『Another』
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- 2015/09/02(Wed) -
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綾辻行人 『Another』(角川文庫)、読了。
ホラーって書いてあるし・・・・・、上下二巻だし・・・・・、と、 躊躇する要素は色々あったのですが、有名な作品なので挑戦してみました。 が! 読み始めたら止まらなくなって一気読みです。 特に、上巻の後半のぐいぐい感が心地よかったです。 起きていることのベースは怪異現象なのですが、 何から何までホラーにしてしまうのではなく、中学校における人間関係のバランスや閉鎖性を 絶妙な匙加減で物語の中に取り込んでおり、そのリアリティとホラーの融合具合が 非常に面白かったです。 学校における怪談話って、こういう風に創造され、強化されていくんだなぁということや、 いじめというのは劇的に始まるケースがあるんだなぁということや、 子供とはいえ、中学生は人間関係の機微を中学生なりに掴んでいるよなぁとか、 いろいろ興味深い観察ができました。 「ある」年は、1つのクラスの関係者で10人以上もの死者が出るという事態が、 今まで警察権力の介入なしに放置されていたという設定は やや無理があるようにも思いますが、 普通の学校において、死者発生率というのはどんなものなんでしょうかね。 同じクラスや同じ学年の子が亡くなったという経験はありませんが、 本作のようにクラスメイトの二親等以内の親族まで含めると、 祖父母が入ってくるので、1年間での死者って、1人、2人はいる気がします。 忌引きって時々耳にしましたから。 それを思うと、意外と子供の頃も、気にしていれば「死」を感じる瞬間もあったのかなと思います。 ま、子供ですから、すぐに忘れてしまうのでしょうが。 人形という幻想さを増幅させる装置や、 義眼という痛みを想像させる装置も上手く使われており、 最後は、著者お得意のトリックも登場し、非常に満足度の高い作品だと思います。
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『黄昏の囁き』
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- 2014/06/08(Sun) -
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綾辻行人 『黄昏の囁き』(講談社文庫)、読了。
囁きシリーズの第3弾。 まだ第2弾を読んでいませんが、シリーズとして大きな繋がりはなさそうなので、 100円で見つけた順にこちらを読んでみました。 兄がマンション7階の自分の部屋から転落死。 その幼馴染たちが、兄の死に極端に怯えている様子を目の当たりにした弟は 事故死の謎を追いかけていく・・・・・・。 事件の大枠は、中盤にだいたい見えてくるので、 謎解きそのものよりも、恐怖が迫ってくるサスペンスの方を楽しむ作品です。 次の殺人はどうやって起きるのだろうか 最後にどんな風に話を締めるのだろうかと、 ワクワクしながら読み進められました。 ただ、最後の最後、現実的な面でのコトの真相の方は、 話が飛躍しているように感じました。 意外性を狙いすぎて、現実味がなくなっているというか・・・・・。 最後のヤマの作り方を失敗しているように思います。 うーん、残念。
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『緋色の囁き』
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- 2013/02/16(Sat) -
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綾辻行人 『緋色の囁き』(講談社文庫)、読了。
学園ミステリーと思っていたのですが、 謎解きよりもサイコホラー的な要素が強い作品でした。 数日間のうちにどんどん殺人が起きていくので、 読む手を止められなかったのは確かなのですが、 「赤」「血」の幻想的な回顧シーンを挿入する思わせぶりな演出は、 あまり私の好みではありませんでした。 その思わせぶりな内容も、なんとなく途中で推測できてしまいましたし。 女性作家がこの作品を描いていたら、 なぜ綾さまの取り巻き連中がごっこ遊びから抜けられなくなったのかというような 「学園もの」としての観点にスポットを当てたのではないかと思い、 そういうジャンルで本作を読んでみたかったなぁと思ってしまいました。
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『黒猫館の殺人』
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- 2011/09/19(Mon) -
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綾辻行人 『黒猫館の殺人』(講談社文庫)、読了。
相当久しぶりの館シリーズですが、順番を飛ばしちゃいました。 100円でなかなか見つからないもので・・・・(苦笑)。 今回は、「黒猫館」と呼ばれる洋館が舞台です。 しかし、最初からそこに居るのではなく、 黒猫館の元・管理人という人物が記憶喪失になった状態で発見され、 彼の記憶を辿って、黒猫館を見つけ出すという面白い設定です。 トリックというほどのトリックは出てこないのですが、 黒猫館を巡る人間関係や、黒猫館の由来などの話が興味深く、 楽しんで読み進められました。 あと、ポーの『黒猫』の話が出てくるのも、個人的に興味をそそれられました。 小学校6年生のとき、『黒猫』を読んでしまい、あまりの怖さに、 しばらく夜のトイレがドキドキだった思い出があります。 他にも、ルイス・キャロルの逸話なども出てきて、 本読みとしても楽しめる作品でした。
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『霧越邸殺人事件』
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- 2011/06/25(Sat) -
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綾辻行人 『霧越邸殺人事件』(新潮文庫)、読了。
