高殿円 『トッカン the 3rd おばけなんてないさ』(ハヤカワ文庫)、読了。
トッカンシリーズ第3弾。
面白いから読みたいのですが、なんせ、ページ数が多いので
ちょっと手に取るのに気合がいるんですよね(苦笑)。
今回のメインの捕り物の舞台は栃木県、鏡トッカンの地元です。
霊感商法の疑いがある占い師の団体と、畜産専門の運送会社が相手。
いずれも本部・本社が東京のため、グー子が担当することに。
本作を読んで考えていたのが、そもそも税金の滞納って、どうやって起きるんだろう?ということ。
本シリーズでは、脱税など、計画的に税金をごまかしている人たちがメインですが、
世の中には、税金を払いたくても払えない、お金がないという人もいるわけですよね。
たぶん、滞納者の人数でいうと、そういう、ちゃんとした人の方が多いのではないかと思うのですが、
そういう人たちの滞納のきっかけって何なんだろう?と。
法人税も所得税も、利益に対する課税ですから、基本的には事業の結果として
手元に残ったお金に対して課税されるわけですよね。
消費税も、受取消費税から支払消費税を差し引いた残額を納税するので当然それに該当する
お金は手元にあるはずで。
それなのに、納税する時期に無くなってしまっているというのは、
やっぱり取引先の倒産とか、売掛金の焦げ付きとか、売上の急減で回転資金がなくなるとか
そういう突発的な事象が原因なんですかね?
私自身、会社を経営しているので、毎年、法人税、事業税、固定資産税、消費税、源泉徴収分などなど
各種の税金を納めてますが、その金額が納められないぐらい資金が底をついた状態というのが
正直イメージできないです。
その分、経営が急激に傾く事態というのがイメージできない恐怖があります。
それとも、毎年毎年少しずつ溜まっていく歪みを放置することである日突然爆発するのか。
その兆候に気づけなさそうで怖いです。
と、まぁ、作品の本題に関係ない話を展開しましたが、
つまりは、私には、税務署に税金を取り立てられる事態というのが自分事としてイメージできないので
あくまで他人に起こる悲劇というか、自分で招いた泥沼という面もありますが、
そういう突き放した目で見てしまいます。
だから、なんだか、滞納者は悪、税務署は正義、みたいな
たぶん、一般の人とは感覚がズレているような気がしますが(苦笑)、
本作に登場した可哀そうな酒屋さんに対しても、「税金は払わなきゃ。払えないときは税務署に相談しなきゃ」
とちょっと批判的な目で見てしまう冷たい人間です。
私は、ルールを無視してズルする人間が生理的に嫌いなんでしょうね。
なので、ぐー子がデスクの上を飛び回って滞納者に馬乗りになったり、
霊感商法の黒幕を半分拉致るような形で栃木まで連れまわしたりしても、
「懲らしめてやれ!」と応援したくなっちゃいます。
可哀そうな酒屋一家に対しても、その結果、社会のルールを逸脱してしまった部分に対しては
やっぱりお灸をすえる必要があると思ってしまいます。
でも、そんな人たちに毎日向き合うぐー子は、
そりゃ、自分の仕事の意義だとか、自分の成長度合いとか、そういうことに日々悩むよなぁと
とても同情してしまいます。
お金を直接扱う仕事って、本当に、人間の生死に直接的な影響を及ぼすことがあるので、
世の中のルールと、一人の人間の間で、毎日神経すり減らして葛藤するんだろうなと思います。
私も、昔は金融業、つまりは金貸しだったので、その残酷さは少しは理解しているつもりです。
そんなドロドロの世界を、ぐー子と鏡トッカンと愉快な税務署の仲間たちという
ポップなキャラを駆使して読み物として作品化できる著者は、凄いなと思います。
鏡トッカンの元嫁が、もう少しストーリーそのものや、ぐー子自身に関わってくるのかと思いきや
そうでもなかったのが残念ですが、この設定が、このシリーズの今後の展開を
ちょっと難しくしてるんじゃないかと危惧してます。
落としどころが見えていない気がしてて・・・・・。
ま、とりあえず、次作を100円でまた探さないと。
