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『「普天間」交渉秘録』
- 2023/10/17(Tue) -
守屋武昌 『「普天間」交渉秘録』(新潮文庫)、読了。

ブックオフでたまたま目に留まり、
「お!防衛官僚まで本を出す世の中になってるのか・・・・・」とびっくり。

しかも、米軍普天間基地の移設に関する交渉記録とのことで、
今ようやく移転先の辺野古の工事が進み始めている状況で、
とんでもなく難交渉だったことが分かります。

一方で、著者の名前を聞くと真っ先に思い出すのは「内田洋行」という会社の収賄事件であり、
著者は実刑判決を受けているため、著者の防衛官僚としての功績が記憶に残ってないのと、
正直なところ、「著者の書くままに信じるのは危ないかも」という不信感もありました。

それ以外にも、小池女帝と揉めてた印象もあり、それだと「著者はまともな官僚だったのかな?」とも
逆に思えてくるので(苦笑)、本作を通して著者の評価が見えてくるかも・・・・と期待しての読書でした。

基本的な構成は、著者が在任した4年間の防衛次官の役職において、
毎日つけていた業務日記から書き起こして、どんな問題に対して、誰が、何日何時にどんな手段で
著者に対してメッセージを発信してきたかという記録で、主に普天間基地移設交渉を語っていきます。

内容を単純化して要約すると、「沖縄の県知事と普天間基地がある名護市の市長、そして行政職員は
決めたことを簡単に反故にするし、地元には二枚舌を使い、メディアには嘘をばらまく、
とんでもない奴らだ!」ということです(爆)。
それを、「何月何日何時に沖縄県知事が誰々大臣に文句を言ってきたと当の大臣から電話が来た」とか
「何処どこでの会議で名護市の助役が打ち合わせで不遜な態度で暴言放言をまき散らし収拾つかず」とか
そういう記録で書き起こしていきます。

正直、沖縄の首長や、行政幹部職員、大臣や自民党幹部、総理、沖縄選出議員らの
個人名をすべてオープンにして、「こんなことを言ってきた、とんでもないことと呆れた」みたいな調子で
綴っていくので、退官し、しかも汚職事件で逮捕実刑という立場だから怖いものなしなのか?と
興味深く読みました。しかし、退官後の事情から恨み節がたっぷり詰まっている可能性もあるし、
そもそも沖縄との交渉における沖縄陣営への不信感が溢れ出ているので、
どれだけ内容を信用してよいのか微妙かも・・・・・という思いもありました。

まぁ、ここまで事細かに書いているのだから、虚偽の事項を書くとは思えませんが、
都合の悪いところには触れなかったり、良いように端折ったりしている可能性はありますからね。
そして、難産の交渉になったものについて、交渉当事者の一方的な振り返りなので、
どうしても視点の偏りは生まれてしまうでしょうし。

そういう懸念点を抜きにしても、沖縄陣営のこの交渉の仕方は、残念だなぁと言わざるを得ません。
米軍基地の負担を重点的に担わされているという立場もありますし、
戦後の日本復帰が遅れたことで経済的な発展の立ち遅れもあるでしょうし、
いろいろ理屈をこねて、補償の獲得なり、地元建設土木会社への仕事の引き込みなり、
損してきた分を取り返さなければという思いがあるのは理解できますが、
しかし、やっぱり、交渉のやり方が上手くないよなぁと思ってしまいます。

とにかく米軍基地関係には反対!反対!反対!で行くんだ!!!という方針なら、
この決定事項反故、二枚舌、偽情報の散布などは、効果的だと思います。
しかし、沖縄県の本当の経済発展、生活水準の向上、基地負担の緩和、安全の確保という
実質的な利益を得ようとするなら、このやり方は下手だよなぁ・・・・と思えてしまいます。
政府側にも弱みはあるんだから、そこをうまく突いて、実利と安全を引き出す具体的な交渉に
頭を使った方が良いのではないかと思います。

首長たちがこういう姿勢だと、政府だけでなく、民間大手企業も沖縄への不信感を覚えてしまうでしょうし、
もし「沖縄人というのは約束事を守れない人たちだ、交渉協議が成り立たない人たちだ」
という評価になってしまうのは、沖縄県全体の不利益になってしまうように思います。
今の日本人が、中国政府や韓国政府に対してどことなく不信感を抱いてしまうように。

もうちょっと本質的で建設的な議論ができる首長が出てこないと、沖縄の発展は遠くなってしまうのでは
ないかなぁと思えてしまいます。でも、選挙で選ばれた首長たちだから、結局は、
これが沖縄の民意ということなんですよねぇ・・・・・難しいですねぇ・・・・・・。

