『陸王』
- 2018/06/14(Thu) -
池井戸潤 『陸王』(集英社)、読了。

連続ドラマで放映してた時、両親が毎週一生懸命見てたので、
自分も実家に帰った時に3回ぐらい見ました。
なので、本作を読み始めた途端、役所広司さんや竹内涼真さんが頭の中で動き始めました。

ストーリーも、ところどころ、「あ、このシーン見た記憶がある」という感じで、
結構、原作に忠実に作られていたのかなという印象を受けました。

さて、本編ですが、さすがの池井戸作品ですね。
足袋メーカーという、誰がどう見ても斜陽産業真っただ中な業種において、
新規事業のランニングシューズ開発にかける物語。
従業員だけの内輪の話にとどまらず、
企業ランナー、ライバルシューズメーカー、メインバンク、素材メーカーなど
様々な利害関係者を巻き込んで物語が進んでいき、
非常にリアリティをもって読んでいくことができました。

機械化があまりできていない手作業主体の仕事とか、
ご高齢の従業員を束ねていく悩みとか、
仕入れ価格が即商品価格に跳ね返ってきてしまう原価構成とか、
歴史ばっかりあって強みが良く分からなくなってしまっている立ち位置とか、
自分自身の仕事環境と重なるところが多く、
宮沢社長の苦悩を存分に共有できてしまいました(苦笑)。

でも、こはぜ屋さん、人間関係に恵まれていますよね。
従業員の結束力の強さは素晴らしく、社内に問題児が居ません。
経理担当の専務がお金に厳しいことと、見習い中の社長の息子のやる気がイマイチなのは
ある種、織り込み済みというか、仕方がないよねーという感じです。

そして、銀行の担当者が熱意を持って支援しており、
社外にも協力者が集まってくるという幸運。
強力なライバルのアトランティス社は、嫌な奴勢ぞろいですが、
むしろ、それがチーム陸王の面々の打倒アトランティス!という
モチベーションアップに繋がっているような感じも受けます。

なので、現実世界で同じような境遇に置かれている社長さんにしてみたら、
「そんな上手くいくわけないじゃないか!」と言いたくなるのかもしれませんが、
でも、やっぱり、宮沢社長のハートの部分というは大事だなと思いました。
思いが道を開くんだろうなと。

思いという点では、時にその思いがブレてしまうところが、
逆にリアリティがあるように感じました。
初志貫徹で、とにかく陸王を完成させるんだ!の一点張りで突き進んでいたら
夢物語みたいで面白くなかっただろうなと思います。

そうではなく、宮沢社長は、「もうダメかもしれない」と逡巡したり、
時には「なぜ陸王を開発しているのか」という本質を見失ったり、
非常に人間臭い葛藤をしています。
そのあたりも、なんだか共感しちゃうんですよね。
時々、自分も、手段が目的化しちゃうときがあり、
「なんで、これを一生懸命やってるんだっけ?」と立ち止まってしまう時があります。

本作の舞台が、陸上の長距離という、
これまた人間臭い世界が舞台だったことも、
拍車をかけているように思いました。

ドラマでは最終回を見ていなかったので、
本作を読んで、スッキリしました。
陸王、ヒットするといいね、と祈ってしまう読後感でした。


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池井戸 潤

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『シャイロックの子供たち』
- 2018/05/19(Sat) -
池井戸潤 『シャイロックの子供たち』(文春文庫)、読了。

第1話を読み終わり、第2話に入った時に、
主人公が変わったので、「あぁ、短編集なのね」と思って読んでいたら、
東京第一銀行長原支店という、下町の小さな支店が舞台だと分かり、
1つ1つのエピソードだけでなく、支店の人間関係なども複雑に絡まって来て、
後半になればなるほど面白さが積み重なってくる連作短編集でした。

冷静に考えれば、どんだけ問題児が集まってるんだ!?という支店ですが(苦笑)、
問題を抱えているのに、解決せずに蓋をする対応を続けていると、
一気に爆発するよ!という事例なのかも。

