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『亡命者』
- 2024/01/29(Mon) -
大沢在昌 『亡命者』(講談社)、読了。

実家にあった本。
ハードカバーの分厚い本だったので、長編だろうと思い込み、
読む気が湧いてくるまで積読にしていたのですが、いざ読み始めてみたら短編集でした。

とある六本木のバーで酒を飲みながら依頼人がやって来るのを待つ通称「ジョーカー」。
人探し、中身の分からぬ荷物の輸送など、様々な依頼をするためにバーを訪れる人々。
その手には着手金の100万円の札束が・・・・・。

ハードボイルドな雰囲気満点の設定で、しかも、最初の話が、この「ジョーカー」の役目を
前任のベテランから引き継いだばかりの主人公がまだ若かったころの昔話から始まります。

肩ひじ張って前任者のやり方を踏襲し、前任者に引けを取らない姿を見せようとしますが、
背伸びしすぎて失敗したときは、すぐに自分の過ちを自覚して反省する姿勢は好感が持てました。
つっぱね続けないところが、ハードボイルド風(←私の勝手なイメージ)でありながら
素人にも読みやすくなっている大沢作品らしいところかなと。

バーにやってきた高齢の依頼者から声を掛けられ、前任者から引き継ぎ直後に自分が担当した案件の
人物だと分かったところで、当時の話になっていきます。
そこから、「実はその事件の真相は、当時の主人公は気づいていなかったが、こういう裏側があって、
実は、その後もずっと主人公が別の案件だと認識していた事件が陰で繋がっていた・・・・・」
みたいな長編が展開されるのかと、第一話を読み終わった時点では思い込んでました(苦笑)。

第二話は、全く別の案件でした。

でも、全編通して、小品にまとまっていて、面白く読めました。
主人公とバーのマスターの関係も面白かったですし、バーのマスターが重要な役割を担う回もあり
あー、そういう人間性の人なんだなと、だから主人公とも長年うまくやってこれたんだなと、
納得しながら読めました。




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『パンドラ・アイランド』
- 2023/06/25(Sun) -
大沢在昌 『パンドラ・アイランド』(徳間書店)、読了。

最近、友人と小笠原諸島の話になり、
私は今まで5回行ったことがあるので、「また行きたいな~」と懐かしさに浸っていたら、
そういえば南国の離島が舞台の作品が積読だったはず・・・・・と思い出し、
本の山の中から出してきました。

舞台は、小笠原諸島の母島からさらに定期船で1時間半という場所にある
架空の「青國島」が舞台です。
人口が900人ほどのため、駐在員を置くほどでもないとの判断で、最寄りの警察官は
小笠原側にしかおらず、それでは支障があると考えた青國島村役場が
村職員として「保安官」を置いています。
前任の保安官が急病で亡くなったため、その後任の募集に手を挙げた主人公。

警視庁の捜査一課に在籍していたエリート刑事であるにもかかわらず、
捜査中の事故がきっかけで警察官の仕事に疑問を抱くようになり、
警察官を辞めて、都会から逃れるかのように青國島にやってきます。

ストーリーの本筋は、この平和な島で発生した殺人事件の犯人探しなのですが、
それよりも、舞台装置の巧みさが、小笠原に行ったことがある人間なら
「そうそう、そんな雰囲気あるよね!」と納得できる構成で、面白かったです。

米軍占領期以前から島に住んでいた旧島民、返還後に島にやってきた新島民、
さらに観光地化してからやってきた新新島民の、表面的には仲良くやってるけど
腹の中では不満が渦巻き、ちょっとしたことで不信感が表面化する複雑な人間関係。
さらに、島民の中で発言権のある人間が村役場の上のポジションを占めるので
ますます権力が偏在していく構造と、その下に仕える事なかれ主義の職員たち。
米軍占領期以降も島に残ったアメリカ人、米軍の影響が歴史的にも文化的にも残る島の気質。

何もかもが、「そうそう、そんな感じ!」と納得できて面白かったです。
父島がそういう事件の起こるような不穏な島だという意味ではなく、
何か大きな事件が起きたら、平和な雰囲気がガラッと変わりそうな土壌がありそうだなという意味で。

大作だったので、読み通すのに5日間ほどかかりましたが、
凄く満足度の高い5日間でした。久々に読書に浸った感覚です。
なのに、この投稿を書くのにAmazonを見に行ったら、評価が低い(悲)。
どうやら固定ファンの方からすると、大沢作品的要素が薄かった模様。
私は、特に大沢ファンというわけではないので、その視点では評価不能です。
あとは、作品のリアリティのところでマイナスにされてるのかな?という感じ。

