『逆説の日本史11 戦国乱世編』
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- 2023/01/21(Sat) -
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井沢元彦 『逆説の日本史11 戦国乱世編』(小学館文庫)、読了。
第10巻までの信長論が非常に面白く、 あまりに満足度が高かったので、その余韻に浸ってしまい第11巻に手が伸びませんでした。 最近、三重県の歴史に関する本を読み、そのワクワク感から 歴史熱が再び盛り上がってきたので、第11巻に挑戦。 今回の主人公は豊臣秀吉です。 私の中で、秀吉という人物評は、行動力や判断力、そして人間を取り込んだり争わせたりする能力は 突出したものを持っていますが、一国の統治者としてはあんまり魅力を感じず、 信長から家康までの乱世の繋ぎ役的な目で見ていました。 信長の後釜として横から伸し上がったものの実質自分一代で一族を滅ぼしてしまったという結末や、 派手好みなところ、そして例え勝てたとしても統治は難しかったのではないかと思われる朝鮮出兵、 これらの要素から、どうにも信長や家康と比べて低く評価してました。 ま、私が冷静沈着な家康が大好きという嗜好の問題も影響していると思いますが。 というわけで、井沢史観では秀吉はどういう風に評価されているのか興味がありました。 ところが、読んでみると、秀吉そのものの評価よりも、 現在の学者や言論人が秀吉の業績なり人物なりをどう誤解しているのか、どう捏造しているのか そういう部分への著者の批判が面白く、引き込まれました。 第11巻だけでなく、第1巻から著者が言い続けていることですが、 (1)今現在の常識で歴史を評価してはいけない、当時の常識で考えろ (2)歴史は結果から見るな、流れを順に追え (3)現在に残っている文献だけで評価するな、文献がすべて正しいと思うな これらの原則に忠実に徹底的に秀吉像を見ていくとどうなるのか、ということが 第11巻では書かれていて、興味深く読みました。 私が、統治者としての秀吉の欠陥のように感じて拒否反応を覚えていた朝鮮出兵に関しても、 本作で「1回目の出兵と2回目の出兵は意味が違う、小西行長がキーマン」という見立てに、 な、なるほどね、と納得できるところが多かったです。 井沢史観においても、1回目の出兵に関しては、やっぱり判断に誤りがあったとは思いますが、 当時の世界情勢の情報収集力の低さを思えば、仕方がないのかなぁ。 攻め込まれた朝鮮半島の人々にとっては、怒りしかないでしょうけれど。 秀吉という人物の改革性と実行力、そして強引さは、よく理解できました。 本作も面白かったです。 早く第12巻で、私の好きな家康の話を読まないと! あと、妹尾河童さんの大ヒット本『少年H』が本作の中で出てきますが、 だいぶ前に買ったものの、長いなーと思い、ずーっと積読放置しています。 どれだけこの本が欺瞞に満ちているのかを、井沢氏が糾弾しているので、 却って早く読まないと!という気持ちにさせられました(爆)。 ![]() |
『逆説の日本史10 戦国覇王編』
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- 2022/08/24(Wed) -
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井沢元彦 『逆説の日本史10 戦国覇王編』(小学館文庫)、読了。
第9巻が面白かったので、さっそく第10巻。 一巻使って、信長の天下統一の大局観を解説しています。 信長の改革者としての非凡ぶりは、第9巻で本質を書いちゃってるので、 第10巻はそこまで強烈な印象を残すものではなく、やや枝葉末節感はありましたが、 当時の宗教勢力である「一向宗」「法華宗」などに対する解説は面白かったです。 本作では、著者は相変わらず、歴史学者の宗教オンチぶりを批判しており、 当時の宗教勢力の武装状態とか強欲さとか理解すべきだという指摘なのですが、 わたくし、20年以上前にそう習った記憶があるんですけどねー。 中学校での社会の授業における日本史の学習は、確かに通り一遍だったように思うのですが、 高校の日本史の授業では、ある程度、当時の「僧兵」などの位置づけについて ちゃんと説明してもらったような気がするんですけどねー。 