結構、本読みさんの間で評判の良い作品だと思っていたので、 少々拍子抜けしてしまいました。 まず、最初の殺人が起きるまでが長い・・・。 170ページを超えても、まだ誰も死んでないんですよ(苦笑)。 そして、薀蓄を垂れたがる登場人物たち。 その薀蓄が、作品の味付けになっている成功例もありますが、 本作では、冗長な言葉となってしまい、失敗していたような気がします。 むしろ、著者の「本格推理物を馬鹿にするな!」という熱い思いが 前に出過ぎてしまって、汚い言葉で表現すると「うざい」感じを受けてしまいました。 霧越邸をめぐるファンタジーな味付けもなされていましたが、 そのおかげで、この殺人事件を起こさざるを得なかった犯人の追い詰められた 恐怖心というものの描写が薄くなってしまったような。 とどのつまり、なぜ、一連の殺人が起こされなければいけなかったのか、 その真相が腑に落ちないということです。 頑張って700ページも読んだのになぁ・・・。
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『殺人方程式』
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- 2011/02/26(Sat) -
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綾辻行人 『殺人方程式』(光文社文庫)、読了。
館シリーズ以外の長編は初めてです。 本作では新興宗教団体内部で起きた殺人をテーマにしているということで、 興味を持ちました。 創始者が死に、そのあとに教主となった創始者の夫が死に、 さらには関係者と思わしき大学生が死に・・・。 本作は、物理トリックものだったのですが、正直、漫画の世界のような印象で、 「20mも、そんな・・・」と思ってしまいましたが、 舞台背景やキャラクターの味付けが面白く、作品としては楽しめました。 個人的に、新興宗教をめぐる関係者の悲喜劇に興味があるので、 教主の継承問題とか、それに伴う信者の葛藤とか、面白く読みました。 また、途中で登場してくる探偵役の位置づけが、 双子という設定を上手く活かして、でも出しゃばらず、 なかなかのバランスで活躍していたと思います。 真犯人は、私が「ハリウッド的真犯人」と呼んでいる(苦笑)、 あまり好きではないパターンでした。 謎ときの展開も、結構、ご都合主義というか、ヒントが向こうからやってくる感じです。 ま、今回は、謎ときにはあまり関心が向かなかったので、よしとしましょう。 巻末のあとがきに、本作品が出来た経緯が載っていましたが、 こんなに簡単に作品の骨格が決まってしまうものなんですねー。 (ま、多少の誇張はあると思いますが) 作品の作り方も分かって、なかなか面白かったです。 シリーズ作になっているようなので、そちらも挑戦してみたいです。
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『どんどん橋、落ちた』
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- 2009/08/22(Sat) -
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綾辻行人 『どんどん橋、落ちた』(講談社文庫)、読了。
2年ぶりとなった綾辻作品。 これまで「館シリーズ」しか読んだことが無かったのですが、 本作は短編集です。 しかも、綾辻先生ご本人が探偵役として登場するという異色もの。 かなりユーモア寄りの作りになっているので、気軽に楽しめました。 作者自身は、「本格ミステリ」への偏見の目や自分に対する批評への 回答というか、斬り返しというか、挑戦状というか、 いろんな思いが込められていたようですが、 わたくし、素人読者なので、そういう裏の意味は無関心で・・・・。 なんせ、最近まで「本格ミステリ」の定義がわかってなかった人間ですから(爆)。 むしろ、本格ミステリのルールの勉強になりました(苦笑)。 内容的には、「イソノ家」の衝撃作だけで、十分面白かったです。 (謎の真相はあんまり好みではありませんでしたが) 登場人物的には、「フェラーリは見ていた」の皆さんが オモシロキャラで良かったですねー。
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『水車館の殺人』
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- 2007/05/21(Mon) -
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綾辻行人 『水車館の殺人』(講談社文庫)、読了。
綾辻作品3つ目ですが、 「叙述トリック」としては一番インパクトが小さかった気がします。 トリックも7割方わかってしまいました。 でも、現実味は一番あったかも。 3作目ともなれば、館シリーズの味わい方も身についてきたので、 読み物として十分楽しめました。
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『十角館の殺人』
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- 2007/02/17(Sat) -
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綾辻行人 『十角館の殺人』(講談社文庫)、読了。
「現代の都会にかのホームズ氏が出現したとしても、おおかた滑稽さの方が目立つ」 と作者自身が登場人物に語らせていますが、 その有効な解消策として出てくるのが「嵐の山荘」とのこと。 で、本作は、その宣言どおり「嵐の山荘」パターンに突入するわけですが、 やっぱり、現実味の無い滑稽さは拭えないのかなという気がします。 「嵐の山荘」に陥るシチュエーションが非日常的ですし、 さらにそこで巻き起こる一連の騒動が、非常に特異な内容ですから。 その突飛さを受け入れて非日常性を楽しむのが、 この手の作品のオモシロさかなと思います。 さて、今回は、綾辻作品2作目だったのですが、 やっぱり叙述ミステリにしてやられました。 前回読んだ『迷路館の殺人』よりも、本作のトリックのほうが面白かったです。 しかしながら、最後の50ページでの興奮のために 最初の300ページがくっついているような印象も受けてしまい、 作品全体を通して緊張感を孕んでいるほうが 個人的には好きだなぁと感じてしまいます。
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