作品で驚かされるのは、 作品発表から経ている年月を全く感じさせない新鮮さがあるということ。 本作も、文庫本の発行年は、昭和59年となっていますが、 20年以上も前の作品だとは思えない明るさを保ってます。 ジャイアンツ堀内とタイガース掛布との対戦のシーンが来て やっとこさ「あぁ、こんなに昔の話なのだ」と思い至るほどです。 作中で上原が投げ濱中が打っていても、なんら違和感を感じないかもしれません。 「姥」作品は、どうやらシリーズ化されているみたいなので、 今後も追っかけてみたいと思います。
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『埋もれた日本』
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- 2007/02/12(Mon) -
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和辻哲郎 『埋もれた日本』(新潮文庫)、通読。
哲学者が書く読み易いエッセイかな?と思い手にしたのですが、 いやはや、なかなか手強いエッセイでした。 読む側にも教養の土台が必要な文章が多く、 また、曖昧さを許さないような糾弾する力強さもあり、 毎晩終電間近+休日出勤有りの疲れた脳では 読み受けることが難しかったです。 それでも、漱石との思い出や、父親の仕事振りを描いた章は 面白く読むことが出来ました。
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