『歴史を考えるヒント』
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- 2023/04/10(Mon) -
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網野善彦 『歴史を考えるヒント』(新潮文庫)、読了。
網野史学として熱狂的なファンがいる著者ですが、 本作は、まさにその特徴である「庶民の日常の歴史」について 「日本という国名」「百姓という職業」「被差別民」「商業用語」など 日本語における「言葉」にスポットを当てて解説しています。 冒頭、「日本という国名が決まったのは何世紀か?」という問いから始まりますが、 正直、私は考えたことがなかったです。 正解は7世紀ということですが、直感的には意外と古いな・・・・と感じました。 まぁ、でも遣隋使・遣唐使の時代と思えば、そういうものかなとも思え、 この自分のあやふやな歴史観を反省。 そして興味深かったのが「百姓」についての考察。 そもそも、現在、差別語というか放送禁止用語?として扱われていることが私には不満ですが、 百姓とは農民の意味ではなく、庶民の意味だったという解説。 以前、小和田哲夫氏の著作でも読んだ話ですが、 より丁寧な解説が面白かったです。 また、部落差別の歴史についても、タブー感あふれる話が興味深かったです。 部落差別に関わる様々な用語について、どうやって差別的なニュアンスが加味されていったか それを当時の暮らしぶりやものの考え方から解説していきます。 そして、関東住まいの人と関西住まいの人の間に厳然としてある部落差別問題への意識の距離感。 私は三重県生まれなので、学校で同和教育を受けましたし、 実際に子供の頃、「あの道路から向こうへは行ってはいけません」というようなことを 言われた覚えがあります。もちろん、理由は「あの道路は交通量が多くて危ないから近寄ってはダメ」 という言い方でしたが、実際は部落問題だったのでしょう。 こういう体験や教育があったので、とても公の場で口にできるテーマではないし、 そもそも誰かと話す内容ではないと思っているので、 著者がエピソードとして紹介していた、「電車の中で歴史家2人が差別の歴史について語り始めたら」 というシチュエーションに驚いてしまう感覚です。 関係者以外がいない部屋で話すべきテーマのように思ってしまいます。 関東の人には、そういう忌避感はあんまりないんですね。知りませんでした。 そういう、いろんな気づきがある読書でした。 薄めの本なのに、面白かったです。 ![]() |
『日本社会の歴史』
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- 2021/05/25(Tue) -
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網野善彦 『日本社会の歴史』(岩波新書)、通読。
この3巻が、著者の代表的な著作なのかなと思って、期待して読んだのですが、 期待していたよりも教科書的な雰囲気の本だなと感じてしまいました。 前に読んだ網野作品が、庶民の生活のロジックみたいなものをしっかりと描いており、 納得感が得られたし、歴史の本であまり注目したことがない場面への考察だったので とても面白く読めました。 本作にもそういう雰囲気を期待していたのですが、 原始社会の日本の描写から始まり、「あら、普通の教科書と一緒なのね」と思ってしまいました。 結構、淡々と時代を順番に追いかけているように思え、 高校の日本史の教科書のように、政治の話があったと思えば、宗教の話に飛び、美術の話に飛び・・・・ というようなあっちこっちに話が飛ぶことはなかったのですが、 政治や生活の話に特化して、時間の流れはしっかり意識されているものの、 淡々と描写が進むというところは教科書的なトーンのように思えました。 もっと、手に汗握る生き生きとした描写を期待しちゃってました。(ハードル上げすぎ?) で、本作の主題とは話がずれるのですが、 なんで日本史の話って、原始の時代から始めるんですかね? 本作でも、200万年前の話からスタートするのですが、 日本列島は当時、中国大陸と陸続きでしたよ・・・・・ってもう、 日本史ではなく地学の世界ですよね。 こういう話から始めるから、「日本の歴史を学べるんだ!」と思っていた子供たちが 「思ってた話と違う・・・・」というので、興味を失ってしまうのではないかと思ってしまいます。 日本史の授業が卑弥呼の話から始まったら、その神秘的なキャラクターと相まって もっと子供たちは日本史に興味を持つように思うのですが。 金印の話とか、めちゃくちゃ物語性もありますし。 どうせ授業で教えるなら、子供たちが興味を持つような「掴み」を 教科書会社も、学校の先生も、もっと工夫した方が日本社会のためになるのにな・・・・。 ![]() |
『日本の歴史をよみなおす』
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- 2016/08/15(Mon) -
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網野善彦 『日本の歴史をよみなおす』(筑摩書房)、読了。
いただき物の本だったので あまり意識せずに読み始めたのですが、 これは面白かったです。 「文字」「金融」「差別」「女性」「天皇」というテーマで 古文書を紐解いて、再構築していきます。 室町時代がターニングポイントになっているようですが、 私個人として、室町時代って、なんだか日本史の中で苦手意識があり 表面的な知識しか持っていなかったので、なおさら新鮮に感じました。 「識字率」とか「利息の取り方」とか「神仏と非人」とか「女性職能集団」とか 視点の置き方が興味深いので、そこから組み立てられる日本史の見方が 面白いと感じました。 続編も出ているようなので、そちらも読んでみたいです。
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