fc2ブログ
『国家戦略からみた靖国問題』
- 2023/10/06(Fri) -
岡崎久彦 『国家戦略からみた靖国問題』(PHP新書)、読了。

「はじめに」の冒頭で、「二年余りの間に私が書いた論文から収録したものである」と書かれていて、
え?論文!?学術誌に出るようなゴリゴリの外交論だったら読めないな・・・・・と不安になったのですが、
本文は、月刊誌や新聞に載った文章ばかりで、こういうのって「寄稿文」って言うんじゃないの?と。
ちょっと過剰演出?(苦笑)、もしくは、英語圏だと新聞への寄稿文も論文も同じ単語になるのでしょうか?

閑話休題。

著者は、外務省退官後に、安倍晋三氏のブレーンをやっている印象が強いので、
保守派というか、親米派というイメージではありましたが、
本作を読んでみて、天皇制についてかなり強い思いを抱いていることと、
「新しい歴史教科書をつくる会」にかなり深く関わっていたと知り、びっくり。
退官後は、いろいろ活発に保守言論の活動をしてたんですね。
しかも、「新しい歴史教科書をつくる会」では内紛沙汰になってたようで(苦笑)。

というわけで、立脚点がかなり親米保守に寄っていそうなので、
補正しながら読まないといけない感じでしたが、
しかし、外交官の本音としては読んでいて面白かったです。

私のざっくりとした感覚では、リベラルの人はロマンチスト、保守の人はリアリストというイメージですが、
本作でも、様々な外交の潮流の転換点において、「今更それを言ったところで」なんていう
指摘をしているところなど、まぁ、起きてしまったことは仕方がないと割り切って前に進めようという
リアリストな判断を見られたので興味深かったです。

あと、著者は全共闘世代が政治の主役になることを懸念していたけれども、
安倍晋三ら次の世代に一気に世代交代になったことを歓迎しており、
それは、私もそう思います

若いときは、世代論とかには興味が無くて、むしろ、「そんな紋切り型の中に入れられたくない」と
反発心が強かったのですが、最近は、とみに自分が所属する「ロスジェネ世代」の不幸ぶりが
目についてしまい、その悲しみを共有すべく、同世代の人が書くロスジェネ世代悲話的なSNSの投稿に
目が行ってしまいます。自分も年を取っちゃったのかなぁ・・・・・(悲)。

そして、自分より下の世代では、ゆとり世代に対しては「楽しやがって」みたいな反発心があるので(爆)、
なんだかZ世代に期待しちゃったりしています。
もう、若者に期待を任せちゃってる時点で私も中年ですね。

どんどん話が本題から逸れていってしまいますが、
靖国問題をめぐる外交戦略については、そもそも靖国参拝が問題になった発端の部分から
周辺国に過剰な配慮をした時代、そして、8月15日を避けつつも総理が靖国参拝を再開し、
その後も、各総理のキャラクターに合わせて結果的には絶妙なバランス感覚で
参拝したりしなかったりという感じなんでしょうね。

この問題に真正面からぶつかろうとすると、周辺国が心から納得する着地点というのは
きっと見つけることができない(というか周辺国もそれぞれの国内問題の不満のはけ口に利用しているので
問題が解決されたら困ってしまう)、そして論破する選択肢を取るなら、米国と完全結束した状態で
交渉(というか外交の喧嘩)に臨めるという環境が整い、かつ論破した先に日米双方の国益が得られるという
そういう状況でない限り打開は無理だと思うので、たぶん、今後も変なバランスの上に
先送りされていくんだろうなと思います。

もし解決することがあるとすれば、中国が米国との競争に勝って世界を治める立場に君臨するか、
もしくは中国という国が崩壊して米国の相手にならない状態まで落ちぶれるか、
とにかく米中間のパワーバランスが一気に崩れる時まで無理かなと。
前者なら、日本は中国様に従う立場になり靖国参拝など以ての外になるでしょうし、
後者なら、もう、靖国問題を持ち出す国はなくなるかと。
たぶん中国が崩壊したら韓国は静かになる気がします。

