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『重大事件に学ぶ「危機管理」』
- 2022/10/18(Tue) -
佐々淳行 『重大事件に学ぶ「危機管理」』(文春文庫)、読了。

著者の本は、どの本も基本的には同じ出来事を何度も使いまわしている感がありますが、
でも、やっぱり「危機管理」というのは対応に失敗すると致命的な状況に陥るという重大事ですし
また著者の他に「危機管理」を語れる人物がいないという点もあり、
著者の本を何作も読んでしまいます。

そして、かつて読んだことのあるエピソードだとはわかっていても、
その時の自分の立場(小さいながらも組織のトップを務めることになったとか)や、
それまでに自分が経験した出来事(1500人ものお客様が関わる緊急事態の対応方法に助言を求められたとか)で
読んだときに感じることや、印象に残ることが違ってくるので、
やっぱり読んでよかったと、毎回感じる次第です。

本作では、警備のトップとして現場の1人1人の警察官に向けて言った
「天皇陛下がキミの目の前を通過するのは1分30秒だけだ。
 しかし、その1分30秒の間、天皇陛下とテロリストの間に立っているのはキミだけだ」
この訓示は、安倍元総理の銃撃事件の後に読むと、非常に重たいものを含んでいますね。

昭和天皇の大喪の礼に際しては、直前に新宿御苑周辺5キロ以内の建物の
新宿御苑側の窓20万カ所をすべて、しかも3回訪問チェックをしたと書かれており、
この徹底ぶりは、その現場の労力を思うと、なかなか指示できないことだと思います。
しかし、指示する指揮官と、実行に移す現場の両方が揃っていることが
無事に鎮魂の雰囲気で終えられたという結果に結びついているんだなと実感しました。

先日の国葬儀において、全国の警察官を動員するのは税金の無駄だという意見がありましたが、
私は、こういう機会に、47都道府県の警察署から選抜された警察官が、
日本の警備能力の最も優秀な組織のトップの指揮命令下に直接入って実践経験を積むということに
非常に意味があるのではないかと思いました。

まぁ、奈良県警の署長さんは警備のエリートコースを歩かれていたようなので、
それであの警備体制判断なのか・・・・・・と思うと、
佐々さん亡き後の日本の警備組織は、レベルが下がっているのかもしれませんが(苦笑)。

国葬義実施における税金の有効活用を議論するなら、単なる表面的な数字の話ではなく、
警備なり運営なりに関わった人間や組織に、どれだけの学びがあるのか、
そういう、将来に繋がる効果についてまできちんと意識した議論をしてほしいものです。




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『私を通りすぎた政治家たち』
- 2022/07/27(Wed) -
佐々淳行 『私を通りすぎた政治家たち』(文春文庫)、読了。

安倍元総理が銃撃されたとき、最初の一方はYahooからのプッシュ通知で知り、
外に居たので、ネットの情報やカーラジオの情報で続報を集めてました。
その時に最初に思った疑問は、「なんで2発も至近距離から撃てちゃうの?」
「しかも目撃者が1発目は空砲っぽかったって言ってるけど、この事件、防げたんじゃないの?」。

その後、Twitterなどで、銃撃の瞬間の動画が出回るようになり、
それを見て、やっぱり「なんで1発目の音の後に、安倍さんを伏せさせなかったんだろう?」
という警護要員の動きに対する疑問でした。
あの数秒間に警護要員でも周辺の自民党関係者でも誰か1人が安倍さんを
無理やりにでも演台から引きずり降ろしていたら、死ぬことはなかったんじゃないかと・・・・。

まぁ、今さら、そんなことを言っても命は戻ってこないのですが、
当時、この疑問が頭に膨らんできたときに、
「あぁ、佐々淳行氏だったら、この事件にどんなコメントをしたんだろう?」という思いが沸き上がりました。
まぁ、佐々氏がご存命なら、コメント云々以前に、現場に招集がかかってるかもしれませんが。

本作では、佐々氏が直接仕えた政治家、または与野党の関係の中で議論した相手の政治家について
様々な具体的なエピソードとともに、その人物評と、警備や防衛の観点から
どういう思考を持つべきかという提言をしている一冊です。

官僚として長く第一線で活躍した著者ですので、多くの政治家に仕えており、
当然、エピソードが豊富なので、本作のように一冊にまとめてしまうと
政治家1人当たりの分量が少なくなってしまうのは残念。
ま、でも、多くの著作があるので、個々の事件についての深掘りは
それらを当たったほうが良いのかもしれませんね。

本作では、有名政治家が横並びで評価されており、
しかも、ステーツマン(=国家観をもった政治家)とポリティシャン(=利益優先の政治屋)に
明確に区分して述べているので、著者にとって、政治家を評価する基準が何なのか
よくわかって面白かったです。

与党自民党のステーツマンに対する評価は、他にもいろんな人が本で書いているので
そんなに違和感がなかったというか、新鮮味もやや薄かったですが、
野党のステーツマンに対する評価は興味深く読めました。
公明党、民主党、民社党、政党全体として眺めると、うーんという感じですが、
1人1人の政治家を見ると、やっぱり熱い思いと相当な覚悟を持った傑物がいるものですね。

