『ドラママチ』
- 2017/01/14(Sat) -
角田光代 『ドラママチ』(文春文庫)、読了。

タイトルを見たとき、意味がつかめなかったのですが、
読んでみたら「〇〇待ち」という意味で「〇〇マチ」という作品が続く短編集でした。

冒頭の「コドモマチ」。
夫の浮気相手が勤めるクリーニング屋に
毎日様子を見に出かける主人公。
クリーニング屋の仕事が終わって帰宅する間も後をつけ、
しかし、眺めるだけで帰ってくるという毎日。

狂気よりの女性が登場する話は、これだけに終わらず、
次の「ヤルキマチ」は何もかもが面倒になり自分の生活にも無関心な女が
周囲の人々を見下しまくるお話。
普通じゃない女性の日常を丁寧に描かれて、さすがに辟易。

次の「ワタシマチ」は、モデルをやるような美貌の女が
冴えない男とデートしてあげる話でしたが、
女性の性格はともかくとして、狂気度は低くなってきて、
だんだん読みやすくなってきました。

その後、「ツウカマチ」あたりから、
ちょっと寂しい女性が主人公の話が増えてきて、
共感度がぐんと上がりました(苦笑)。

なんで、こんなに冷静に突き放して世間を見ちゃうんだろうな・・・・・みたいな。

後半の「ゴールマチ」「ドラママチ」「ワカレマチ」あたりが
面白くて一気読みでした。
男の人が呑気な中で、女は冷たいほどに冷静だよなぁ・・・・なんて。

どの作品にも、印象的な喫茶店が登場し、
町の喧騒と切り離された異空間ぶりも興味深かったです。
喫茶店でコーヒーを飲む醍醐味って、やっぱり日常生活からの離脱ですよね。


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角田 光代

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『三面記事小説』
- 2016/12/02(Fri) -
角田光代 『三面記事小説』(文春文庫)、読了。

新聞の三面記事の内容を取っ掛かりに、
小説家が空想を膨らませて事件の背景を描いた短編集。

記事にしてしまうと、新聞紙面の隅っこに数行で片付けられてしまう出来事を、
なぜ、そんな事件が起きてしまったのか、逃れられなかった理由を
じっくりと描いていきます。

どの事件にもあるのは「閉塞感」。
事件の結末だけを読むと、「なんで、そんなことを仕出かしてしまうんだろうか?」と
犯罪を断罪したくなってしまいますが、
その裏側にある葛藤を小説として読んでしまうと、
もう、それしか出口がなかったのかな・・・・と思えてしまいます。
いずれにしても罪を犯すことは許されないのですが。

この社会の救いの無さのようなものが
ドロドロと描かれており、読後感は重たく暗いです。
でも、今の日本の一面をしっかりと捉えた作品だと思います。


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『マザコン』
- 2016/09/25(Sun) -
角田光代 『マザコン』(集英社文庫)、読了。

様々な形での「母と子」を描いた短編集。

やはり、自分の目線としては、
娘の立場から母親の姿を見た作品が気になります。

特異なキャラクターの母親が出てくれば、
「自分の母は常識的で大人しい人で良かった」と思ってしまいますし、
対立する母娘が出てくれば、
「うちはベタベタするような仲の良さはないけど心の距離は開いてないから安心」と思ってしまいます。

そうやって安心する一方で、
「私は母の本音は知らないなぁ・・・・」と感じしまいますし、
「母もきっと私の本音は知らないだろうし、知らないことを認識してそうだなぁ」と感じます。

うちは、あんまり本音で話す母娘ではないですし、
時事ネタとか近所のニュースとかは良く話すのですが、
自分自身の話(特に感情の部分の話)はほとんどしません。

もうそれで三十何年来てしまっているので
今更、どうこう変えたいという思いもなく、
この距離感がちょうど良いと私は思っているのですが、
いざ、母が無くなる瞬間が訪れたときに、
母のことを知らないことに動揺してしまうのではないだろうかという不安を
少し感じてしまった読書となりました。

そんな瞬間が訪れるのは、まだまだ先の話だとは思いつつも、
ちょっと気になる宿題を残されてしまった気分です。


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『対岸の彼女』
- 2016/03/09(Wed) -
角田光代 『対岸の彼女』(文春文庫)、読了。

直木賞受賞作ですが、納得の読後感。

専業主婦の小夜子が仕事を再開するに当たって出会った同い年の女社長・葵。
現在の2人の状況は小夜子の目を通して、そして高校時代の話は葵の目を通して描かれますが、
この構成が非常に計算されているように感じ、どっぷりと本作の世界感にはまってしまいました。

専業主婦で幼い子供が居る小夜子と、独身で女社長の葵。
彼女たちと同年代の女性が読めば、当然、どちらかの立場から作品の世界を眺めるわけで、
当然、独身の私は葵の立場で本作に臨むことに。

その際、現在の、働いている葵については、小夜子の立場から語られるというのがミソで、
つまりは、「私って、同年代の子供を持つ人からどんな目で見られているのだろうか?」というところに
どんどん思いが飛んでいきます。

葵の私生活をやや犠牲にしたというか、私生活に構っていずに仕事に時間を回す生活とか、
細かいことは気にしていないような割り切った物言いとか、
かといって、ちょっとした小夜子の反応を気にしたり、傷ついた様子を見せたり、強がったり。
こういう一つ一つの描写に、自分を重ねて見てしまいます。
特に、「子供を持つのが怖い」という発言には共感してしまいました。

一方、そんな葵を生み出すもととなった高校時代の物語は、
現在の女社長の様子とは打って変わった、いじめの悲しみを背負い、受け身で友達についていく少女。
これまた、周囲の様子に合わせよう、みんなと仲良くしよう、でも距離は適度に取って・・・・と
心を砕いていた自分自身の子供の頃を思い出しました。

