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『環境危機をあおってはいけない』
- 2022/08/30(Tue) -
ビョルン・ロンボルグ 『環境危機をあおってはいけない』(文藝春秋)、通読。

以前、著者による温暖化問題に対する姿勢を読んで
非常に面白かったので、さらに分厚い本作に挑戦してみました。

しかし、前作で面白かったのは、各問題の科学的正しさがどうかという議論よりも、
「その問題に今、これだけの金と人材と時間を投資すべきなのか」という視点で
問題提起していることだったのですが、本作は、様々な環境問題の分野で
それが問題であると主張するデータが、如何に恣意的に作られているか、
如何に曖昧なものが情緒的に語られているかというような視点で
どんどん指摘していく構成になっています。

結局、環境問題は、研究者や政府機関の予算取りのための名目であるという
そういう世の中の仕組みのようなものは本作でもわかるのですが、
あまりに間口が広すぎて、浅さが拭えない印象でした。
総花的に視野を広げるという目的なのでしょうね。

では、新たな環境問題が出てきたときに、自力で一次資料に当たって
データの正しさを確認できるかというと、そんな能力はないし、時間もないし、忍耐力もないので
結局、著者のような人が批判をするまで待たないといけなくなってしまいます。

どうやって「変だな」という気付きを得られるかなと考えてみたのですが、
「その問題に取り組むと足元で誰が得するの?」という視点が一番わかりやすいのかなと思いました。
「表向きに言われてる費用対効果って、なんだか変じゃない?この対応予算で直接得するのは誰?」と
考えたら自分なりの答えが得られそうな気がします。




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『山形道場―社会ケイザイの迷妄に喝!』
- 2018/12/02(Sun) -
山形浩生 『山形道場―社会ケイザイの迷妄に喝!』(イースト・プレス)、読了。

ブックオフでサブタイトルが目にとまり、100円なので買ってきました。
不勉強ながら、著者の名前すら知らない状況でした。

後ろの著者紹介を読むと、理系の勉強をして、シンクタンク勤務という経歴なので、
大前研一さんとか田坂広志さんとかの系統かな?とイメージしてから読んだのですが、
全然違ってました(苦笑)。

まず、文章にクセがあり、我が強いです。
でも、それに慣れると、言ってることは面白いです。
要は、理想とか理念ばっかり語る空疎な人たちを非難して、
もっと現実的な思考回路を持て!と言っているのだなと私は解釈しました。

本質的な部分は、まえがきのところで言い尽くしているような気がします。
ここが一番文章がとんがっててクセもあり、読み難かったですが、
どういう方向性でモノを考えている人なのかを掴むには適した文章でした。

そして本文に入っていくと、著者自身が雑文集と言うように、
かなり幅広なネタを扱っていて、全体的な統制が取れているかというとそうではないです。
その分、まえがきの存在価値があるというか。

で、本文の各文章は、時事ネタとか著者の書いた文章についたクレームへの反論とか
その時々の著者の身の回りに起きたネタが多いですが、
著者がどんな外部刺激にどんな論点で反論しているのかというのが良く分かり、
その現実的な思考回路は、勉強になりました。
デキル理系アタマの人のモノの考え方だなと。

NPO法人の暴走に関する考察とか興味深かったです。

まだ、この雑文集一冊では、どんな思考体系の人なのか掴めないところも多いので、
他の本もチェックしてみたいと思います。




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『地球と一緒に頭も冷やせ!』
- 2014/01/29(Wed) -
ビョルン・ロンボルグ 『地球と一緒に頭も冷やせ!』(ソフトバンククリエイティブ)、読了。

地球温暖化説への懐疑派として有名な著者の本が
ブックオフで500円だったので買ってきました。

様々な角度から、温暖化説への疑問をぶつけていますが、
自然科学的な観点での疑問は、これまでに読んできた本と被っている内容が多かったです。
しかし、社会科学的な観点での疑問の投げかけは、興味深く読みました。

同じコストをかけるなら、もっと人間の生命の危機へのインパクトの高い案件があるのでは?
温暖化で死ぬ人ばかりスポットが当るが、冬の厳しさが和らいで助かる人も多いのでは?
なぜ足元の何万人もの交通事故の死者よりも100年先の温暖化で死ぬかもしれない人を心配するの?

これらの疑問に対する、著者の回答は、

ぼくたちの最終的な目的は、温室効果ガスを減らすことや、温暖化を止めること
そのものではなく、人々の暮らしや環境の質を改善することだ

この言葉に尽きると思います。大納得。

いくつか温暖化の本を読んできて、今、私の頭の中では、
温暖化の議論は、自然科学の頭ではなく、社会科学の頭で考えるようにしています。
「この主張が実現すると誰が得するの?」という問いかけを常にするようにしています。
ある意味、科学的に正しいかどうかは、二の次になってきました。

そういう意味では、原発問題と似たような問題を抱えているように思います。
「技術が確立されているのか」「リスクはコントロールできるのか」ということよりも
「どんな主張をすると誰に受けるのか」という観点です。

原発問題と温暖化問題を繋げて論じる勢力も大きくなってますし、
なかなかこの分野の話は、腰をすえて勉強しないと理解しにくくなっちゃってますなぁ。


地球と一緒に頭も冷やせ! 温暖化問題を問い直す地球と一緒に頭も冷やせ! 温暖化問題を問い直す
ビョルン・ロンボルグ 山形 浩生

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