特に扇千景さんについては、もっと深掘りした本を読んでみたいなと思いました。

安倍晋三氏についても、今後に期待の政治家として名前が挙がってますが、
みんなが嫌がって先延ばしにしてきた政治課題を、いくつも形にしてきた功績は
やはり素晴らしいものだと思います。
そんな偉大なステーツマンの活動が、こんな最期で急に終わってしまうなんて、とても悲しいです。

本作に限らず、著者の作品の中で、
「日本の将来のためにこういう組織の設立を提言してきた」
「日本の将来のためにこういう法律の整備を提言してきた」
という話はたくさん出てきますが、
「日本の将来のためにこういう人材の育成を私はして、具体的にこういう後継者を作った」という
話は印象にないので、優秀な人材が、必ずしも優秀な教育者・育成者にはなりえないという
そういうことも考えさせられる本でした。




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『謎の独裁者・金正日』
- 2012/01/13(Fri) -
佐々淳行 『謎の独裁者・金正日』(文春文庫)、読了。

北の将軍様がお亡くなりになったので、手元にあった本作を読んでみました。

が・・・・・・これは看板に偽り有りではないでしょうか。
北朝鮮に関する話は半分ぐらいで、残りはソ連KGBの話でした。

普段なら、佐々氏の外事ネタだと思って面白おかしく読むのですが、
今回は、「金正日という人物は、どんな人だったのだろうか」という関心を持っていたので、
ハズレな印象を持ってしまいました。残念。
タイトルどおり、金正日その人について、体系立てて論じて欲しかったです。

それでも、やっぱり、スパイ vs 外事課 の話は興味深く、
スパイがどんな手を使ってくるのか、
それを外事課の面々はどのように潰し、攻めて行くのか、
それなのに、日本の法律がどれだけザルなのか、
物語として面白かったです。


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『東大落城』
- 2011/09/04(Sun) -
佐々淳行 『東大落城』(文春文庫)、読了。

久々の「佐々淳行大活躍の巻」的な本。
描写に躍動感が溢れていますし、上司との喧々囂々の議論だけではなく、
部下(それもかなり末端の機動隊員たち)とのエピソードも豊富で、
非常事態を取り仕切る管理者としての辣腕振りを、いつもどおり楽しませていただきました。

軸のぶれなさ、上司の活用の仕方、部下の鼓舞の仕方など、
その能力の高さには、目を瞠ります。

そんなスーパーマン振りや、警察組織の統率力の凄さを楽しみたかった一方で、
もう一つの目的は、「60年代の学生運動とは何だったのか?」というテーマの探求です。

実は、父親の世代が、学生運動の最後をちょっとかじっており、
本作に出てくる東大紛争では、受験生として影響を受けた立場のようですが、
入学してからは、ちょこっと学生運動にも参加していたようです。

あんまり、父の口から、学生運動に関する本音の話は聞いたことがありません。
デモに参加したときの出来事とか、偵察に出て警察に追いかけられた話とか、
面白半分に話のネタに出てきたことはありますが、「なぜ?」という思想については、
私のほうもなんだか怖くて、突っ込んだことがありません。
あれだけ荒れた後に参加しているわけですから、本気の思想を持ってたからだとしても怖いし、
大した思想も無く群集心理的に参加していたとしても、なんだか残念なお話で・・・。

出発点が、大学運営への改善要求や、不明瞭な会計処理の糾弾だったというのは
とっても理解できるものです。
なのに、なぜ、こんなに暴力的で先鋭的な活動になってしまったのか、そこが分かりません。

本作では、すでに暴力行為が激しくなってからスタートしているので、
残念ながら、この目的は満たすことが出来ませんでした。
ただ、ソ連共産党の動きから簡単に経緯を解説してもらったのは、とてもわかりやすかったです。

これまで、学生 vs 体制 という簡単な図式からすると、
佐々作品のように、体制側の視点での作品は、いくつか読んできました。
学生側の視点では、舞台が学生運動渦中の大学や高校という小説作品は読んだことがありますが、
いわゆる思想系のものは手をつけたことがありません。

佐々作品は、分かりやすいし、面白いですが、
やはり体制側の当事者の視点になってしまいますし、
本気で考えるなら、学生側の指導者の言動などを追ったような作品も読むべきなんでしょうね・・・。

ただ、このような同世代の連帯のようなものを経験せずに30代になってしまった私に、
当時の学生たちの熱い思いが理解できるかは、かなり不安なところがあります。
一層、冷めた目で、親の世代を眺めてしまうようになってしまうのも、悲しいことです。


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『わが上司 後藤田正晴』
- 2010/07/12(Mon) -
佐々淳行 『わが上司 後藤田正晴』(文春文庫)、読了。

