『逢魔が時に会いましょう』
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- 2019/12/23(Mon) -
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荻原浩 『逢魔が時に会いましょう』(集英社文庫)、読了。
荻原作品って、モノノケだったり幽霊だったり そういう異界と人間界の境目に居そうなものを好んで扱いますよね。 そんなに怖くなくて、逆にホロリとさせられることが多いので、安心して読めます。 本作では、モノノケが居るのか居ないのか知りたいと研究する准教授と、 就職に失敗し院に逃げようとしている女子大生の助手のコンビが、 日本の田舎にフィールドワークに行くというお話3つ。 座敷童、河童、天狗と、日本古来の由緒正しきモノノケが登場してきます。 准教授と助手のコンビは、凸凹コンビでクスっと笑えるお気軽さ。 一方で、モノノケの話の方は、なぜそのような伝承が生まれてきたのかという 歴史や文化の筋から解説した民俗学的内容が興味深く、 軽いタッチで濃い内容を伝えてくれていると思いました。 助手が准教授のどこに惹かれたのかは正直謎でしたが(笑)、 これだけ一緒に怖い思いをしてきたら、まぁ、そうなっちゃうのかな。 日本の歴史や文化の厚みを手軽に感じさせてくれる作品でした。 ![]() |
『ちょいな人々』
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- 2018/06/04(Mon) -
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荻原浩 『ちょいな人々』(文春文庫)、読了。
短編集です。 荻原作品のユーモアセンスは好きですが、 時々、軽すぎるように思えてしまうことがあります。 本作はどちらかというと軽すぎ側でした。 冒頭の表題作は、勤務先の社長が、急遽カジュアルフライデーを言い出したことから カタブツの社風の会社が、ファッションの渦に巻き込まれていくというドタバタ劇。 そもそも主人公の中年オヤジが、冴えないのに自意識過剰というか、 勘違い系だったので共感できず。 かと言って、彼が勘違いした新人女子社員の言動の方も かなり狙ってやっている節があり、共感できず。 この2人の追いつ追われつを笑う作品なのでしょうけれど、 オジサンの勘違い以外の風刺になっていないような。 隣家との庭木や猫の侵入問題を扱ったり、 占い師なりたての男の生活費を稼ぐための奮闘記だったり、 いじめ電話相談室の職員を描いたお仕事小説だったり、 どれもテーマは面白いと思うのですが、味付けがなんとも軽くて・・・・・。 ドタバタコメディで終わってしまうのが残念でした。 もう少し、社会問題として深掘りしてくれたら面白いのにな。 問題の掘り返し方がちょいな感じでした(苦笑)。
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『さよなら、そしてこんにちは』
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- 2017/08/18(Fri) -
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荻原浩 『さよなら、そしてこんにちは』(光文社文庫)、読了。
タイトルと表紙絵から、 ハートウォーミング系の小説かな?と思い買ってきたのですが、 中身は、コメディタッチのお仕事小説短編集でした。 冒頭に収録されたお話が葬式屋の社員が主人公だったため、 このようなタイトルになったようです。 葬儀屋、新規就農者、スーパーの食品担当、主婦、寿司職人、料理家、僧侶、 こういう人たちの日常が描かれますが、 どの主人公も、自分の職業には肯定的な感情を持ちつつも、 目の前の利益に対して自分の信念がブレるところがあるので、 お仕事小説としては頼りない面々です(苦笑)。 ま、短編小説ですから、頼りない人間がちょっとした勇気ある行動で 困難を回避するもしくは乗り越えるというのが 扱いやすいのかもしれませんが、あまり気持ちが入っていけませんでした。 こんな程度で成り立つ職業なのか・・・・と思えてしまったり。 やっぱりお仕事小説は、長編の成長物語もしくは異才の物語が 読みごたえがありますよね~。 ま、お気楽読書にはちょうど良いかもしれません。
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『ハードボイルド・エッグ』
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- 2015/08/26(Wed) -
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荻原浩 『ハードボイルド・エッグ』(双葉文庫)、読了。
ハードボイルド作品って、独特の世界観がちょっと苦手だったりするのですが、 荻原作品なら心配ないだろうということで読んでみました。 案の定、ハードボイルドというジャンルへの愛情とその独自の美意識を皮肉ったところと 紙一重な感じが楽しめます。 (ハードボイルド好きの人には、どうかわかりませんが・・・・・) イヌネコ探しと浮気調査に明け暮れる(というほど仕事はなさそうですが)主人公の探偵。 美人秘書募集の広告を出したら、やって来たのは80歳過ぎの老女一人。 ホームレスや登校拒否児も巻き込んでのドタバタ劇です。 殺人事件は起こりますが、その解決は、正直どうでもいい感じになるぐらい、 この探偵と秘書のコンビが良い味出してます。 表面的にはお互い適当な人間のように見えますが、 心の中では、しっかり相手を見ていたり、自分の淋しさを隠したり。 なかなか妙味のあるキャラクターたちです。 1本の長編にするよりも、連作短編集で登場させたほうが 意外と使い勝手が良かったのではないかという気もしてしまいました。 でも、このエンディングだと、このコンビの続編は厳しいのかな。
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『愛しの座敷わらし』
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- 2014/02/09(Sun) -
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荻原浩 『愛しの座敷わらし』(朝日文庫)、読了。