というわけで、本作を読んで感じたのは、靖国問題には、保守とリベラルそれぞれが
それぞれの理想とする状態に向けてそれぞれのやり方で努力してるんだろうけど、
たぶん、その綱引きの上に靖国問題は当面続くことを覚悟しなきゃいけないんだろうなということです。

それとも、戦後100年経って、戦争を直接経験した人がほぼ存在しない状態になれば、
自然と靖国問題はフェードアウトしていく可能性もあるんでしょうかねぇ・・・・。




にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  岡崎久彦 | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『情勢判断の鉄則』
- 2016/03/05(Sat) -
岡崎久彦 『情勢判断の鉄則』(PHP研究所)、通読。

追い込まれた状況でどのような判断を下すのかという
まさに状況判断を学べるのかと思ったのですが、
残念ながら、各所に発表した論文の寄せ集めでした。

なぜアメリカはこのような判断をしたのか、今後の中国はどんな判断をしていくのか、
それこそ、当事者国以外からの情報収集や情勢分析によって判断していくのでしょうが、
本作では、時事問題の分析が多くて、上位概念での判断基準のようなものが
詳細には語られなかったので、タイトルから想定していた内容と違っていたのは残念でした。

こういう本は、その事件がお起きているまさに同時代に読まないと
なかなか消化するのが難しいですね。


情勢判断の鉄則―21世紀の世界と日本の選択情勢判断の鉄則―21世紀の世界と日本の選択
岡崎 久彦

PHP研究所 1999-01
売り上げランキング : 264577

Amazonで詳しく見る
by G-Tools


にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  岡崎久彦 | CM(0) | TB(0) | ▲ top
『戦略的思考とは何か』
- 2012/05/26(Sat) -
岡崎久彦 『戦略的思考とは何か』(中公新書)、読了。

日清戦争~日露戦争~WWⅡを中心に、
日本の周囲の軍事的均衡状態もしくは瞬間的な崩壊の過程を描き、
日本が国防のために取るべき戦略を語ります。

まずは、明治~大正時代の日本の近隣諸国の状況を描いていき、
それぞれの国が持つ思惑を明確にしていきますが、
分かりやすい整理で、読みやすかったです。
研究者の間で一般的に認知されている事項と著者の個人的な判断とが書き分けられていて、
その点でも信頼できる描写です。

そんな環境下で日本がどのように判断してきたか・・・・。
封建社会から一気に近代化を図った明治時代、
なぜそのような急展開が可能であり、また、それを成功しえたのか。
優秀なトップリーダーたちが、思うように国を動かしたから。
この一点に尽きるような気がします。

思うように国を動かしたと書きましたが、
それが、決して一人の傑出した人間による独裁的な判断だったのではなく、
優秀なトップリーダー「たち」が十分な議論をして決めていたところに、
近代日本の強さがあったのだろうと思います。

このような一種独特な合議制が成立しえたことに、
なんと日本という国は幸運だったのだろうかと思わずにいられません。
よく高度経済成長が奇跡として語られますが、
あれは外部環境などのレールに上手く乗った側面も大きいように感じます。
それよりも、日本人自らの力で国を創り動かした明治の時代は、
その後の日本人の様子と比較すると、まさに奇跡だと思います。

全く個人的な感覚論になりますが、
傑出した政治家を生む土壌は、団塊の世代やその直下には無いような気がしていて、
もう一段若い世代から、新生日本を引っ張っていくようなリーダーが
生まれててこないかなぁと期待しています。
ま、自分自身が、そんな他力本願なことではいけないのですが・・・・。




にほんブログ村 本ブログへ

この記事のURL |  岡崎久彦 | CM(2) | TB(0) | ▲ top
| メイン |