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『権力者とメディアが対立する新時代』
- 2021/09/09(Thu) -
マーティン・ファクラー 『権力者とメディアが対立する新時代』(詩想社新書)、読了。

知らない出版社の新書で、かつトランプさんと安倍さんの写真が表紙にドーンとあり、
これはブームに乗っかった粗い本かなとも思ったのですが、
著者がニューヨークタイムズの東京支局長をやっていたとのことなので、
リベラル目線からの評価だという点に注意すれば、そこまでヤバい内容ではないだろうと思い
買ってみました。

前半は、トランプ政権誕生前後における、米国のメインストリームメディアとトランプ氏の対決、
そして、新興メディアも参戦しての、反トランプメディアと親トランプメディアの対立など
日本人には分かりにくい部分をすっきり説明してくれているので、頭の整理に便利です。

著者の立場が、メインストリームメディアのリベラル的見地からの発信なので
当然、トランプ政権には批判的な解説なのですが、
しかし、こういう反トランプの報道姿勢が、結局は不満を抱える米国民のトランプへの期待を高め
トランプ政権誕生につながったと自ら解説しています。
つまりは、メインストリームメディアが米国民にNoを突き付けられたということですよね。

後半は、安倍政権とメディアの戦いも解説していますが、
前半のトランプ政権批判に比べると、日本の状況の解説は中身が薄く批判のトーンも低調です。
米国内に分断を生んだトランプ政権に比べると、安倍政権は分断まではもたらさず、
「アベ独裁を許さない」という一派が日本国内で一般的な賛同を得られてないので、批判も鈍るのでしょうね。

というわけで、日本の分析はイマイチでした。
著者としては朝日新聞を応援したいのでしょうけれど、
肝心の朝日新聞が腰砕けなので、思うような応援もできない・・・・というような印象です。

著者の指摘で、そうだなと感じたのは、
「フェイクニュース」というのは「ウソのニュース」という意味ではなく、自分と同じ考えを伝えない報道を
指す言葉だという指摘。

これは、左派も右派も、そうだと思います。
自分の主張に反するニュースを、すぐに「フェイクだ!」と批判しますよね。
明らかに事実に反するニュースは、もちろん虚偽報道だとして批判されるべきですが、
真実がどうかという点ではなく、思想がどちら寄りかという点でフェイク扱いしているような
幼稚な批判が多いように思います。

思想の際に関しては、「フェイクだ」として言論を封じようとするのではなく
正々堂々と考え方の相違を明確にして議論すればよいと思うのですが、
そういう正面からぶつかることはせずに、左右ともに足の引っ張り合いみたいなことをしますよね。

政治的なニュース以外に、例えばLGBT方面での少し極端な発言や古風な考え方について、
そういう考え方の人もいるんだという多様性を認めずに、言論封殺の方向に走りますよね。
今までは、確かに、LGBTに属する方々が自由に発言する場を得られなかったから
彼らが言論封殺の被害に遭ってきたというのはその通りだと思います。

でも、例えば性転換をして女性になったアスリートがオリンピックの女子部門に出場することについて
議論になっていましたよね。その時、声高に反対を叫んだのは、その女性の出場により
オリンピックに出られなかった他の女性選手たちであり、アスリートではない一般人は、
なんか変じゃない?と思ってても、真正面から反対する声は上げにくそうにしていたような印象があります。

これって、LGBTの人を過度に意識して、LGBTじゃない人が発言しにくくなっている状況ではないかと
私は危惧しています。もっと自由に議論ができる社会こそが健全じゃないかと。

今は、あくまで過渡期なのでしょうけれど、一人一人が、発言すること、判断することに、
主体的に責任をもって行動できる社会に少しでも近づけばなと願います。
また、一人一人がメディアに対しても健全な批判の目をもって利用すべきだなと思います。




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『独裁の宴』
- 2021/02/26(Fri) -
手嶋龍一、佐藤優 『独裁の宴』(中公新書ラクレ)、読了。

佐藤優氏の話は、やっぱり国際情勢分析が一番興味深いですね。
しばらく著作から遠ざかってしまっていましたが、先日久々にホリエモンとの共演を動画で見て
確かに解説の切れ味は鋭いけど、国内情勢の分析は、日本の政治がふにゃふにゃだから
鋭い刃を持っていても切れ味がよく伝わってこないんですよね(苦笑)。
斬る相手が、斬り甲斐のあるモノじゃないとね。

