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『先達の御意見』
- 2023/05/09(Tue) -
酒井順子 『先達の御意見』(文春文庫)、読了。

『負け犬の遠吠え』の酒井女史が、まさに当該本のヒット時に
先達である女性作家さん(1名だけ男性の仏文教授)を相手に「負け犬」について対談した本。
基本的に年上で、かつ作家として大売れしている人たちばかりなので
対談というより教えを請いに行くような感じです。

「負け犬」の定義としては、「未婚、子無し、30歳以上の女」ということですが、
本が想定外にヒットしてしまったために、この「負け犬」のレッテルについて、
著者の予想とは異なる反響があったようで、それに対して著者がリアルタイムで困惑している様子が
ひしひしと伝わってくる対談となっており、そこが面白かったです。

私自身は、『負け犬の遠吠え』というタイトルと、その本がヒットしていると最初に知ったときに
「結婚せず、自分の能力で経済力を持ち、人生を謳歌している真っただ中の女性が
 生物学上の役割を果たしていないことに多少の後ろめたさを持ちつつ、
 自分をそうやって卑下して見せることができる心の余裕を逆に象徴してるな」という
ちょっと捻くれた感想を持ってました。

当時、私自身は大学を卒業して社会に出たばかりだったので
「負け犬」に該当する女性たちの本音の部分には触れたことがなく、
会社で見かける該当者たちの様子を遠目に見ながら
「負け犬と言いながら勝ち組だよなー」なんて思ってました。
20代前半では、親からも「結婚しろ」とか、まだ言われない時期ですしね。

その後、30代になり、実際に、自分が「負け犬」真っただ中というか、
今や、「生き物ですらない」(坂東眞砂子女史談)40代になってしまい、
確かに生物学上のメスとしての役割を果たしていない感じは
自分で選んだ結果とはいえ、やっぱり何か成してない感がのしかかって来るなーと
思うようになりました。
かといって、子供が欲しいという気持ちにはならないのですが。

本作の対談で、酒井女史は、自分が負け犬であることの「成してない感」を
重ね重ね反省しているというか煩悶している感じですが、
著作がヒットして作家として名前が世間に認知された現状から改めて考えると
正直、作家業で成功し、コミュニケーション能力があり、学歴もしっかりしていて、
広告代理店での勤務経験もあるから常識もあり、あちこち一緒に出かける友人もいて
自分一人でも出かける楽しみを持ち、日々充実してる感じ、
これはやっぱり勝ち組というか、「上級負け犬」ですよね。

「負け犬」の単純な定義からすると、著者とは対極にいる
「経済的に不安定、人付き合いが苦手、趣味も特にない、一緒に出かける友人もいない」
こんな人も「負け犬」になるので、そういう日々がモノクロな感じの人からすると
著者のようなカラフルな日々を送っている人が、自分と一緒くたにして「負け犬」と名乗るのは
かなりイライラするのではないかと(苦笑)。

結局、「負け犬」レッテルを自称できるという時点で、
心に余裕があるというか、自分の人生に相応の自信がある人なんだろうなと思ってしまいました。
それぐらい突き抜けてくれないと社会が暗くなるから、
笑って「私は負け犬だけど基本的には日々楽しいわ」と言ってくれるおひとり様が増えることを願います。
もちろん、子供を持ちたい人は子供を産み育てられる、余裕のある社会になってほしいです。




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『女子と鉄道』
- 2020/08/24(Mon) -
酒井順子 『女子と鉄道』(光文社文庫)、読了。

またまたド繁忙に突入して、全然本が読めていません。
寝る前のほんの10分、15分とか、食事の時間の10分とか、細切れ読書です。

なので、細切れ対応しやすいエッセイを選んでますが、
図らずも鉄道女子の本が続きました

能町さんのエッセイは、「鉄道大好き!」というご本人のワクワク感が凄く伝わってきて
面白い読書だったのですが、本作の方は、どうにもワクワク感がイマイチ・・・・というかゼロな感じ。
以前にも著者による地下鉄のエッセイを読んだのですが、
「ほんとに鉄道が好きなのかしら?」という感想を抱きました。
なんだか、仕事として電車に乗ってる感じがするんですよねー。

