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『淋しいのはお前だけじゃな』
- 2020/06/16(Tue) -
枡野浩一 『淋しいのはお前だけじゃな』(集英社文庫)、読了。

私が読む本の中で「短歌の人」というと、枡野浩一氏と穂村弘氏がごっちゃになってしまいます。
まだ、私の中できちんと蓄積ができていない感じです。
今のところ、「暗い」枡野氏「恋愛こじらせ系」穂村氏というザックリとした区別です(苦笑)。

で、本作は、暗い枡野氏の初の雑誌連載をまとめたもの。
短歌が一首と、その歌ができた背景を解説というよりはエッセイ風にまとめた作品です。

短歌も共感できるものが多くありましたが、それ以上に、エッセイの内容の方に興味が持てました。
周囲の人に言われたことや体現されたことに対して、
どんな風に受け止め、何が著者の心の中に残り、そしてそこから歌が生まれたのか。
短い文章の中できちんと表現されていて、ものすごく丁寧に熟考して書かれたエッセイなんだろうなと
その思考の厚みを感じられるものでした。

恋の歌より、仕事の人間関係や、人間関係の社会性を詠んだ歌の方が印象に残りました。
自分自身、いろいろ複雑な人間関係の中で、最近、考えることが多いからかな?と思います。

ユニークなイラストも楽しめて、仕事が立て込んでいる中で
ホッと息を付ける読書タイムになりました。

そして、最後まで私はタイトルを
『淋しいのはお前だけじゃない』という同朋意識を誘うものだと勘違いしてました。
『淋しいのはお前だけじゃな』という、とっても突き放したタイトルなんだということは、
最後の最後、長嶋有さんの解説を読んでいて気づきました(爆)。




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『ハッピーロンリーウォーリーソング』
- 2018/05/11(Fri) -
枡野浩一 『ハッピーロンリーウォーリーソング』(角川文庫)、読了。

枡野さんの短歌集。
昭和な感じが残っている東京の風景写真と一緒に綴られています。

短歌の印象は、イマドキのネガティブさ。
引きこもりとは違う種類だけど、教室の隅でいじけてそうな感じの
そんな根暗な男の子の頭の中を覗いたような感じがしました。

世の中の観察眼は鋭いけれど、
それを外に向かって発する勇気はなくて頭の中にこだまさせているような感じ。

でも、みんな、自分の中に、そんな根暗な一面を持っていると思います。
だから、どの歌も、何かが自分の中に残っていきます。
「そうだよね」と素直に頷けるものもあれば、
「そうかもしれない」と思ってしまうものもあります。
共感度はいろんなレベルがあるけれど、腑に落ちる感じが味わえます。

今を感じられる、興味深い歌集でした。

でも、全ページに写真を入れて、かつコストを抑えようとしたせいか、
紙質が分厚くて開きにくいので、読みづらかったです。


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『石川くん』
- 2018/01/13(Sat) -
枡野浩一 『石川くん』(集英社文庫)、読了。

現代歌人の枡野さんが、近代歌人の石川くんを解説した本。
石川くんとは、もちろん、石川啄木氏。
そして、解説とは、現代口語訳による、もちろん面白解説。

国語の教科書に載っている近代詩人の中で、
みんなの記憶に残っているランキングで一位を争うのではないかという存在感のある
石川くんですが、私の中では「教科書に載せてはいけないダメ男」(苦笑)。
確かに教科書にある歌は情緒あふれる良い作品だと思いますが、
その背景がなんともねぇ・・・・・・。

で、その点は、本作でもとことん突っ込まれてます(笑)。
もちろん、愛情を持ってですが。

せっかく友人が苦労して見つけてくれた仕事の口をあっさりゃ辞めちゃったり、
ちょっと小金が入ると妻子に仕送りせずに、女郎通いをしちゃったり、
ホントにダメ男。

だからこそ、詩情とのギャップが面白いのかなぁ。
不思議な人です。

最後の年表で、啄木家族の生没年が書かれていますが、
みなさん短命。
このページは、とても悲しかったなぁ。


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『僕は運動おんち』
- 2017/12/31(Sun) -
枡野浩一 『僕は運動おんち』(集英社文庫)、読了。

青春小説という紹介で、かつ表紙のイラストから、
爽やかでスラスラっと読めるお話かなと思って手に取ったら、
冒頭から、「死にたい」「自殺」などの言葉のオンパレードで面喰いました。

ところが、「死にたい、死にたい」と言っている高校生の主人公には
あんまり悲壮感がありません。
むしろ軽いぐらい。
これって、こじらせ男子?(苦笑)
イマドキの高校生かと思ったら、舞台は昭和の終わりぐらいな感じ。

主人公の頭の中で物語が進んでいくうちは、
軽~い「自殺」連呼で、共感できなかったのですが、
友達が登場して、彼らとの関りが見えてくると、俄然、面白くなってきました。

特に、黒帯ポエットうさちゃんとの関係、そして彼の詩。
前に読んだ著者の作品では短歌がキーでしたが、
本作ではポエムが鍵。
うさちゃんが直接見せてくれたものもあれば、思わぬところに発表したものも。

このポエムが、直接描かれていない心理をうまく表現していて
高校生の感性って、すごいなー、面白いなーと素直に感じました。

また、「死にたい」連呼の主人公も、単にそれが口癖なだけで、
結局は、友人との関わり方に臆病だったために
自分を見つめることばかりになってしまい、それがこじれて出ちゃったのかなと。

周囲との関りが一歩深まると、自分から友達へと目線が変わり、
「死にたい」と思う代わりに、彼らとの関係に悩み始めます。
そこが青春ですよねー。
不器用な主人公だからこその温かさが感じられます。

良い小説でした!


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『ショートソング』
- 2013/01/08(Tue) -
枡野浩一 『ショートソング』(集英社文庫)、読了。

短歌の世界にのめり込んでいく大学生を主人公にした小説。

ま、小説としては、どうということのない筋書きです。
あまりにもあっさりと主人公が短歌の世界にはまっていくので、
ちょっと拍子抜けな感もしますが、
ま、でも、たくさん登場してくる短歌が面白かったので、
短歌を軸に、小説はト書き程度に読んだら、然程気になりませんでした。

あとがきに、本作の短歌の出所が書いてあったので、
あぁ、先にあった短歌をつないでいくために小説の筋を作ったのか・・・と
その出来栄えの理由に納得。

歌集は『サラダ記念日』ぐらいしか読んだことがないですが、
本作でも触れられている通り、口語体での短歌というのは
当時、ものすごい衝撃だったのでしょうね。

本作でいろんな短歌に触れて、口語体の短歌は、
言い回しや言葉遣いが面白いと感じるものもあれば、
思ったことそのままの地の文みたいで、どこが良いのかわからないものも。

てにおはや語順をちょっと変えるだけで、
ずいぶん歌の印象が変わるんだなぁというのも発見でした。

短歌の本として読めば面白かったです。



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