正直、私も、父島に行ったことがなければ、この世界観は嘘っぽいと感じたかと思います。
でも、行ってみると、島に移住した友人はやっぱりいろんなところに気を遣ってる感じだし、
宿のオーナーさんがアメリカ出身だったり、土産物店の話を聞いても
「あそこは前からある店」「あそこは最近移ってきた人の店」みたいな表現をされるし、
そういう複雑な人間関係はひしひしと感じました。

物語の後半で出てくる濃霧に関しても、父島では体験がないですが、
八丈島では濃霧のため終日飛行機が空港に下りられず
帰る日を1日後ろにずらさねばならないことがあり、
島の濃霧ってとんでもなく濃霧なんだと実感しました。
だから、この展開も違和感なく受け入れられました。

唯一リアリティがないと感じたのは、さすがに終盤で人が死に過ぎだと思いますが、
まぁ、ハードボイルド作品とはこんなものなんだろうと、そこは割り切って読めました。

これまで6冊大沢作品を読んでいますが、
「ハードボイルドは苦手だなぁ・・・・」と思いつつ、読後の感想は「面白かった!」というものばかりなので
大沢作品だけはしっかり追っていこうかなと思います。




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『雪蛍』
- 2022/09/20(Tue) -
大沢在昌 『雪蛍』(講談社)、読了。

これまたお客様にいただいた本。

探偵崩れで、今は薬物中毒者のシェルター的な組織に身を置く男が主人公。
どうやら前職の頃の探偵時代の話がシリーズ化されているようで、
本作は、そのキャラクターの復帰第一作だったようです。

シリーズを順に読んでいたら良かったのかもしれませんが、
本作を何の前知識もない状態で読んだ自分としては、
物語の構造を理解するのに手間取りました。

冒頭、有名アイドル少女が失踪し、その連れ戻しに主人公が東北の僻地に向かったところから
始まるのですが、とにかく、主人公も少女も、肩ひじ張ったしゃべり方しかできなくて、
ザッツ・ハードボイルド!私の苦手な世界です(苦笑)。

で、連れ戻してきたら、今度はシェルター側で
新入り薬物中毒者の問題行動が顕在化し、さらに、東京で、行方不明となっている金持ちの娘の
居場所探しを依頼されます。

アイドルの話と、薬物中毒者の話と、金持ちの娘の話、
最初は、この3つがそれぞれ勝手に進んでいくので、頭が混乱しました。
どれか一つでも、他人に仕事を振れよ~、とビジネスマン的思考では愚痴ってしまいます(苦笑)。

最後まで読んでみて、確かに、主人公の人間性に深みを持たせるためには、
薬物中毒者の話と、少女の行方探しと、両面から主人公を描いた方が立体的になるという
その意図は分かったのですが、でも、それぞれ重たい話なんだから
別の作品に分けてよ~、とも思ってしまいました。
シリーズを追いかけている人なら、すんなり読めたのかな?

サスペンス作品という点では、行方不明の娘探しの方が、
芸能界やらヤクザ社会やら地元警察が絡んでくるので面白かったのですが、
でも、あまりに特殊な価値観を持った人ばかりが登場してきて、
なんだか疲れました。
少なくとも、私は、関わり合いになりたくない世界だわ・・・・・・という感じ。

唯一、穏やかな日々を求めて別荘暮らしをしている引退した脚本家の生活に
羨ましさは感じましたが。
日がな一日、私なら、本を読んだり、映画を観たり、音楽を聴いたり、
そういう好きなことをして暮らしたいなぁと。

でも、高齢になってからの別荘一人暮らしは何かあったら不安だから、
お手伝いさんを雇っての別荘暮らしか、もしくは町中で見守りサービス付きマンション暮らしか・・・・・・
そんな、本作とは全く関係のないことを考えながらの読書となり、
「それまでにお金貯めなきゃ!」が最終的な結論となりました。

そんな本じゃないはずなのに(苦笑)。
先日読んだ大沢作品がとても面白かったので、本作も分厚いな~と思いつつ
すぐ手に取ったのですが、うーん、本作のせいで、次の作品に手が伸びるのは億劫になりそう・・・・。




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『ライアー』
- 2022/09/07(Wed) -
大沢在昌 『ライアー』(新潮社)、読了。

