『相棒に気をつけろ』
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- 2018/09/15(Sat) -
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逢坂剛 『相棒に気をつけろ』(新潮文庫)、読了。
ブックオフでたまたま見つけた本作。 逢坂氏の名前と、ポップな感じのイラスト、そして軽めのタイトルに違和感バリバリ。 どうしても百舌シリーズの印象が強いので、硬派な作品ばかりを書く人だと思い込んでました。 チンピラ詐欺師が肝の据わった女詐欺師に出会ったことで、 女が計画する詐欺事件にどんどん巻き込まれていく様子を コメディタッチで描いています。 だまされる側が基本的にヤクザ系だったり詐欺師系だったりということで 悪人たちの騙し合いみたいな側面もあり、 彼らがまんまと騙される姿は、爽快でもあります。 そして、女詐欺師である四面堂遥・・・・凄い名前ですが、 彼女の騙しっぷりはお見事。 だって、相棒さえ騙しながら相手を詐欺にかけるのですから。 こんなに上手くだませるのか?とか深く考えずに この2人のやり取りを楽しむ作品ですね。 著者にとって、結構なお歳になってからの作品かと思いますが 文体とか冗談とか、感性が若くてびっくりしました。
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『幻の翼』
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- 2012/10/14(Sun) -
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逢坂剛 『幻の翼』(集英社文庫)、読了。
衝撃を受けた『百舌の叫ぶ夜』の続編ということで読んでみました。 新たに事件が起きるのかと思いきや、 何と前作の事件の続き、復讐譚として話が展開していきます。 これには正直、面食らいました。 第一作に衝撃を受けたとはいえ、話の展開はすっかり忘れてしまっています。 なのに、本作では第一作の振り返りを冒頭で新聞記事形式で紹介する程度で、 その後はずんずん話が進んでいってしまうのです。 誰がどうなったのだかが、さっぱり思い出せないまま話が進んでいくので、 置いてきぼりを食らった感が、ずーっと続いてしまいました。 しかも、主人公たちの感情が非常に前のめりで、 対する悪徳病院側は、病院とは思えない非情な行為を日常的に繰り返しています。 なんだか、そこにもリアリティのなさを感じてしまいました。 ハードボイルド小説で、展開が速いので、ぐいぐい読めはするのですが、 なんだか、すんなり頭に入ってこない作品でした。
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『百舌の叫ぶ夜』
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- 2009/09/06(Sun) -
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逢坂剛 『百舌の叫ぶ夜』(集英社文庫)、読了。
これはすごい作品でした! 記憶をなくしたテロリスト新谷と、新宿爆弾テロの捜査をする警察側、 この2つの軸で話が進んでいくのですが、 作品のスタート時点で、2つの軸が約1ヶ月の時間のズレをもって展開していくのが 明示されているので、「どこにどんでん返しが待っているんだろうか」と ワクワクしながら読んでいく楽しみがありました。 もちろん、時間軸のずれがあるため、 絶えず頭の中を整理しながら読まなければならないという苦労はありましたが、 大変さよりも期待感のほうが大きく、さほど苦痛ではありませんでした。 また、捜査側の陣容も、テロ事件ということで、 刑事と公安の対立という、お約束の展開がありながら、 そこに警察庁警務局まで絡んできて、 真相を追うグループが、刑事・公安・警務局・被害者の夫・ヤクザ・新谷本人と さまざまな立場で構成され、さらに、それぞれが協力し合ったり反目しあったり。 この複雑さを見事に描ききっている、その力量が素晴らしいです。 事の真相も、黒幕の人間の小ささは残念でしたが、 突飛なまでに矮小でもなく大風呂敷でもなく、 相応に納得性のあるものでした。 面白い満足のいく作品でした。
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