そして、著者が交渉相手として難儀してきた沖縄県知事ですが、
稲嶺惠一氏も仲井眞弘多氏も自民党推薦候補ということで、選挙後に、彼らが言うことを聞かなくなる
というのは、一体自民党はどんな候補者選定と選挙応援をしてきたのかなぁと、
その体制の脆さにガッカリしました。
もちろん、沖縄の地元の声もあるので、自民党の思うように動かせるわけではないというのは当たり前ですが、
しかし、決めたことを反故にするのは、政治家としては最低の態度というか、全く信頼されない行動なので
そこは政治家教育として自民党が擁立責任者として教育指導しないとダメなんじゃないの?と思います。

時々、自民党の政治家でも、野党の政治家でも、個人の意見を聞いていると凄く優秀そうなのに、
なんでその派閥に居るの?なんで自民党に近い政策観を持ってるのに立憲にいるの?と思ってしまう
政治家がいるのですが、彼らの言い分を聞いてみると、
「最初の選挙の時に候補者調整がうまくいかず自民党ではなく立憲から立候補した」とか、
「初当選時に今の派閥の領主に世話になったから」とか、理屈ではなく恩義を優先している人が
意外と少なくないことに驚きます。自分の政策の実現性よりも、義理人情の世界なんだなと。
それが日本にとって良いこととは思えませんが、政治の世界はそういう面もあるんだという思いがあったので
この沖縄の知事たちの裏切りぶりや駄々っ子ぶりは、ちょっと中央の政治家たちとは
違う職業なのかも・・・・と思えてしまいました。

その対比で、特に小泉純一郎総理の一度決断したら譲らない姿勢は、長期政権を築いただけある
腹の括れた政治家だったんだなと改めて感じ入りました。
当時は、ワンフレーズ政治というような単純化されかつ劇場化された政治状況に、
私は不信感を覚えていたのですが、本作を読んで感じたのは、「この政治問題の解決策はこれだ!」と
決めていて、一度決めたらブレないから、だからこそワンフレーズで政局を牛耳れたんだなと
思うようになりました。

あと、大臣の使い方、内閣スタッフの使い方、各省幹部官僚の使い方が上手いし、
「俺がそう言ったと言って構わない」と、小泉総理という印籠を使わせることを、
信用した部下たちには許したところも、人の使い方が上手いなと思いました。

今の小泉氏は、ちょっと原発問題への考え方が私には合わないので、関心が低くなっちゃってましたが、
一度、小泉純一郎総理について書いた本を読んでみたいなと思わせるものでした。




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『女帝 小池百合子』
- 2022/04/18(Mon) -
石井妙子 『女帝 小池百合子』(文藝春秋)、読了。

発売当時、ものすごい反響を呼んでいた本。
ようやく読んでみましたが、こりゃ確かにすごい本でした。

小池百合子という政治家が、いかにして自分を売り込み、ポジションを得、
さらに上のポジションを狙うために人にすり寄るか、また人を捨てるか、
様々なエピソードを、子供の頃から追った一冊です。

この方の「カイロ大学主席卒業」という経歴に、詐称疑惑が出ているのは知ってましたが、
正直なところ「政治家として今ちゃんと仕事してるなら過去の経歴は大して重要ではないのでは?」
ぐらいの感覚で捉えていたので、声高に詐称疑惑を追及する人々に対して
「小池百合子が憎いんだろうな」という風にネガティブに見ていました。

ところが、本作を読んでみると、この経歴詐称は、「結果的に詐称になってしまいました」というような
消極的な嘘ではなく、学業面で全く何の努力もしていないのに自分の価値を高めるために
積極的に意図して作り上げた嘘であることが分かり、そもそものカイロ大学入学の経緯からしても
他人を欺き、自分を押し上げること、そして自分の中身を高めていく努力をせずに自分を飾ることに
何の躊躇もない人物なんだということが描かれており、正直、病的なものを感じてしまいました。

衆議院議員時代の小池氏については、個人的には何の感慨もなく、
「クールビズ」とか流行らせてましたが、正直「タレント議員の延長線で上手くやった人」という
ような個人的評価でした。そもそも、環境庁長官というポジション自体にも他の大臣に比べ
能力が必要な印象を持っていなかったので、PRの上手いタレント議員がマスコミを使って
うまく流行させた・・・・という評価でした。

防衛庁長官に関しては、期間が短かったこともあり、何の記憶もなく・・・・。
ただ、就任のニュースに触れた時に「この人にそんな能力あるの?」と感じたことは
覚えてますが、田中真紀子氏も外務大臣をやってたぐらいですからねぇ・・・・てな感じ。

都知事選に出馬したときは、私はすでに東京から三重に引っ越しており、
正直他人事であり、「面白くなってきたな」とニュースショーとして見てました。
そして、メディアを使うのが上手いし、女版・小泉純一郎だ、と評価してました。

