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『トッカイ』
- 2023/11/09(Thu) -
清武英利 『トッカイ』(講談社文庫)、読了。

著者の本は、先日読んだ山一證券自主廃業の作品がとても面白かったので、
今度は、住専問題を解決するための整理回収機構のお話。

住専問題で、住専が解体されたとき、私はまだ高校生で、
1995年は阪神大震災とかオウム問題とか、衝撃的な問題連発で、
社会全体の感覚が麻痺していたように思います。
あまりに他の問題で多くの人の命が奪われていったので、
正直、子供心に、なんだかんだ言っても住専問題はカネで解決できるんでしょ?と
思ってしまっていた感があります。
その裏側には、経済的な苦境で自ら命を閉じた人も相応いたんだろうと
大人になったら想像できるようになりましたが。

で、本作ですが、住専問題の本質を追究するような感じではなく、
どちらかというと、回収処理に当たった人たちの努力の部分にスポットを当ててます。
登場人物が、元住専勤務だったり銀行から出向してきている回収部隊の何人かで
この人という軸となる主人公が設定されていなかったので、
そこは読み難かったというか、感情移入しにくかったです。

取り立て対象となる不動産会社社長たちも複数人登場してきて、
それぞれキャラの立ったアクの強い人たちで、悪役には最適なのでしょうけれど、
やっぱり、話があちこちに飛んでいくので、読み難かったです。

このトッカイと呼ばれる特別回収部隊は、
もともと住専側に居て、問題のある融資を行っていた職員たちを
今度は取り立て役として雇い入れ、自ら起こした不正事件を自らの手でケリを付けさせるという
なかなか壮絶な仕組みになっており、一部の職員は自分の意思で採用試験を受けて入っていますが
多くは住専側から「明日あのビルへ行け」と言われ、そのまま回収機構に取り込まれたようです。
日本政府もよくまぁ、こんな強引な国策会社を作ったなぁと、ある種感心してしまいました。
それぐらい、大ナタを振るう対処をしなければ、乗り越えられなかった大問題だったんでしょうけれど。

こんな風に強引に回収作業を担当させられた当のスタッフたちは、
どんな気持ちで仕事に当たっていたのかなと、読みながら追いかけてしまいました。
自分が行った問題融資を反省し、その禊のような気持だったのか、
それとも自分たちを問題融資に駆り立てた住専経営陣への怒りの気持ちなのか
それとも転職先がなくて仕方なくこの仕事を続けたのか・・・・・。

終盤で、当のスタッフの中心人物が「正義感」と言っており、
そこは、なんだか私の感覚とはズレていたので、うーん、と思ってしまいました。
ちょっと他人事っぽいなと。
山一証券のように職員たちの知らないところで一部の経営幹部が行っていた問題事件ではなく、
住専は、職員一人一人が無理な融資と分かっててやってたんですから。

こういうちょっとした心情面も含めて、山一證券の本ほどにはハマれませんでした。




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『しんがり 山一證券 最後の12人』
- 2023/07/22(Sat) -
清武英利 『しんがり 山一證券 最後の12人』(講談社+α文庫)、読了。

実家のそばに山一證券の支店がありました。
証券会社の仕事は全く分かってませんでしたが、子供心に、優秀な人が行く会社だと思ってました。
それが、社長による「社員は悪くありませんから!」の号泣会見を見ることになり、
日本経済の一角を支える企業のトップが、感情的に言葉を投げかけ涙を流しながら懇願する様子に、
「日本はなんだかとんでもないことになってしまってるんだ・・・・・」と、バブル崩壊後の社会の混乱を
印象付けたものになりました。

その後、実家のそばの支店は閉店となり、会社も清算されたため
特に山一證券の存在が頭に上ることはなかったのですが、
今回、ブックオフでたまたま本作を見かけて、「あれはいったい何だったんだろう?」と
興味が湧いてきました。
前に読んだオリンパスの粉飾決算事件の本が面白かったという記憶もあったので。

主人公は、事件の社内調査委員会の責任者を務め、調査報告書をまとめた嘉本常務。
事件発覚の数か月前に業務管理部長に異動してきた人物で、
異動してきていきなり、証券取引等監視委員会の立ち入り検査を受けます。

このシーンの描写で驚いたのは、まだ前職の引継ぎが終わていなかった嘉本常務は、
検査への対応を部下に任せ、自身は近畿・大阪本部の引継ぎを優先します。
この判断一つで、私は「あぁ、潰れる会社ってやっぱり非常事態に臨んでも危機感ないんだな」と
納得してしまいました。

私自身、金融機関に勤めていたので、時々、金融庁検査というものに巻き込まれましたが、
もう、そのときは、何をおいても金融庁対応が最優先という感じでした。
まぁ私が入社したときには、すでに山一證券をはじめ金融機関各社が経営破綻しており、
そこには大蔵省や財務省、金融庁の「ここは潰すべき」という判断のもとで潰されてきたという
経緯があるので、その歴史を踏まえて金融機関は、監督官庁の検査対応は最優先という意識が
一段と強まった時代だったせいもあるかと思います。

それにしても、嘉本常務も業務管理部の部下の面々も、初動が遅いし、気持ちも緩んでるよなーと
感じてしまう事件の発端の描写でした。
この後、経営陣から現場社員まで、証券取引等監視委員会の取り調べを受けていくのですが、
もう明らかに非常事態なのに、経営陣が「隠せる」「騙しとおせる」と考えている様子に、
なんでここまで判断力が鈍ってしまうのか、逆にその経緯が気になってきました。
もともとの社風なのか、バブル期を謳歌した証券マンの世代の勘違いなのか、
それとも当時の経営者個人の資質の問題なのか。