今の感覚でいう「坊さん」とは違うぞ!武蔵坊弁慶みたいなヤツを想像しろ!みたいな。 うーん、教科書では通り一遍な説明だったのかなぁ? 大学受験用のマニアックな夏期講習・冬季講習で記憶が上書きされちゃったのかなぁ。 本作では、信長が本能寺で亡くならずに、もしもその後に天下統一に向かっていけたら ニ三年のうちに達成できていたのではないかという想像も巡らせていますが、 では、その後の日本、特に二十一世紀の日本は幸せだったのですかね~。 信長の、世界に広く目が向いた政治経営がなされていたら、 もしかすると大航海時代の世界の競争に真正面から巻き込まれて 大変なことになっていたかもしれませんし、 そうなると、今、日本という国があったかどうかも定かではないですしね。 信長の偉業や大局観のずば抜けた内容はたしかに著者のおっしゃる通りですが、 信長が政治のトップで指揮をとれたのも、長くて人生80年でしょうから、 その後継が育ってなければ、どんなに国家改革をしても、次の代で倒れますよね。 秀吉や家康といった、同じく優秀で国家観をもった武将が足元にいたから その後、江戸幕府の安定した治世のもとでの国家繁栄というものがありましたが、 では、織田家の子孫のデキはどうだったのかというとイマイチな気がします。 優秀な人物は、優秀な教育者とは限らないという そういう感想を持ってしまう巻でした。 いろんな制約がある中で、できる限りの謀略を駆使した足利義昭は、 むしろ凄い人物なのかもしれませんね。 ![]() |
『やっかいな隣人 韓国の正体』
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- 2022/07/11(Mon) -
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安倍元総理の襲撃事件の犯人が宗教団体の名前を挙げているようで
どうやら韓国発祥の宗教団体のようですが、 この本は事件前に読み終わってたので、とりあえずそのまま感想投稿しますね。 事件との関りなどについて他意はありません。 井沢元彦、呉善花 『やっかいな隣人 韓国の正体』(祥伝社黄金文庫)、読了。 タイトルがかなり皮肉なものになっているので、そこは好みではないのですが、 対談の組み合わせが面白そうだったので買ってみました。 井沢氏の本は、とりあえず日本史解説・日本人論について1つずつ読んでいってますが、 その内容から類推できるとおり、今の韓国に対しては批判的な立場ですね。 呉氏の本は1冊しか読んでないですが、独自の韓国人論を興味深く読みました。 そんな2人の対談なので、韓国に対しては相当批判的な物言いになるんだろうなと予想はしましたが 思った以上に感情がほとばしる批判ぶりでした(苦笑)。 感情面を抜きにして、事実の部分で見ていくと 李承晩ラインをめぐって日本漁船の漁撈長が韓国海軍に射殺されているということを知り、 経済的な紛争というだけでなく、民間人の犠牲者が出ていたことに驚きました。 ここまで感情が激化していたのかと。 それを思うと、今は多少、敵対関係を劇的に演じているようなところがあるのかなとも思いました。 本作の中でも、ある時から韓国国内で反日一辺倒ではなく 日本を評価すべきところは評価し韓国を自己批判する態度が出てきた、 一般の韓国民の思いとはかけ離れた新聞の過激な論調や極端な反日勢力が クローズアップされて日本では報道されているので、現実とギャップがある、 という趣旨のことを呉氏が発言しています。 この文章を読んだときは、「一般の韓国人にそんなフラットな見方が出てきてるのかなぁ・・・・・」と 疑問に感じましたが、一冊読み終わった後にもう一度考えてみると、 確かに、日本で報道される韓国国内の様子というのは韓国メディア発の情報が多かったり 日本のメディアも韓国をある一定の枠にあてはめてしまった方が演出しやすいというところもあり まぁ共犯関係なのかなと思うようになりました。 前職のときに、海外の同業他社と結構やりとりをすることがあり、 当然、韓国の企業の方ともやりとりがありましたが、 一人として嫌な人物には出会いませんでした。 それこそ、日本人と同じように礼儀正しいし、政治的な発言は仕事の場ではしないし、 雑談すれば楽しく話ができる人たちでした。 それを思うと、一般の韓国人と、日本メディアに出てくる韓国人は 別物なのかなとも思うようになりました。 今は、日韓間の関係が悪化したままの状況ですし、 両政府が国内の支持率を上げるために日韓問題を利用している部分もあるので しばらく熱が冷めるまで放っておくのが良いような・・・・・。 難しい問題ですね。 ![]() |
