『娘と嫁と孫とわたし』
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- 2020/12/23(Wed) -
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藤堂志津子 『娘と嫁と孫とわたし』(集英社文庫)、読了。
藤堂作品、実に4年ぶりでした。 息子が交通事故で急死。 悲しみに暮れる日々を送る母親のもとに嫁と孫が通ってくるようになり、いつの間にか同居。 そこにセレブで嫌味な娘がしょっちゅう押しかけてくるようになり、女4人でドタバタ。 この嫁の里子が、一人暮らしの義母の家に押しかけてくるという展開が 本作の設定の特徴だと思うのですが、どうにもこの里子のキャラクターが上手くつかめませんでした。 本作は3つの章に別れているのですが、第1章を読んでいた時は、 「できた嫁だなぁ」という感想で私の中ではまとまっていたのですよ。 ところが、第2章に入り、息子の急死後に家族を捨てて別居していた夫が 4人の前に姿を見せるようになると、この嫁の毒が端々に出てくるようになり、 なんだか陰険なものを感じてしまいました。 義父への辛辣なコメントと言い、合コンに参加して亡き夫に似た雰囲気の男の人につきまとったり ちょっと危うさを感じる一面がありました。 で、第3章、義母の前で娘への辛辣な評価を口にしたり、 結構、ほころびが見えたように思え、第1章の「できた嫁だなぁ」評はどこへやら。 最初の印象が良かったので、この嫁の立場から作品を眺めようと思っていたのに、 後半は共感できずに終わってしまいました。 反対に、奔放な娘が後半に行くほど本音を吐露して素直になったりと、 なかなか人間、複雑ですねぇ。 後半に出てくる秋生のスマートな身のこなしと各方面への配慮の仕方に 安心感を覚えてしまうほどでした。 私は、やっぱり、藤堂作品の独身女に興味があるのであって、 藤堂作品の結婚して家庭を持った女にはあんまり共感できないなぁと感じてしまいました。 ![]() |
『独女日記』
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- 2016/10/19(Wed) -
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藤堂志津子 『独女日記』(幻冬舎文庫)、読了。
著者の独り身の女を描いた作品と、タイトルから、 「著者自身の独身女性ライフについての毒吐きエッセイかな」と期待したのに、 蓋を開けてみれば、「愛犬日記」で、拍子抜け。 独り身のおばあさんが飼っている犬を溺愛する・・・・・・。 それ自体は否定するものではありませんが、 文章作品としては読みたくないなぁという、 私の個人的な好みの問題です。 女が一人で暮らすとは?という もっと根源的な部分に目を向けたエッセイを読みたかったです。
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『されど、かすみ草』
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- 2016/07/30(Sat) -
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藤堂志津子 『されど、かすみ草』(実業之日本社)、読了。
結婚に向けて素敵な男性を探そうとする20代のOL。 主人公は地味で堅実な性格。 親友2人は、男性とのトラブルで借金を抱える暗い女と、 反対に社交性があり陽気だけれど軽い女。 そして、主人公は、自分で決めることができず、同居するバツイチの叔母に相談しまくる。 うーん、残念ながら3人とも共感できず。 あえて言うなら、お金持ちの全夫と死別し、30代半ばにして定職にもつかず 人生を謳歌している叔母の、自由な視点で社会や3人を評するスタンスが 興味深いという感じでしょうか。 でも、職を持たずにふらふらしているのは、 やっぱり人間の生き方として共感できません。 登場してくる男性の方も 軽かったり、慎重すぎたりで、あんまりパッとしません。 うーん。作品の書かれた時代でしょうかね。
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『パーフェクト・リタイア』
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- 2013/02/23(Sat) -
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藤堂志津子 『パーフェクト・リタイア』(文春文庫)、読了。
40代以上の女性を主人公にした短編集ということで 期待していたのですが、なにかしっくりきませんでした。 病院の待合室で読んでたからかな(苦笑)。 主人公の女性たちが描いている 「こういう生活が送りたい」という内容に共感が持てませんでした。 なんだか、自分自身を卑下している主人公が多いような気がして。 表題作「パーフェクト・リタイア」の主人公が、 定年を迎える前に、2人の人間との関係にケリをつけなければと 自ら飛び込んでいく姿は、潔さと意志の強さを感じて気持ち良かったです。 ただ、結論がイマイチスッキリしないものでしたが・・・。 そうやって、2人の敵と(一応の)ケリを付けて、 向かった将来が、これまた、あんまり共感できず、そこは残念。
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『桜ハウス』
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- 2012/11/01(Thu) -
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藤堂志津子 『桜ハウス』(集英社文庫)、読了。
