『盲人重役』
- 2016/01/17(Sun) -
城山三郎 『盲人重役』(角川文庫)、読了。

地方鉄道の弱小鉄道会社が生き残るため
身を粉にして働く一役員のお話。

鉄道業というのは、とりあえずインフラを走らせておけば
一定数の乗客は見込めるということで、
経営陣に、将来に対する危機感が薄くなってしまう面はあるのかもしれませんね。

そんな中で、先手を打っていかないと大資本のライバル鉄道会社に負けると見て、
インフラの更新、観光客誘致、バスの活用、そして天皇陛下の御幸まで
企んでしまうやり手の役員。

やや上手く行き過ぎの感もありますが、
とにかく打てる手は全部打つというエネルギーを感じさせてくれる主人公です。

モデルが居るのかしら?と思って検索したら、島原鉄道の宮崎康平氏がそのようで、
まさに本作で描かれていたように、過労で失明されてしまったようですね。
それでも、昭和天皇のガイドをこなされたとは凄い執念です。

家出してしまった奥が残念な描かれ方で、
仕事のセンスはあっても、奥様選びのセンスはなかったということなのでしょうかね。


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城山 三郎

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『一発屋大六』
- 2014/06/20(Fri) -
城山三郎 『一発屋大六』(角川文庫)、読了。

久々の城山作品は
特にモデルはいないと思われるフィクション小説です。

銀行勤めの男が、1,000万円の預金盗難の疑いをかけられて辞職。
かねてから親交のあった相場師の下で働くことに・・・・。

基本、城山作品の主人公は、
ビジネスや政治の世界での成功者や成り上がり者を扱うことが多いためか、
有言実行もしくは不言実行でエネルギッシュな男が多いのですが、
本作の主人公はそれとは正反対。

口だけなところがアリアリで、本人もそれを自覚しているのに夢見るところは変えようとせず、
なんだか生きていくエネルギーの不足さを感じさせます。

なのに、銀行を辞めると決めたら、意外と行動が伴うようになってきて、
そこから次第に人間として成長していくようになります。

最初は共感できなかったのですが、
追い込まれると人間とは変われるものなんだなぁと、少し応援する気持ちが芽生えました。

ただ、結局は、自分の力で大きいことをするところにまでは至らず、
展望している世界観が広がらなかたので、淡々と読み終えてしまったところもあります。

城山作品としてはイマイチでした。


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『気張る男』
- 2012/12/01(Sat) -
城山三郎 『気張る男』(文春文庫)、読了。

明治の大実業家・松本重太郎の人生を描いた作品。
・・・・・なんですが、当人を、わたくし、存じ上げませんでした。無知ですなぁ。
「西の松本、東の渋沢」なんだそうで、渋沢栄一は、自分自身にも縁があるので
興味を持っていたのですが、関西にも、そういう立派な人物がいたとは。

丹後の国に生まれた主人公が、
京都へ出、さらに大阪へ出て店を出し、やがて銀行業に乗り出していく。
そこからは、渋沢同様に、基幹産業の立ち上げに関わるようになり・・・。
とまぁ、目覚ましい活躍なのですが、城山小説にしては珍しく、
結構、淡々とした描写というか、説明文的な描写が続くように感じました。

立ち上げの苦労や、成功をみなと喜ぶ姿から、
あまり迸るエネルギーみたいなものを感じ取れませんでした。

反対に、1900年頃の恐慌に際して、経営する企業が深刻な不振に陥り、
経営する銀行が破綻するに及んで、
個人資産を「悉皆出します」と言ってから後の描写は、
松本重太郎という人の目線で物語が語られているかのようで、
非常に人間味を感じました。

解説で、著者は「悉皆出します」というフレーズを書きたかったのだと書かれていたことに納得。
この言葉を発してから後が、主人公の本質に迫れているように思いました。

裸一貫から西日本の実業を束ねるようになり、そこから零落。
しかして、貧すれど心は豊か、家族も温かというのは、素晴らしい人間性があってこそ。
明治の夢を体現していた人なんだなと思いました。


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『勇者は語らず』
- 2012/01/28(Sat) -
城山三郎 『勇者は語らず』(新潮文庫)、読了。

本作も面白く読めました。

自動車メーカーの部長と、その下請け会社の社長は、
かつて中国戦線で一緒だった戦友の関係。
目的達成のためにはぐいぐい押してくる部長に対し、
「受けの山さん」のあだ名がつくほどの下請社長。