というわけで、本作は、その斬る相手が、
北朝鮮であり、一つの中国であり、トランプ・バノン政権であり、
一流の戦略国家ばかりなので、各国が持っている野望がはっきり分かって、
とても面白い内容でした。

日本国内の報道では、表面的な出来事を断片的にしか伝えてくれないので、
なんでそんな流れになっているのか理解できないんですよね。
ただただ「今こういうことが起きました」というだけで、背景が分かりません。

しかし、本作を読んでみると、米朝二国間協議に傾く可能性は大いにあると言っていて、
確かにその後、そういう動きになったので、さすが世界の動きを読んでいる人には
分かるんだなぁと納得。

テレビも新聞も全然そういうことを伝えないからダメなんだ!と、
最近流行りのメディア叩きを私も最初は頭に浮かべたのですが、
しかし、途中から、「価値ある情報を無料で入手しようという自分の姿勢が間違ってるのかも」
と思うようになりました。

本質を突いた解説をタイムリーに知りたいと思ったら、
そこは対価をきちんと払う必要があるのかなと。
スポンサーが対価を払ってくれているテレビのニュース番組に
そもそも、骨太の解説を視聴者が求めることに無理があるのかも・・・・と思うようになりました。
すでに私はテレビ契約を切っちゃったので、もうテレビというメディアは関係なくなったのですが(苦笑)。
新聞も、一応日経オンラインは契約してますが、ニュース解説を読むためじゃなく
自分の関係する業界のニュースをプッシュ通知でタイムリーに知るためなので
払ってるお金は、解説内容に対してではなく、プッシュ通知機能に対してなんですよね(爆)。

Youtubeでも様々な情報を無料で入手することができるようになりましたが、
本当に重要な情報は有料動画になっていると思います。
一見、無料メディアが急拡大しているように思えますが、
実は、対価を払わないと意味のある情報が得られないという構造に変質していってるんだなと
本作を読みながら、そんなことを考えていました。






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『ドナルド・トランプ』
- 2017/12/15(Fri) -
佐藤伸行 『ドナルド・トランプ』(文春新書)、読了。

著者が本作を描いたとされるのが2016年7月。
トランプ大統領の誕生が決まる4か月前。
当時は、クリントン優勢とか伝えられていた状況かと思老いますが、
その時点で本作を書こうとしたのは流石。

祖父の代まで遡っての、トランプ家の流儀というか教育というか、
ドナルドが生まれてくるまでの歴史を辿りながら、
大統領選挙における戦略や戦術についても解説し、
選挙前とは言え、「トランプ大統領、十分にありうるよ~」と文章に残した
著者の読経というか、政局の読みは凄いですね。

口で言うだけでなく、本に残すという度胸が凄いです。

そして。レーガン大統領との共通点が分析されていますが、
読めば読むほど、なるほど~でした。

私が小学校低学年の頃まで大統領だった人なので、
アメリカ大統領=レーガンが、私の中で最初のアメリカの記憶になってます。
物心ついたころには、既に大統領3期目だったと思うので、
経験も貫禄もある大統領であり、何の疑問も抱かない存在でしたが、
よくよく考えてみれば、2流俳優上がりということで、
生粋の政治家ではないという点ではトランプ氏と似てますね。

でも、第1期のレーガンよりは、きっと選挙期間中のトランプの方が
テレビをはじめとするマスコミ慣れもしてるし、
選挙民的にもテレビでよく見る人というイメージが固まっていたのでしょうね。
レーガンさんよりも、身近な人というイメージだったのではないでしょうか。

そんな人が、過激な発言を繰り返し、しょちゅう炎上してるというのは、
ある種のエンタメと言いますか、会話のネタと言いますか。

とにかく、「アメリカ合衆国の政治はこうあるべきだ!」というガチガチの人ではなく、
「みんなの(もしかすると「私の!」)利益が最大化する方向を模索しよう!」という
ある意味シンプルな方針を貫いているので、分かりやすいです。

今、アメリカは、壮大な実験の最中ですね。
アメリカが再び強くなるのか、分裂して弱体化するのか、
海を隔てた国の住民として、非常に興味があります。


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