『裁判の秘密』
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- 2022/11/02(Wed) -
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山口宏、副島隆彦 『裁判の秘密』(宝島社文庫)、読了。
最近、仕事でちょっと損害賠償請求沙汰になったものがあり、法律をいろいろ調べてました。 最終的に、無事に賠償金を支払ってもらえそうな方向に落ち着いたのですが 最初は、「もし揉めたら裁判沙汰にして主張した方が良いか、それとも時間と労力の無駄だろうか」と 真剣に法体系を確認し、裁判やそれ以外の交渉の制度、また実際に損害賠償請求を法制度を使って 実行した人たちのブログなんかを盛んに読んで、比較検討してました。 というわけで、裁判という仕組みの実態に興味がわいてきたので、 積読になっていた本作を読んでみました。 弁護士として多くの裁判に関わってきた山口宏氏の話が中心です。 副島氏も結構アクの強い人だと思ってますが(苦笑)、山口弁護士もキョーレツですね(爆)。 数多くの裁判を同時並行で抱える裁判官が、いかにして各裁判を手をかけずに終結させるか、 または回転数を上げるために、1回1回の裁判手続きをさっさと済ませるかに 終始している姿を暴露してしまいます。 一方で、弁護士である著者の方も、依頼人の満足度を上げるために、適度に嘘をついて事情を 演出して説明したり、上手く丸め込んだり。 まー、お互い、ビジネスモード全開です(苦笑)。 でも、教科書的な制度の話だけを頭に入れていると、分からない実像だったので 興味深かったです。 どんなに制度がかちっと決まってても、運用する人たちが、「こういう風にやったら楽」ということで 一致点を見出してしまったら、楽な方に流れていきますわよね。 特に、いくつもの事案を抱える繁忙な裁判官も弁護士も、楽になることにメリットがあるでしょうから。 結局、素人がちょっと自分で制度をかじって「訴えたい!」ってなったとき(←今回は自分がこうでしたw)、 素人が制度なり法律なりを読んで描いた理想像と、法曹界で実際に運用されている実態との間で うまく翻訳したりバランスとったりして、落としどころを見つけてあげるのが 弁護士の役割なのかな?と思うようになりました。 特に、あまたある民事の揉め事などでは。 山口弁護士の文章は、ちょっと口の悪いところもありますが、 でも、人間のダメなところの本質に触れ続ける職業の人だから言い切れる 割り切りみたいなものも感じられて、興味深く読みました。 「だらしのない人々というのは、裁判に巻き込まれることはあっても、自ら裁判を起こすことは普通ない。 (中略)ところが、離婚にまつわる諸問題については、このだらしのない人々でも裁判に訴えざるを得ない。 (中略)離婚裁判というのは、じつは、たちの悪い当事者がワンサカいるのが実情だ」 いやー、自分のお客の中の一部のろくでもない人たちを「たちの悪い」と言ってしまう勇気(苦笑)。 薬害エイズ訴訟についても、あくまで著者の勝手な想像と断りながらも、 「裁判官は川田龍平氏に『この裁判は長引くから、この辺で手を打った方が良いのではないか』と 言ったはずだ」との大方言。今のご時世なら、バッシングされそうな率直な物言いです。 坂本弁護士一家殺人事件の警察の捜査手法についても、「他にも行方不明になっている日本人は たくさんいるのだから、彼らだけが別件逮捕とかの特例扱いで丹念に捜査してもらえるのは不公平だ」 という趣旨の、なんとも本音ぶっちゃけ発言があり、世間の反応が恐ろしいけど、興味深い主張でした。 ![]() |
『暴走する国家恐慌化する世界』
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- 2018/05/08(Tue) -
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副島隆彦、佐藤優 『暴走する国家恐慌化する世界』(日本文芸社)、通読。