『逆説の日本史8 中世混沌編』
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- 2022/04/12(Tue) -
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井沢元彦 『逆説の日本史8 中世混沌編』(小学館文庫)、読了。
恐怖政治の足利義教以降の足利将軍たちは、みんな覇気がない印象ですが、 その印象のまま応仁の乱に流れ込んでいく権力闘争の様が解説されています。 明確なリーダーシップがないときに、日本人の「話し合い」という特性が全面に出てきますが ルールのない行き当たりばったりの話し合いは、当然、ビジョンのない政治展開になっていき、 そこに権力志向の細川氏や畠山氏、私利私欲に走る日野富子、好戦的な武将たち、 サブタイトル通り、まさに混沌です。 私が日本史の授業で応仁の乱に興味が持てなかったのは、 ダラダラとした戦況もそうですが、誰も日本という国をどうしていきたいのか 明確なビジョンがないまま、自分の個人的な目的のために戦争をしているので 肩入れしたいと思う人物が居なかったことが原因なんだなと、 本作を読んで改めて認識しました。 そして、この混沌の原因を作った将軍義政は、政治センスが全くないということになりますが、 反面、芸術方面には素晴らしいセンスを発揮して、 東山文化という形で結実させ、現代の世にも伝わる日本家屋の作りの基礎になったというのは、 それはそれで素晴らしい功績です。 歴史って、難しいですね。 後半、観阿弥・世阿弥の解説のところで、なぜ日本には「演劇文化」が室町時代まで発展しなかったのか という問いが立てられ、今までそんなことを考えたことがなかったので、 こういう視点もあるのかぁ・・・・・・と感嘆。 確かに、『万葉集』『源氏物語』『枕草子』など、偉大な文芸作品が多数出ているのに、 演劇というのは、室町以降のイメージだし、私の印象としては江戸時代以降の庶民のものという イメージが強いです。 それを、井沢史観の「怨霊」というキーワードでスッキリ解説がなされて、大納得。 「怨霊」という軸で日本史が語られると、本当に、一つの民族の歴史が綿々と繋がっているんだなと いうことを実感できます。 室町時代への見方も変わったし、7巻、8巻も面白かったです。 ![]() |
『逆説の日本史7 中世王権編』
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- 2022/01/28(Fri) -
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井沢元彦 『逆説の日本史7 中世王権編』(小学館文庫)、読了。
第7巻を100円で見つけたので、半年ぶりに井沢史観。 南北朝時代と室町幕府の成立あたりの話ですが、 子供の頃、NHKの大河ドラマ『太平記』を見てた世代なので、 足利尊氏は真田広之、楠木正成は武田鉄矢、後醍醐天皇は片岡孝夫が 頭の中で動き回ってました(苦笑)。 相変わらず本篇でも、武士たちには「天皇を討つ」という発想がなく、 「君側の奸を討つ」という名目で、天皇に味方する武力勢力を叩こうとします。 天皇制度という大きな枠組みを、誰一人裏切ることなくその枠の中で権力争いをし、 枠組み自体をぶっ壊そうとする革命児は現れてきません。 日本人って、まじめだよなー、と、変なところで感心。 でも、「天皇に逆らうと怨霊に苦しめられる」という恐れがあると その枠組みに挑戦しようという漢はなかなか出てこないのかなぁ。 で、尊氏も天皇家の権力のもとで幕府を開こうとするわけですが、 今までの武士の棟梁と比べると、なんだか優柔不断な印象が。 戦には強かったようですが、政治センスがなさそうなんですよねー。 