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『ヒトイチ』
- 2019/05/26(Sun) -
濱嘉之 『ヒトイチ』(講談社文庫)、読了。

警察組織内の不正に対処するいわゆる監察の仕事を舞台にした小説。
警視庁人事一課、略してヒトイチだそうです。

最初、長編小説かと思っていたら、
中編小説が3本収録されていました。
あんまり事件を大事に仕立て上げず、さくっと結末をつけていたので読みやすかったです。
何よりも、監察にそこまでの捜査能力があるのかというところに驚きました。
警察官出身の著者が書くのですから、そうなんでしょうね。
精鋭を配置しているようですが、内部統制にそこまで力を注ぐのは、
やはり、不祥事で一気に崩れてしまうという危機感を持っているからなのでしょうね。

警察内の階級による上下関係の厳しさはイメージできますが、
さすがに細かく階級の描写をされてしまうと、ちょっとしんどいので
大まかなイメージ程度で読みました(苦笑)。
警察マニアの人には、たまらない緻密さでしょうね。

各事件は、優秀な人物でも、魔が差す時があるというような話ばかりで
そんなに優秀な人に裏切られてたら警察も大変だな・・・・と思いつつ、
でも、監察の係長が自ら現場捜査に乗り込んでくる事件となると、
やはり監察相手もそれなりに大物にならざるを得ないんでしょうね。
小説として。

このシリーズは、これからも読んでみたいと思います。




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『サイバージハード』
- 2019/04/01(Mon) -
濱嘉之 『サイバージハード』(講談社文庫)、読了。

シリーズものの順番を気にせず読んでしまっていますが、
インテリジェンス捜査のサスペンスものです。

主人公の情報官は、本作では、万世橋署長になっており、
現場を抱えてしまっていますが、
所轄内で起きたATM誤作動事件をきっかけに、
特命捜査主任官という役割を兼務して、捜査の最前線に乗り込んできます。
これって現実世界でありうるのかしら?

ATMの誤作動は、ハッキングが原因ということで、
警視庁情報室のメンバーを中心に非合法捜査も含めて捜査を進めていきます。
このあたりの情報技術に関する描写は、スピード感があって面白かったです。
そして、ハッキングなどの非合法捜査もバンバンやってしまうところが
何ともカッコいいです。

戦う相手は、先進国を中心に信者がいるという宗教団体。
そこに、日本企業や国会議員も絡んできて、大掛かりな話になっていきます。
ちょっと話を広げ過ぎて、物語の深みが浅くなってしまった感はありますが、
でも、警察官の目から見た国家観のようなものが垣間見えて、
そこは興味深かったです。

ところどころ、現実世界の政治家をネタにしてるのかと思えるような
登場人物も出てきて、クスッと笑わせてくれました。
由紀夫とかね。




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『トリックスター』
- 2018/11/23(Fri) -
濱嘉之 『トリックスター』(講談社文庫)、読了。

以前読んだ著者の本が、エネルギー政策を真っ向から取り上げており
なかなか面白かったので、次の一冊にチャレンジしてみました。

裏表紙のあらすじには、財閥婦人、新興宗教、大物代議士というフレーズが踊っており、
私が好むカルト系のお話かと期待したのですが、
いかにしてカルトが信者を獲得していくのかという方面の話ではなく、
信者数も成長してもう出来上がっている新興宗教組織が、組織保身に走る話であり、
カルトというより単なる組織防衛の話で期待外れ。

そして、その宗教がらみの話以外に、
マレーシアのゴム園主の未亡人という大金持ちや
ヤクザ社会とつながっている代議士なども登場してくるのですが、
複数の事件があまりにも大きな規模で繋がっているので、
物語の進行が、淡々とそれぞれの事件を描くことに終始してしまっており、
小説としてのワクワク感があまり感じられませんでした。
要は、話を広げ過ぎじゃないですか?ってことです。

どれか1つか2つぐらいの事件に絞った方が
もっとスリリングな展開を描けたのではないかと思います。

新興宗教は、本作で3つ登場してきますが、
「このカルト教団がモデルかしら?」と推測しながら読むのは面白かったです。




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『列島融解』
- 2014/03/27(Thu) -
濱嘉之 『列島融解』(講談社文庫)、読了。

エネルギー問題をテーマにした小説です。

3.11後、民主党により方向性が見えなくなったエネルギー政策。
政権交代により自民党下では、中長期的なビジョンを示せるでしょうか。

本作は小説ということになっていますが、
政党も政治かも財界人も、概ね想像が付くような書き方なので、
なかなか手厳しい批判の書となっています。

一方で、一応サスペンス小説の体を取ってはいますが、
物語の創作の方は全くできておりません・・・・。

本作は、政治家、官僚、業界団体、マスコミ記者といった面々が
どのような仕事を日々しているかということを知るための
お仕事小説として読むと、結構面白いと思います。

また、著者が主人公を通して主張しているエネルギー政策の趣旨や、
既存政党の行動指針や実績に対する批判や賞賛の内容について、
私自身と結構近いものを感じたので、政策と自分の考えを整理するための読書としても
面白かったと感じました。

エネルギー政策というテーマに興味がないと、なかなか厳しい本だと思います。


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