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『40 翼ふたたび』
- 2023/09/25(Mon) -
石田衣良 『40 翼ふたたび』(講談社文庫)、読了。

40歳になり広告代理店を辞め、先に独立していた先輩の会社に入りますが、
そこで水が合わずに半年で退職、そのまま個人事業主として
「なんでもプロデュースします」というよく分からない事業を始めた主人公。

この現状からすると、なんで広告代理店を辞めちゃったんだろう?と思ってしまう展開ですが、
しかし、もし転職して新しい自分で挑戦しようと思ったら、40歳というのはギリギリの
年齢かと思います。40歳過ぎたら独立は、余程の専門知識か人脈がないと厳しそう・・・・。

私自身、35歳過ぎで脱サラして、地元に戻って会社を立ち上げたのですが、
怖いものなしで新しいことに挑戦できる勇気と、ある程度、会社で経験積んできたという自信とが
良いバランスで組み合わさっているのは30代後半かなと。

当時、転職とかは全然考えていなかったのですが、ちょうど中小企業診断士の資格が取れて、
また会社から半年間の外部研修に出してもらって、半分が会社派遣、半分が個人参加の研修で、
自立心が強い人たちと知り合ったことで、自分の自立心も刺激を受け、
そこに、地元での自分の経験にピンポイントな働き口があったので手を挙げたら通ったという
なんだか運の巡り合わせで選択した独立でした。

5年遅かったら、会社で昇進して部下も増えてた可能性があるので抜けにくいですし、
新しい土地で新しいことを始めるエネルギーも出てこなかった気がします。

本作では、主人公が40歳で経験した1年間を振り返って、
「自分の価値、それもはっきり値段のつく市場価値がわからなこと」に悩んだと述べており、大納得。

例えば、私の仕事は、自分の会社の仕事と、副業的にやっている経営コンサルタントの仕事において
「この仕事を期間○○日、金額○○円でやってくれませんか?」と相手から条件を出されたら
その時の仕事の詰まり具合とか、その仕事で得られそうな人脈とか経験とかを踏まえて
余程内容の乏しいものでなければ受けるのですが、反対に「この仕事、いくらでやってくれますか?」
という問合せって、返答に困るんですよね・・・・特に補助金の書類作成みたいな事務仕事は。
価格競争になって安さだけで仕事を取ってる人も居ますし、正直、書類作成って仕事としては
やってて面白味がないんですよね・・・・。もっと広い事業全体の経営相談という仕事の中で
ツールとして補助金を使用しましょうと提案して書類作成を手伝うのは楽しいんですけどね。

というわけで、40歳という年代の、人生の曲がり角に悩む人たちが
主人公に持ち込んだ相談を解決していくという連作短編集の構成は興味深かったです。
それぞれの登場人物たちの悩みどころも共感できましたし、悩んでいる当事者は
周囲への配慮とかが平均よりも丁寧な優しい人が多いように思えたので。

しかし、完全に物語にのめり込めなかったのは、周囲の登場人物に、時々「???」という
対応をする人がいたから。
例えば、「翼ふたたび」。高校生の時に突然引きこもりとなり、23年間部屋から出てこなかった男。
相談にきた両親は、「引きこもりの原因が思い当たらない」と言いますが、
主人公が引きこもり男と接して引き出した原因は、聞いてみたら、「それ、親が忘れる?!」と
思ってしまうほど、衝撃的な内容でした。
まぁ、そういう親だから子供が苦しんで引きこもりになってしまうのかもしれませんが・・・・。
ちょっと無神経過ぎないか?と思ってしまいました。

なんだか、ちょいちょい残念な人が登場してくるので、そんな不用意な人を登場させる必要
あるのかな?と思えてしまいました。




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『スイングアウト・ブラザーズ』
- 2023/06/24(Sat) -
石田衣良 『スイングアウト・ブラザーズ』(角川文庫)、読了。

大学同級生の男3人組。
33歳になってもいずれも独身、というか彼女に振られて全員フリーに。
そんな3人に「モテ男に変身するためのコースを用意したから受けてみて」と提案したのは
大学の美人の先輩。自身が経営するエステサロンの新事業として男性向けのモテ男コースを
検討しているので、そのお試し要員になってほしいというもの。

お肌のエステから始まり、教養講座、ファッション改革、女性との会話術など
様々なコースに専門講師が登場し、3人に厳しい指導を行います。

この設定どおり、かなりコメディタッチの作品で、主人公たち3人も、
オタクのゲームプログラマー、デブの飲料メーカー営業マン、ガリで薄毛の銀行員と、
かなりカリカチュアライズされた「典型的なモテない男」たちです。

