『総理の影 菅義偉の正体』
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- 2022/04/15(Fri) -
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森功 『総理の影 菅義偉の正体』(小学館)、読了。
仕事の関係で、二階俊博衆議院議員のことを知りたい事情ができ、 適当な本はないかな~と、図書館やブックオフに行ってみましたが、 直接的に扱っている本は見当たらず・・・・・やっぱり総理にならないと 評伝とかは書かれないんだな・・・・・と、ある種当たり前のことに気づいたわけですが、 菅前総理の本がブックオフにあり、関係者として登場してくるかな?と思って試し読み。 書かれたのは2016年なので、第二次安倍政権で「安定のガースー」「鉄壁のガースー」なんて 一部で呼ばれ始めた頃でしょうか。ある意味、ネット保守界隈で最も愛されていたころかも。 でも、本作の表紙は、素人写真みたいな安倍元総理に象徴されるような なんだか批判的な雰囲気の装丁と、著者が森功氏。 この方の本は、以前、同和利権と銀行の癒着を扱った作品を読み、 凄みのあるルポルタージュを書く人だなと、感嘆した覚えが。 そんな人が書きたいと思う対象になっているという点で、「ガースー」的内容ではなく、 結構、批判的な感じなのかな?と思いながら読み始めました。 第一章は、橋下徹氏を大阪市長選挙に担ぎ出したエピソードから始まるのですが、 この菅義偉という人物の、表舞台にはあまり出てこずに、裏で暗躍する特徴が良く表れており、 私は、自分の描いた目標達成までの計画やプロセスを確実に実行していく力がある凄い人だ・・・・と プラスに評価するのですが、潔癖症的な人からすると、こういう暗躍タイプは嫌われそうだなと。 政治家としての実績は凄いのに、イマイチ国民的人気が付いてこないのは、その辺がネックなのかなと 残念に感じました。 一方で、秋田の農家出身で、集団就職で上京し、その後、自力で大学を卒業したというエピソードが 美談的に語られがちですが、秋田の先進的農家の長男であり、 その父親は地元で町議会議員を何期も務める地元の名士であるというところが詳しく書かれており、 やっぱり、それなりの家の出で、ちゃんと教育や躾を受けた人だよなぁと再認識。 私が、最初に秋田から集団就職というエピソードを聞いたときに、違和感を覚えたのは、 「義偉」という難しい名前を付ける親なら、それなりに教養のある家柄のような気がするけど・・・・と 思った点でした。父親の満州での仕事ぶりや、そこからの撤収の過程、帰郷後の農業経営など 先見の明と計画性、そして計画を着実に進めていくガッツは、やっぱり、この親からこの子が 生まれ育ってくるんだなと納得しました。 小此木彦三郎議員の元での秘書修行の日々と、そこで学んだ人間巻き込み術を 政治家になって一層パワフルに行使していく姿を見ていると、 コロナで大変だった時に、この人が総理大臣であったことは、正解だったんだろうなと感じました。 政策的な面では、沖縄問題とか、マクロ的な視点で利害を考えている様子を見ると、 やっぱり冷徹な印象を受けてしまいますが、一部に我慢を強いられる人が出たとしても 全体で見たらプラスに寄与する割合が大きいように思いました。 ただ、それを理論的に語るだけでは、なかなか世論の支持は広がらなさそうなので 誰に何をどんなタイミングで言わせるかという読みが大事で、 それに失敗したり、思わぬ出来事が起きたりすると、足踏みしちゃうんでしょうね。 菅義偉という政治家の実行力の秘密が良く理解できる本でした。 肝心の二階さんはほとんど登場してこなくて、当初の目的は全く達成できてませんが(苦笑)。 菅総理誕生の経緯を描いた本だたら、二階さんバリバリ登場してきたんでしょうけれど。 ![]() |
『同和と銀行』
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- 2016/02/07(Sun) -
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森功 『同和と銀行』(講談社)、読了。
こちらも実家の店のお客様からいただいた本。 自分では絶対に手に取らないであろうテーマですが、 近畿地方出身者としては学んでおくべき問題だなと思い、読んでみました。 同和団体のドンと、その担当だった三和銀行の課長のお話です。 同和問題という、周囲が触れにくい問題を扱っている組織であるがために 腫れ物に触るようになり、隠れ蓑になったというポイントではありますが、 本作では、同和問題そのものにはスポットは当たっていません。 むしろ、ダークな活動をする組織と、都市銀行との癒着ぶりを まさにその担当をしていた銀行員に取材をすることにより 全てを白日の下にさらけ出したという点で、凄いスポルタージュだと思います。 銀行という組織が、一つは儲けのため、もう一つは保身のために 組織的に同和団体のトップを利用し、また、組織がダメージを負わないように 汚れ役の課長を宛がって長年にわたる取引関係を構築してきた様が、 つぶさに語られています。 岡野というこの課長の能力がスバ抜けて高かったという個人的資質もあるのでしょうが、 それ以上に、銀行という組織の枠組みで眺めると、 そのような岡野という人材を抱えている包容力、適材適所に抜擢できる評価力、 汚れ役としての立場を十分に理解させ自主的に行動させる教育力、 そして、岡野を1つのコマとして使いこなす組織力、 さすが優秀な人材が集まる銀行ならではの組織力です(苦笑)。 ここまで赤裸々にダークな融資の実態を読むことが出来たのは、 興味深い読書体験でした。
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『平成経済事件の怪物たち』
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- 2015/05/02(Sat) -
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森功 『平成経済事件の怪物たち』(文春新書)、読了。
経済事件や政治事件も、昭和の出来事だと遠い過去の話でしかないように感じるのですが、 本作では平成の事件に絞っていることから、私でも同時代性を感じることができ、 面白く読めました。 リクルート事件とかも、当時は小学生でしたが、 藤波孝生氏が三重県選出の議員さんだった等の理由で、結構、家での会話で 話されていたような記憶があり、子供心に印象に残っています。 村上ファンド事件などは最近の事件で鮮明に記憶にありますし、 武富士事件や興銀、長銀の話などは、金融業界に身を置く者としては興味深い話です。 著者は週刊新潮編集部に在籍していたということで、 文章はこざっぱりとして読みやすい印象で、各章の文量もちょうど良かったです。 ベンチャー企業の創業者がムチャをやるというのは、 ある種、ガバナンスが効きにくいのは仕方がない面もあるかなと思うのですが、 (それが一種のベンチャーのエネルギーだと思うので) 銀行のような組織においても、時に暴走が出来てしまうことが恐ろしいなと感じます。 ま、自分の勤め先を思っても、上場企業ではあるもののガバナンスなんて心許ないですからね・・・・。 今後も、えーーーっ!と驚くような経済事件が ときどき生まれては、社会を揺るがし、それが変革のきっかけとなり、 社会が良い方にシフトしたり、悪い方へ流れていたりとするのでしょうね。
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