ところが、その後、豊洲移転問題やオリンピック競技会場問題などが全く解決しない様子を見て
小泉純一郎氏は旗振り役でも、その配下に多くの実行部隊の優秀な人材を抱えてたけど、
小池百合子氏には全くそういう仲間がいないんだな・・・・・と自分の中で評価爆下げでした。

落としどころを全く考えずに思い付きでメディア受けすることを発言して喝采されてることに
非常に満足していそうな姿を見て、「政治家として落としどころの見えない実現可能性の低い
公約を掲げることに恐怖心とかないのかな?」と疑問に思っていたのですが、
本作を読んで大納得。

「落としどころ」とか「どうやって実現するか」とか「過去の発言と整合性が取れているのか」とか
そういう時間軸が全くない人なんだなと分かりました。
「今、どれだけウケるか」その一点にしか興味がない人なんだなと。
だから平気で嘘もつけるし、他人を切り捨てられるし、裏切ることもできるんだなと。
正直、病的なものを感じてしまいました。

そして、それが、父親のことに遡って描かれることで、
どうしてこんな人物になっていったのかが、どうしてこんな思考回路に疑問を持たないのかが
理解できました。50年以上もの時間軸に沿って、その歪みの蓄積が描かれているので
非常に腑に落ちる感覚が得られました。

中盤で、衆議院議員時代の同僚であった公明党の池坊保子氏の小池百合子評が
紹介されていましたが、「小池さんには政治家としてやりたいことがあるわけではなく
ただ政治家がやりたいのだと思う。だから常に権力者と組む。計算ではなく
天性のカンで動ける。周りに何と言われようと上り詰めようとする。そういう生き方が
嫌いじゃない。無理をしていないから息切れしない」、という趣旨の見立てに、
納得するとともに、恐ろしさを感じてしまいました。
特に最後の一文「無理をしていないから息切れしない」というところ。

政治家としての地位を上り詰めることが全てであり、そのために、その時々の権力者に
すり寄ることができ、過去の自分の支持者や発言と乖離が生じてもおかしいと感じない、
今このポイントに乗っかるべきだと思ったら全力で行動できる、そういう瞬間的な判断と
行動を、「無理なくし続けられる」という評価に、これからも、能力をいかんなく発揮して
暴走し続けそうで怖いなと感じてしまいました。

正直なところ、病的な権力欲と虚言癖だと感じてしまいましたが、
そんな人を政治家として持ち上げるメディアが居て、また重要ポストに登用する首相が居るところが
人気取りが必要な民主主義政治の限界なのかなと思ってしまいました。
安倍さんですら、この人を防衛庁長官に登用せざるを得ないという判断をしちゃってるのですからね。
この方の華やかな経歴と空虚な実績は、決して、小池百合子一人の問題ではなく、
メディアと、政治リーダーと、有権者にも大きな責任があることだと思います。

で、肝心の二階俊博研究ですが、二階さんはほとんど本作に登場せず、
進捗ゼロでした・・・・トホホ。




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『プロフェッショナル広報戦略』
- 2017/10/17(Tue) -
世耕弘成 『プロフェッショナル広報戦略』(ゴマブックス)、読了。

小泉政権で広報戦略を担当し、有名になった著者。
その広報戦略について書いた本。

「広報戦略」と銘打っていますが、広報戦略を解説した本ではなく、
広報戦略に則って郵政選挙を戦った経過を成功談を中心にまとめたものです。

自民党寄りの人が読むと面白い政治ルポのようですし、
自民党嫌いの人が読むと自慢し放題の本と思うのでしょうね。

私は、結構面白く読みました。
世耕さんの作戦が上手かったのかとか、世の中がどう反応したかということよりも、
これまで広報戦略をおざなりにしてきた自民党という組織が
郵政選挙を前に、世耕という人材を使って、自らの改革をしようとした
その腹をくくったときに発揮される組織力のようなものが感じられて、
さすが長年政権を担ってきた党だなと感心しました。

小泉首相、武部幹事長といった主要ポストの人々が、
世耕という若造の提言を聞き、その場で取り入れるか否かを判断し、
取り入れるとなったら即座に指示をし体制をつくる、
そのスピード感が、さすがだなと思いました。

著者がNTT職員から国会議員に転身する際も、
森幹事長や尾身総務局長が、著者の出した条件を満たすように動き、
そして最後は、著者の心を動かす言葉で熱く働きかける。

著者の広報術で、きれいに演出されている部分もあるでしょうけれど(笑)、
でも、やっぱり、大きな組織を動かしていく幹部人材の動き方として
非常に教育されていて洗練された人材がそろっているなと感じました。

崩壊中の旧・民進党や、何だか良く分からない希望の党の迷走ぶりを目の当たりにしている
今現在の政局と比較してしまうので、一層、その思いを強くしているのかもしれません。

広報戦略の内容よりも、自民党の人材力や組織力が
強く印象に残った一冊でした。


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