『たけしの面白科学者図鑑 ヘンな生き物がいっぱい!』
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- 2023/11/23(Thu) -
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ビートたけし 『たけしの面白科学者図鑑 ヘンな生き物がいっぱい!』(新潮文庫)、読了。
今は無き月刊誌『新潮45』の連載企画のようです。 生物学者10人とビートたけし氏の対談 前に、自然科学者10人との対談本を読んで面白かったのですが、 それの続編と言うか、生物学版な感じです。 テーマである科学のジャンルが狭まったとは言っても、 生物学そのものは幅広く、研究対象は、ゴリラやカラスなどの誰もが知っている生き物から、 ダイオウイカやユスリカなど珍獣系、さらにはシロアリやダニなどの害虫系と 大きなものから小さなものまで登場してきて、バラエティ豊かでした。 そんな中で、個人的に一番気になったのは、生物の縞模様を研究しているという近藤滋先生。 シマウマの縞は「チューリング波の理論」に従いパターンを表現した方程式により その出現がシミュレーションできるというもの。 実際に、タテジマキンチャクダイで観察と理論の計算が合致することを証明してみせたとのこと。 ダイビングをやっていて不思議に感じるものの一つが、幼魚と成魚で全く違う模様に変化する魚が 一定数存在していることです。 子どものときはドット柄だったのに、途中から網目模様みたいなものが現れて、 大人になるときれいな縞模様になったり。 なんでそんなに変化するの?という疑問とともに、なんでどの個体もきれいに同じような変化を遂げるのだろう? という疑問も持っていました。 近藤先生の証明は、この後半の部分を方程式でばっちり解き明かすものとなり、 あー、生物としてのプログラミングに従ってるだけなんだなと納得。 一方、近藤先生の理論では、前半の謎には全く答えられないというのも面白いです。 気象も、空を眺めていると無秩序に雲が変化していくように見えますが、 ちゃんと理論的に詰めたら、方程式で変化が表現できるというのと 同じような世界観なのかなと思いました。 そして、もう一つ印象に残ったのは、研究者の多くが、今の専門分野に子供の頃から特別関心が あったわけではなく、大学や院での研究時代に、指導教官から指示されたテーマを扱って、 少しずつ興味を持ち始めたり、何かに気づいた瞬間にのめり込んだりという経過を経ていること。 虫の世界は子供の頃からの虫好きがそのまま昆虫学者になっているけど、それ以外の生物は 研究テーマとして降ってきたものにたまたま興味が湧いて、その後大きな成果を得られたという ケースが多いようです。 なんだかちょっとサラリーマン的で親近感(笑)。 このシリーズ、また見つけたら読んでいきたいです。 ![]() |
『少年』
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- 2018/09/29(Sat) -
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ビートたけし 『少年』(新潮文庫)、読了。
『菊次郎とさき』が非常に面白かったので 同じような雰囲気が楽しめそうな本作を読んでみました。 ただ、こちらは短編集です。 いずれも主人公は少年。 小学生から中学生まで。 やんちゃ坊主から歴史オタクまで。 舞台はそれぞれ違いますが、 根底に流れる温かい眼差しが共通しています。 私が好きだったのは冒頭の「ドテラのチャンピオン」。 運動が得意なやんちゃ坊主の主人公と、反対に勉強好きで運動音痴な兄。 学校の運動会が迫ってきて、興奮する弟と抵抗する兄。 そして彼らを見守る両親。 温かい家族です。 そして兄の同級生には、ちょっと抜けているけど抜群に足の速いカラバカ。 彼が高熱を出しながらも運動会の徒競走にやってくる姿を挟みながら 兄弟の思いを描いていきます。 そして、そのエピソードを俯瞰して、30代という年代になった兄弟が 小料理屋で杯を交わし合う。 いい家族ですね。 著者のテレビで見る破天荒な芸風のイメージとは違って、 小説のタッチは繊細で愛情こまやかですね。 ![]() |
『菊次郎とさき』
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- 2018/09/24(Mon) -
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ビートたけし 『菊次郎とさき』(新潮文庫)、読了。
ビートたけしさんが語る自分の両親のお話。 毒舌で、自分は米問屋のお嬢様だったというプライドがあり、 なのに旦那は飲んだくれの冴えないペンキ屋で、 そのギャップからくるストレスなのか、子供の教育に血道をあげます。 頭の回転は良さそうな人なのに、 価値観の軸がちょっとずつ極端な方に触れていて、 なんだかお茶目な人に仕上がっています。 息子からすると大変かもしれませんが(苦笑)。 そんな母親を描くのに、著者は、軽井沢の病院に入院中の母親を見舞うという場面設定を作り、 電車の中での母との思い出を回想するシーンと、 電車内で現在の母への思いを巡らせるシーンとを上手く組み合わせており、 この構成の熟練さが、映画監督としての著者の力量なのかなと思いました。 母さきのキャラクターがとにかく面白いです。 自分はお嬢様だったという思いから、冴えないペンキ屋の旦那を見下し、 子供の教育は全て自分の力で何とかしてやろうという熱心さ。 毒舌で子供の尻を叩きながら、裏では担任の先生を家に呼びご飯を食べさせてやるという なんとも極端な作戦を同時並行で進めていきます。 複雑な人間性が1人の体の中に納まっているのに、 「こんな人もいるのかもしれない」と思わせてしまうのは 著者の表現力と母への愛情のなせる業のように感じました。 一方、ダメ親父の菊次郎ですが、 飲酒にパチンコと、分かりやすいダメ親父ぶりをさらしながらも、 家族みんなを家業のペンキ屋の手伝いに駆り出していたり、 意外と家の中心になっているようなところもあり、 こちらももまた不思議な人物です。 照れ屋で小心者の昭和の下町男って感じですかね。 ビートたけしという時代を作った才能の塊が どういう風に生まれてきたのかという謎に、 この本は、「あぁ、この家族ならビートたけしを生み出してしまいそう」と思わせる 説得力のある内容でした。
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『間抜けの構造』
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- 2017/08/20(Sun) -
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ビートたけし 『間抜けの構造』(新潮新書)、読了。
『甘えの構造』や『「いき」の構造』に乗っかったタイトルだったので買ってみましたが、 思ったほど刺さるものではありませんでした。 確かに、日本人のコミュニケーションにおいて、 「間」というものは重要な役割を持っていると思います。 以心伝心とか、空気を読むといった間接的な意思疎通において、 「間」が有言に語る部分があると思います。 そこまでは共感できたのですが、 中盤で、お笑いの解説になってしまったのが、個人的に好みではなかったのかも。 「間」を説明するのに、漫才などでの「間」の扱い方は 格好の材料になるとは思いますが、 でも、お笑いの人がお笑いを解説するのは、やっぱり「間抜け」な感じがします。 かといって、お笑いじゃない人がお笑いの解説をしても面白くないのですが。 むしろ、映画のカット割りで解説している部分の方が 頭にスッと入ってきました。 映画人の常識と、それを壊そうとした北野監督の思いと。 お笑い論よりも、日本人論の方を読んでみたいですね。
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