個人的には、第1話で主人公の副支店長の思考回路が
この問題支店を象徴しているように思えました。
危機的状況に直面しているのに、その本質を見抜けずに
的外れな解決策を自分の頭の中だけで思い描いてしまうという
ダメ上司ぶりを見せつけていますが、
防御に弱いモーレツ社員というのは、こんなものなのかもしれませんね。

この視点、女性行員さんが冷静な目と頭を持っていて
なかなか頼りになる感じです。

個人的には、西木という人物の立ち居振る舞いが気になりました。
最初に登場してきたときは、支店上層部から部下の女性行員に向けられた疑いの目を
強い態度で振り払う正義感を見せて、カッコいいなぁと思ったのですが、
その後の別のエピソードに登場してくる彼は、頼りなかったり、つかみどころがなかったり、
登場してくる場面ごとに印象が違ってきます。

そして、終盤には西木氏自身が事件に巻き込まれ、
さらにはどんでん返し的な真相の可能性も出てきて・・・・・・。
20人近く登場する長原支店の行員さんの中で、
一番興味深い人物でした。

一体、真相は何だったのか。
気にはなるけど、変なモヤモヤは残らないという、
著者の物語展開力がお見事な一冊でした。


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池井戸 潤

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『民王』
- 2017/02/25(Sat) -
池井戸潤 『民王』(文春文庫)、読了。

池井戸氏が政治モノと聞いて読んでみましたが、
政治モノというよりはドタバタコメディですね。
池井戸氏の銀行モノと同じ重厚さを求めてはいけないようです。

日本国の首相と、その大学生バカ息子が
ある日突然入れ替わってしまうという設定。
一応、テロリストによる科学的な攻撃によるものと解説されていますが、
しかし、人の中身が入れ替わるという設定は、
やっぱり物語としては軽いです。

エンタメ小説として読んでいれば、
くだらない大人の行動に対して、斬って捨てるような放言があったりして
スカッとする部分はありますが、
政治小説としては、あまりに狭い人間関係の中でワチャワチャしているだけで、
世界観の広さというものは何にもありません。

国会で翔ちゃんが本音をぶちまけた後、
世論の反応とかが描かれるのかと期待したら、
完全スルーで拍子抜け。

サクサク楽しく読めるけど、あまり心に残るものがなかったです。


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池井戸 潤

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『果つる底なき』
- 2017/02/23(Thu) -
池井戸潤 『果つる底なき』(講談社文庫)、読了。

銀行の融資先とのトラブルを巡る死。
事故死なのか、他殺なのか。
同僚の銀行員が真相を探る・・・・・てな感じでしょうか。

銀行業務の根幹である融資と回収について扱っているので、
金融モノが好きな私にとっては、面白かったです。

ただ、死の真相については、
「そんな動機で、そんな立場の人が、人を殺すかいな?」というのが
私の個人的な感想です。
罪の重みと得られる利益がアンバランスな気がします。

副支店長も精神的に弱すぎで、
墓穴掘りまくりなところも、ちょっと銀行員らしくない。

だから、江戸川乱歩賞受賞とか言われると
非常に違和感を覚えてしまうのですが、
金融ビジネスの世界を久々に覗いて、
懐かしいなぁ・・・・・と感慨に浸るには手頃な作品でした。


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池井戸 潤

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『オレたち花のバブル組』
- 2015/12/25(Fri) -
池井戸潤 『オレたち花のバブル組』(文春文庫)、読了。

ようやく半沢直樹です。
もう、世間から三周半遅れぐらいな体たらくです(苦笑)。
第1弾読んでからも6年経っており、テキトーな読書姿勢ですわ。

さて、わたくし、ドラマは全く見ていなかったので、
ゼロスタートの状態で本作を読むことになりました。
当然、その面白さに一気読みです。

老舗ホテルの建て直しと金融庁検査という大きな軸に、
銀行から取引先への出向というサブストーリーも絡めて、
銀行員としての生き様を一気に見せていきます。

どの企業にも、自分の利益をたくらんだり、保身に走ったりする悪人がいるものですが、
一方で、黙って耐えていたり、やり返す時期を狙っていたりする正義の人もいるわけで、
そのバランスが、エンタメ小説として丁度良いのでしょうね。

