『ダブル・トラップ』
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- 2022/01/25(Tue) -
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大沢在昌 『ダブル・トラップ』(集英社文庫)、読了。
ハードボイルド作品というのは、独特の文体というか文章の雰囲気になじめなくて あんまり触手が動かないのですが、本作はブックオフで50円だったので 試しに買ってきたものかと思われます。 ずーっと積読だったのですが(苦笑)。 主人公は、地方で高級志向のレストランを経営する男。 その町にやってくる前は、「松宮産業」という組織で、何やら怪しい活動をしていた・・・・。 この過去の経歴について、前半で思わせぶりな描写が続くのですが、 裏表紙のあらすじに「元政府機関の腕利き諜報員」とネタバレされてて意味なし(爆)。 ただ、正直、身バレまでにこんなに回りくどい描写をする必要性はあまり感じられず、 あらすじで「政府の諜報員」と明記されているから読みやすいと感じました。 編集者グッドジョブ! ということで、ハードボイルド作品が苦手な理由のひとつ目、 思わせぶりな描写が延々続くというという点は、あらすじのおかげでクリアできました。 松宮産業という日本政府の諜報機関、そして当然、CIAや中東方面の諜報機関も登場してきて これらインテリジェンス界の活動は興味深く読みました。 それこそ、佐藤優氏や手嶋龍氏の作品などで、現実世界のインテリジェンスについての 解説は読むことができますが、それらは日常生活に表面的には出てこない裏の話なので 「もし表の日常生活に諜報員たちが登場してきたら・・・・」という空想をするには ハードボイルド作品というのは一つの手段だなと思いました。 特に本作は、大手商社が絡んでくるという点で、日本らしさもあって面白く思いましたが、 一方で、結局真相を辿ってみると、 内々で潰しあいをしているだけなのではないかという大局観のなさも気になり、 なんだか最後は尻すぼみな感じでした。 やっぱりインテリジェンスの話には、「世界はこうあるべきだ」という大局観が たとえそれが独善的な思想であっても、そういう大きな話がセットになっていてほしいものです。 その点では、佐藤優氏の著作を超える知的興奮は得られませんでした。 ハードボイルド作品については、私立探偵が目の前の殺人事件を解決するような類のものは 多分、今後も興味を持てないような気がしますが、 本作のような政府の諜報機関が出てくるような作品なら、もう少し挑戦してみても 良いかなと思いました。 ![]() |
『走らなあかん夜明けまで』
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- 2009/03/28(Sat) -
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大沢在昌 『走らなあかん夜明けまで』(講談社文庫)、読了。
ハードボイルドというジャンルは馴染みがないのですが、 またまた会社の先輩より貸していただきました。 で、本作ですが、面白かった!! 特に、真弓やケンといった、 カタギの人間だけれどもヤクザ社会と隣り合って生活している人々の キャラクターが魅力的でした。 腹が座ってるというか、思考が柔軟というか。 また、最初は、明日の会議を心配してアタッシュケースを取り返そうと 必死な坂田ですが、真弓やケンが巻き込まれることで、 引くに引けなくなって、最後まで突き進んでしまうという ストーリー展開も納得性がありました。 「発表前の新商品チップスを取り戻す」というだけだと、 ヤクザが本格的に絡んできた時点で諦めると思います。 それを、次に進まないといけないような状況に追い込む設定は 上手いと思いました。 この作品を、大阪をほとんど知らないという作家が書いたというのには驚きました。 まぁ、私も知らないので、大阪の方が読むと「違う」と思われるのかもしれませんが、 私には、大阪の熱い息遣いというものがものすごく伝わってきました。
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