戦国時代の大名たちは、戦のセンスと政治センスと両方を持ち合わせていないと すぐに有力な大名に潰されてしまう競争体制だったこともあり、 優秀な人物が同時代にたくさんいたように感じますが、 それに比べると尊氏は粗削りな印象です。時代のせいですかね。 室町幕府と言えば、足利義満が最初に頭に浮かんでくるのですが、 教科書で学んだ義満のイメージは、勘合貿易とか北山文化とか なんだか金満政治のような印象だったんですよね。 義満が天皇になろうとしていたというエピソードは教科書にはなかったような気がするのですが 私が室町時代に興味がなかったから覚えていないだけなのか、 それとも天皇の座を乗っ取ろうとした出来事は、忖度して教科書からは消されているのか、 興味深かったです。 同様に、義教については、くじ引き将軍というエピソードばかりが印象に残ってて あんまりその政治手腕については知らなかったのですが、 恐怖政治の内容を知るにつれ、混乱した時代を収めるには 剛腕が必要なんだなぁ・・・・彼はやり過ぎたみたいだけど・・・・・。 ということで、このあたりのバランスが取れると、家康のようなレベルの政治家として 後世に名が残るんでしょうね。 当時の外的環境とか物事の経緯とか、自分にはどうしようもない要因もあって 時代が混乱していたことは可哀そうだなという一面も。 なんだか、「運も実力のうち」という変な感想を持ってしまいました。 ![]() |
『逆説の日本史 5 中世動乱編』
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- 2021/08/28(Sat) -
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井沢元彦 『逆説の日本史 5 中世動乱編』(小学館文庫)、読了。
鎌倉時代に入りました。 鎌倉幕府というのは、武士が実権を握るようになったというので、 大きな時代の転換点だという風に学校で習いましたが、 イマイチ興味が湧かないんですよねー。 それって多分、源氏の頭領が3代で終わってしまい、 北条氏による執権政治が始まってしまったので、 なんとなく平安時代の摂関政治と変化がないような印象を受けてしまっていたのと、 後は、平安時代から鎌倉時代に移行する大きな経済的原因となった荘園制度の理解が 本質的に全くできていなかったからだと、このシリーズを読んで思い至りました。 後者の荘園制度の理解については、腑に落ちるレベルでの理解ができたので解決済ですが、 前者の武家政治への移行については、本作でようやく理解ができました。 これまで私は、「武士」という1人1人の職業のレベルで捉えようとしていたのですが、 そうではなく、天皇と摂政による政治体形から、「征夷大将軍」という新たな権威が台頭し、 それが「幕府」という斬新な権力構造を組み上げたというところに本質があるんだなと分かりました。 つまり、個人ではなく、法人組織で捉えればよいのだと。 こうすると、日本という国家が、天皇と将軍という2つの権力が共存できたという不思議や、 その共存をおかしいと思わない国民性が今に続いているから、 憲法や法律と現行制度とのギャップがあっても、あまり違和感を覚えず解釈論で解決してしまえるという ユニークな考え方が社会で認められてしまうという実態が理解できました。 つまり、源頼朝という人物は、現在の日本の国家の在り方の基礎を、 ある意味作り上げた人物だと言うことができ、とんでもない影響力を発揮したということになります。 もしかすると、日本の歴史上、現代社会に最も影響を与えた人物なのではないかなと。 精神面では聖徳太子、社会制度面では源頼朝と言っても良いのかなと。 徳川幕府のように15代360年ぐらい続いていれば、もっと源一族への評価や関心は高まったように思いますが 3代という中途半端な長さで滅んでしまった点が、現代における人気の無さなのかなと。 あと、北条氏は、権力を横取りしたような印象で、悪役的な目で私は見ていましたが、 歴代の執権を見ていくと、政治家として優れた能力を発揮し、人望もあった人もいたようなので、 あんまり思い込みで見てしまってはいけないなと反省。 鎌倉時代については、もうちょっと、小説とか歴史物で、じっくり読んでみても良いかなと思いました。 ![]() |