日本の自動車メーカーがアメリカに進出した創世記から貿易摩擦の根源として
バッシングに遭うようになった時代までを背景に、2人の男を描いていきます。

それぞれが置かれた立場、2人の人間関係、家族との関係、社会背景などが
上手く絡み合って、非常に興味深い作品に仕上がっています。
日本の自動車業界の奮闘の歴史をコンパクトにまとめた良書だと思います。

一方、本作の前半で、「ST」と呼ばれる一種の自己啓発セミナーのような
研修の模様の描写にページを割いていますが、
この研修を、最初から最後まで、好評価しているところが意外でした。

参加者に忍耐の時間を与え、攻撃的なまでに本音をさらけ出させることで
自分の壁を突き破らせようとする研修があることは知っていますが、
プラスに作用する人、マイナスに作用する人、それぞれいると思うんですよね。
人格を否定するような部分もあると思うので、
参加者全員がハッピー(もしくは前向き)になるとは思えないんですよね・・・。
ま、参加したことないから、想像での発言ですが。

最近は流行らない手法なのではないでしょうかね。
なんだか、そんなところにも、イケイケドンドンの時代を感じる作品でした。


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『真昼のワンマン・オフィス』
- 2011/07/08(Fri) -
城山三郎 『真昼のワンマン・オフィス』(新潮文庫)、読了。

相当久しぶりとなった城山短編集は
とても面白かったです。

「日本の大企業のアメリカの支店で働くホワイトカラー」と言われると、
超エリートコースを想像してしまうのが常ですが、
本作に登場するのは、現地採用の日本人や日系人たち。

本社から送り込まれてくる、真性エリートの日本人社員と、
同じ日本人でありながら差をつけられて仕事をせざるを得ない境遇。
この屈折した視点で描く日本企業の有り様が新鮮でした。

作品が、日本企業のイケイケドンドンの時代に書かれているということもあり、
日本企業の過去の栄光を見るようなところもあり、興味深深です。

アメリカでの生活を良く知る、
城山三郎ならではの好短編集です。


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『落日燃ゆ』
- 2010/09/23(Thu) -
城山三郎 『落日燃ゆ』(新潮文庫)、読了。

面白くって一気読みでした。

これまで、広田弘毅という人物については、
「文官なのに死刑になった唯一の人」という事実から、
「よっぽどなことをやった政治家だったんだろうなぁ・・・」という
印象というか、思い込みを持っていました。

ところが、本作を読んで、彼がどのように戦争と向き合ってきたかを知り、
また、戦後の極東裁判における態度を知り、
自分の無知を恥ずかしく思いました。

しかし、この手の、戦争の渦中における人物記の類を読んだ時にいつも思うのは、
「この戦争は、いったい誰が起こしたものなのだろうか?」という疑問です。

先が見通せる政治家も、外国という外の世界を知っている官僚も、
また、軍部の上層部の中にも開戦回避の声はあったという状況で、
「軍部に押されてズルズルと戦局が拡大し・・・」という事態が
どういうものなのか、なんとも理解し難いのです。

「軍部の現場の暴走」と言ってしまえばそれまでなのかもしれませんが、
それでは、各現場が勝手に動いていただけで、
軍部全体をみている統括者がいなかったということになります。
太平洋戦争って、そんな組織論不在の状況で行えるものなのでしょうか?

結局、誰も最後の責任を取らないままに、
状況に押し流されてしまったということなのでしょうか?

それとも、「誰が」というものではなく「時代が」そうさせたのでしょうか?

例えば、明治維新の急展開の動きには、
「時代がそうさせた」と言わせるだけのパワーを感じることができるんです。

でも、太平洋戦争という事態に対して「時代がそうさせた」と言ってしまうには、
戦争を起こした側として、あまりに無責任な言葉になってしまう気がして、
どうにも腑に落ちないものがあります。

ナチス・ドイツの活動に対しては、
「時代がそうさせた」という面もあるだろうなぁ・・・と思えてしまうのは、
自分が当事者の国に生まれていないから言えることなのでしょうかね。

広田弘毅という人物の生き様は良く分りましたが、
太平洋戦争というものが、ますます分からなくなった一冊でした。


落日燃ゆ (新潮文庫)
落日燃ゆ (新潮文庫)城山 三郎

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stars吉田茂との対比
starsお勧めの一冊
stars戦争は避けるべき事柄だ
stars風車 統帥権に 霧散かな
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『粗にして野だが卑ではない』
- 2010/07/18(Sun) -
城山三郎 『粗にして野だが卑ではない』(文春文庫)、読了。

