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『ナイフを持つまえにダザイを読め!!』
- 2021/08/07(Sat) -
新潮文庫編 『ナイフを持つまえにダザイを読め!!』(新潮文庫)、読了。

ブックオフの店頭で見て、「どういう意味のタイトルなんだろう?」と気になり買ってみました。
ナイフが使われた事件と太宰作品が何か関係するようなことってありましたっけ?みたいな。

正直、読んでもよくわからなかったのですが、
ただ、太宰文学の初心者向け解説本としては面白かったです。

自分の太宰履歴を振り返ると、意外と代表作とされるものを読んでいません(苦笑)。
自殺未遂や心中事件など、暗いイメージが私の中で根付いちゃってるせいかもしれません。

改めて解説を読んでみて、『ヴィヨンの妻』とか読んでみるべきかなと反省。

本作の構成は、冒頭でカラフルでポップな若者向けのページがあり、
そしてかわいいイラストで太宰作品の超入門コース紹介があり、
重松清氏や田口ランディ氏による太宰愛のエッセイがあり、
新潮社の編集部が力を入れている様子が伝わってくる構成となっており、
読み物としても面白かったです。

自死を選んでしまう人に対して、
どうしても私の中で生理的に遠ざけてしまいたいと思う部分があり
距離を置いてしまいがちですが、
太宰作品にたくさん触れることで、そういう生理的な拒否反応が少しでも薄くなって、
共感できるところを何か探そうという気持ちになれるでしょうかね。




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『もの思う葦』
- 2020/06/04(Thu) -
太宰治 『もの思う葦』(角川文庫クラシックス)、読了。

先日、太宰治について熱く語った本を読んだので
ブックオフで本作を見つけて、なんとなく買ってきました。

エッセイ、アフォリズム集ということですが、
作家としての思いのたけを語りつくしているというか、言いたいことをとにかく書いているというか、
情念の塊のような本でした。

普段、私は、太宰文学のリズム感なりカラッとした部分が好きなのですが、
本作の文章は思いがそのまま出てきてしまっていて、読みにくいと感じてしまいました。
私も仕事の合間とかに余裕のない読み方をしていたので、あんまり頭に入ってこなかった感じが。

反対に、小説作品の文章は、練りに練られたものなんだなぁと思い至りました。
細かいところまで神経を配って書いているのだろうなと。

本作の中で太宰が語っている言葉は、
太宰ファンにとっては太宰の頭の中が分かるので、とても興味深いものかと思いますが、
私には、まだ読むのは早かったかなと思います。
もう少し太宰作品を読んで、私の中に太宰像がある程度出来上がってから読んだほうが面白そうです。

最後、志賀直哉にえらい噛みついてて、やんちゃな大人なんだなと思いました(苦笑)。
志賀氏側は何か反論したのでしょうかね?気になります。





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『いまさら入門 太宰治』
- 2020/04/29(Wed) -
木村綾子 『いまさら入門 太宰治』(講談社+α文庫)、読了。

先日たまたま父と太宰治の話になり、
「そういえば積読に太宰本があったなぁ・・・・」と取り出してきました。

古風な感じの著者名だったので、文芸評論家が初心者向けに解説します的な本かと思ったら、
なんだかとっても軽いノリで文章が始まったので、「!?」とプロフィール欄を見たら
カッコイイ風な若い女の人の写真が載ってて、雑誌の読者モデル出身だとのこと。
あー、若い女の子が同世代向けに太宰を語る本かぁ・・・・と思ったら
私の1こ下で、結構いいお年でした(苦笑)。

ということで、最初は、内容云々よりも、言葉の軽さというか、
自分の思いが前面に出過ぎている文章に、「年の割に青すぎないか・・・・」と
ちょっと引いたところからスタートしてしまいました。

ただ、「太宰が好き」の根底にある「本が好き」という感覚には共感できて、
だんだんと文章の軽さは気にならなくなってきました。慣れたのかな。

さて、本題の太宰ですが、著者も指摘する通り、
文章のリズム感が良いんですよねー。
ダラダラと一文が長く続くのに、句読点のおかげで、なぜかスラスラ読めちゃうんですよね。
さすがの才能。

本作で、1~2行が引用されているだけでも、文章にメリハリがって
面白さが伝わってきます。
特に、私が、太宰のユーモアあふれる作品が好きなので、
中盤で紹介されている作品たちには興味を惹かれました。

一方で、終盤で紹介されていた「斜陽」「人間失格」は、代表作ということもあって、
引用される文章のボリュームが大きいのですが、
ちょっと長すぎじゃない?と思ってしまうほどで、解説を読んでいるんだか
太宰の作品を読んでいるんだか分からなくなってしまうほど。

もうちょっと構成のバランスを取ったら、もっと共感しやすい本になっただろうになぁと
思ってしまった読後感でした。




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『惜別』
- 2012/09/03(Mon) -
太宰治 『惜別』(新潮文庫)、読了。