独身女を描いたら、さすがの上手さですねー。 叔母から相続した家で、下宿業を始めた蝶子。 そこに入居した3人の女たち。 彼女たちは、それぞれの事情で一度この下宿を出たものの、 7年ぶりに4人が顔を合わせ、新たな関係が始まる・・・。 一つ一つの出来事は、 ある夜ふけの会話だったり、過去を思い出しての告白だったり、 出かけた先でのふとしたやりとりだったり。 そんな小さなことを描いていきます。 しかし、圧倒的な心理描写のリアリティのために、 読む側に迫ってきます。 もしかすると、作品の中で動いているキャラクターたちは 文中で表現されたような心理を、意識せずに行動していたのではないだろうか そう思わせるほどの、微妙な部分を描いている作品だと感じました。 あと、7年たつと、みんな何かを経験して、 成長したり変化したりしている部分がある。 そのことが身に迫ってきました。 果たして私は、7年前の私から変われているのでしょうか。
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『ジョーカー』
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- 2011/05/25(Wed) -
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藤堂志津子 『ジョーカー』(角川文庫)、読了。
登場人物の誰にも共感を覚えることができず、 あまり楽しめませんでした。 父親は愛人宅で週の半分を過ごし、 母親は美人の姉をえこひいきし、 姉は母親の言いなりに・・・。 そんな状況で、父親の愛人と仲良くなれる主人公、 そして、父親のことを許容しているかのような主人公の言動。 共感できないというか、理解できないというか・・・。 タイトルも、あんまりピンときませんでした。
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『ひとりぐらし』
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- 2010/02/19(Fri) -
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藤堂志津子 『ひとりぐらし』(文春文庫)、読了。
「30歳を過ぎて独身」という女性を描かせたら、 ホントに、嫌になるくらい上手いですよね。 そして、日常の中に埋もれている奇妙な人物、異端な思考を描かせても、 これまた怖いぐらいに上手い。 キョーレツだけど、そこらへんに居そうな感じが、上手いんです。 一人暮らしという生活を、 それなりに能動的に受け入れて、上手くやっていけている女性の視点で書かれると、 ものすごく納得してしまう自分がいて、ちょっと自己嫌悪。 でも、「いまさら結婚なんて、面倒臭いな~」と思ってしまう感覚は 非常によくわかります。 何も、今を崩さなくても・・・ねぇ・・・みたいな。 こんな作品を読んで、うなずいているところを見られたら、 また親に何か言われそうで、嫌だなぁ。
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『夜の電話のあなたの声は』
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- 2008/08/18(Mon) -
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藤堂志津子 『夜の電話のあなたの声は』(文春文庫)、読了。
思いの外、エロティックな作品たちでした。 30代独身女性のちょっとした瞬間に弾ける狂気を描いていて、 男女モノというよりも、ホラーのような印象を受けました。 「雨の夜にホテルへ」の統子も、 「男のいない男の部屋で」の早知子も、 「夜の電話のあなたの声は」の水香も、 女性としてはそれなりに知性のあるキャラクターかなと思うのですが、 男が絡むと、まーぁ、つまらないことに執着するんです。 なんでこんなことに時間と労力をかけるのかしら?という疑問。 疑問を持ちつつ、藤堂志津子女史の手にかかると、 なんとなく読み進められてしまうということは、 こういう徒労とも思える行為にのめり込む女性たちが どこかに存在するんだろうなぁ・・・という奇妙な現実感があったり。 ふわっと読んでしまった作品でした。
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『白い屋根の家』
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- 2008/03/22(Sat) -
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藤堂志津子 『白い屋根の家』(講談社文庫)、読了。
一日中やる気が出なくて、ゴロゴロと本を読んで過ごしました。 本日3冊目は久々の藤堂作品。 この方の作品に出てくる女性像は結構好きです。 自分に近いところが感じられたりして。 本作は、30歳にして持ち家のある独身女性が主人公の連作短編集。 男女の線引きを超えた仲間たちとの付き合いについてが、 半過去のものとして語られていますが、 自分に当てはめてみると、大学時代のある会の友人達とが そんな感じの付き合いなのかなぁと想像してみたり。 でも、その仲間の一人である志朗と喜久子の関係はイメージできても、 喜久子をめぐって近寄ってくる男性陣の本心の部分が 歪んでいたり、捻じれていたり、裏があったり・・・・・ なんだかとても恐ろしいものでした。 「遊び」という感覚で、簡単に女性とお付き合いして、 また終わらせることができるんだなぁと変なところで感心してしまったり。 喜久子の心の動きの部分は、とても納得して読めましたが、 世の男性陣の人間性とは、こんなものなのかとガッカリした面もありました。
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