『6TEEN』
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- 2018/06/25(Mon) -
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石田衣良 『6TEEN』(新潮文庫)、読了。
『4TEEN』の続編ということで、期待値が高すぎたのか 何だかイマイチな読後感でした。 『4TEEN』に登場した14歳たちの2年後、だから『6TEEN』。 『4TEEN』は、「面白かった!」という感想と、 中学生による尊属殺人疑惑とか難しい問題を絡めながらも中学生の青春を軸に 描いていたな~という記憶があるぐらいで、あまり物語の中身までは覚えていませんでした。 なので、久々に本作で月島の男の子たちの姿を読んだときに、 「あれ?こんな物語だったっけ?」と、ちょっと軽さを覚えてしまいました。 家庭の話がほとんど出てこなくなり、 その分、女の子の話の割合が増えたような・・・・・いや、前作の記憶はおぼろげなので 間違った印象かもしれませんが。 なんだか、普通の男の子たちの話になってしまったような。 なのに、登場してくる同級生たちは、 ゲイだったり、ガンだったり、エロブログの更新者だったり、 なんだか極端なキャラクターの人が大集合してて、 さすがにリアリティが感じにくかったです。 月島って、どんな町なのよ???的な。 あくまで、直木賞受賞作の続編として楽しむためののであり、 単独の作品としては、しんどいかなぁというのが正直な感想です。
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『シューカツ!』
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- 2018/06/15(Fri) -
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石田衣良 『シューカツ!』(文春文庫)、読了。
大学生の就職活動を描いた作品。 主人公は高田馬場の鷲田大学に通う女子大生。 もろ早稲田ですね。 そして、彼女が仲間たちと狙うのは、マスコミへの就職。 もろ、早稲田ですね。 シューカツのノウハウもふんだんに盛り込んで、 ある種、ハウツーもの小説の王道のような展開でした。 マスコミ就職を目指す仲間7人でチームを作り、 試験の半年前からエントリーシート作成だのグループワーク訓練だのに 磨きをかけていきます。 このあたりの雰囲気も、非常に早稲田っぽい。 こういう実践的行動を、笑いながらも一生懸命やれてしまうところが 早稲田学生の強さかなという気がします。 肝心の面接や筆記試験については、 自分が就職活動をしていたころの記憶がリアルに蘇ってきました。 まだ、「シューカツ」なんで言葉はなかった時代ですが(苦笑)、 テレビ局の試験は私も受けました。 在京キー局はすぐにダメでしたが、在阪局は最終面接の1個前まで進みました。 それを思うと、この本に登場してくるチームメンバーは みんな最初から数社しか受けない予定を組んでいて、 「えぅ、それだけしか受けないの!?」と驚いてしまいました。 私の周囲の「どうしてもテレビ局に行きたい!」という友人たちは、 東京、大阪、名古屋あたりまで受けに行ってましたし、 電博などの広告系も、制作会社も軒並み受けていた気がします。 最初から数社に絞ってるなんて、ちょっとリアリティないんじゃない?と思う一方、 早稲田のマスコミ志望の人っていうのは、ここまで絞り込むものなのかも・・・・とも 思えてしまい、何が本当の姿なのかわからなくなってきました。 ま、今となってはどうでもよいことなんですけどね。 シューカツ本としては何だかイマイチな気がしましたが、 主人公の女子大生の成長譚として読むなら面白かったです。 面接などの試験を通して、自分を見つめ直し、反省し、次に活かす、 失敗を引きずらない心のタフさは、見習わないとと思いました。 個人的に一番印象に残ったのは、 面接のシーンでも仲間たちと対策を講じるシーンでもなく、 ファミレスでのアルバイトのシーン。 問題児アルバイトが起こした顧客トラブルに際して、 パート従業員が見せた機転や、店長のフォローなど、勉強になるところが多かったです。 この女子大生を主人公にして、ファミレスのアルバイトを舞台にした方が 実は人生に役に立つお仕事小説ができたかも・・・・という気がします。
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『下北サンデーズ』
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- 2017/09/25(Mon) -
