『建築家、走る』
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- 2019/09/03(Tue) -
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隈研吾 『建築家、走る』(新潮文庫)、読了。
以前に読んだ著者の本が面白かったので、 本作がブックオフで目に留まり、買ってきました。 いや~ぁ、面白いわ。 わたしは建築というものには特にこれといって興味がないのですが、 この建築家さんは、建築の話だけをするのではなく、 大きな社会の中での建築家の存在意義や、社会の変容に応じて建築家に求められる役割の変化、 その変化の要請に歴代の著名建築家はどのように答えを提示してきて、 そして著者は何を答えとして提示するのか。 そういう大きな視点をもって語っているので、 建築という物体にとどまらない考察が興味深かったです。 そして、この方の面白いところは、建築というものをアートとして捉えるのではなく ビジネスとして捉えているところ。 クライアントの意向があり、その意向の中で自分のみせたいものをいかに実現するか、 そして予算の制約や政治的な制約に、どのような解決策を用意するのか、 ある種、ビジネスライクに捉えているところがあり、 そこも私の感覚からすると理解しやすいです。 きっとこの方は、もし建築の世界に進まなくても 別の世界でも自分のポジションを獲得できる万能感のある能力を持った人だろうなと思いました。 本作内では、建築の写真も何点か掲載されており、 建築に詳しくない身としては「へぇ~、これが建築の歴史を変えた作品なんだぁ」と 素直に見ることができましたが、著者が批判を集中的に浴びたという 自動車メーカー・マツダのショールーム「M2」は掲載されていませんでした。 なので、ググってみたのですが、正直「なんだこりゃ?」という建物でした。 デコデコしてて、すごい圧迫感です。 バブル景気の当時に目にしても、違和感覚えそうな威圧感。 逆に、ここから、「竹の家」に辿り着けるのが凄いなと思いました。 対極にあるような建築に行ったということは、相当、叩きのめされたってことですよね。 今、セレモニーホールになってるというのが、なんとも時代を表しているエピソードですね。 ![]() |
『築地を考える人』
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- 2017/09/20(Wed) -
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月間ソトコト編集部 『築地を考える人』(木楽舎)、読了。
未だに先行きが見えない築地移転問題。 石原都知事の時代から、あーだこーだとやっていますが、 本作は、その当時に発刊されたもの。 築地の関係者の生の声が聞けるのかなと期待したのですが、 冒頭の対談で登場したのは、建築家の隈研吾氏と生物学者の福岡伸一氏。 その後も、建築家とか作家とか批評家とか寄稿が続き、 築地の仲卸や干物生産者、寿司屋などが登場してくるのは後半です。 なんじゃ、この構成は!(怒) 築地のことなんだから、築地の人の声を拾わんかい!!と思ってしまいました。 地方の過疎地の展望を、地元の人に聞くのではなく 移住促進NPOとか古民家リフォーム業者とかに聞いている感じ。 あ、ソトコト編集部だから、それが王道の取材スタイルなのか。 豊洲移転推進派、反対派、それぞれの立場の当事者の声を もっと読んでみたかったです。 もっと「魚の流通」という基本的な話を聞いてみたかったです。 築地市場の建物の価値とかいう話の前に。 日本橋から築地への移転も揉めてたようで、 その時は、関東大震災が起きたために移転せざるを得ない状況に追い込まれたようですが、 東日本大震災を築地は乗り切ってしまったがために、 移転で揉める余裕を得てしまったのかもしれませんね。
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『新・ムラ論TOKYO』
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- 2016/01/22(Fri) -
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隈研吾、清野由美 『新・ムラ論TOKYO』(集英社新書)、読了。
新国立競技場が隈研吾氏のデザインに決まりましたねー、 ということで本作を読んでみました。 著者の2人が下北沢、高円寺、秋葉原、そして小布施の街を歩きながら 対談をしているのですが、街に対する素直な感想が聞ける一方で、 対談の前に挿入される隈氏の解説は、自分の見解として昇華させた内容のものが読めて、 非常に興味深いものになっています。 この絶妙なバランス感覚が心地よい本でした。 東京は大都会だといえ、そこに住んでいる人間の半分以上は地方から出てきた人であり 私も含めて田舎モノが、「都会の生活ってきっとこんなんだわ」と想像しながら 東京の日常というものを作りあげているのだろうなと思います。 だから、街ごとに、「この街にはこうあって欲しい」というような期待感が働き、 より特徴が強化されて行くのかなと。 一方で、普通の地方都市は、そういう都会の良いところをつまみ食いして 取り入れようとするので、中庸で平凡な街になってしまうのかなと。 どちらが良いとか悪いとか言うわけではなく、 そういう役回りなんだなと思うようになりました。 都会の街も面白いですが、 田舎の町もそれぞれに特徴が上手く出せれば、いくらでも面白さは発掘できるように思います。 都会だけに目を注ぐのではなく、 面白い街を楽しめるような視野の広さを身につけたいものです。
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