「惜別」と「右大臣実朝」を納めた中編小説集。

ぱっと開いた2ページが改行無しの全面文字だらけには圧倒されますが、
それでも、リズム感を持って読めてしまうのが、大作家の文章の凄さ。

物語としては、「右大臣実朝」が面白かったです。
わたくし、日本史の中で鎌倉時代は苦手な範囲だったので、
読み始めてから、「あぁ、実朝って、3代将軍かぁ」とようやく気づく始末。
でも、執権の名前とか、戦乱の名前とかで、なんとなく思い出すことが出来ました。

実朝の穏やかさ、知性と、その悲劇の最期とのギャップが、
なんともやるかたない物語です。

ところで、「惜別」が刊行されたのは昭和20年9月5日だとか。
あの敗戦からわずか20日で文学作品が発刊されているとは、
日本人のたくましさに驚きました。


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『晩年』
- 2011/11/18(Fri) -
太宰治 『晩年』(新潮文庫)、通読。

久々の太宰作品は、最初の短編集というものを手にとってみました。
(ま、買ったときは、そんなことは考えずに「100円で発見!」てなものでしたが・・・)

太宰作品とは、それなりに相性が良いつもりだったのですが、
本作は、あまり入り込めませんでした。

ちょっと観念的な描写が多かったからでしょうか・・・。

なんだか読むのがしんどくて、読み飛ばしながらの読書でした。

葉蔵も出てきたのになぁ・・・・・・残念。

「猿ヶ島」は捻りの利かせ方がお見事でした。
起承転結が完璧だと思いました。


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『きりぎりす』
- 2007/08/19(Sun) -
太宰治 『きりぎりす』(新潮文庫)、読了。

「夏休み気分で太宰作品でも読むか~」と思って手にしたのですが、
自分のblogで前回読んだ太宰作品を検索したら、
8月14日に読み終わってました。
毎年おんなじこと考えてる私はなんて単純な人間なんだ・・・・・。

さて、この短編集ですが、
大人の世界を見ている子どもを描かせたら(というか自分のことなのでしょうが)
やっぱり太宰は凄いなぁと思わずにはいられません。
(褒める語彙が貧困で恐縮です)

「千代女」などは、
まさに大人の浅はかさを見抜いている少女の視点で語られており、
特に、本作は大人が少女を利用しようとしている様が
ありありと出ているので、少女の冷静な視点との対比が興味深かったです。

また、「おしゃれ童子」のように、
大人ぶろうと背伸びをする少年の世界もまた不思議な魅力があり、
一種の青春小説のような趣がありました。

これとは反対に、堕落し破壊的な成人男性が出てくる物語は、
私の苦手とするところです。
『人間失格』で、前半の幼年・少年期にのめりこんでも
成人以降の生活の描写に耐えられませんでした。

本作では、「日の出前」の兄の存在が苦手で、
それ以上に、この兄の存在を許してしまう妹や母の弱さに
悲哀よりも嫌悪を感じてしまいました。

その他の作品では、「皮膚と心」「きりぎりす」などの
女性を主人公にした作品が面白かったです。


きりぎりす
きりぎりす太宰 治

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stars太宰の本の中でも究極のおすすめ作品、★10個
stars気難しい奥さん
stars読みやすくてアトラクティヴ。
starsせつないせつない廻り灯籠の様な短編集

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人間失格、グッド・バイ 他一篇 (岩波文庫)
人間失格、グッド・バイ 他一篇 (岩波文庫)太宰 治

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stars良くも悪くも影響を受けました。
stars反主流派の作品が、大勢の日本人に支持される可笑しさ……。
stars意味深なこの別れの挨拶
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『パンドラの匣』
- 2006/08/14(Mon) -
太宰治 『パンドラの匣』(新潮文庫)、読了。

久々の太宰作品をば。
夏休みっぽいですねー。

「正義と微笑」「パンドラの匣」の2作品を収録。
タイトルからして「重たい作品だったらイヤだな」と思いながら
読み始めたのですが、
意外や意外、両方ともカラッとした青春小説でした。

「正義と微笑」では、
主人公の洒脱な日記の文章にクスッと笑わされながらも、
やっぱりお兄さんのキャラクターが素敵です。
自分の人生には器用でないけれど、
弟には非常に温かい眼差しを向けており、
そして、弟に投げかける言葉が洒落ています。

「パンドラの匣」では、手紙形式で話が展開しますが、
やはり手紙の文体はウィットに富んでいます。

両作品とも、主人公の年齢を考えると、
少々大人びた文章で、若干リアリティに疑問を感じますが、
前向きに生きる両人のエネルギーを思うと、
それもありかなという気持ちになります。


パンドラの匣
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『津軽』
- 2005/11/16(Wed) -
太宰治 『津軽』(新潮文庫)、読了。

このようなジャンルの作品を残しているとは知らなかった。
思いのほかお調子者のところを素直に見せている。

自分の兄弟よりも、実家に仕えた者たちへ親近感を持っている様子が
素直に描かれている。
時代を考慮に入れても、兄への異様な距離が感じとれてしまう。

太宰についての研究書などは読んだことが無いので、
家族構成や作品の背景などは全く知らないが、
お調子者の言動の裏に、暗い陰が見て取れる。

作品としては、非常に興味深いものだった。


津軽
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