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『犯罪エリート集団』
- 2022/06/09(Thu) -
中島河太郎、権田万二 編 『犯罪エリート集団』(角川文庫)、読了。

近所のおばちゃんにもらった本。
昭和の時代のサスペンス作家のアンソロジーです。

8割がた読んだところで、実家に置いてきてしまい、
残り2割は2週間ぐらい経ってから読んだので、
前半の記憶がない・・・・・(苦笑)。

半分以上の作家さんがお初にお目にかかります状態で、
しかも名前すら知らない人もいて、時代を感じます。

文体も、いわゆる昭和のサスペンスの文体で、なんだかカクカクしている印象です。
変な客観視が強調されているというか。
同時代性の問題かもしれませんが、やっぱり今の作家さんの文章を読んでいる方が
ワクワクしながら読み進められて心地よいです。

個々の作品については、前半の記憶がないので(爆)、
最後の2~3作品について書くと、平岩弓枝さんの「美しき殺意」が面白かったです。
花街の売れっ子芸者が主人公で、舞踊の家元との結婚話と
過去をネタにした恫喝がきっかけの殺人とが絡み合い、
もともと人間関係がぐちゃぐちゃしている世界での殺人なので、
業界小説としても面白かったですし、心情描写としても興味深かったです。




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『この町の人』
- 2021/06/27(Sun) -
平岩弓枝 『この町の人』(集英社文庫)、読了。

質屋の女主人を中心に、彼女の家に出入りする親族や客や近所の人々の日常を
素直に切り取った連作短編集。

まず、この女主人が気持ちいいんです。
質屋を一人で仕切っているぐらいだから、お金に対する姿勢は厳しいものを持っていますが、
その反面、人間としては愛情豊かで、情にもろいようなところもあり、
とても愛すべきキャラクターでした。

そして、その質屋の2階に転がり込んでくるのは、ご近所さんだった同年輩の男。
下町らしく子供のころから知り合いの気の置けない仲です。
男の方は一人娘が嫁いだばかり。
男の金で取手市に新居を構え、そこに同居する予定だったのに
いざ一緒に住んでみたら気を遣う毎日に嫌気がさして、住み慣れた街に戻ってきてしまったとの理由。

私は結婚したことがないので、あくまで想像ですが、
結婚して、それまで赤の他人だった人物と同居するのって、気を遣うだろうなと。
もっと本音ベースで言えば、しんどいだろうなと(苦笑)。

しかも、本人はまだ隠居するような年齢でもないということで、ビルの夜警の仕事につきます。
でも、この選択は、娘からしたら、「せめて昼間の仕事にしてよ」と思っちゃうのも分かります。
夜勤は体がしんどそうですし、何もそんな肉体労働をしなくても・・・・という感覚もあります。

このあたりの、それぞれの立場での、自分の都合やら相手への思いやりやら、
いろんな思いが交錯するのですが、それが細やかに、でもすっきりとしたタッチで描かれており
とても面白い作品でした。

そんなに大きな出来事が起こるわけではないのですが、
人間の生活って、毎日こんな感じで過ぎていくよね~と、しっくりくる作品でした。

平岩作品はこれで3作目でしたが、前に読んだ作品も面白かったので、
これからはしっかり意識して追いかけていきたいと思います。




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『わたしは椿姫』
- 2021/01/24(Sun) -
平岩弓枝 『わたしは椿姫』(講談社文庫)、読了。

地元の図書館で廃棄処分されるという本の山をもらってきた中の一冊。
積読解消のため読んでみました。

著者のイメージがどうにも時代モノなので、
読んでみたら海外を舞台にした現代ものということで、ギャップに驚きました
・・・・・って、前回も同じような感想書いてるわ(苦笑)。

短編集ですが、最初の1話は、東南アジアの小国に赴任になった夫を追いかけ
新婚の妻が現地に赴いたものの、日本人奥様社会に絡めとられ・・・・・という
海外という広い舞台の中の小さなコミュニティの縛りのきつさを描いています。
いやぁ、この息苦しさ、世界に飛び出しながら奥様社会に閉じ込められるという矛盾、
興味深い話でした。
主人公の新妻が、日本でも外国人の家でメイドとして働いていたため、
英語力も英語圏での常識も身に着け、さらには考え方も大人な聡明さがあり
終盤のベテラン奥様をやっつける感は爽快でした。

昭和50年代に発刊された本ですが、
高度経済成長期ですから、こうやって海外に出ていく日本人が大勢誕生した時代なんでしょうね。
今よりも、登場人物たちに「海外駐在だ!」という熱意というか、肩ひじ張った感じを覚え
時代を感じます。

それ以外には、フランスの上流階級に食い込んだ元芸者の暮らしぶりを描いた
表題作の「わたしは椿姫」や、ドイツで日本料理店を繁盛させている女将が店の乗っ取りに遭う
「東は東 西は西」などが面白かったです。
女性が、自らの腕で事業を成し遂げ、暮らしを手に入れているというガッツが見事だなと。

私は子供のころから、あんまり海外というものに特別な興味を抱かなかったので、
留学を検討することもせず、仕事もドメスティックな会社を選んだのですが、
いつの間にか海外担当みたいになってしまっており、役員の海外出張にお供したり、
海外の企業さんとの折衝に当たらせてもらったり、それはそれで興味深い経験をさせてもらいました。
もっと大学の時に英語を勉強しておけばよかったな・・・・と、当然の後悔をしましたが、
でも、それ以上に、英語だろうと日本語だろうと、やっぱりビジネスマンとしての覚悟が
一番大事だなと途中から思うようになりました。
徹底的に情報を集められるか、タイムリーに判断できるか、みんなを説得できるか、
そういう部分で腹が括れていることが一番重要だなと。

本作に登場する女性経営者は、みんな、そこができていて、素敵だなと感じました。




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『湯の宿の女』
- 2017/06/27(Tue) -
平岩弓枝 『湯の宿の女』(角川文庫)、読了。

お初の作家さんです。

表紙のイラストから歴史ものかと勘違いして読み始めたら、
現代の温泉宿の女中さんの話からスタート。
現代の短編集でした(苦笑)。

1本1本は短めなのでサクッと読めますが、
最後のオチがどうにも弱い印象です。

ズルズルっと終わっちゃう感じでしょうか。

舞台設定も時代を感じるものが多く、
距離を感じてしまいました。

時代物の方が、変に時間の壁を感じずに済むかもしれませんね。


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