最近、大沢作品をたくさんくださるお客様がいて、
次々と持ち込んでくださるので、早速読んでみました。

主人公は、秘密の政府系暗殺組織に所属する殺し屋の女。
いかに効率的にターゲットを抹殺するかの能力に長けており、
感情に左右されないので、組織の中で最も成果を上げている人物。
本質は非人間的なはずなのに、なぜか熱烈なプロポーズを受けて大学教授と結婚し
小学生の子供までいる生活、しかし夫の父は、この暗殺組織を立ち上げた黒幕で・・・・・。

いきなり上海での暗殺計画の実行場面から始まりますが、
主人公の状況判断の良さ、行動力、忍耐力、様々な能力の高さがコンパクトに描写され、
ワクワクしました。

暗殺は予定通り実行したものの、予想外の現場侵入者があり、さらに警察に取り巻かれ
そのまま上海警察へと連行されていきます。
身元がばれるのかと思いきや、数時間で釈放され、暗殺事件はヤクザ内の仲間割れということに。

帰国して数週間後、主人公の夫が北新宿のマンションの一室で
深夜に売春婦風の身元不明の女と火災で亡くなっているのが発見され、
主人公は、全く身に覚えがない場所と亡くなり方に疑問を抱き、自ら調査を始めます。

自分の身に起きた上海の事件については「日本政府の交渉のおかげかな」という感じで
スルーしてしまうのに、夫の事件にはいやに拘ります。
というか、夫の事件へのこだわりが普通の妻としての心情であり、
上海の事件をそれほど気に掛けずにいられることに、ちょっと変じゃない?と思ってしまいました。
まぁ、秘密組織に所属する者としては、組織の上位者を無条件に信用できなければ
殺人なんて仕事を請け負えないのかもしれませんが。

で、夫の事件の真相を暴くために、主人公は上司に報告を入れつつも
時折暴走して単独行動を行い、さらには夫の事件の担当の所轄刑事も巻き込んで
ついには、もう一つの組織の存在が見えてくる・・・・・・。

なんだか文章にしてしまうと、私の文章力に難があり、リアリティのない物語のように思えてしまいますが、
作品を読んでいる間は、ワクワクして手が止められませんでした。
まさに寝る間を惜しんで朝7時まで読んでしまいました(苦笑)。

スピーディな展開、登場人物たちの頭の良さと行動力の素晴らしさ、
組織のルールにはきちんと従うというお上品さと、丁寧な会話でズケズケ上司にモノをいう大胆さ、
2つの組織の性格の違いや、そうなるに至った必然性等もしっかりと描かれており、
納得しながら読み進めました。

中盤以降、キーマンとなる人物数人が、コトの真相をペラペラしゃべる展開が何度かあり、
「ちょっと無防備にしゃべらせすぎなんじゃないの?」とも思いましたが、
そこも、次の展開への布石というか、真相の複雑性を演出する形になっており、後から納得。

読み終えて、全ての真相を知ったときには、
統計学者の夫は、こういう展開になる可能性をどのぐらいの確率だと予測していたのかなぁと
なんだか虚しい思いに囚われてしまいました。




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『極悪専用』
- 2022/04/09(Sat) -
大沢在昌 『極悪専用』(文藝春秋)、読了。

ハードボイルド作品は、その独特な世界観というか、独特なルールが苦手で
著者はハードボイルド作家という認識なので、あんまり触手が伸びないのですが、
本作は実家の本棚にあったので読んでみました。
両親の趣味とも思えないので、いただきものかな?

結論から言えば、面白かった!
裏社会の物語なのですが、ウィットにとんだ語り口と、魅力的なキャラクター達で
サクサク読める連作短編集でした。

タイトルは小説の舞台そのものを表しており、
多摩川べりのマンションを裏社会の組織が買収しまるごと管理。
そこに住むには何かから逃げたり、身を隠す必要がある、まぁ簡単に言えば犯罪者が住人。
完璧なセキュリティとプライバシー保護を謳い文句に、高額な家賃で貸し付けています。
死体の回収や武器の保管庫など特殊サービスも充実。

主人公は、裏社会で絶大な力をもつ祖父の威光で、好き放題やってきたイキッたおにいちゃん。
祖父のお仕置きで、このマンションの管理人助手として1年働かされることになり、
下手を打つと即死という過酷な環境で、もちまえの要領の良さで生き延びていきます。

