『ショートショートの花束5』
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- 2016/03/04(Fri) -
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阿刀田高 『ショートショートの花束5』(講談社文庫)、読了。
『小説現代』誌上で行われている、ショートショートのコンテストの入賞作品をまとめたもの。 選者が、阿刀田高氏です。 面白い発想や着眼点の作品が多かったのですが、 しかし、アイデアだけでは、小説として読んで面白いとは限らないということを再認識しました。 やはり、読ませる文章力、読み手の想像力を掻き立てる文章運びというものが 小説としては大事なのだなと。 例えば、主人公が男性なのか女性なのか、途中まで誤解していた作品というものが結構ありました。 中には意図的に紛らわしく書いているものもあったのかもしれませんが、 大半は、性別はオチとは関係のないものであり、性別を誤解してしまうというのは、 リーダー・フレンドリーではない文章ということなのだろうと思います。 「あれ?この人、男性じゃなかったんだ!?」と戸惑っている間に、 ショートショートなので、オチが来てしまい、話が終わってしまいます。 これでは、せっかくのアイデアに意識が十分に届かないままです。 これを思うと、すらすらと読ませる阿刀田作品は、やはり文章力があり、 また、エヌ氏、エス氏により主人公の個性を極力排除した星新一の工夫は、 意味のあることなんだなとよく分かりました。
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『殺し文句の研究』
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- 2015/07/23(Thu) -
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阿刀田高 『殺し文句の研究』(新潮文庫)、読了。
久々に阿刀田作品をば。 短編集だと思って読み始めたら、エッセイ集だったという罠(爆)。 でも、センセイの半生だったり、創作の方法だったりを読めて、 結構面白かったです。 後半は、著者が文筆業となるきっかけとなった「殺し文句の研究」を 改めて行ってみたもの。 ウィットに飛んだ文章が短い中にまとまっていて、小気味よいです。 阿刀田エッセイの真髄ですね。
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『こんな話を聞いた』
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- 2011/12/25(Sun) -
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阿刀田高 『こんな話を聞いた』(新潮文庫)、読了。
「こんな話を聞いた・・・・」で始まる18編。 いずれも、「こんな話」という小話が冒頭にあり、 そのモチーフを生かした現実世界での話が語られます。 それは、落語のまくらのように、読むものを物語の世界へと導いてくれます。 阿刀田作品らしく、最後に冷んやりとした一行を投げ込んでくるものや、 意外とほのぼのとした終わり方をするものまで、 バラエティにとんだ短編集となっています。 冒頭の小話が「そうつながるのか!」と驚かしてくれるものもあれば、 「こういうオチになるんだろうな・・・」と読めてしまうものは、 みなまで言い切らない形でうまくフェードアウトさせます。 そのテクニックもお見事。 いろいろ詰まった一冊になっています。
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『影絵の町』
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- 2011/10/27(Thu) -
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阿刀田高 『影絵の町』(角川文庫)、読了。
お手軽短編小説を・・・ということで、阿刀田作品です。 「影絵の町」と「銀座スクランブル」という大きく2つのテーマの下で、 短編がつづられていきます。 あまりパンチの効いた作品はなく、 むしろ、ゆるやかな気分で読めるお上品な掌編といったところでしょうか。 「影絵の町」では、日本各地の地方都市が舞台になっており、 ちょっとした小旅行気分が味わえます。 そんな中、気になってしまったのは、「観光地をタクシーを使って回る」という行為。 私は、こういう旅行の仕方をしたことが無いのですが、 結構一般的なものなのでしょうか? それとも、例えば、一定の年齢以上の方に特徴的なものとか?! どの人物も、みんなタクシーで巡っているので、 旅行者ってそんなものなの??と疑問に思ってしまいました。 地方のバスに乗るとか、電車に乗るとか、とにかく歩くとか、 そういう楽しみ方を選ぶ人も多いと思うんだけどなぁ。
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『朱い旅』
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- 2011/05/20(Fri) -
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阿刀田高 『朱い旅』(幻冬舎文庫)、読了。
結構、長い間、積読にしていました。 裏表紙の紹介文に、自分探しの旅のような内容が書いてあり、 内向的で重い作品だといやだなぁ・・・・・と二の足を踏んでいました。 が、読み始めたら、一気読み! メインストーリーは、自分の出自について両親を疑い、 そこに自動車事故や自殺が絡んでくるので、 たしかに重苦しい設定ではあるのですが、 その謎解きをしながら、主人公が各地を旅する様子が織り込まれ、 息苦しさは感じません。 また、妻とのウィットにとんだ会話が気分転換になり、 非常に構成がうまい作品だと思いました。 登場人物たちの配置もお見事。 阿刀田長編の中で、非常にできの良い作品のひとつだと思います。
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『黒い自画像』
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- 2011/05/14(Sat) -
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阿刀田高 『黒い自画像』(角川文庫)、読了。
久々に王道の阿刀田短編集。 これはレベルが高かったです。 主人公が、なんらかの形で自分の過去を振り返る。 しかし、その過去は、夢うつつの不思議な世界。 果たして本当に体験したことなのか・・・。 その真実が、現在起きた出来事によって明かされる。 どの短編も、基本構成はこんな感じでしょうか。 この夢うつつ感と、今の現実感のバランスが良かったです。 また、普段の阿刀田作品では、女性が主人公の場合、 その心情や言葉遣いの描写に古臭さを感じることが多かったのですが、 本作では、若い女性の心情描写も、ものすごく自然に読めました。 最後の数行でケリをつける得意の技術も ますます磨きがかかったように感じました。
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