面白くって一気読みでした。

そもそも、経済人・石田禮助を、恥ずかしながら存じ上げなかったのですが、
自分が正しいと信じたことをズバッと言ってのける姿勢に、感動しました。

財界人でも、政治家でも良いのですが、
こういう、「自分の言葉で話せる人物」というのが、
今の時代では、誰がいるだろうか・・・・・と思ってしまいます。

とにかく、言葉のセンスが、要所要所で光ってます。
語録でも作ってほしいぐらい。

直属の上司だったら、一緒に仕事をするとエキサイティングでしょうね。
かなり上の上司だったり、ライン違いだったりすると、
面倒な人かもしれませんが(苦笑)。

家族のエピソードも面白く、こんなお父ちゃん、大変でしょうね。
でも、家族への愛があるからこその行動であって、
大変だけど、幸せなご一家だと思います。


粗にして野だが卑ではない―石田礼助の生涯 (文春文庫)
粗にして野だが卑ではない―石田礼助の生涯 (文春文庫)城山 三郎

おすすめ平均
starsストレートに生きる
stars最高でした。
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『鼠』
- 2009/08/16(Sun) -
城山三郎 『鼠』(文春文庫)、読了。

小説だと思って読み始めたら、ドキュメンタリーでした・・・・トホホ。

鈴木商店と言えば、日本史の教科書にチョロッと名前が出てくる程度で、
企業体として現在に残っているわけでもなく、
私は名前しか知らないという状況でした。

ところが、ロンドン市場をはじめ、世界各地で貿易を行い、
一時代を築いた商社だったのだと初めて知りました。

そして、日商や神戸製鋼、帝人、サッポロ、日本製粉など、
鈴木商店の傘下に名だたる企業が存在していたことを知り、
その企業規模、事業規模を思い知らされました。

ここまでの大組織でありながら、
新興企業としてのがむしゃらさで突っ走ったエネルギーは
凄まじいものであったろうと思います。

それゆえの反感と誤解があったのかな?と。

それにしても、朝日新聞は昔からまぁ・・・・という感じでした。


鼠―鈴木商店焼打ち事件 (文春文庫 し 2-1)
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stars歴史は繰り返す
stars朝日新聞、でたらめな捏造と煽動の起源
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stars歴史の授業で出なかった、「世界企業」の実録物語

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『価格破壊』
- 2009/07/18(Sat) -
城山三郎 『価格破壊』(角川文庫)、読了。

こういうエネルギーの塊みたいな男を描かせたら
やっぱり城山三郎はピカ一ですね。

ダイエー創業者の中内功氏がモデルとのことですが、
とにかく筋が通っているというか、
理念を徹底追及しているというか、
信念の固さが凄まじいです。

無理難題と思われるような理念でも、
自らそれを信じ抜き、徹底して実行に移すと
周囲の人間にもその思いは伝染するんだということが
よくわかりました。

再販制度についても、
なんとなく知っていたというような状況でしたが、
読み終わってから調べ直してみました。

諸外国に比べて、
日本ではまだまだ再販制度が残っている方なんですね。

いずれにしろ、消費者としても賢くならなければいけない、
幸せ奥さんではいけないということを肝に銘じました。


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『華麗なる疾走』
- 2009/01/15(Thu) -
城山三郎 『華麗なる疾走』(集英社文庫)、読了。

今回は「呼び屋」の世界が舞台。

『博士もしらないニッポンのウラ』で康芳夫氏の回を見て以来、
「なんとまぁ、面白いけど関わり合いたくない世界だな」と関心をもっていた業界です。

オートレースの招致という、
一見、至ってまともそうな事業に見えますが、
その実は、嘘ハッタリは当たり前、
はては皇太子の名前まで勝手に使っての詐欺的交渉術を駆使した駆け引き。

イチかバチかに賭けてハッタリをかます仕事のやり方を
見ることができました。

荒川父娘、事務所の石崎、レーサーのカツミ、同業者の野々宮と、
なかなか個性豊かな脇役たちも面白かったです。

レースでは、人がバタバタと死んでいくのには馴染めませんでしたが、
レースとはそんなものなのかもしれません。


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