あと、正義の人も、目の前のニンジンに浮ついてみたり、
最後の勇気が出せなかったりと、完璧ではない人間臭さがこれまたリアルなんでしょうね。

半沢シリーズはまだあるので、次の作品も楽しみたいと思います。


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『かばん屋の相続』
- 2015/10/01(Thu) -
池井戸潤 『かばん屋の相続』(文春文庫)、読了。

支店勤務の銀行マンを主人公にした短編6つ。
面白かったです。

最近、中小企業診断士試験の実務補習を立て続けに受講したのですが、
中小企業の経営者の方々とお話していると、とにかく面白いんです。

自分がなぜ会社を興そうとしたのか、どうやって事業を軌道に乗せたのか、
そして、これから会社をどうしていきたいのか、
これらの話を活き活きと語られるんですよねぇ。

ほんと、その情熱は凄いと思います。

で、そういう中小企業の経営者たちと仕事でお付き合いしている大企業としては
銀行が最たるものなんだなと、改めて認識しました。
ただし、銀行マンと日常的にコミュニケーションがあるのは、
どちらかというと、経営に問題を抱えている中小企業でしょうけれど。

というわけで、これまで行井戸作品を私は銀行目線=大企業目線で見ていたのですが、
本作では、中小企業の経営者目線で見ていました。
彼らがどんな情熱を持って、目の前の問題を解決する、もしくは乗り越えようとするのかと。

そういう点で、本作は、自分の会社の仕事に熱い思いや哲学を持っている人が多く登場し、
また結末も前向きなものが多かったので、読んでいて、自分自身が背中を押されるような
気持ちになれました。

非常にエネルギーをもらえた読書となりました。


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『下町ロケット』
- 2015/01/04(Sun) -
池井戸潤 『下町ロケット』(小学館)、読了。

直木賞受賞作にようやく挑戦。

下町の中堅産業部品メーカーが国産ロケットへの部品納入に挑むという
プロジェクトX的なお話。

しかし、目標高く、努力して、一度躓くけど、頑張った!的な
起承転結の分かりやすい単なる娯楽作品の枠には留まっておらず、
時代の変化も上手く取り込んでいると思います。

そもそも中堅メーカーが国内トップ企業に楯突くという発想自体が最近の流れですし、
社長をはじめ部長ら幹部連中が高い企業目標を掲げたときに
課長、係長クラスの中堅社員がしらけているというのも当世風です。

最後の一致団結への持って行き方が、多分、池井戸風なのかなと。
今回は、銀行出向者の殿村さんが、かなり格好良い役をあてがわれていますが、
敵役たちにジワジワと詰め寄らせておいて、もう逃げ場がない・・・・となったときに
誰かがドカーンと啖呵を切るというのが、池井戸作品の特徴な気がします。
爆発の威力を大きくするために、ストレスを極限までかけさせるストーリー展開と言いますか。
喝采を送りたくなる反面、ちょっと劇画調だなといつも感じてしまいます。
短編だとスカッと爽やかなんですが、長編だとややリアリティに欠ける面も。

それでも、やはり、銀行の融資係とのやりとりだとか、
一流メーカーによる下請け会社のチェックだとか、
サラリーマンからすると「これって大変なんだよなぁ」という共感とともに読める作品というのは
大事な存在なんだろうなと思います。

で、結局、一日で一気読み!
面白かったです。


下町ロケット下町ロケット
池井戸 潤

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『ようこそ、わが家へ』
- 2014/12/01(Mon) -
池井戸潤 『ようこそ、わが家へ』(小学館文庫)、読了。

裏表紙の「嫌がらせ」「ストーカー」「執拗に続く攻撃」という紹介文と、
本のタイトルから、サイコサスペンス系の話だと思って読み始めたのですが、
どちらかというと、それはサイドストーリーな感じで、
メインは、銀行から取引先に出向になった主人公が、出向先の営業部長の不正を暴く!
という方でした。ま、ある意味、池井戸作品らしい内容と言いますか。