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石田衣良 『下北サンデーズ』(幻冬舎文庫)、読了。
下北沢の弱小劇団に、新人が入って あれよあれよという間に成功していく。 そんな中で起きる人間関係の衝突を描きます。 どうやら、ドラマの原作本のようですが、 演劇集団としての成功ステップの駆け上がり方が順調すぎて、 ちょっとリアリティに欠けるような印象を受けました。 まぁ、私は演劇界には馴染みがないので、 勢いをつかんだ劇団の快進撃というのは、こういうものなのかもしれませんが。 劇団内部のゴタゴタは、 ショウビズ界の付き合いに溺れる座長、TVからのオファー、内部恋愛、 グラビアアイドル化、そして劇団の変質に反対する保守派、 まぁ、非常にオーソドックスな問題の立て方です。 劇団員1人1人に問題が降りかかりますが、 それを一気にフッ飛ばしたのが、保守派団員による決死の抗議。 うーん、それで大団円といけるものでしょうか? 私には、熱い心を汲み取る力が足りないのかなぁ。 最後の最後に起きたアクシデントでも 劇団員たち、そして主人公の女の子が選んだ決断には、 「甘くない?」と思ってしまいました。 物語としてはモヤモヤした感じが残ってしまいましたが、 劇団の出世作「セックス・オン・サンデー」は、劇を見てみたいと思いました。
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『約束』
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- 2017/07/14(Fri) -
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石田衣良 『約束』(角川文庫)、読了。
短編集。 優しいお話が詰まってます。 ちょっと優し過ぎかな。 最後にどんでん返しがあるのかなと思いきや、 意外とすんなり穏やかに終わっていく話が多いので、 ちょっと拍子抜け。 でも、人間の優しさを実感できる本なのかな。 個人的には、「天国のベル」という、 子どもの難聴障害を扱った作品が印象に残りました。 家族にのしかかる重たい問題に対して、息子が取った解決策。 リアリティがないと言ってしまえばそれまでかもしれませんが、 しかし、彼の目の前に開けていた世界は、これしかなかったんだろうなという 納得感がずしーんとありました。 この短編集を通して、 人間、とんでもなく苦しい状況に追いやられることがあっても、 家族や友人や周囲の人に助けられて前を向ける瞬間があるんだなということが じんわりと伝わってきました。
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『ブルータワー』
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- 2011/11/04(Fri) -
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石田衣良 『ブルータワー』(徳間文庫)、読了。
この作家さんの作品は、青春モノにとどめておいたほうが良さそうです(苦笑)。 買ってきたときも、「SFかぁ・・・・どうしようかなぁ・・・・」と迷いながら買ったのですが、 やっぱり、私には合いませんでした。 脳腫瘍を患った主人公が、その痛みを強く感じると、200年後の世界にタイムスリップ。 しかし、200年後の世界とは、ウィルスが蔓延した殺伐とした階級社会だった・・・・。 なんだか、展開していく物語に、現実感が全く無いんですよね。 SFだからといって、リアリティが無ければ、のめりこめません。 本の中のテレビで、アニメが繰り広げられているのを、遠くから眺めているような印象でした。 遠い世界での下らない争い・・・・・。 主人公が、タイムスリップした世界を受け入れるのも早過ぎるなら、 主人公を慕う女の子や、細菌学者も、主人公の荒唐無稽な話をすぐに信じ過ぎ。 あちらの世界では、一見、政治的な駆け引きがされているかのような感じですが、 読んでいけば、非常に子供っぽい戦争ごっこのような程度と感じずにいられません。 名前に忌み字を使う理屈は、まぁ受け入れるにしても、 中国人名「ハオロン」に、日本語の音で「刃汚論」とつけるのは、 浅はか過ぎでしょう・・・・・。 と、まぁ、大きなことから小さなことまで、 いろいろ難癖をつけたくなってしまった作品でした。 トホホ。
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