50室以上もあるマンションなので、殺し屋、ハッカー、アラブの富豪、元CIAなど
様々な人間が住んでおり、短編それぞれでいろんな事件が起きます。
話を大きくしようと思えば、1つ1つ膨らますことができそうなネタばかりですが、
あえてサクッと話を終わらせ、マンションのルールである「完璧なセキュリティとプライバシー保護」の
枠内でしっかり収まらせているので、起きている事件は過激なものばかりですが
小説として風呂敷を広げ過ぎて破綻していくようなところが目につかず、
すんなりと小説の世界を楽しむことができました。

ハードボイルド作品を好む人にとっては、このあっさりと短い分量で終わらせてしまうのが
物足りないというか、全然ダメ!という感想になってしまうのではないかと思いますが、
私は、ある種、ブラックユーモア小説として捉えたので、そのサクッとした感じが
裏社会の冷たさとリンクしているようで、良い味になっていると感じました。

続編が出てるなら読んでみたいのですが、出てなさそうですね。




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『ダブル・トラップ』
- 2022/01/25(Tue) -
大沢在昌 『ダブル・トラップ』(集英社文庫)、読了。

ハードボイルド作品というのは、独特の文体というか文章の雰囲気になじめなくて
あんまり触手が動かないのですが、本作はブックオフで50円だったので
試しに買ってきたものかと思われます。
ずーっと積読だったのですが(苦笑)。

主人公は、地方で高級志向のレストランを経営する男。
その町にやってくる前は、「松宮産業」という組織で、何やら怪しい活動をしていた・・・・。

この過去の経歴について、前半で思わせぶりな描写が続くのですが、
裏表紙のあらすじに「元政府機関の腕利き諜報員」とネタバレされてて意味なし(爆)。
ただ、正直、身バレまでにこんなに回りくどい描写をする必要性はあまり感じられず、
あらすじで「政府の諜報員」と明記されているから読みやすいと感じました。
編集者グッドジョブ!

ということで、ハードボイルド作品が苦手な理由のひとつ目、
思わせぶりな描写が延々続くというという点は、あらすじのおかげでクリアできました。

松宮産業という日本政府の諜報機関、そして当然、CIAや中東方面の諜報機関も登場してきて
これらインテリジェンス界の活動は興味深く読みました。
それこそ、佐藤優氏や手嶋龍氏の作品などで、現実世界のインテリジェンスについての
解説は読むことができますが、それらは日常生活に表面的には出てこない裏の話なので
「もし表の日常生活に諜報員たちが登場してきたら・・・・」という空想をするには
ハードボイルド作品というのは一つの手段だなと思いました。

特に本作は、大手商社が絡んでくるという点で、日本らしさもあって面白く思いましたが、
一方で、結局真相を辿ってみると、
内々で潰しあいをしているだけなのではないかという大局観のなさも気になり、
なんだか最後は尻すぼみな感じでした。

やっぱりインテリジェンスの話には、「世界はこうあるべきだ」という大局観が
たとえそれが独善的な思想であっても、そういう大きな話がセットになっていてほしいものです。
その点では、佐藤優氏の著作を超える知的興奮は得られませんでした。

ハードボイルド作品については、私立探偵が目の前の殺人事件を解決するような類のものは
多分、今後も興味を持てないような気がしますが、
本作のような政府の諜報機関が出てくるような作品なら、もう少し挑戦してみても
良いかなと思いました。




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『走らなあかん夜明けまで』
- 2009/03/28(Sat) -
大沢在昌 『走らなあかん夜明けまで』(講談社文庫)、読了。

ハードボイルドというジャンルは馴染みがないのですが、
またまた会社の先輩より貸していただきました。

で、本作ですが、面白かった!!
特に、真弓やケンといった、
カタギの人間だけれどもヤクザ社会と隣り合って生活している人々の
キャラクターが魅力的でした。
腹が座ってるというか、思考が柔軟というか。

また、最初は、明日の会議を心配してアタッシュケースを取り返そうと
必死な坂田ですが、真弓やケンが巻き込まれることで、
引くに引けなくなって、最後まで突き進んでしまうという
ストーリー展開も納得性がありました。

「発表前の新商品チップスを取り戻す」というだけだと、
ヤクザが本格的に絡んできた時点で諦めると思います。
それを、次に進まないといけないような状況に追い込む設定は
上手いと思いました。

この作品を、大阪をほとんど知らないという作家が書いたというのには驚きました。
まぁ、私も知らないので、大阪の方が読むと「違う」と思われるのかもしれませんが、
私には、大阪の熱い息遣いというものがものすごく伝わってきました。


走らなあかん、夜明けまで (講談社文庫)
走らなあかん、夜明けまで (講談社文庫)大沢 在昌

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