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『目からハム』
- 2021/12/16(Thu) -
田丸久美子 『目からハム』(文春文庫)、読了。

田丸さんの通訳エッセイ、読むのは2冊目です。
前作では、とにかくイタリア人の恋愛観や口説きのテクニックみたいな話が盛りだくさんでしたが、
本作は、通訳としての心構えというか、自分なりのルールみたいなものの話も多く、
前作が会話術エッセイ的だったのに対して、本作はお仕事エッセイのように感じました。

ただ、そこはサバサバ才媛の田丸女子ですから、
もちろん面白おかしく味付けされてて、通訳としての仕事への興味も満たせるし
面白エッセイとしても楽しめるし、満足できる一冊でした。

観光ガイドとしてのイタリア人の日本観光の案内から始まり、
随時通訳、同時通訳とレベルアップされ、それぞれの場面での通訳としての技術上の注意点と、
話を伝える理解してもらい楽しんでもらうという、会話術上の注意点と
区別しながら解説されていて、納得感大でした。

さらには同業者がどんどん生まれてきて過当競争になっているという状況を踏まえ、
経済環境的な側面や、業界全体の能力レベルの側面の解説も
一つの産業の解説として興味深かったです。

自分自身の失敗談をさらけ出せるというのも、
ある種、自分の能力に相応の自信がないとできないと思いますので、
やっぱり田丸女子は、イタリア通訳界のレジェンドなんでしょうね。




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『シモネッタのデカメロン』
- 2021/09/18(Sat) -
田丸久美子 『シモネッタのデカメロン』(文春文庫)、読了。

一時期、米原真理さんの著作にはまっていた時期があり、
真理さんの本に「シモネッタ」として田丸さんも登場してくるので、
田丸さんの著作も買い込んでありましたが、
真理さんの闘病生活が登場してくる本を読んでしまったら、
悲しくなってしまって、その後は、あんまり作品に手が伸びなくなってしまいました。
で、本作も、ずーっと積読でした。

なんとなく、今回、積読の山の中で、自然と本作に手が伸びました。
サブタイトルに「イタリア的恋愛のススメ」とあり、私にはあまり馴染みのないジャンルを
あえて選んだのは気分転換したかったからかな。

とにかく、怒涛の、イタリア男による恋愛テクニック披露のような一冊。
ちょっとでも隙あれば、女性を褒め、口説き、楽しませる。
このエネルギーは凄いなと、素直に感じ入るとともに、
奥手なイタリア人男性はプレッシャーきついだろうな・・・・と同情してしまいます。
それとも、そんな男性はイタリアには存在しないのかしら?

著者は、イタリア語の通訳として多くのイタリア人に出会う機会があるから、
本にまとめるだけのエピソードに事欠かないんだろうと思う一方で、
すべてのイタリア人通訳が同じ密度の体験をしているとも思えず、
やっぱり著者の人間的魅力によるところが大きいんだろうなと思います。
イタリア人に信頼されていたり、好かれていたりするからこそのエピソードの山でしょう。

日本で通訳してあげたイタリア人から、「遊びにおいでよ」と誘われて、
ほいほいイタリアまで出かけていく人って、どのくらいいるんですかね?
そもそもイタリア語の通訳してたら、そういうお誘いは多いものなのか、
通訳の人はその言語の国に行ったら、お客様のところにアチコチ寄るものなのか、
相場がよくわからないので、著者の経験や行動が一般的なのかユニークなのかよく分かりません。

私の勘では、田丸さんも真理さんも、通訳を生業とする人の中では異端児なのではないかと推測。
そうじゃないと、通訳業界、一般人の感覚と壮大なギャップがあるように思います(苦笑)。

あと、本題に戻ると、文章もサクサクっと軽いタッチでどんどん盛り上げていくので、
読みやすいですし、笑いやすいです。
通訳が上手くできる人は、文章構成力もあるんでしょうね。
しかも、盛って盛ってではなく、削って削いで、無駄のないシンプルな表現の中に
重要な要素は一つ残さず入れていくという技術が生きるのだろうなと思います。

最後の米原真理さんとの対談では、あぁ、もう、この人はこの世にいないんだな・・・・と
やっぱり悲しくなっちゃいました。

まだ積読になっている田丸作品もあるので、そちらも早く読みましょう。




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『ガセネッタ&シモネッタ』
- 2009/12/01(Tue) -
米原万里 『ガセネッタ&シモネッタ』(文春文庫)、読了。

ガセネッタとシモネッタの命名はお見事ですが、
笑える話から考えさせられる話まで硬軟織り交ぜてのエッセイ集です。

難しい話はいろんな方に任せるとして、
やはり通訳の現場でのエピソードが面白いです。

ちょっとした小話から、
しゃべっちゃいけないような裏話まで、ネタが満載です。

このネタをコントロールしている言葉のセンスが私好みでした。
ちょっと捻りを加えた感じで。

また、文学や歴史の知識が豊富なので、
ちょっとしたお話にも深みが増す考察が添えられていて、
何を職業とするにも、教養とは大切な要素なんだなぁと
しみじみと感じさせられました。

文学論を語るときよりも、
ちょっとした身の回りの小話をするときに
文学のエッセンスを振りまけるようになりたいものです。




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