『灰色の北壁』
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- 2011/02/23(Wed) -
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真保裕一 『灰色の北壁』(講談社文庫)、読了。
山岳ミステリー3編を収めた作品。 山岳モノって、独特な臨場感がありますよね。 私自身、山登りは門外漢ですが、それでもワクワクするものがあります。 生死が表裏一体でありながら、じっくり考える時間もあるという あえて考えて判断できるからこその一つの判断の難しさというものが 読んでいてのハラハラ・ドキドキ感を掻き立てるのだと思います。 また、3編ともプロットが面白かったです。 ある事実の裏に潜んでいる物語に、読む手を止められませんでした。 プロットだけで十分面白かったがために、 「黒部の羆」は、変に構成を捻ったところが蛇足のように感じてしまいました。 もっとストレートに表現してしまったほうが、 個々の登場人物の思いが伝わるのではないかと思いました。 「灰色の北壁」は、隠れた物語の真実に、「そういうことかー!」と納得。 ちょっと人物がピュアすぎるような気もしますが、 山だけを見ている男というものは、それほどピュアでないと やっていけないのかもしれませんね。 「雪の慰霊碑」は、恋愛感情そのものに信憑性があるやなしやの野暮な詮索は 横に置いておきまして、残された者たちの苦悩の淀みのようなものが伺い知れて 興味深い一遍でした。
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『連鎖』
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- 2009/12/19(Sat) -
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真保裕一 『連鎖』(講談社文庫)、読了。
卒論で原発産業を扱った関係で、 「チェルノブイリ」とか「放射能」といったものが気になります。 この一冊もそんな関係で手に取りました。 チェルノブイリ原発事故の放射能汚染食品が検査の目をすり抜ける方法で 輸入されていたところから事件は始まります。 汚染食品と輸出入という舞台設定が目新しくて、興味深く読めました。 そして、ハードボイルド作品というスピード感も合ってました。 ハードボイルドの定義には直接関係ないのでしょうけれど、 次から次へと出来事が起こって、寝る暇もなく走りまわされる・・・という展開が ハードボイルド作品には多いような印象があります。 その急激な展開に違和感がない作品は、面白いんですよね。 物語の真相は、悪だくみをしていた人間が あちらこちらに居すぎて、関係が複雑すぎるかな?という気がしましたが、 まぁ、この手の作品では、真相そのものよりも 真相を探る側のキャラクターと行動を楽しむほうが大きいので、 十分楽しめました。
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