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『職業、挑戦者 ― 澤田貴司が初めて語る「ファミマ改革」』
- 2022/07/05(Tue) -
澤田貴司 『職業、挑戦者 ― 澤田貴司が初めて語る「ファミマ改革」』(東洋経済新報社)、読了。

コンビニの中で、ファミマが一番好きです。
商品の美味しさとか、品質管理の良さとか、ブランドイメージとか、そういう点ではなく、
店頭に立つスタッフさんが他のコンビニに比べて一番人間的でまともに感じます。
他のコンビニは、どうにも機械的なマニュアル応対だったり、
もしくは何も考えてなさそうな高校生がぼーっと店番してたり。
品物よりも顧客接点の方でファミマを評価してます。

一方で、セブンイレブンやローソンに比べて、どうにも地味な印象は拭えず。
経済誌で持て囃されるような華やかな経営者がいなかったからかなとも思いますが、
ここ数年はテレビCMで慎吾ママを起用したり、ファミチキ先輩とかいう謎キャラを生んだり
地味なりに結構頑張ってるなという感じでした。

で、たまたまブックオフで本作を見つけたので買ってみました。
何にも考えずに買ってきたのですが、読み始めたら、本作の主人公である澤田社長というのは
あのユニクロで柳井正氏の右腕として活躍しながら社長の椅子を断って退社した
あの澤田氏だったということ。全然知りませんでした。

2か月前にユニクロの内幕本を読んだばかりですが、
その本では、澤田氏は、業績を上げたのにユニクロを追われた副社長として
描かれているように思え、なんとも可哀そうな人物に見えた一方で、
どう優秀なのか具体的にイメージできないままでした。

本作を読んで、勝手に思い描いていた澤田像とのギャップは、
もっとスマートにカッコつけて経営するタイプの人なのかなと思ってました。
本作では、ファミマの社長として呼ばれながら、入社前に3週間も店長研修を受けたり、
社長になってからも店舗視察を欠かさず行ったり、店舗オーナーと意見交換したり
社員と意見交換したり、とにかく現場主義の熱い人でした。

本人が、社長としてのリーダーシップの取り方について語る中で、
「誰も文句を言えない状態を作ることです。そのためには自分が一番努力する。
 圧倒する。ぐうの音も出ないくらいに仕事する。」
そういう趣旨のことを言ってます。私は、自分自身、同じような思考法なので
とことんまで仕事をしてしまうのですが、周囲から「あんたのペースについていけない」と
言われることがしばしば(苦笑)。
こんな人が周囲に居たら、一緒に仕事する人は、かなりしんどいと思います。

澤田氏自身、それについても発言しており、
周囲の社員は本当に大変だろう、今までよくやってくれている、と言ってますが、
当人が言う言葉以上に、社員さんは大変なんじゃないだろうかと心配になってしまいます。
優秀な人って、周囲の人間も、自分と同じように努力すればできるだろう、なぜできないんだ!と
詰め寄ってしまうようなところがありますからね。少なくとも私にはその気があります。

澤田氏は昨年、ファミマ社長の座を後任の伊藤忠出身者に譲ったようですが、
社長在任期間の評価は、どんな総括になってるんでしょうかね。
気になるところです。
社員側目線での澤田政権時代のファミマのルポを読んでみたいと感じました。




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『ユニクロ帝国の光と影』
- 2022/05/08(Sun) -
横田増生 『ユニクロ帝国の光と影』(文春文庫)、読了。

ブックオフで本作を見つけたとき、「あ、あの潜入取材のやつか」と思って買ってきたのですが
読み始めても正攻法の取材の様子が描かれていて、
いつ潜入するんだろ?と思ってたら、どうやら同じ著者の別の本だったようで(苦笑)。

思っていたものと違う本でしたが、でも、時間をかけてきちんと取材しているので
力の入った骨太のルポルタージュで、面白かったです。

ユニクロの急成長と、上下動の激しい経営状態が、どのような経営構造と経営哲学から来ているのか
それを、ユニクロの店舗の元従業員、経営側の元従業員、そして柳井氏本人に取材し、
さらには取引先の中国の縫製メーカーや国内の物流会社にも取材しており、
多角的に事実を積み上げている印象です。

一方で、基本的なユニクロへの評価が、要は「ブラック企業」というところに収斂していくような感じで
日本人の国民服のようになった感もあるユニクロという企業の製品への評価が
過小評価のように感じました。

私は、自分の着る服には頓着しないので、「流行に左右されないオーソドックスな服で安くて丈夫」という
ユニクロの製品を愛用しています。
会社勤めをしていた時は、それこそ本書に登場してくるZARAも良く使いましたが、
ビジネスシーンに使いやすいという面もありながら、縫製などの品質が良くないので
店舗できちんとチェックして買わないと怖いと感じてました。
店頭に同じものが5着並んでて、5着とも縫い目がほつれてるとかで買わなかったことも。
その点、ユニクロは安心して通販で買えます。

本作中で、元ユニクロ社員が、「ユニクロにはオリジナルのコンセプトがない」
「どういう洋服を作りたい企業なのかさっぱり見えてこない」というコメントを発してますが、
私は、このコメントには、「えーっ!?」って感じでした。
辞めた従業員の私怨が入っているようにも思ってしまいました。

