『異議あり日本史』
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- 2020/04/23(Thu) -
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永井路子 『異議あり日本史』(文春文庫)、読了。
一般的に知られている歴史のヒトコマについて、 著者の視点で異論を唱える歴史エッセイ。 そんなに思い入れもなく読み始めたのですが、 著者の力強い文章に、一気に引き込まれていきました。 著者のことはあまり知らないのですが、 男性っぽい迫力を感じる文章だと思いました。 1つ1つのテーマに充てている文章量は短いので、 そんなに深掘りしているわけではないと思うのですが、 ズンズン話が進んでいくので、テンポの良さと文章の強さをもって 「こんな歴史の解釈があっても面白いな」と思えてきます。 歴史の題材って、同じテーマをいろんな作家さんが扱いますが、 同じものを語っていても、ワクワクドキドキするものもあれば、つまんないものもありますよね。 結局、歴史は物語なので、歴史解釈という点での大局観の構成力と、 ストーリーテラーとしての筆力次第ということなのかなと。 新井白石とか光厳天皇とか、目の付け所も面白かったです。 新井白石なんて、印象は教科書の「正徳の治」ぐらいしかなく、 理念重視で頭でっかち政策を実行したというイメージです。 何か新井白石の本って読んだことあったっけ?と本Blogを検索したら 藤沢周平さんが書いた本を読んでました。その本では、白石は有能な政治家として描かれており 永井評とは異なります。 この作家による歴史上の人物への評価の違いというのも、歴史の面白さですね。 人間というのは、本当に多面的なんだなと思います。 著者の小説は1冊しか読んだことがないので、 他の作品も読んでみたいと思います。 ![]() |
『王者の妻』
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- 2016/05/09(Mon) -
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永井路子 『王者の妻』(講談社文庫)、読了。
お初の作家さんですが、上下巻の大作。 豊臣秀吉の正室おねねが主人公の大河モノです。 正直、おねねという人物のことを良く知らなかったのですが、 本作では「糟糠の妻」という役回りになっています。 Googleってみると、女だてらに政治力を駆使した人物という評価もあるようで、 様々な見方があるようです。 本作で感じたのは、各登場人物の役割が劇画化され過ぎているのではないかということ。 おねねは立派な人物で難癖の付け所がありませんし、 茶々は横暴で思慮の足りないお妾さん、 小早川秀秋は粗暴でわがままなのに判断を他人に委ねるお坊ちゃんタイプ、 そして人間性が崩壊していく秀吉・・・・・ 分かりやすいキャラクターづくりではあるのですが、 その分、作品が単調というか、陰影がないといいますか。 上下巻という分量と物語の深みの度合いが アンバランスなように感じました。 ただ、おねねの実績というか業績を知るには 面白い本でした。
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