能町さんと何が違うんだろう?と思いながら読んでいたのですが、
まずは、エッセイの内容が、鉄道に乗りに行った話から、鉄道土産の話、痴漢の話と多種多様なので、
エッセイ本としてはバラエティに富んでいて良いのかもしれませんが、
鉄道を軸に見ると、「この人は鉄道の何が好きなんだろう?」というのが掴めない感じです。

あと、基本的に一人旅なので、著者が自分の目で見た外の世界の話が主になってしまい、
担当者編集者さんと2人で行動していた能町さんの方が、特に鉄道好きでもない編集者さんとの
対比を描くことで鉄道女子の生態を分かりやすく提示してくれたのに比べて、
なんだか主観的な世界観が広がっているように思ってしまったのかもしれません。

本作でも、男性の鉄道ファンと一緒に旅をする様子も描かれているのですが、
どうにも、同行男性は補助的存在にすぎないところが、勿体ないのかなぁ。

著者の文章の特徴かもしれませんが、冷たい感じを受けてしまうのが、
鉄道とは相性が悪いような気がしました。
もうちょっと人間味のある文章を書く人の方が、鉄道という存在には合ってるように思います。




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『食のほそみち』
- 2020/07/11(Sat) -
酒井順子 『食のほそみち』(幻冬舎文庫)、読了。

食にまつわるお手軽エッセイ。
決して、食通とかグルメとかいう立場ではなく、
食べることは好きだけど、グルメではないというお気楽な立場なので
こちらもお気楽に読めます。

「ごはん」「豆腐」「水」の良し悪しが分からないとか、同感(笑)。
お米は、魚沼産こしひかりは確かに美味しいと思いましたが、
そのようなずば抜けて美味しいお米以外は正直そんなに違いが判りません。
お米そのものよりも炊飯器の能力差の方が、味への影響度が大きいような気がしています。

「無駄海老」問題とか、今まで考えたことがなかったですが、
確かに言われてみれば、「無駄海老」なエビって、ありますねー。
エビって食材として安いということなんですかね?

「マロニーちゃん」問題も、我が家は全くマロニーを使わないのですが、
そんな私でも「マロニーちゃん」と言ってしまう恐ろしさ。

一方で、共感できないトピックスもありました。
汁物が苦手とか、飲めないとか!

そういう共感できない部分も含めて、自然体のエッセイだなと感じました。




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『地下旅!』
- 2019/06/06(Thu) -
酒井順子 『地下旅!』(文春文庫)、読了。

雑誌『CREA』に連載されていたエッセイだそうで、
著者が東京の地下鉄に乗って出かけた先での探訪記。

ただ、枚数が少ないせいか、そんなに深く各町を紹介しているわけでもなく、
駅から歩いていける距離の観光地を訪れた感想文といった感じです。

訪れている先も結構オーソドックスな場所が多いと言いますか、
あんまり「おっ!」という感じのチョイスはなかったです。

そして、あとがきで「鉄道好き」と自称されてますが、
正直、あんまり鉄道好きな様子は本文から伝わってきませんでした。
日常生活で地下鉄をよく使っているというのは感じられましたが、
一般的な東京都民レベルな感じを受けました。

雑誌に載っているエッセイとして読む分には、
程よい気分転換な文章なのかもしれませんが、
一冊にまとめてしまうと、ちょっと内容の薄さが際立ってしまったような気がします。




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『会社人間失格!!』
- 2007/07/17(Tue) -
酒井順子『会社人間失格!!』(角川文庫)、読了。

私の夏休みも今日が最終日(実は6連休でした)。
映画に海に美術館にと、遊び呆けていたので、今日は家でのんびり。

重いものを読むのも大変だと思い、酒井女史のエッセイをば。
その名も『会社人間失格!!』。
まるで明日からの出勤を拒んでいるかのような選択に苦笑。

女史の作品は初めてだったのですが、
軽いタッチの本音エッセイに、「そうだよね~」なんて共感しつつ、
2時間程度で読み終わってしまいました。
すでに本作でも「負け犬」的な発想の萌芽が見えているようで、
女史の作品は、どれもこんなテイストなのかしら?と
早々に理解したつもりになってしまうのは良くないかな??




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