ここ数日、風邪で寝込んでいたのですが、 微熱とともに読書熱が一気にスイッチオンとなってます(苦笑)。 というわけで、昨夜から上下巻ものに挑戦。 でも、体調万全ではないので軽めの本をば。 職場でも家庭でもうだつの上がらない男が、 東北への左遷気味の異動を命じられ、渋る家族を連れて越してきたのが山の中の古民家。 ばたばたと引越し後の毎日を送る中で、見知らぬ幼子が家の周りをうろついていることに 家族の一部が気づき始め・・・・ 上巻を読んでいる間は、「座敷わらしと一家との間に起きるドタバタ劇」と思い込んでいたので 座敷わらしののんびりした登場ぶりに、「いつになったら物語が展開するんだよー」と ちょいとイライラ。 むしろ、主人公一家の子供たちが抱える学校での問題の描写が、 なかなかに辛い展開をしていて、そちらに感情移入しちゃいました。 が、途中で、「あぁ、これは『座敷わらし』はあくまで小道具に過ぎず、 子供たち2人を中心とする家族の成長物語なんだ」と再定義できたら、 すんなりと作品を受け止めることができました。 長女も長男も、困難に対して、ウジウジしているところはあるのですが、 意外と腹を決めたらすんなりと第一歩を踏み出せたりして、 やや都合よいというか、困難の大きさの割には軽い展開なところは気になりますが、 でも、素直に、良かったねー、頑張ったねーと言いたくなります。 なんとなく全てが上手くいったかのような感じの結末のつけ方には 「人生そんなに甘くないわー」と思ってしまいますが、 これが荻原作品の温かさですかね。 映画化された際の文庫本を中古で買ってきたようで、 帯にはキャストの写真が載ってましたが、 意外とナイスキャスティングかも。 ちょっと観てみたくなりました。
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『なかよし小鳩組』
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- 2013/03/09(Sat) -
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荻原浩 『なかよし小鳩組』(集英社文庫)、読了。
ユニバーサル広告社再び!ということで、 社員3人の弱小広告会社が、不渡り回避のために獲ってきた仕事は、 なんとヤクザのCI活動。 結構、わたくし、ヤクザ稼業に興味があります。 反社会的稼業は言語道断ですが、組織の統率力とか文化形成力については、 知ると面白いうのではないかと思うのです。 で、著者も結構、任侠の世界が好きですよね。 ヤクザ稼業を、なんとか表の社会に出せる形で表現しようと苦闘する様が笑えます。 日本の暮らしを裏から支える って(笑) こんな標語が飛び交い、また、それにイチャモンをつけるヤクザな面々。 反論なのか皮肉なのか自虐なのか分からない応酬です。 そして、サブストーリーとして、 主人公の別れた妻と娘の話が絡んでくるのですが、 こちらも良い味付けになっていました。 ダメ人間だけど、良い父親であり、元旦那なんだな。 笑いながらもほっこりとさせてくれる作品でした。
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『誘拐ラプソディー』
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- 2012/09/15(Sat) -
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荻原浩 『誘拐ラプソディー』(双葉文庫)、読了。
お笑い寄りの荻原作品。 気軽に楽しめる内容になってます。 やることなすこと裏目に出てしまう負け組の主人公は、 自殺に逃げ込もうとするが、そんな勇気もなく。 無駄な時間を過ごしているうちに、近くに居た子供を誘拐することに決め・・・ 誘拐した子供は、物怖じせずに、やけにノリが軽い6歳男子。 金持ちのボンボンだと思っていた、その子の父親はヤクザの親分だった。 もう、典型的なドタバタコメディですが、 主人公の冴えない中年男と6歳男児のコンビがなかなか良い凸凹コンビで、 楽しく読み進められました。 最後には、親分に聞かれているとも知らずに、 父親のフリをして、6歳息子の教育方針について とくとくと語ってしまう主人公。 結構、泣かせる良いシーンだったと思います。 でも、それが、その後の展開にあまり繋がらなかったのは残念。 親分の心に刺さった何かがあったのではないかと期待したのですが・・・。 6歳男児が親分を継いだ時を描いた続編を書いても 面白いんじゃないかと感じました。
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『押入れのちよ』
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- 2012/06/03(Sun) -
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荻原浩 『押入れのちよ』(新潮文庫)、読了。
重たい読書が続いたので、軽めの本作を。 表題作は、激安アパートに入居したら 夜な夜な明治生まれの14歳の少女の幽霊が現れるお話。 幽霊のキャラクターが憎めない感じで、面白かったです。 他にも、ホラーな感じの作品がいくつか収録されており、 ゾクッとする描写が、心地よく感じました。 一方、ユーモア系の作品も多数あったのですが、 どうも、私は、その方面は肌に合わないようです。 ベタ過ぎるというか、軽すぎるというか・・・・・。 本作に限らずそう感じるので、著者がユーモア作家として知られているというところに なんだか違和感を感じてしまいます(苦笑)。 ま、息抜きに、ちょうど良い作品でした。
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『母恋旅烏』
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- 2011/08/11(Thu) -
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荻原浩 『母恋旅烏』(双葉文庫)、読了。
大衆演劇あがりの父親を中心に不器用な家族たちを描いた作品。 設定は面白いのですが、話の軸がどんどん変わっていくので、 何を主題に読めば良いのか、ちょっと分かりづらかったです。 最初は、「レンタル家族」という仕事を行う一家の描写から始まるので、 不完全な家族が、完全な家族を演じようとする滑稽さと そんな家族をレンタルしようとする人々の悲しさを描くのかな?と思いきや、 思いのほか早い段階でこの稼業から足を洗ってしまい、 またまた演劇の世界に戻ってしまいます。 ここで、師匠の息子やその仲間たちとの対決を描いていくのかと思いきや、 またまた息子らは、早々に尻尾を巻いて逃げ出していまい、 一座を立ち上げなおすことに。 そして、一座の旗揚げ公演は、 なぜか離れ離れになっていた家族たちが戻ってきて、 大団円的な終わりを見せます。 うーん。 軽いユーモアが利いてて、面白いのは面白いのですが、 何が伝えたいのかが見えづらく、あんまり残るものが無かった感じです。
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