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『顔のない肖像画』
- 2020/01/26(Sun) -
連城三紀彦 『顔のない肖像画』(新潮文庫)、読了。

連城作品って、書評とかで絶賛されているのを見つけて読んでみたりするのですが、
イマイチはまることができずに、読んだ冊数も伸び悩んでます。

本作も、誰かが高評価しているのを目にして「読みたい本リスト」に入れていたはずなのですが、
やっぱり同じような感想になってしまいました。

短編集で、冒頭の2つが、性的な描写に重きが置かれていて
好きな作風ではなかったために気持ちが乗ってこなかったというところもありますが
この読書を通じて自分なりに発見したのは、
平成の時代の作品にもかかわらず、文章がとっても昭和な感じがすることにあるのかなと。
そこに、同時代性を感じられず、物語の世界に入っていけないのかなと思いました。

文章の特徴とかが似てるかどうかは別として、
私が読んだ感覚だと、松本清張の作品を読んでいるのと同じような時代を感じてしまいます。
ド昭和な小説に思えてしまうんですよね。

たぶん、文章の描写の仕方とか、使っている言い回しとか、会話文の端々とか、
そういうところで感じているのだと思います。
一言で言うと、古い!ってことですね。

本作は、性的描写の最初の2作を除けば、
他の短編は、結構面白い視点で真相が構成されていたり、トリックがあったりで、
「へぇ~」と思うところも多かったのに、文章が古臭いからのめりこめず残念でした。




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『人間動物園』
- 2018/08/20(Mon) -
連城三紀彦 『人間動物園』(双葉文庫)、読了。

不気味なタイトルですが、
4歳の女の子の誘拐事件騒動を描いた本です。

ある日、警察におばさんから電話が入り、
誘拐事件発生と聞いて警察が急行したら、犬が居なくなったとのこと。
翌日も同じおばさんから電話が入り、また誘拐事件発生!と。
今度は、隣の家の女の子が誘拐され、母親は自宅にいるものの、
犯人に盗聴器を仕掛けられ、 一挙手一投足が監視されているという状況。
おばさん宅にいる警察官2人は、臨家にコンタクトを取ろうとする・・・・。

臨家と窓を通じた手紙のやりとり、盗聴の周波数を割り出して同じ音を警察も盗聴、
そんな中、誘拐された少女の祖父は有名政治家で汚職疑惑の渦中の人物、
そんな祖父と折り合いの悪い父親と母親、その夫婦も不仲で離婚。
ぐじゃぐじゃの人間関係の中で、狂言誘拐ではないかとの疑いも。
誘拐事件のストーリーは、どんな展開になるのかワクワクして、
読書の手が止まりませんでした。

一方で、登場人物たちの思考の中身が感情過多で、リアリティがないように思えました。
みんな、会話の言葉も、手紙の文章も、頭の中の思考も、修飾過多なんですよね。
こんな切羽詰まった状態で、なんでこんな回りくどい言い方をするんだろう?的な。

そして、思考の飛び方がところどころ不自然なんですよね。
前日に起こった犬の誘拐騒ぎと、当日に向かいの家でも起こってた猫の行方不明騒ぎと、
少女の誘拐事件との繋がりを検討するのはわかりますよ。
なのに、離れた場所で起きたヤギのひき逃げとか、人間による玉突き事故とかまで絡めて、
「動物の血が流れている」なんて結論を出すのは、変じゃないですか?

自分が頭の中で考えていたことを目の前の人物が口にしたら
「この俺の胸の中にも盗聴器が仕掛けられている」なんて感想、持たないですよね?
こんな緊迫した状況で、こんな文学的な表現で思考しますかね?

最も違和感があったのは、誘拐された娘の父親の思考。
ちょっと精神的にあっちの世界に片足ツッコんでる人なのかもしれませんが、
自分の存在をコウモリに投影して、心の中のコウモリと対話するとか、不気味です。
身代金の受け渡しの打合せ中に刑事に向けてにやりと笑ってみたり、
常識が通じないような不気味さがあって、苦手なキャラでした。

刑事側も、女性の篠原刑事とかが役柄的に死んでしまっているような感じで、
存在感がなかったのが残念です。
ストーリーを展開するための駒に過ぎないような使い方で。
大事な違和感を覚えているのに、それを先輩刑事にきちんと伝えられないというのは
刑事失格ではないでしょうか。

最後、事件の真相についても、犯人の独白により概要は分かりましたが、
細かいところで、「これ、どうやって対応したんだろうか?」と疑問に思える細かい運用が
いろいろ気になってしまい、最後、バタバタとエンディングを迎えた感じがありました。

事件の構造は面白く読みましたが、
登場人物やストーリーテリングに関しては、不満がありました。
修飾過多な文章は、こんな文章を書く作家さんだったっけ?という違和感が残りました。


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『造花の蜜』
- 2013/04/30(Tue) -
連城三紀彦 『造花の蜜』(ハルキ文庫)、読了。

本作を絶賛している書評を何かで読み、
上下二巻だったのでしばらく積読だったのですが、GWということで挑戦。

とある誘拐事件を巡り二転三転する状況。
警察をあざ笑うかのような犯人からの指示。
そして、人質は無事に解放、一時的に消えていた身代金も戻り、
一体この騒動は何だったのかと思いきや・・・・。

事件の構造は、いくつもの要素が絡み合い、
加害者と被害者が目まぐるしく交錯する展開に、
「よく、こんな事件を考え出したなぁ」と感心しました。

ただ、小説としての出来は、イマイチなように思いました。
感情移入できる登場人物が見当たらないのです。

誘拐された子供の母親は、取り乱して可哀想ではあるのですが、
自分が過去に犯した罪を隠そうとして、子供の危険を事前に察知しながら手を打ちません。
子供が居なくなってからも、警察への協力は、あくまで自分の保身優先です。
この行動には、どうにも共感できない「嫌らしさ」が付きまといます。
離婚した父親はわがままの極みで、こちらも言わずもがな。

誘拐事件の実行犯として関わった男についても、
何で事件に関わろうとしたのか、その動機が腑に落ちません。
こんな思考回路の人いるのかなぁ?と思えてしまいます。

そんな男を勧誘した黒幕の行動も同様に不思議。
なんで、そんな説得の仕方でこの男が参加すると判断したのか、
これまた納得的ではありません。

なんで?なんで?なんで?
登場人物それぞれの、キーポイントとなる行動一つ一つに
大きな疑問符がついてしまうんです。
だから、共感できませんでした。

複雑なプロットの作品ほど、登場人物の誰かに肩入れできなければ
非常に読みにくいものになると思うのですが、
まさに、私にとっては、そういう作品でした。


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『恋文』
- 2006/04/16(Sun) -
連城三紀彦 『恋文』(新潮文庫)、読了。

面白かったです。

あらすじを文字にした場合、常識的な視点から見ると
「何言っちゃってんの、この人!?」「そんな自分勝手な」
という感想を持たずには居られないような設定なのですが、
「この人物なら、こういう判断をして、周囲も受け入れてしまいそうだなぁ」
と納得させられてしまう何かが、この短編集にはありました。

さらに、各物語の後半には、伏線が十二分に活きており、
ストーリー構成も見事でした。
満足の一冊。


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