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『もういちど生まれる』
- 2018/04/11(Wed) -
朝井リョウ 『もういちど生まれる』(幻冬舎文庫)、読了。

大学生やその兄弟姉妹たちの日常を追った連作短編集。

各登場人物たちが緩やかなふりをして
結構濃い目に繋がっているところが、
今の若者世代の特徴なのかなぁと。
結局、一定の深さの付き合いができる人間関係が極少数という。

決して、仲良しの濃い関係というのではなく、
口には出さないけどお互いに依存しあっている感じの人間関係なので、
向き合う相手が変わると、その人の人格の中で出てくる面が変わるような印象です。

だから、章が変わり、主人公が変わると、
その主人公から見たそれぞれの登場人物たちの印象が
少しずつ違って見えてくるという面白さ。

そして、若者の本音の冷たさというか、心の中の割り切り感というか、
そういう冷っとした感情を描くのが、相変わらず上手いですねぇ。
相手のことを尊重しているように見せかけて、心の中で冷徹な評価を下しているような。

解説で西加奈子さんが、朝井リョウさんの作品の特徴を
「人に知られたくないこのような感情を、『なかったこと』にしない」と書いていて、
なるほどなぁ!と膝を叩きました。

本来なら自分自身でも見ないふりして隠そうとする本音の感情を
そのまま書いてしまう恐ろしさ、凄みのようなものを感じます。

この人の作品は、毎作、面白いなぁ、凄いなぁと満足して読めますが、
こんな視線を持った人が友人として近くに居たら、しんどいだろうなぁ(苦笑)。

あ、あと、我が母校と思われる学校がH大学として登場して、
茨城の大学とどちらを志望にするかというくだりとか、
あぁ、私も悩んだよそこ・・・・・と思い出しちゃいました。


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『何者』
- 2017/10/01(Sun) -
朝井リョウ 『何者』(新潮文庫)、読了。

徳ちゃんのラジオで紹介されて、気になっていた一冊。
直木賞受賞作です。

シューカツを行う大学生たち。
それぞれの人間関係が繋がり、偶然、1つの部屋に集まることになった5人。
お互いのシューカツ能力を高め合うサポートをしながら、
それぞれの就職活動は進んでいく・・・・・。

最初は、単なる大学生の日常を覗いているだけのようで、
メリハリのない話だなぁ・・・・・と感じてしまったのですが、
それぞれのキャラクターが分かって来て、さらにSNSでの発信内容と重ねると
その表と裏が見えてくるようになり、俄然、面白くなってきました。

主人公の拓人は周囲を冷静に観察し分析する知的キャラ。
しかし、本音をあまり表に出さず、笑いをまぶしながら発散することも、
強気に主張することもできない性格。
とにかく分析するのみ。

そんな拓人の目を通して見ると、
同居人の光太郎は道化役を意識的にこなせるが、実は効率的に実績を残す人間、
理香はプライドが高く自分の地位を上げることに必死な人間、
隆良は自分が頑張っている過程をアピールすることが大好きだけどアウトプットがない人間、
では、瑞月は?

拓人の人物評が冷静で、ある意味残酷で、
「こういう学生たちって、鬱陶しいよねぇ~」という共感の姿勢で読んでしまいます。

しかし、解説にあるように、この小説の魅力というか恐ろしさは、
主人公の立場で感情移入し、安全な場所で傍観していた読者が、
いきなり当事者に変わるところ

まさにここにあると思います。

最後の最後で、主人公に向かってくる刃、
この切れ味は凄まじいです。

そして、世の中を主人公のような目で眺めている(つもりの)自分に
その刃が突き刺さってきます。

さらには、私自身は、自分の中の理香や隆良にも向き合うこととなり、
とにかくお尻の据えどころがなくなってしまうかのような
不安な読後感に包まれてしまいます。

さすがに裏アカウントまでは持っていませんが(苦笑)、
でも、本音とは違う意見を、頭の中でグルグル回したりしています。
笑顔で会話しながら。

人間というのは、本音と建前があって当たり前なのかもしれませんが、
SNSというツールを持ってしまったことで、より本音と建前がくっきりと分かれて意識され、
しかも相互に増幅し合うような時代になってしまったのでしょうね。

このBlogもSNSの端っこにいる存在ですが、
どこまで本音が出てるのでしょうかねぇ・・・・・・という書きぶりが、すでに演出過剰ですね。


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『時をかけるゆとり』
- 2017/09/02(Sat) -
朝井リョウ 『時をかけるゆとり』(文春文庫)、読了。

エッセイです。
タイトル通り、ゆとり世代の著者が、
高校時代や大学時代の出来事を振り返ります。

かなり自虐的。
お腹が弱くすぐにトイレに駆け込むこと、
面長であることを不意に周囲から知らしめられること、
無謀なことを無計画にやろうとして直前に現実を見ること、
どれも、客観的に見れば阿呆なことばかりですが、
どこまで素なのかつかみどころがない感じもします。

夏に北海道で行われるフェスに車で行こうとして、
青函トンネルを車で走れないことに直前で気づくとか、
ある種、狙ってそういうことをしでかしているのではないのだろうかと
思ってしまうようなトンチキぶりです。

でも、あんまり嫌みなく、アハハと笑えるように
サラッと書けてしまうのは、著者の力量でしょうね。

早稲田大学ご卒業ということで、
学生時代の話には、ワセダらしい、馬鹿を真剣にやるような遊び心が随所に見られます。
100キロハイクとか、私の大学にも同じようなことをやっている部があり
「学生の馬鹿エネルギーの出ていく先は、似通ってるのかも」
と思ってしまいました。

自分が所属している時代や世代を切り取って描くのが
ものすごく上手い作家さんだなと感じました。


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『桐島、部活やめるってよ』
- 2017/02/19(Sun) -
朝井リョウ 『桐島、部活やめるってよ』(集英社文庫)、読了。

タイトルが気になっていた作品でした。
ようやく100円で見つけられたので、早速。

田舎の県立高校のバレー部キャプテンが、
突然、部活を辞めてしまった。
それに巻き込まれるバレー部の面々、周囲の部活の面々、
さらにその周辺の人々の各人の視点で高校生活を描写していくというもの。

読む前は、段々と辞めた真相が分かってくるような仕掛けになっているのかな?と
思っていたのですが、そうではなくて、桐島が部活を辞めたということが
どんな立場の人にどのような影響を大なり小なり及ぼしたのか、
意識的に、または無意識の面で影響したのかを描いていて
非常に面白く読めました。

結局、桐島という人物に迫っていくことはなかったのですが、
途中から、そこはもう、どうでも良いような感じになってきました。
それよりも、子供の頃って、毎日こんな感じのことを考えてたよなぁ・・・・なんて
感慨にふけってしまいました。

ま、私は、進学校の高校に行ってしまい、部活は半端な状況でしたし、
勉強ばっかりで、あまり休み時間とか放課後とかに遊んだ思い出がないので、
むしろ、中学校の頃を思い出しながら、本作を読んでいました。
それはそれは、楽しい中学生活だったので。

直接、桐島のことを知らない人間も、
桐島の行動に何らかの影響を受けているということ。
社会という仕組みの興味深い一面を上手く利用した作品だなと思いました。

これを19歳で書いたという作者。
驚きです。
でも、高校生に近い感性だからこそ、書けたという面もあるのでしょうか。
男性の作家さんで、ここまで高校生の瑞々しさを描けるのは凄いなと思いました。

そして、ふいに登場してきた「ウッチャンナンチャンのナンチャンのほう」。
笑ってしまいました。


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