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『陽だまりの偽り』
- 2017/11/16(Thu) -
長岡弘樹 『陽だまりの偽り』(双葉文庫)、読了。

「偽り」をテーマにした短編集。

自らの認知症の疑いを嫁に見つからないように齷齪する老人。
市役所管理の駐車場で起きた転落事故を自殺に見せかけようとする管理課長。
息子がカツアゲ被害に遭っている場面に遭遇しながらスルーした父親。

日常生活に紛れ込んだ「危険」を何とか回避しようとする姿を
ちょっと皮肉もきかせながら描写しています。

表題作の、認知症疑いの高齢者を主人公にした作品は、
清水義範ばりの日常生活描写で面白かったです。

このように、当事者がアレコレ考えてしまって右往左往する様子は
第三者である読者からすれば滑稽でさえあるのですが、
しかし、死亡事故や暴行事件といった切迫した状況を目の前に、
自分の保身のために死体や怪我人を放置もしくは隠蔽してしまおうとする
その判断には全く共感できませんでした。

こんな状況に置かれたら、自分も、保身に走るという選択肢を考えてしまうのでしょうか。
自分の運転する車で人を轢いてしまったにも関わらず、
明日の昇進発表を前に、怪我人をどうにか処分しようと思い至るというのは、
よっぽどだと思うのですが・・・・・。

もしかすると、こんな心理状態に追い込まれるのかもしれないという恐怖を
感じるべき作品集なのかな。


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『教場』
- 2017/08/19(Sat) -
長岡弘樹 『教場』(小学館文庫)、読了。

この教場とは、警察学校の教室を指しています。
警察官に採用され、配属されるまでの半年間、
みっちりと警察官としての心・技・体を叩き込まれます。

某県の警察学校第98期生の面々が、
どのような思い、野望、陰謀を抱いて入学してきたのか、
連作短編集形式で1話1話、1人1人見ていくことになります。

まず驚かされたのは、校則というか、
勉強から日常生活まで丸ごとを取り仕切る規律の厳しさ。
教官の指導に従い、またテキパキと行動することを求められ、
出来ない奴は即刻クビになる、まさにふるい落とすための仕組みです。

そして、この生活に耐えられた者だけが、
警察組織という独特な組織の一員となり、
犯罪防止、犯人逮捕という命を懸けた仕事に就けるようになります。
これはもう、組織の役割からすると、必要な厳しさなのでしょうね。
規律が緩い警察組織では、日本という国家の存立が危ぶまれますから。

というわけで、そんな警察学校での出来事が描かれるのですが、
主人公となる生徒さん皆、腹に一物持っているというか何というか、野心家ですね(苦笑)。
同級生が50人程しか居ないのに、非常にグロい人間関係が展開されていて、
大丈夫か警察組織!?ってなっちゃいます。

しかも、皆さん、超優秀というか、
自分の野心のためにはやたらと知恵が回る人が多くて、
これは特殊任務機関の話か?と思えてしまいます。

まぁ、この、リアリティという点を無視してしまえば(爆)、
謎解きものというか、冒険活劇というか、
どうやって風間教官が絡んでくるのかな?ということを読む楽しみがありました。

現代の話として読むよりも、
軍国日本時代の諜報人材育成学校の話と思って読むと、
面白く読めるかと思います・・・・って、それじゃあ某シリーズか(爆)。


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『傍聞き』
- 2014/07/20(Sun) -
長岡弘樹 『傍聞き』(双葉文庫)、読了。

失礼ながらお名前を存じ上げない作家さんだったのですが、
ブックオフにて、池井戸潤や湊かなえに並んで特価本コーナーに平積みにされていたので
試しに買ってみました。

面白い!

短編4つが収められているのですが、
救急隊員、刑事、消防士、厚生施設の所長、それぞれが主人公となる作品集はあっても、
1つの短編集にこの4つの職業の主人公が登場するのは珍しいのではないかと思います。

どの物語も、謎解きの要素を中心に据えつつ、
その真相には心温まる人間の思いが存在しており、
ホッとするような心持ちになる短編集でした。

著者の他の本も読んでみたいと思います。


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