軽いノリで進んでいきますが、専門講師たちが指摘する「なぜキミはモテないのか」という
本質をズバッと斬る言葉は、なるほどー!と思えるものもあり、
女ながらに、女性はそういう風に見てるのか・・・・・と勉強になりました(苦笑)。

この3人組は、モテないという設定ではあるものの、
先輩から「これをしなさい」とミッションを与えられると、最初はモジモジしてても
最後は「えいや!」できちんと行動に移して、しかも何とか成果を得ようと知恵を巡らすので
意外と行動力があります。これって、モテる男の一要素な気がします。
本当にモテない男は、イジイジ、グズグズと、言い訳ばかりで動かないですからね。

主人公のオタクくんは、冷静に周りが見えているし、「じゃあ俺からやるよ」と
先頭を切って行動する思い切りの良さもあり、正直、彼はもともとモテ男系列の人じゃないかなと
思いながら読んでました。
自分勝手なところもないし、普通に女性とうまく付き合っていけそうな感じです。

それを思うと、そこまで無理ゲーをやっているわけでもなく、
まぁ、この主人公に引っ張ってもらったら、友人2人も何とかなりそうだなぁという感じ。

それって、著者の石田衣良氏が、いわゆる新人類世代なので、
人間の本質が前向きというか、楽観的なものだと捉えているのじゃないかなと思えてきました。
例えば、ロスジェネ世代の非モテ男性って、もっとこじれて拗ねてるような気がします。
暗い人はとことん暗い。

その後の世代は、再び明るくなってきてると思うので、
ロスジェネ世代ってやっぱり悲惨だよなー、と本筋と関係のない感想で終わってしまいました。




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『LAST』
- 2022/04/05(Tue) -
石田衣良 『LAST』(講談社文庫)、読了。

どうにもこうにも立ち行かない状態に追い詰められた主人公の“LAST”を描いた
短編集です。

日常世界で追い詰められるとなると、まぁ普通は、
ギャンブル、リストラ、借金、風俗、犯罪という根底では繋がっている一連のダークな世界に
身を落としてしまった人に降りかかる事態が想像されますが、
本作は、まさにそういう人々のお話。

冒頭の「ラストライド」。
製本工場を営む主人公は事業が傾き、借金取りに追われ、
娘にすら家の経済状態に気を使わせてしまう始末。
そんなある日の夜に闇金の事務所に呼び出され、生命保険で返せと迫られる・・・・・。
妻も娘も、見捨てるんじゃなく健気に生活を維持しようと頑張ってくれる、その姿が父親には
やっぱり辛いし、絶対に守らないといけないという気持ちになるんでしょうね。

こういう、正気を保たせてくれる家族の存在がない孤独な人は、
借金に苦しむと、ホームレスの道を選んだり、犯罪で稼ぐという方向に流れて行ってしまうのかなと
一連の話を読みながら感じていました。

家族とか、仲間とかって、やっぱり大事なんだなぁと。
まともで居られるように引き戻してくれる存在なんだろうなと。

ホームレスになったり、風俗嬢になったり、犯罪一味に加わったりという話も、
そういう風に追い詰められていく描写は重く苦しいところがありましたが、
ただ、最後に救いがあるような描き方になっていた話が多かったのが良かったです。
その“LAST”の状態から、気持ちの面で抜け出せるチャンスがあるような見せ方です。

ベトナムの話は残酷でしたけどね。
あと、「ラストコール」は、私はうまく話が読めませんでした。
Amazonでは評価する声が目立ってましたが、結末が把ちゃんと理解できなかった感じです。

最後の「ラストバトル」が、一番印象に残りました。
新卒で入社した会社の通勤経路で、新橋駅での乗り換えがあったので、
よく同僚と新橋周辺で飲んでました。
当然、消費者金融の看板を持ったオジサンたちの存在は知ってましたが、
それ以上に興味をもって考えたことがありませんでした。
本作で、どういう人がどういう働き方をしてあの仕事をしているのかを初めて知り、
あー、そういうカラクリで成り立ってる仕事なのか・・・・・と今更理解しました。
そう、普通のサラリーマンにとっては、目の前に居ても意識の外にいる人たちなんですよね。
そう思うと、世間って、冷たいですよね。私も冷たい。




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『赤・黒 池袋ウエストゲートパーク外伝』
- 2022/01/31(Mon) -
石田衣良 『赤・黒 池袋ウエストゲートパーク外伝』(文春文庫)、読了。

