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『スクラップ・アンド・ビルド』
- 2023/05/08(Mon) -
羽田圭介 『スクラップ・アンド・ビルド』(文春文庫)、読了。

芥川賞受賞作。
受賞当時のメディアでの書評で興味をもって、「読みたい本リスト」に入れていたので、
このたびブックオフで見つけて早速読んでみました。

職を辞めて、行政書士試験の勉強と転職活動を同時並行で進めている28歳の主人公。
父親は亡くなっており、母親と、その実の父親である祖父との3人暮らし。
祖父は高齢で体が弱っており、デイサービスなどに通っている日々。
体が痛い、動くのが辛いと毎日愚痴をこぼすものの、
病院での診察では大きな問題はなく、本人の感覚的なものの様子。
母親は会社員として働いているので、自宅で祖父の介護をするのは主人公、
その主人公の目を通して、「老い」と「幸せ」についてが描かれていきます。

薄い本なのですぐに読めましたが、読後感としては、「う~ん、これ芥川賞!?」てな感じでした。

このまま毎日目的もなく生きていくのは逆に辛いだろうと考えた主人公は、
「過剰な足し算の介護」という発想で、祖父に日常の作業を自分でやらせることを防ぎ
何もできない高齢者として弱らせていこう、苦しめずに死なせてあげようとします。
ただ、そこまで計画立てたものではなく、時々思い付きのように行動します。

主人公の目から見た、「ここまで弱ってしまい、毎日やりたいこともない老人は幸せなのか」
という疑問は、自分でもそのように考えてしまうところがあり、
そういう若者目線での高齢者評価みたいなところには共感する部分もありますが、
かといって、本作のように、心にもない「死にたい」を軽々しく口にする老人と、
実の親に対して口汚くののしる母親みたいな家族像には嫌悪感が先立ってしまい
物語の世界に入っていけませんでした。

若者世代の、高齢者介護に関わる費用を過剰に負担しているという政治的な不満は
実際にあると思いますし、60年後に自分もこうなっているかも・・・・・という
老いに対する根源的な恐怖も皆持っている感情かと思います。

でも、そういう問題の調理の仕方が、イマイチなような気がしました。
芥川賞受賞時の選評を読んでみましたが、「そこまで深い作品なのか・・・・・」と
あんまり選者の言葉にも共感できませんでした。

そもそも、この著者の他の作品にも共感できない自分が居るので、
単に合わないだけなのかな。




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『ミート・ザ・ビート』
- 2018/10/28(Sun) -
羽田圭介 『ミート・ザ・ビート』(文春文庫)、読了。

羽田圭介とのファースト・コンタクトは失敗に終わりましたが、
積読の中に薄い本作があったので、リトライ!

・・・・・・でも、やっぱり駄目でした。
部分的に詳細な描写をするのが、著者の特徴なんですかね?
ところどころ拘りのような緻密な描写が入りますが、
読んでいて、私には、あまり緻密さの必要性が感じられませんでした。

そして、本作は、芥川賞の候補になったようですが、
うーん、どの辺が評価されたのか分からず。
19歳という繊細な年代を描いているということなのでしょうかね。

私が、車に興味がないせいかもしれません。
でも、車の要素を抜いても、主人公と友人たちの関わりに、
あまり関心を覚えませんでした。
ホストをやっているレイラが主人公で、sのビジネス手腕を描いた作品だったら
もっと関心を持てたような気がします。

ところで、レイラって、女性名じゃないの?




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『御不浄バトル』
- 2018/10/15(Mon) -
羽田圭介 『御不浄バトル』(集英社文庫)、読了。

芥川賞作家さんの本。
タイトルからコメディかなと思い、試しに買ってみました。

が・・・・・私は一体何を読まされているのだろうか・・・・という気持ちになった作品でした。
トイレ内での排泄の様子が細かく描かれ、
排泄後に個室内で食事までするという主人公の姿に
そもそも引いてしまいました。

男性で、電車に乗ると便意を催し、駅に到着後ダッシュでトイレに駆け込むという
体質の方がいるという話題は聞いたことがありました。
なので、主人公もそういう体質に困っていて、
かつ悪徳企業に勤めているという精神的なプレッシャーから悪化しているのかなと
想像しながら読んでいたのですが、
トイレの話と仕事の話はあんまりリンクしてくることもなく、
そもそも、この体質自体をそんなに困難に思っているようにも感じられず、
何のために詳細なトイレの描写があるのか、腑に落ちないところがありました。

仕事の方も、どんな悪徳ぶりかは描かれていますが、
今時点で会社に通勤してきている面々は、それほど苦痛を感じずに職場に慣れているようですし、
人材の離職回転が速いと言いながら、離職していく様が描かれていないので
なんだか半信半疑な感じ。

辞めた人間として山城という人物が登場しますが、
行動が不気味で、この人物に気持ちが行くこともなく・・・・・。

駅のトイレですれ違う人物たちと、結局何の接点もないですし、
彼らが主人公に影響を与えることもなく、彼らに対する描写は何だったのかな?と。

物語の結末のつけ方も、尻切れトンボな感じですし、
何だか、変なものを読まされたという感想しか残りませんでした。

併録された「荒野のサクセス」は、表題作「御不浄バトル」に登場する
トイレメンバーの1人が主人公ですが、
こちらは、もはやトイレメンバーという繋がりしかなく、
若者メンズ雑誌編集者としての職場の様子が描かれています。

ある若者の働く姿の描写なのでしょうけれど、
こちらもそれだけのような印象でした。

芥川賞受賞作品、読むべきかなぁ・・・・・迷いが出る本作の感想でした。




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