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『日本史七つの謎』
- 2021/08/11(Wed) -
松本清張他 『日本史七つの謎』(講談社文庫)、読了。

井沢作品を読んで日本史熱が上がってきたので、積読だった本作を手に取りました。

タイトルと松本清張が代表著者名になっているので、てっきり日本史の謎に迫る短編小説が7つ
収録されているのかと思い込んでましたが、実際は、7組の鼎談集でした。

基本的に、作家1名+学者2名という組み合わせでの鼎談。
井沢作品の流れるような論旨主張を読んだ後では、鼎談のあっちこっち話が飛んでいく感じが
ちょっと読みにくいなと感じてしまいました。

ただ、作家の知識量と着眼点の面白さ、自分なりの論説の組み立て方などを知ることができ
やっぱり面白い職業だなと思います。

特に面白かったのは、永井路子氏。
自分の歴史観というものを筋道立ててズバズバっと話したかと思えば、
他の2人にうまく会話を振って話を引き出したり、
鼎談の頭からお尻まで面白かったです。

学者さんや専門家による鼎談ではなく、
あくまで作家という一般庶民の興味を念頭に置いて世界を眺めている人が
場を回していることで、変に堅い話にならかったのもよかったです。
このあたりは、やっぱり編集者さんの力量なんでしょうね。




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『異議あり日本史』
- 2020/04/23(Thu) -
永井路子 『異議あり日本史』(文春文庫)、読了。

一般的に知られている歴史のヒトコマについて、
著者の視点で異論を唱える歴史エッセイ。

そんなに思い入れもなく読み始めたのですが、
著者の力強い文章に、一気に引き込まれていきました。
著者のことはあまり知らないのですが、
男性っぽい迫力を感じる文章だと思いました。

1つ1つのテーマに充てている文章量は短いので、
そんなに深掘りしているわけではないと思うのですが、
ズンズン話が進んでいくので、テンポの良さと文章の強さをもって
「こんな歴史の解釈があっても面白いな」と思えてきます。

歴史の題材って、同じテーマをいろんな作家さんが扱いますが、
同じものを語っていても、ワクワクドキドキするものもあれば、つまんないものもありますよね。
結局、歴史は物語なので、歴史解釈という点での大局観の構成力と、
ストーリーテラーとしての筆力次第ということなのかなと。

新井白石とか光厳天皇とか、目の付け所も面白かったです。
新井白石なんて、印象は教科書の「正徳の治」ぐらいしかなく、
理念重視で頭でっかち政策を実行したというイメージです。

何か新井白石の本って読んだことあったっけ?と本Blogを検索したら
藤沢周平さんが書いた本を読んでました。その本では、白石は有能な政治家として描かれており
永井評とは異なります。
この作家による歴史上の人物への評価の違いというのも、歴史の面白さですね。
人間というのは、本当に多面的なんだなと思います。

著者の小説は1冊しか読んだことがないので、
他の作品も読んでみたいと思います。




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『歴史をさわがせた女たち 庶民編』
- 2019/08/16(Fri) -
永井路子 『歴史をさわがせた女たち 庶民編』(文春文庫)、読了。

お手軽読書のお供に買ってきたのですが、シリーズものの第3弾のようです。
日本の歴史に登場する女性、世界史に登場する女性と書いてきて、
この庶民編が第3弾。
しかし、この本が一番面白そうな気がします。

実際、面白かったです。
低級貴族の娘、農婦、職人の嫁など、歴史の表舞台には登場してこない人々だからこそ
その日常が垣間見れて興味深かったです。
なんの飾り気も、自分を大きく見せようとする装飾もない、
素の状態の人間たちが活き活きと動いていて、面白いなと。

そして、こういう庶民の様子を文章に書き残した文筆家が居たり、
はたまた庶民自身が日記をつけて記録していたりと、
教育水準の高さと興味関心の視野の広さが日本人らしいなと。

著者の文章もリズムが良くて読みやすいです。




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『王者の妻』
- 2016/05/09(Mon) -
永井路子 『王者の妻』(講談社文庫)、読了。

お初の作家さんですが、上下巻の大作。
豊臣秀吉の正室おねねが主人公の大河モノです。

正直、おねねという人物のことを良く知らなかったのですが、
本作では「糟糠の妻」という役回りになっています。
Googleってみると、女だてらに政治力を駆使した人物という評価もあるようで、
様々な見方があるようです。

本作で感じたのは、各登場人物の役割が劇画化され過ぎているのではないかということ。
おねねは立派な人物で難癖の付け所がありませんし、
茶々は横暴で思慮の足りないお妾さん、
小早川秀秋は粗暴でわがままなのに判断を他人に委ねるお坊ちゃんタイプ、
そして人間性が崩壊していく秀吉・・・・・

分かりやすいキャラクターづくりではあるのですが、
その分、作品が単調というか、陰影がないといいますか。

上下巻という分量と物語の深みの度合いが
アンバランスなように感じました。

ただ、おねねの実績というか業績を知るには
面白い本でした。


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