IWGPのスピンオフ作品のようですが、IWGPは小説を読んだこともドラマを見たこともないので
完全に独立した作品として読みました。

池袋のカジノの売上を、店長と組んで狂言強盗したものの
仲間の1人が裏切って全額奪われた上に、リーダーの男が銃殺されるという
とんでもない展開で、奈落の底に落とされたカジノで借金まみれの主人公。
カジノを経営しているヤクザの組事務所に連行され、
とっさの交渉で、奪われた金を取り返してみせると豪語し、
ヤクザの若集1人と毎日行動を共にすることに・・・・・・。

最初は、主人公の楽観的なモノの見方や、行き当たりばったりな交渉術から、
「こんなに軽いから借金まみれになるんだよー」と批判的な感覚でした。
一方で、この主人公の世話役となった氷高組のサルという男は、
若いのに状況が先まで読めており、スマートに対処していくので、
このサルを軸に、経済ヤクザと池袋という物語を読んでいきました。

わたくし、一時期、池袋に勤務先があったので、毎日通っていたのですが、
正直、あの町の雰囲気には最後まで馴染めなかったです(苦笑)。
たぶん、真っ当なお店と風俗店が混在しているカオスな街並みが、
私のような田舎者には怖かったんだと思います。
新宿とかなら、「この道からあっちには行っちゃいけないよ」というラインが素人にも分かりやすいですが
池袋には、そのラインが滲んで消えちゃってる印象です。

そんなカオスな池袋で、地道に裏切り者を探していきますが、
ほとんど手探り状態の捜索劇から、発見に至る展開が唐突過ぎて、
ちょっと都合よすぎない?というか、裏切り者なのに脇甘すぎない?という(爆)。

この裏切り者発見のあたりから、急に主人公が真っ当になりまして、
この事件を契機に何人も死んだのに、裏切り者を陰で操っている黒幕に対して
何も制裁行動を起こさないのか!と氷高組に食って掛かります。
ヤクザ相手に本音をぶつけていて、主人公への見る目が変わりました。

黒幕組織への制裁として、主人公は、暴力ではなく経済制裁という手段を選び、
カジノを舞台に大博打を企みます。
伝説の博打打ちまで登場してきて、劇画的な展開になりますが、
そこは池袋という特異な街の雰囲気を重ね合わせると、
なんだか変な現実味もあって、後半はぐいぐい読ませてくれました。

結果的に、サルにも主人公にも共感できましたし、
氷高組の組長のバランス感覚も面白かったですし、
こりゃIWGPも読んでいかないといけないかしら。




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『5年3組リョウタ組』
- 2021/10/16(Sat) -
石田衣良 『5年3組リョウタ組』(角川文庫)、読了。

まだ25歳の新人教師。
はじめて高学年の5年生を受け持ったリョウタ先生が
自分の担任クラスの生徒たちと一緒に成長していく1年間の物語。

地方の県庁所在地の「第一小学校」という老舗公立小学校が舞台。
こういう学校って、親子3代卒業生・・・・みたいな面倒なしがらみがあるので先生も大変ですよね・・・・・
私の卒業した高校もそんな感じで地元でしか通用しないエリート臭が鬱陶しいです。

なので、設定をシビアに活かすなら、がんじがらめの教員生活という描き方もできたと思うのですが、
本作は、かなりアットホームな感じで物語が進んでいきます。
子供たちがギスギスしてないんですよねー。
この学校の卒業生の7割が中学受験をするという設定なのに、塾通いの描写も控えめだし、
スクールカースト的な今風の教室内の様子もなく、健やかな子供たちです。

最初は、そののんきな描写に物足りなさを感じてしまいました。
こんな都合よく解決することはないだろー的な。

ただ、地方都市でエリート意識ガチガチに凝り固また父親による家庭での強権的な教育姿勢に悩む子供に対し
最後、この新人担任は「父親は簡単には変われない。それが分かっている子供の自分が優しくしてあげよう」と
子供に対して優しく説きます。
これって、結構踏み込んだ発言だなーと思いました。
お前の父親はもうダメだからお前が強くなれという判断はすごくシビアです。

この結末を見て、リョウタ先生への私の見る目が変わりました。
結末にたどり着くまでのリョウタ先生は頼りないし、逃げ腰だし、投げやりなところが感じられるのに、
最後、腹をくくるとリアリストとしての判断をして、それを子供や周囲にも求めることができるんですよねー。
この強さって何なんだろうと思いながら読み進めました。