久々に佐々さんの本を。

この人の人生は、なにを読んでも、
「激動の昭和をまさにその渦中で生きた人だなぁ」と感じます。

そして、本作は、そんな佐々さんの危機管理人生に
上司として、師として、近くから遠くからずーっと関わることになる
後藤田正晴さんとの関係を描いた一冊です。

ただ、要注意は、主人公は後藤田さんではなく、あくまで佐々さん。
佐々作品を読んだことある人なら分かると思いますが、
自分のエピソードを華々しく描ききることにかけては、
右に出る者がいない著者ですから(苦笑)。

というわけで、後藤田さんの名前は随所に登場しますが、
「後藤田さんの教え」というものがバリエーション豊かに紹介されるというよりは、
後藤田五訓を守った自分のエピソードが繰り返される感じです。

できれば、後藤田さんだけではなく、
竹下登、小渕恵三、橋本龍太郎というような、歴代首相とのエピソードも
もっと読みたかったぁというのが本音。

ま、でも、官邸での本当のエリート同士のやりとりなどは
興味深く読みました。

特に、昭和天皇崩御に備えて、陰でシミュレーションをするくだり。
危機管理は、その場その場の判断力がモノをい言うイメージがありますが、
それは、周到なシミュレーションと準備があってこその適切な判断なのでしょうね。

いかに、事前にリスクを察知して、準備をしておくか。
その大切さが良くわかりました。

だからこその、業務の壁を乗り越えてくる傍若無人な佐々淳行という
スーパーマンが生まれたの絵しょうね。

面白い作品でした。



わが上司 後藤田正晴―決断するペシミスト (文春文庫)
わが上司 後藤田正晴―決断するペシミスト (文春文庫)佐々 淳行

おすすめ平均
stars主人公は後藤田正晴ではなく、佐々淳行。
starsこのタイトルは違うのでは。
stars内閣安全保障室長、佐々淳行
stars奇才・後藤田正晴の素顔に迫る
stars護民とは?未曾有の大事件に毅然と臨む上司・部下。

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『目黒警察署物語』
- 2007/05/27(Sun) -
佐々淳行 『目黒警察署物語』(文春文庫)、読了。

警察大学校を出たての佐々警部補が着任した
目黒警察署での最初の3ヶ月間を描いた日記風読物。

昭和29年という時代がもたらす
一つ一つの事件が大なり小なり面白いです。
そして、それらの出来事に対処していく佐々警部補の行動哲学には
「なるほど」と感じさせられることが多く、学ぶところ大でした。

また、同期生として語られる人々が
多種多様な人材の集まりで、その後の地位を想像しながら読むと
とても興味深かったです。

目黒警察署物語―佐々警部補パトロール日記
目黒警察署物語―佐々警部補パトロール日記佐々 淳行

おすすめ平均
stars懐の広い一冊です
stars何か懐かしい雰囲気
stars昭和30年前半の貴重な記録

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『連合赤軍「あさま山荘」事件』
- 2007/03/01(Thu) -
佐々淳行 『連合赤軍「あさま山荘」事件』(文春文庫)、読了。

鉄球で山荘を壊しているシーンは何度も映像で見たことがありますが、
ダッカ事件の後に生まれた身としては、「連合赤軍」なんて歴史上のデキゴトでした。

しかし、本作を読んで、
その映像を生で見ていたような印象を受けました。

佐々さん特有の自信満々な記述も随所に散りばめられてましたが、
それが気にならないぐらい臨場感のある描写に圧倒されました。
部下を惹きつける魅力は、きっと読者を惹きつける魅力に繋がるのでしょう。

時代の逆風の中にありながら、
自分の命を顧みずに職務に忠実な警察官の方たちの姿を思うと、
殉職された2名の方のご冥福を祈るばかりです。


連合赤軍「あさま山荘」事件―実戦「危機管理」
連合赤軍「あさま山荘」事件―実戦「危機管理」佐々 淳行

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stars忘れてはならない事件
stars警察の直面する「危機」が一望できる良書
starsあさま山荘、回顧録
stars目標に向かって突き進む警察官の直向な姿
stars殉職された警察の方に祈りを捧げたい

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『世紀末の指導原理』
- 2007/01/08(Mon) -
佐々淳行 『世紀末の指導原理』(文藝春秋)、読了。

正直、タイトルは中身に比べて立派すぎるきらいがありますが、
盛り込まれているエピソードは面白かったです。

文中で度々登場してきた米軍ウィリアム・ガス・パゴニス陸軍中将の
『山・動く』は読んでみたくなりました。


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『新・危機管理のノウハウ』
- 2006/08/13(Sun) -
佐々淳行 『新・危機管理のノウハウ』(文藝春秋)、読了。

ブックオフで「経営管理」のところに並んでいたので、
「箴言でまとめられている実用書の類かな?」と思って購入したのですが、
大事件を処理してきた筆者ならではの裏話もあって、
むしろ読み物としての側面に気を取られてしまいました。

あさま山荘事件を描いた作品も読んでみたいですね。
(映画は先日テレビで見て、イマイチだったんですが)

本題に戻って、本作に出てくる「報告の仕方、受け方」等は、
一サラリーマンにとって参考になる話でした。
どうやったら一つの情報を有効に活用できるのか・・・
報告の仕方一つで、大きく変わってくるとわかりました。

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