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『地方消滅の罠 増田レポートと人口減少社会の正体』
- 2023/08/30(Wed) -
山下祐介 『地方消滅の罠 増田レポートと人口減少社会の正体』(ちくま新書)、読了。

タイトルを見て、「増田レポート」に批判的な立場の論者なのか・・・・・・と
興味を持って買ってきました。

冒頭、なぜ日本で人口減少が進んでいるのか、という著者の分析が展開されますが、
「子育てできる経済力をつけるため雇用の充実」「働きながら育児しやすくなる保育施設の拡充」という
世間でよく言われていることに対して、著者は、本当にそうなのか?との問いを投げかけます。
女性の社会進出が進んで、男女とも仕事に時間を拘束されるようになったので出会いの場が
職場しかなくなってしまった・・・・・等々、別の視点での掘り下げをしていきます。
この第1章は凄く面白かったです。

以前、Twitterの投稿で、「晩婚化や未婚率の上昇が進んだのは、昔は結婚によって
男性は家事労働から解放され、女性は外での仕事から解放されるという分かりやすいメリットがあった、
しかし今は、結婚した後も、男女それぞれが、仕事、家事、育児、ご近所付き合い、全てをこなすことが
求められ、結婚前よりも単純にタスクが増えるから、結婚することに躊躇するんだ」というものを見て、
ほー、なるほどなー、と思いました。

たしかに社会は、昔は各家庭が自給自足でいたものが、分業が広がることで経済発展してきたので、
一番小さな社会単位の夫婦も分業した方が上手く回りそうな気もします。
高度経済成長って、結局、この末端構造があったからなのかもと思ってしまいました。

というわけで、第1章は一般的に言われている少子化の原因と、その解決策に対して、
それは違うんじゃないの?と突っ込む内容が多く、興味深く読みました。

この調子で増田レポートにも突っ込んでくれるのか!と期待したのに、
なんだか第2章からは、当てが外れてしまいました。

増田レポートは、全ての地方自治体を相手に、忖度なしに「消滅可能性都市」を色分けしたので
名指しで「お前のところは潰れるぞ」と言われたようなもので、そりゃ言われた側は衝撃ですよね。
しかし、その衝撃ばかりがメディアで取り上げられて、「だから選択と集中だ」という施策への
展開については、あんまり具体的に報道されていないように思います。

著者は、この「選択と集中」という政策の軸が、地方の切り捨てに当たるとして、
非常に怒っているというのは良く伝わってきました。
しかし、正直、第2章~第5章まで、ほぼ、感情的な怒りをくどくどと書いているだけで、
第1章にあった冷静な考察の姿勢はどうなっちゃったんだよ~、とガッカリ。

第6章は急に立ち直って、細やかな施策についての話が出てきたので、
「どうするか」を考えていないわけではないのは分かったのですが、
ちょっとプレゼンの仕方が感情に訴える左翼式な感じがしちゃいました。
もっと理詰めの政策論を読みたかったです。

消滅可能性都市に住んでいる人々が「それじゃいけない!」と自律的に行動を始めているなら
著者の言うような「選択と集中」への反対論は現実味もあるかなと思いますが、
私自身、消滅可能性都市に住んでいる実感からすると、
一部の中年・青年世代が実際に動いているだけで、ほとんどの住民は、
「なんとかしてほしい」と待ちの姿勢で要望しているだけで、ほとんど動きはありません。
これじゃあ、著者のような思いがある人が頑張っても、うまくいかないように思います。

実際の住民である自分としては、ある程度、コンパクトシティ化は必要じゃないかと思ってます。
それと、大きな流れとしてコンパクトシティ化を進めつつ、
それでも自然の中に住みたい人は、「行政サービス的にこういう制約がありますが良いですか?」と
確認作業を経たうえで、それでも住みたいという人には自由に住んでもらったらよいのではないかと
思います。たぶん、自分がそこに住むことで、行政にどんな負荷が新たに発生するのか
分かったうえで移って来るでしょうから。
問題は、昔からそこに住んでいて、段々と近所の家族が都市部へ移っていったにも関わらず
その場にとどまっている人の対処の方かなと思います。
「昔は町中と同様の行政サービスを受けてたんだから、今後も維持しろ」という意見が
どうしても出てきちゃうかなと。
しかも高齢化するので、医療や公共交通の負荷も重くなり行政コストは嵩みがちかと。
だから出ていけ!とは言えませんが、「今、町中に引っ越すと、こういう補助が受けられますよ」という
それこそ移住者誘致に匹敵するコンパクトシティ化予算を組んだ方が良いのでは?と思ってます。




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『地域主権の近未来図』
- 2016/07/07(Thu) -
増田寛也 『地域主権の近未来図』(朝日新書)、読了。

都知事選の候補者に名前が挙がっている著者。
最初にこのニュースを耳にしたときは、
「お、面白いかも」と感じましたが、具体的な実績や政策を知らなかったので
試しに読んでみました。

対談あり、提言あり、コラムありで、
ちょっと詰め込み過ぎというか、構成を工夫しようとし過ぎて読みづらくなってますが、
内容は面白かったです。

現在の中央と地方の関係性の中で、
なぜ地方分権が進まないのか、上手くいかないのかという現状分析が
分かりやすかったです。

今後の提言についても書かれていますが、
その前に、「どのような日本であるべきか」というビジョンを
丁寧に示してほしかったなと思います。

前半は片山善博氏との対談に多くのページが割かれており、
これはこれで面白かったものの、
やっぱり対談では体系的にビジョンを示すことは難しいです。
余計な構成演出なしの、骨太の政策論を読んでみたいと思いました。

で、都知事選ですが、東京一極集中を脱すべきという著者が
どのような政策を掲げるのか(立候補するならば・・・・の話ですが)
楽しみです。


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『地方消滅』
- 2015/11/08(Sun) -
増田寛也 『地方消滅』(中公新書)、読了。

増田レポートとして話題を呼んだ、地方消滅に関する予測。

ダイビングで訪れる海は、熱海のような観光地もありますが、
小さな漁港の町であることも多く、鄙びたというより、寂れたと表現したくなる町も多いです。
お年寄りしか歩いていないような・・・・。

地元に戻っても、街に人が歩いていないことが気になります。
我が家のある商店街も、昼間の閑散とした様子に驚くばかりです。
私が小学生の頃は、それなりに賑わっていたはずなのですが・・・・。

むしろ、増田レポートで、地元の津市が、若年女性の急激な減少地域に色分けされていなかったことが
自分の実感と合わずに驚きました。
田舎とはいえ、一応、県庁所在地なので、それなりに若年層人口は維持されるということなのでしょうかね。

本作の前半は、レポートの解説が中心で、やや味気ない文章だったのですが、
後半の藻谷浩介氏との対談が、重要ポイントをざくっと振り返って
今後のことを考えていく視点を持つために、分かりやすかったです。


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