同じ5年生を担当する同僚教師たちも、
結果最優先の学年主任、やる気のない中年女性教師という面倒な人もいますが、
同世代の優秀な教師と年上の美人教師とのトリオで問題解決にあたるチームワークの良さもあり、
最初は、彼らの行動にはなにか裏があるのかな?と疑ってしまいましたが
ちゃんと子供たちのことを考えている優しい教師でした。
私がいかに歪んだ学校観を持っているのか意識されて、恥ずかしい(苦笑)。

取り扱っている課題は、モーレツ教育パパに抑圧された子供、
上司からのいじめに遭って不登校になった教師、自宅に放火した兄弟、
クラス間の成績競争にのめりこみ成績下位のクラスメイトを責め立てる子供たち、
どれも扱いようによっては深刻な学校での問題だと思いますが、
リョウタ先生の奮闘で作品内ではうまく話が解決していきます。

それに対して、こんな都合よくはいかないよーと反感を覚える自分と、
小説の中でぐらいは理想の展開で安心したいな思う自分が居て、
どっちを選べるところまではいかなかったのですが、
リョウタ先生の人柄が子供たちに信頼されているというところは、真実だろうなと思いました。
こういう自分に素直でまっすぐな先生は、今の世の中で貴重な存在だと思います。




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『6TEEN』
- 2018/06/25(Mon) -
石田衣良 『6TEEN』(新潮文庫)、読了。

『4TEEN』の続編ということで、期待値が高すぎたのか
何だかイマイチな読後感でした。

『4TEEN』に登場した14歳たちの2年後、だから『6TEEN』。
『4TEEN』は、「面白かった!」という感想と、
中学生による尊属殺人疑惑とか難しい問題を絡めながらも中学生の青春を軸に
描いていたな~という記憶があるぐらいで、あまり物語の中身までは覚えていませんでした。

なので、久々に本作で月島の男の子たちの姿を読んだときに、
「あれ?こんな物語だったっけ?」と、ちょっと軽さを覚えてしまいました。

家庭の話がほとんど出てこなくなり、
その分、女の子の話の割合が増えたような・・・・・いや、前作の記憶はおぼろげなので
間違った印象かもしれませんが。
なんだか、普通の男の子たちの話になってしまったような。

なのに、登場してくる同級生たちは、
ゲイだったり、ガンだったり、エロブログの更新者だったり、
なんだか極端なキャラクターの人が大集合してて、
さすがにリアリティが感じにくかったです。
月島って、どんな町なのよ???的な。

あくまで、直木賞受賞作の続編として楽しむためののであり、
単独の作品としては、しんどいかなぁというのが正直な感想です。


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『シューカツ!』
- 2018/06/15(Fri) -
石田衣良 『シューカツ!』(文春文庫)、読了。

大学生の就職活動を描いた作品。
主人公は高田馬場の鷲田大学に通う女子大生。
もろ早稲田ですね。

そして、彼女が仲間たちと狙うのは、マスコミへの就職。
もろ、早稲田ですね。

シューカツのノウハウもふんだんに盛り込んで、
ある種、ハウツーもの小説の王道のような展開でした。

マスコミ就職を目指す仲間7人でチームを作り、
試験の半年前からエントリーシート作成だのグループワーク訓練だのに
磨きをかけていきます。
このあたりの雰囲気も、非常に早稲田っぽい。
こういう実践的行動を、笑いながらも一生懸命やれてしまうところが
早稲田学生の強さかなという気がします。

肝心の面接や筆記試験については、
自分が就職活動をしていたころの記憶がリアルに蘇ってきました。
まだ、「シューカツ」なんで言葉はなかった時代ですが(苦笑)、
テレビ局の試験は私も受けました。
在京キー局はすぐにダメでしたが、在阪局は最終面接の1個前まで進みました。

それを思うと、この本に登場してくるチームメンバーは
みんな最初から数社しか受けない予定を組んでいて、
「えぅ、それだけしか受けないの!?」と驚いてしまいました。
私の周囲の「どうしてもテレビ局に行きたい!」という友人たちは、
東京、大阪、名古屋あたりまで受けに行ってましたし、
電博などの広告系も、制作会社も軒並み受けていた気がします。

最初から数社に絞ってるなんて、ちょっとリアリティないんじゃない?と思う一方、
早稲田のマスコミ志望の人っていうのは、ここまで絞り込むものなのかも・・・・とも
思えてしまい、何が本当の姿なのかわからなくなってきました。
ま、今となってはどうでもよいことなんですけどね。

