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『死刑長寿』
- 2018/09/06(Thu) -
野坂昭如 『死刑長寿』(文春文庫)、読了。

タイトルから、「どんな物語だ?」と思って買ってきた本。
短編集です。

冒頭作は「エレクションテスト」。
経済が行き詰まり、高齢化と少子化により将来の見通しも暗い日本、
そんな状況を打開すべく、不人気首相が採った政策は、
65歳を超えた男性全員に性的能力テストを行い、合否をつけるというもの。
不合格になると様々な権利が剥奪されたり、負担が増えたり、
つまりは「お荷物だ」と国家から烙印を押されることに。

嫌味たっぷり、下ネタも盛り込みながら、社会批判。
高齢のおばあちゃんは活力も明朗さもあるけど、
おじいちゃんは社会的役立たずというぶった切り方(爆)。
出来の悪い首相の存在も相まって、こんな異様な法律が成立しますが、
意外と、今の若者には支持されるかも(苦笑)。
選別方法は別として、高齢者に手厚い保証を付けるのではなく
むしろ冷遇するという政策は、不満と不幸の蓄積した貧しい若者の関心を引きそうです。

続いて、表題作の「死刑長寿」。
死刑が確定したまま、60年近く収監されて未だに死刑執行されていない男の存在が発覚。
法定手続きに則って死刑が確定しているものの、
終戦前後のドサクサの中で殺人の疑いで逮捕されたため証拠がイマイチ怪しい。
そんな状況のため、歴代法務大臣が刑の執行対象者から除外し続け、
それが長期間にわたってくると、今度は高齢を理由に執行対象者から外され。

こんな死刑確定囚を、どう扱ってよいかわからない行政は首相に判断を丸投げし、
首相は、タナカマキコ氏がモデル(?)の外務大臣に押し切られて
死刑囚の存在を公表し、手厚い福祉の成果だとPRする始末。
マスコミもどう扱ってよいか分からず、そのPRにのっかってしまうという体たらく。

まあ、実際の日本の行政はもっとしっかりしているでしょうから、
こんな存在が急に明らかになることはないと思いますが、
それでも、こういう極端な設定を通して、行政や政治、マスコミを批判する姿勢が
面白かったです。

個人的に面白いと思ったのは、この2作かな。
著者独特の文体が読んでて疲れるという理由もありますが、
後半は食傷気味で流し読みとなってしまいました。

良くも悪くも、押しの強い、アクの強い作家さんですね。


死刑長寿 (文春文庫)死刑長寿 (文春文庫)
野坂 昭如

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『エロ事師たち』
- 2018/03/13(Tue) -
野坂昭如 『エロ事師たち』(新潮文庫)、通読。

昔から実家の本棚にあったのですが、
そのタイトルと表紙のイラストの印象(ちなみに下のAmazonの写真とはまた別の表紙です)から
手に取るのをためらっていた一冊。
今回、本棚の整理をしたので、ついに読んでみました。

性描写がキツイ作品なのかなと覚悟したのですが、
そういうエロ・グロ・ナンセンス的な描写が中心なのではなく、
私の感想としては、エロ業界のお仕事小説なのかなと。

本当は、主人公たちの必死な生きざまを読む小説だと思うのですが、
私としては、性風俗産業で生き残るための工夫と行動力が詰まった
お仕事小説を読んでいる気持ちになりました。

他の人にないアイデアを出すために頭を使うこと、思いついたら実行すること、
とにかく状況の変化に応じて柔軟にスピーディに動くこと、
こんな風に要約したら、どんな業界にも適用できる「デキルやつ」の姿ですよね。
それが、犯罪すれすれの性風俗産業だからこそ際立つというか。

独特な大阪弁の会話文が続くので、
(大阪弁がダメなのではなく、著者の独特なリズム感のことです。
 田辺聖子さんの大阪弁は好きですよ)
ちょっと文章は苦手でしたが、世界観は面白かったです。


エロ事師たち (新潮文庫)エロ事師たち (新潮文庫)
野坂 昭如

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『お笑いを一席』
- 2011/07/11(Mon) -
阿刀田高 他 『お笑いを一席』(新潮文庫)、読了。

一流作家たちが創作落語に挑戦というので、買ってきました。

阿刀田高、井上ひさし、野坂昭如など、大御所揃いなので
期待して読み始めたのですが・・・・・・・
いやはや、結構お下劣なネタが続いて、しんどかったです。

当然、古典落語にも下ネタ系の噺はありますが、
そこには色気や粋が感じられて、洒落の中で笑えるんですよね。

でも、本作に収録されたネタは、
グロさの方が目に付いてしまって、あまり笑えず・・・。
噺家さんが演じれば、笑えるようになるのでしょうかね?

あと、落語の態をなしているのか、若干疑問な作品も。
そういう点では、阿刀田作品が、マクラからオチまで、
落語としての型をきちんと守っていて、噺家さんが演じている姿を想像しながら
読むことが出来ました。


お笑いを一席 (新潮文庫 あ 7-1)お笑いを一席 (新潮文庫 あ 7-1)
阿刀田 高

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『戦争童話集』
- 2007/12/11(Tue) -
野坂昭如 『戦争童話集』(中公文庫)、読了。

野坂作品の戦争ものは『火垂るの墓』に次いで2作目でした。

全ての作品が8月15日をキーにして描かれています。
そのため、戦争が持つある種の華やかさや勢いといったものは感じられず、
そこにあるのは「無」に向かってしまった世界に生きねばならない人々の姿でした。

「小さい潜水艦に恋をしたでかすぎるクジラの話」なんて、
タイトルからして哀しげなイメージが沸々と湧いてきますが、
結末も如何ともしがたい残酷さでした。
これが戦争と言わんばかりの筆致。

「凧になったお母さん」は、なんと国語の教科書に載っている(いた?)とのこと。
これも結末の場面は、情景をイメージすると相当残酷です。
まさか、柔らかめに修正して掲載していたわけじゃないですよね?
学校でのオカシナ思想教育に使用されていなければいいのですが・・・。


戦争童話集 (中公文庫)
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stars原作を先に読みました
stars63年前の現実・・・
starsこれが原作…?
stars悲しいお話
stars表題作は短いが傑作

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