総会屋への利益供与事件の調査が発端でしたが、簿外債務の存在まで発覚し、
その規模が数千億円と分かった時点で、さすがに主人公も「これでは会社が潰れる!」との危機感で
業務管理部の権限をもって社内調査を開始します。

面談形式で経営陣一人一人に当たっていくのですが、
著者による経営陣個々人のバックグラウンド解説が入り、理解しやすかったです。
「こういう業務畑を歩いてきた、この成果で取り立てられた、取り立てた上司はこの人」というような、
何が得意で誰に弱いかという解説です。

結局、会社は人の集まりでできていて、個々人の得意不得意、そして1人1人の人間関係の
積み上げで動いているんだなということが実感できました。
長年不正をしてきたので、社会的な評価は「悪事」ですが、このスキームを考え出した当初や
運用している最中は、「なんて素晴らしいスキームを造り上げたんだ!」と、社内関係者の中では
「成功事例」として捉えられてたんだろうなと推察できます。

オリンパス事件では、誰もが思いつけるわけではない特殊なスキームを構築した点で
「こりゃ凄い事件だわ」と、ある種の感動がありましたが、
山一証券事件は、どちらかというと、証券マンなら思いつくけど、その一線は越えてはいけないと
自制心が働くであろう不正スキームを、みんなで渡れば怖くない的な経営陣の集団心理で
突破しちゃったのかなぁ・・・・と感じました。頭が良いというよりは、やっぱりリスク管理が鈍感な印象です。

私自身の記憶にも鮮明に残っている社長号泣会見については、
事前に組合に事情説明をしたときに、組合側の若手執行委員が投げかけた要望を、
会見の場で社長がしっかりと果たしたということだったようで、
そこだけ切り取ると、社員思いの情のある社長のようで、実際私もそう思ってましたが、
経営者としての決断力のなさや指導力のなさは、この本で冷酷に描かれてます。

しかし、不正自体には全く関与しておらず、不正発覚を受けて社長と会長が世間の批判をそらすため
とりあえず辞任して顧問に引いたので、空席に祀り上げられることになったこの社長は、
可哀想でもありますが、前任の不正社長に「大変な状況だけど社長をやってくれ」と頼まれて
嬉しそうに引き受けてしまうというのは、やっぱりリスク管理能力というか、リスク察知能力が
無さすぎですよね・・・・・。

自主廃業が決まり、もうどうにもあがきようがなくなった業務管理部の面々は、
「こうなったら真相究明だ!」と、自分の次の職探しも後回しにして、
とにかく真相を究明して社員に説明するのが自分たちの使命だと考え、
会社に泊まり込んで調査を開始します。

自主廃業で人生が突然ぶち切られてしまった社員たち、しかも自社株買いを勧められていたため
自己資産を山一證券の株式で保有していた社員は、毎月の収入も貯めてきた資産も全てを
一気に失うという地獄の状況に陥ります。
その姿を見ていた嘉本たちは、真相究明して社員に説明をすることで
少しでも報いなければいけないんだという強い思いで行動を開始し、
この後半の迫力と行動力は凄まじかったです。

実際に、彼らがまとめた社内調査報告書は、その徹底的な調査と客観的な考察で、
その出来栄えはメディアで高く評価されたとのことで、不正を働いた会社であっても
ちゃんと行動した部分はきちんと評価される社会というのは、
そうあるべきだし、しかし、そんな公平さを持続させるのは困難なことだろうなと感じました。
今のメディアには、同じ状況に臨んだときに、そういう公正な評価を下す能力があるだろうかと。

そして、読み終わって、この社内調査報告書を検索してみたら、調査委員会メンバーだった
國廣弁護士のサイトで全文公開がされていて、情報公開が徹底しているなと感じました。
まぁ、これは、山一證券自体が今は存在していないから、ある意味自由に発表できるという
ことの反動なのでしょうけれど。

最後に、著者のことは読み終わるまで全然意識していなくて、
読む前にちらっとプロフィールを見て、「新聞記者上がりのジャーナリストね」ぐらいに思ってたのですが
あとがきに、「読売新聞グループとの間で片手に余る訴訟を抱えていた」と述懐していたので、
「特ダネとかで勤務先とトラブったのかな?」と、改めてプロフィールを見てみたら、
読売巨人軍の「清武の乱」の清武さんじゃないですか!
そりゃ、山一證券の調査委員会の面々にシンパシーを抱く立場の人だわなと、大納得。
熱い内容の作品に仕上がっているのは当然ですね。




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『プロ野球重大事件』
- 2013/10/28(Mon) -
野村克也 『プロ野球重大事件』(角川ONEテーマ21)、読了。

「寝る前にちょっと本読むかぁ~」と思って手に取ったら、
あまりの面白さに一気読み。昨夜寝たのは3時半・・・。

いきなり、読売巨人軍の「清武の乱」の話から始まり、
「つい最近の出来事じゃん!」と引き込まれてしまいました。

清武の乱そのものについては、あんまり深くは書かれていませんでしたが、
球界の盟主への配慮か、それとも、くだらないお家騒動とみて本分の野球の話に戻したか。

過去の出来事については、いろんな裏話も読めて、面白かったです。
何度も読んだ話なのですが、なんだか、文章に引き込まれるんですよねー。
不思議。


プロ野球重大事件    誰も知らない”あの真相” (角川oneテーマ21)プロ野球重大事件 誰も知らない”あの真相” (角川oneテーマ21)
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