シューカツ本としては何だかイマイチな気がしましたが、
主人公の女子大生の成長譚として読むなら面白かったです。
面接などの試験を通して、自分を見つめ直し、反省し、次に活かす、
失敗を引きずらない心のタフさは、見習わないとと思いました。

個人的に一番印象に残ったのは、
面接のシーンでも仲間たちと対策を講じるシーンでもなく、
ファミレスでのアルバイトのシーン。
問題児アルバイトが起こした顧客トラブルに際して、
パート従業員が見せた機転や、店長のフォローなど、勉強になるところが多かったです。

この女子大生を主人公にして、ファミレスのアルバイトを舞台にした方が
実は人生に役に立つお仕事小説ができたかも・・・・という気がします。


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『下北サンデーズ』
- 2017/09/25(Mon) -
石田衣良 『下北サンデーズ』(幻冬舎文庫)、読了。

下北沢の弱小劇団に、新人が入って
あれよあれよという間に成功していく。
そんな中で起きる人間関係の衝突を描きます。

どうやら、ドラマの原作本のようですが、
演劇集団としての成功ステップの駆け上がり方が順調すぎて、
ちょっとリアリティに欠けるような印象を受けました。

まぁ、私は演劇界には馴染みがないので、
勢いをつかんだ劇団の快進撃というのは、こういうものなのかもしれませんが。

劇団内部のゴタゴタは、
ショウビズ界の付き合いに溺れる座長、TVからのオファー、内部恋愛、
グラビアアイドル化、そして劇団の変質に反対する保守派、
まぁ、非常にオーソドックスな問題の立て方です。

劇団員1人1人に問題が降りかかりますが、
それを一気にフッ飛ばしたのが、保守派団員による決死の抗議。
うーん、それで大団円といけるものでしょうか?
私には、熱い心を汲み取る力が足りないのかなぁ。

最後の最後に起きたアクシデントでも
劇団員たち、そして主人公の女の子が選んだ決断には、
「甘くない?」と思ってしまいました。

物語としてはモヤモヤした感じが残ってしまいましたが、
劇団の出世作「セックス・オン・サンデー」は、劇を見てみたいと思いました。


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『約束』
- 2017/07/14(Fri) -
石田衣良 『約束』(角川文庫)、読了。

短編集。
優しいお話が詰まってます。

ちょっと優し過ぎかな。
最後にどんでん返しがあるのかなと思いきや、
意外とすんなり穏やかに終わっていく話が多いので、
ちょっと拍子抜け。
でも、人間の優しさを実感できる本なのかな。

個人的には、「天国のベル」という、
子どもの難聴障害を扱った作品が印象に残りました。
家族にのしかかる重たい問題に対して、息子が取った解決策。
リアリティがないと言ってしまえばそれまでかもしれませんが、
しかし、彼の目の前に開けていた世界は、これしかなかったんだろうなという
納得感がずしーんとありました。

この短編集を通して、
人間、とんでもなく苦しい状況に追いやられることがあっても、
家族や友人や周囲の人に助けられて前を向ける瞬間があるんだなということが
じんわりと伝わってきました。


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『ブルータワー』
- 2011/11/04(Fri) -
石田衣良 『ブルータワー』(徳間文庫)、読了。

この作家さんの作品は、青春モノにとどめておいたほうが良さそうです(苦笑)。
買ってきたときも、「SFかぁ・・・・どうしようかなぁ・・・・」と迷いながら買ったのですが、
やっぱり、私には合いませんでした。

脳腫瘍を患った主人公が、その痛みを強く感じると、200年後の世界にタイムスリップ。
しかし、200年後の世界とは、ウィルスが蔓延した殺伐とした階級社会だった・・・・。

なんだか、展開していく物語に、現実感が全く無いんですよね。
SFだからといって、リアリティが無ければ、のめりこめません。
本の中のテレビで、アニメが繰り広げられているのを、遠くから眺めているような印象でした。
遠い世界での下らない争い・・・・・。

主人公が、タイムスリップした世界を受け入れるのも早過ぎるなら、
主人公を慕う女の子や、細菌学者も、主人公の荒唐無稽な話をすぐに信じ過ぎ。

あちらの世界では、一見、政治的な駆け引きがされているかのような感じですが、
読んでいけば、非常に子供っぽい戦争ごっこのような程度と感じずにいられません。

名前に忌み字を使う理屈は、まぁ受け入れるにしても、
中国人名「ハオロン」に、日本語の音で「刃汚論」とつけるのは、
浅はか過ぎでしょう・・・・・。

と、まぁ、大きなことから小さなことまで、
いろいろ難癖をつけたくなってしまった作品でした。

トホホ。


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