佐藤優さん、一時期は面白いと思って続けざまに読んでいたのですが、 最近はご無沙汰してしまっています。 本作では、冒頭から、なぜ副島隆彦という人をこんなに持ち上げるのか ちょっと、しっくりきませんでした。 いきなり「アポロ11号の月面着陸はなかった」という陰謀論の話から始まって、 ついていけませんでした。 (副島さんの『人類の月面着陸は無かったろう論』は、単なる陰謀論に終始した話ではなさそうなので、 一体どんなことが書かれているのか機会があれば読んでみたいと思います) 陰謀論的な話から、ロスチャイルドとかロックフェラーとかの話も出てきますが、 ユダヤ系の話を理解しようとするなら、やはりユダヤ教やキリスト教への最低限の理解が 必要になってくるんだなぁと痛感。私の苦手なジャンルです。 欧米人のバックグラウンドを理解するには、神学的な知識が必要ですよね。 それがベースにあるから、佐藤氏の分析は大局観を感じられるんですよね。 あとは、日本の政局についてですが、 リーマンショック直後で、民主党への政権移行が期待されていた時期のため お二人とも民主党政権誕生にワクワクしているようで、 そこは、ひと時代昔の本だなぁという印象を受けてしまいました。 結局、一番面白かったのは、佐藤氏によるロシア政府の内情解説といういつもの要素。 学識者が自分の別荘に客人を招いてどんな議論をしようが 政府は干渉しないというところに、ロシアという国の不思議な懐の深さを感じてしまいました。
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『お金で騙される人、騙されない人』
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- 2014/10/17(Fri) -
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副島隆彦 『お金で騙される人、騙されない人』(幻冬舎新書)、読了。
中身云々の前に、非常にアクの強い著者ですなぁ・・・・・。 読み手を選ぶ文章だと思います。 私としては、てにをはが何だか変な気がして、読みにくかったです。 内容は、様々な金融商品の罠というか、 騙された人の事例を紹介して注意喚起を行っているわけですが・・・・・。 ま、騙されやすい人にとっては、啓蒙書としての意義があるんでしょうね。 金融業の端っこに身を置いている立場としては、 本当に、自分の頭で何も考えずに、大金を投じる人っているんだなぁ・・・・・吃驚ってな感じです。 会社の研修で、金商法だの、特定商取引法だの、割販法だの、 いろんな法律を学ぶ中で、「お客さまへの十分な説明が大事です」「錯誤を起こさないようにしよう」 「消費者保護の観点で、会社側が負けるケースが相次いでいます」というようなことを 何度も何度も叩き込まれるのですが、本作のような事例を見てしまうと、 「何でこんなに無防備なんだろうか・・・・」と呆れてしまうこともあります。 もちろん、世の中には、儲けるためなら手段を選ばない悪質な会社や、 ノルマ達成という目標をはめられて悪事に走ってしまう弱いサラリーマンなどが居て、 高齢者や、認知症の人など、弱者を狙う事件が起きていることは事実です。 しかし、あまりにも安易に、儲け話に乗ってしまう、オツムの弱い人がいるのも事実。 投資って、ハイリスク&ハイリターンか、ローリスク&ローリターンなのであって、 ローリスク&ハイリターンなんて商品が成立するはずがありません。 こんな当たり前のことが、なんで分からないのでしょうか。 普通、100万円稼ぐのに、どれだけの時間と労力と努力が必要だと思っているのでしょうか。 図らずも著者が、 裁判官が守りたいのは、世の中の秩序なのであって、被害者ではない と言っていますが、当たり前のことだと思います。 汗水たらして得るべき100万円なのに、 他人にお金を預けておけば、いつの間にか100万円が手に入る・・・・なーんてことに 疑問を持たない人間は、ある種、健全な社会からしてみれば、秩序を壊す思想ですよ。 そんな人を守ってくれる法律は無いと思います。 というか、あるべきではないと思います。 文章表現から、登場してくる「被害者面」した人たちまで、 何かとイライラさせてくれる本でした。
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