日本人に「ユニクロの服ってどんな服?」と質問したら、
ほぼ同じようなイメージに集中するのではないかと思います。
「オーソドックス」「カラーバリエーション」「高機能」「高品質」「低価格」。
つまりは、誰もが着れる服を作っているのだと思います。
「着る人を選ばない」「着るシーンを選ばない」「価格に手の届かない人が少ない」
我が家は、70代の父から、2歳の姪っ子まで、ユニクロで買い物ができてしまいます。
これって、凄いことだと思います。
このユニクロが日本社会にもたらしている効能を、もっと評価すべきじゃないかなと思います。

一方で、ユニクロという企業がブラック企業なことは、そうだろうなと思います。
ある種、一つのブランドを構築した企業は、そこで働きたいという夢を持った人々を
いいように食い散らかす部分があると思うので、なおさらブラック化が進みますよね。
ディズニーランドとか(爆)。

私は、経営者は、どこか冷たいところがあると思いますし、
そうじゃないと会社を大きくしていけない面があると思います。
これ以上一緒に仕事をしても会社に良い影響を与えないと判断した役員をクビにしたり
月給を支払っている社員を、同じ金を払うならとことん効率的に働いてほしいと考えたり
取引先を選択するときには、良いものを安定的に安く作れるところを選んだり。
ここまで冷徹にできるから、今のユニクロがあるのだと思います。

柳井さんが経営者として批判的に語られやすいのは、
自分の周囲に、柳井さんの冷徹さを上手くオブラートに包んでマイルドに見せてくれるような
演出家的な腹心がいないからなのかなと思いました。

著者の取材に対して、ユニクロの広報部の回答が、軒並み木で鼻をくくったような回答なのですが
例えば広報担当役員とかに気の利いた人を配置できれば、
ユニクロのブラックさをもう少し隠せるようなブランドイメージ作りができたんじゃないかなと思います。
後継者作りに失敗しているところを見ても、
柳井さんは、仲間づくりというか、チーム作りが苦手なんだろうなと感じました。

どんなに優秀な経営者でも、苦手な分野があるんだなと、再認識する本でした。






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『この国を出よ』
- 2018/03/02(Fri) -
大前研一、柳井正 『この国を出よ』(小学館)、読了。

発売当時、かなり売れていた記憶があったのですが、
読んでみたら、それほど特長的な部分がないように思いました。

大前さんと柳井さんの文章が交互に語られるので、
対談という訳ではなく、
一応、お互いの文章の内容を受けて次の文章が書かれているようですが、
それほど相乗効果が生まれているようには思えませんでした。

もちろん、経営コンサルタントや大企業経営者の言葉として
刺さるものは見られますが、この2人の合作という形であえて出版するほどの
内容だったのかというと、イマイチでした。

それぞれが本を出した方が、
もっと体系的に言いたいことが書けたのではないかなという気がします。

読んでいくと、結構、当時の民主党政権への批判が並んでいるので、
有名経営者が現行政権を強く批判したという点で
その当時はウケたのかもしれませんね。
今となっては・・・・・ですけれど。

ユニクロの人材教育システムなどの
具体的な経営論のところは興味深く読みました。


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『プロフェッショナルマネジャー・ノート』
- 2014/09/22(Mon) -
プレジデント書籍編集部 『プロフェッショナルマネジャー・ノート』(プレジデント社)、読了。

帯にデカデカとファストリの柳井会長の名前が書かれていますが、
解説というか、まえがきを寄せられています。

柳井会長が若い頃に読んで感銘を受けたという
ITT会長のハロルド・ジェニーン氏の著作『プロフェッショナルマネジャー』について
簡潔に、でも熱く語っています。

本作は、その『プロフェッショナルマネジャー』のエッセンスを抜き出して
プレジデント編集部なりの解説をつけています。

うーん、確かに1個1個の言葉は納得感があるのですが、
こうやって断片的に示されても、根底に流れる経営哲学みたいなものが見えにくくなっています。

これは、本題の『プロフェッショナルマネジャー』を売るための
パンフレットみたいなものですね・・・・・・有料ですけど。


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『一勝九敗』
- 2010/11/17(Wed) -
柳井正 『一勝九敗』(新潮文庫)、読了。

UNIQLOの柳井会長の著作。
あの怒涛の快進撃は何だったんだろうか・・・と思い、この本を読んでみました。

文章は、非常に冷静で、控えめ。
なのに熱い意思がひしひしと伝わってきます。

一商店の主から、二店舗目、三店舗目と拡大していった時の想いが、
三十店舗、三百店舗となっていっても変わらないことに驚きました。
商売人としての芯が通った人物だと感服しました。

一方で、これだけの事業規模にまで成長していながら、
商店と同じような運営、つまりは、全てが柳井会長の判断で動いているところに
ちょっと疑問も感じました。

巨大な企業組織を率いる雇われ社長の自伝等を読むと、
「誰々と意見が衝突したけれど、こう主張して自分を通した」などという
「議論」のシーンが出てくるものですが、本作では、ほとんど出てきません。
というか、「社員の誰と何をやった」ということ自体も、淡々と事実のみが
出てくる程度のものです。

なので、経営者としての熱意や、仕事人としての誇りを学ぶには良い本でしたが、
企業組織の中で周りを巻き込みながら、どうやって業績を上げるか、
自分が成長していくか・・・という点では、
なかなか参考にし難い本だったと思います。


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