『伊勢湾は豊かな漁場だった』
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- 2017/08/10(Thu) -
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海の博物館 『伊勢湾は豊かな漁場だった』(風媒社)、読了。
伊勢湾の三重県側の浦々を北から順番に回り、 ベテラン漁師たちに、その浦での漁の歴史を語ってもらうという聞き書き集です。 年長者では大正生まれの漁師さんがインタビューを受けており、 戦後の漁が好調だった時代のことを活き活きと語る様子に、 これは非常に貴重な情報をまとめた良い仕事をしている本だなと感じました。 印象に残ったのはボラの話。 今では、ボラは「磯臭い」とか言われて あんまり魚としての価値を評価されていないように思いますが、 歴史書とかを読むと、結構、「明治時代の不況をボラの大漁が救った」みたいな ボラに助けられた記録が浦々に残っているので、 いつからボラは見向きもされなくなってしまったんだろうか?と疑問でした。 ところが、本書によると、四日市公害の時代に 四日市沖のボラが臭いという評判が立ち、 公害被害の象徴の1つになってしまったような感じです。 四日市から遠く離れた漁港の漁師さんの話にも登場してくるぐらいですから 当時の値崩れというか、風評被害も含め、相当なものだったのでしょう。 今も、ボラは「磯臭い」と敬遠されがちですが、 意外と、当時の公害による臭さの印象が残っているだけなのかも。 そういう私もボラを食べたことがないので、何とも言えないのですが・・・・・。
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『熊野灘を歩く』
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- 2017/07/26(Wed) -
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石原義剛 『熊野灘を歩く』(風媒社)、読了。
先日読んだ伊勢湾の文化の本の 熊野灘版を見つけたので買ってきました。 志摩半島の南側から、紀伊半島最南端の串本までの 漁村文化を紹介したガイドブック、まさに熊野灘の本です。 『伊勢湾』のときにも思ったのですが、 とにかく著者自身の思いが溢れているので、 紹介されている各町の文化が素晴らしいものだと伝わってきます。 そして、漁師町と一口に括ってしまえない文化の多様性が分かります。 その町で大事にしている魚が ブリだったり、カツオだったり、クジラだったり、ボラだったり、 お祭りに表れていたり、供養塔があったり、 漁師たちと魚の距離の近さを感じます。 紹介されている1つ1つのことは、 観光資源としてはささやかなものかもしれませんが、 どういう繋がりを持っているのかという線で考えていくと 面白い探索ツアーができそうです。
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『伊勢湾』
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- 2017/07/13(Thu) -
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海の博物館、石原義剛 『伊勢湾』(風媒社)、読了。
『伊勢湾』というタイトルと、「海の祭りと港の歴史」というサブタイトルから 「三重県の漁村文化の本だぁ~」と思い込んで買ってしまいましたが、 スタートは伊勢志摩の海からで、段々と北上し、伊勢湾最深部を回り込んで 知多半島、渥美半島と紹介が続く、まさに「伊勢湾文化」の本でした。 タイトル通りなのですが、勝手に三重県本だと思い込んでいた自分を反省。 しかし、伊勢志摩おリアス式海岸から、津の砂浜が広がる海岸から、 回船業の盛んな桑名まで、それぞれの土地土地の特徴が分かって面白かったです。 また、愛知県側の文化についても 意外と熊野信仰などと結びついていることが分かって 興味深かったです。 何よりも、著者自身が、それぞれの文化や祭りを自ら体験し、 「何が面白い」「何がユニーク」といった感想を 活き活きと綴っていることが素晴らしいと思いました。 単なるガイドブックではない、著者の思いの詰まった文化紹介本でした。
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