出向先における主人公と営業部長の対立や、
主人公を支えてくれる優秀な総務部社員の存在、
頼りにならない社長、支援してくれる銀行の中の仲間など、
いつもの池井戸ワールドが広がっています。

一方で、ストーカー問題の方は、正直、物語の展開のテンポが遅いですし、
主人公たちの対応も想定の範囲内での、しかも小さな効果しか上げられません。
なんだか、こちらにはスカッとするものがありませんでした。
ただの気持ち悪い思考回路の男と、それにつきまとわれる可哀想な一家というだけで・・・・・。

主人公の息子の健太が、なかなか大人っぽい発言をするところは面白く読みましたが。

というわけで、なんだか1つの作品の中で内部分裂してしまっているというか、
相互に良い効果を与え合うとことまでは至れていないように感じました。


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『不祥事』
- 2014/05/25(Sun) -
池井戸潤 『不祥事』(講談社文庫)、読了。

半沢直樹ブーム、凄かったですねぇ。
その余波か、ちょっと静観していた池井戸作品(←天邪鬼な私)。
結局、半沢シリーズも、まだ一冊しか読んでおりません(苦笑)。

本作も、ドラマ化されてますね。
短編集だったので、お気楽に読めるかと思い、久々に池井戸作品をば。

銀行内の事務ミスを減らすことを目的に活動する「事務部事務管理グループ」が
主役の銀行モノです。

私の会社も、メガバンク系の金融会社なので、
この手の「事務ミス撲滅!」という掛け声は実感をもってよく分かります。
ま、数千人が働く会社で、ミス「撲滅」は非現実的なんですけどね。

しかも、事務ミスを起こしたときの行内検査の減点主義、
本部系や営業系の人たちが、この手の事務管理の部隊を見下していることや、
金融庁検査における銀行員の戦々恐々ぶりのバカバカしさ、
エリート一直線行員の傲慢さ、
いろんなことが、本当に、こんな感じです。
変な人も、いっぱい居るんですよねー。
誇張されているのは、主人公・花咲舞というズケズケものをいう存在だけだと思います。

細かいところをあげつらえば、
行員2人が雑談をする中で「当行」なんて畏まった言い方はしないだろうとか、
経営企画部長が大取引先の社長の息子を預かりながら配属支店を知らないはずはないとか、
いくら実力があっても、部下が上司の調査役にタメ口で会話をすることはないとか
(上司-部下じゃなくても、1年の年次の違いが絶対の世界です!)
いろいろ気になるところはあったのですが、著者はもともと組織内の人ですから、
知らないというよりは、小説の筋を優先して変えたのかなと感じました。

サクサクと気持ちよく読み進められ、
「いるいる、こういうムカつく人!」と一緒になって憤慨でき、
最後にスカッと爽快な解決を得られる。
楽しい読書となりました。


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『株価暴落』
- 2012/10/03(Wed) -
池井戸潤 『株価暴落』(文春文庫)、読了。

1年ぶりとなった池井戸作品。
企業テロ事件をネタにしていますが、やはり舞台は銀行。
今回は、企業融資がメインテーマとなっております。

対顧客、対市場、対金融庁、そして何より自行の業績。
そこに行内の権力闘争が絡んでくるものだから、面白いったらありゃしない。

企業テロの方も、サスペンスとしても面白かったです。
トキオ爆破犯のリアリティが足りない気がしたのと
真犯人の動機が、タイトルから簡単に予想できる範囲のものだったことが
少々残念でしたが(グリコ・森永事件のときに散々言われた手口ですからねぇ)、
犯人にたどり着くまでに二転三転あったので、十分楽しめました。

そして、保身に走るのではなく、
自己の主張を頭取めがけて真っ向から発信する調査役・坂東の人物に惚れちゃいました。
私の周り見渡して、「こんな金融マン、いないよ・・・・・」と溜め息。

自分が役員会の事務局をやっていることもあって、
「解任動議」なんていうシーンになると、必要以上にドキドキしちゃいます。
坂東が頭取に訴えるシーンも同じく。
上にたてつくなんて、うちじゃぁ、考えられないからなぁ。


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stars関西で生まれ育った人でないと分からないかも。。。
stars綴られた事件の裏側
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