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『トッカン vs 勤労商工会』
- 2020/11/03(Tue) -
高殿円 『トッカン vs 勤労商工会』(ハヤカワ文庫)、読了。

トッカンシリーズ第2弾。

今回は、冒頭で、鏡特官の担当顧客が自殺してしまい、
社会は弁護士が参戦しての訴訟沙汰に。
そのため鏡は日常業務から切り離され、ぐー子は一人で業務を回さなければならない立場に
追い込まれます。

ここで、ぐー子は持ち前のネガティブさを発揮して(苦笑)、
自分は失敗してばかりだとか、自分独自の強みがないだとか、後輩にさえ負けているだとか、
まー、後ろ向きな思考回路爆発です。
この手のお仕事小説&成長物語では、ここまで後ろ向きな主人公って珍しいのではないでしょうか。

中盤で、大きなストーリーの動きとして入ってきたのは
計画倒産を企んでいるのではないかというネット関連企業。
他の担当が受け持っていたのに、急遽ぐー子に回され、至急対応不可避!ということで
ぐー子は後輩と一緒に駆けずり回ることになります。

読んでいて、仕事をする上での詰めの甘さと言うのは感じられるとことですが、
それ以上に、追い込まれたら自分でとことんやろうとする根性は凄いなと思います。
もっと周囲の人に聞いたら効率的に回答にたどり着けるだろうに、
周りが忙しそうで質問しづらい・・・・・と気を使って、自分でドツボにはまっていってしまっています。

これって、小説の世界ではオオゴトになっていってしまいますが、
日常世界では小さな規模でしょっちゅう起こっていることのような気がします。
こういうコミュニケーションのズレが少しずつ積み重なって職場の雰囲気が
ある日崩壊するような気がします。

まじめに仕事に向き合っている特に若手の人が、
どういうことで躓き、どこで悩み、乗り越えられずに苦悩しているのか、
そういう姿がぐー子を通してしっかりと表現されており、
自分も上司の立場で気を配らないといけないなと改めて認識しました。

本作では、鏡特官がほとんど現場に出てこないので、
前作のような税法をとことん利用して税を徴収するというスカッと感は控えめですが、
悩める若手社員の姿を知るには、良い作品でした。




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『トッカン』
- 2020/10/14(Wed) -
高殿円 『トッカン』(ハヤカワ文庫)、読了。

前々からブックオフの本棚では前から気になっていたのですが、
ちょっと分厚いので、好みに合わなかったら嫌だな・・・・と後回しにしていました。
でも、ここ数年、自分で会社をやるようになり、税務署さんともやり取りすることが増えたので、
ここは勉強も兼ねて読んでみるか!と買ってきました。

タイトルの「トッカン」とは、「特別国税徴収官」の略称。
主人公は、このトッカン付きの若手女性徴収官。
エース徴収官であるトッカンとペアを組んで、納税滞納者を回り、税金を徴収してくる人です。

まぁ、真面目にちゃんと納税していれば縁のない立場の税務署職員さんの話なので、
私の当初の目的である、「税務署の仕事の把握」としてはあまり役立たないのですが、
でも、「脱税というのはこういう悪事なんだ」ということが全編通して描かれており、
「ちゃんと帳簿を付けなくちゃ」という気持ちにはなりました。

5つの物語が収録されていますが、
1話読み切りというよりは、いくつかの滞納者の話が同時並行的に進んでいくので、
話があちこちに飛んでいく印象があります。
でもそれは、徴収官が常時大量の滞納案件を抱えており、かつ何かと理由を付けて
素直に納税しない人が多いので時間がかかるという現実を踏まえてのことだと思うので
結構しっかりと取材をし、リアリティに即した物語構成になっているのかなと思いました。

計画的に脱税している人、国家や行政に不満があって納税しない人、
お金が無くて納税できない人、それぞれの物語が展開され、
税金というものを巡る様々な人間の考え方が描写されて興味深かったです。

小説としては、最初、無駄な描写が多いかな・・・・というか、
もっとスリムに読みやすくできるのではないかと思いながら読んでいたのですが、
主人公が税務署に就職した経緯と今の心境や、主人公の実家の話や、
上司のトッカンの過去など、終盤に向けてしっかり繋がり合って一つの仕事観を見せてくれたので
あぁ、前半で間延びしていると感じたことも必要な描写だったんだなと納得できました。

ちょっと文章の癖として、小説なのに「前述したことだか」と出てきたり、
関西人同士が東京で標準語で会話してたり、
気になるところはあったのですが、でも、全体としては楽しめました。

主人公が、社会人になってからやっと作れた友人の女性に
バッサリ切って捨てられるシーンでは、この友人の意見が「なるほどなぁ」と
思わせる指摘ばかりで、あぁ、これは社会人として、仕事をする者として
相手の立場を考えて仕事をするために改めて考えなきゃいけないことだと
自分自身を改めるきっかけになりました。

そして、その友人の言葉を受け、ガツンとショックを受けた主人公が、
時間はかかったけど、きちんと自分の中で消化して、反省した言葉も勉強になりました。
こういう姿勢って大事だなと。

税務のことよりも、仕事に向き合う姿勢みたいなものが学べるお仕事小説でした。




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『カミングアウト』
- 2018/12/14(Fri) -
高殿円 『カミングアウト』(徳間文庫)、読了。

お初の作家さんです。

とってもポップな表紙イラストから、
コメディタッチの作品を想像していたのですが、
意外としっかりしたタッチの連作群像劇でした。

最初に登場する幸実は、援交している女子高生。
母親とうまくいかず、援交相手ともお金だけの関係。
何を目的に生きているのか分からず、ただ現実から逃げるためだけに
援交しているような日々です。

いきなり重い・・・・。
幸実のキャラが、結構クールに割り切っているというか、
頭の回転が速そうな子なので、自分の状況はきちんと把握しているのですが、
その分、袋小路感が強くて、しんどい日常描写が続きます。

で、最後、予定外のトラブルに巻き込まれて
袋小路の現実から脱出しなければいけなくなり、
力技で、その場から出ちゃった!という結末でした。

その後続くお話も、最後の脱出部分がかなり力技というか、
追い詰められて止むを得ず爆発!みたいな展開なので、
そういう脱出の仕方しか、この境遇からは逃げられないのかなぁ・・・・と
現実感に残念さを感じてしまいました。
まぁ、追い込まれないと変わらないというのが人間なのでしょうね。

これら登場人物の中で、「老婆は身ひとつで逃亡する」の主人公は、
自ら10年という時間をかけて計画を練り、コツコツと準備を重ね、
そして、狙い澄ましたかのようにターゲットの日に脱出のための爆破スイッチを
自ら押しているという前向きな感じが、非常に印象に残りました。
やっぱり、自分を変えるという行動は前向きかつ自主的じゃなきゃね。

それぞれの話が、連作ということで、繋がっていき、
ひとつの人間関係を構成するリングのようになっているのですが、
エンディングは、想像の範囲内のスケールで終わってしまった感じです。
表紙絵ほどの驚きを伴うカミングアウト感はなかったです。




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