独りぼっちにはなりたくないけど、どっぷり女の子集団に入り込むのも抵抗があり、
各グループと適度な距離感でバランスよく付き合いつつ、
登下校は一人で気楽にさっさと歩いていってしまうような子供でした。

自分と重ねたときに、この葵という人物の人生が立体感をもって迫ってきて、
物語を構成する要素の1つ1つがとてつもなく綿密に練られたのではないかと思えてしまいます。

最後、どのような終わり方になるのか、自分ごとのようにハラハラしてしまいましたが、
救いのあるエンディングでホッとしました。

読書をしながら、登場人物たちの人生を通して、
自分のことをあれこれ考えることができるというのは、素晴らしい体験だと思います。
さすがの直木賞受賞作でした。


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『おやすみ、こわい夢を見ないように』
- 2016/03/01(Tue) -
角田光代 『おやすみ、こわい夢を見ないように』(新潮文庫)、読了。

短編集ですが、いずれも濃厚な「殺意」をテーマにしており、
背筋がぞっとするような話が続きます。

なぜここまで一人の人を憎めるのだろうかという怖さがありつつ、
その憎しみの理由を小説の中で辿っていくと、相応のことが過去に起こっており、
この憎しみの理由は納得。

逆に、これだけの憎しみを生み出す原因となった出来事を起こしていた、
殺意の対象となる人物の、当時の行為が、異様な精神状態から発しているように思われ、
これだけ誰かから憎まれるだけのことをしてしまう精神構造というものが
存在してしまうことに恐怖を感じました。

原因となる出来事は、言葉で表すと、「いじめ」であったり「嫌がらせ」であったりするわけですが、
そういう単純な表現では済まされないほどの歪んだ感情を感じます。

どの作品も、スッキリ何かが解決されることはなく、
ただ主人公が何かにうhと気づくという過程を描いているので、
読み終わっても気持ち悪さが拭えないとい怖さもあります。

佳作の短編集だと思います。


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『ロック母』
- 2015/07/03(Fri) -
角田光代 『ロック母』(講談社文庫)、読了。

気づけば2年ぶりの角田作品。

・・・・・しんどいわ。

冒頭の「ゆうべの神様」では、夫婦喧嘩しまくる暴力的な両親と
余所者への冷たい目線を絡めてくる村民たちに囲まれて生活する高校三年生の少女が主人公。
夫婦喧嘩の描写が延々と続くとしんどい。
で、外に逃げれば近隣の人々から好奇の目で見られ、嫌味っぽく話しかけられ。
少女が強い自分を持っていられることが奇跡のように思われます。
私だったら耐えられない・・・・。
でも、結局、少女の中にも積もり積もったものがあり、最後にそれは・・・・・・
って、本作が芥川賞になったときのマスコミ取材のエピソードがあとがきに述べられてますが、
その要約はないでしょうに(苦笑)。

アジアの街を舞台にした「緑の鼠の糞」や「爆竹夜」は、ちょっと苦手でした。
というか、あんまり自分の中に物語が入ってきませんでした。
多分、私自身、子供の頃の家族旅行か、大人になってからの出張でしか海外に行ったことがなく、
自分自身の意思で海外の街に立った経験がないからだと思います。

「カノジョ」とか「父のボール」とか、少し突飛な設定の作品が面白かったです。

表題作の「ロック母」は、少し壊れてしまった人間というものがどうも怖くて苦手です。
それを再確認する作品となりました。


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『予定日はジミー・ペイジ』
- 2013/03/31(Sun) -
角田光代 『予定日はジミー・ペイジ』(新潮文庫)、読了。

「妊娠小説」と言えばよいのでしょうか。
特に望んでいたわけではない妊娠をしてしまった女性が主人公。
嬉しさを感じることができず、かといって嫌なわけでもない。
中途半端な気持ちのまま、盛り上がる周囲とのギャップを受け止めきれない日々。

私自身は妊娠したことがないので、あくまで想像の世界で読むしかないのですが、
なんだか、こういう気持ち、分かるような気がしてしまいました。

読みながら思い出したのは、
「障害者全員が清らかな心を持っているわけではない」という主張。
全然指している事象の内容は違うのですが、
「世間一般」にいる自分と、「特殊な環境・状況」にいるあなたとを比較し、
「特殊な環境・状況」に対して画一的な価値観を押し付けてしまうところに
「世間一般」側の傲慢さを感じてしまいました。

必ずしも妊婦全員が、最初からピュアに赤ちゃんの誕生を喜べる訳ではないということは
当然のことなんだろうけれど、みんな「おめでとう!」と声をかけてしまいますよね。
意外とプレッシャーに感じている妊婦さんもいるのかなと感じました。

しかし、そんな感情からスタートした主人公も、
次第に状況を受け入れ、赤ちゃんの誕生に心が向かっていくようになります。
決して、無理やり前を向こうとしたのではなく、
すんなりと感情が移っていき、また、時には気づいたらそうなっていたという
自然な流れが描かれていて、経験したことのない私も納得しながら読んでました。
それはまるで、赤ちゃん自身、母体自身が、そのように仕向けているかのような
不思議な流れです。

読み終わり、非常に温かい心になる作品でした。


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『八日目の蝉』
- 2012/05/20(Sun) -
角田光代 『八日目の蝉』(中公文庫)、読了。

角田作品の中では、一番有名といってよい作品でしょうか。

生後半年の赤ちゃんを誘拐してしまう主人公、
その衝動的な誘拐の直後から、「娘」と2人きりの逃亡生活が始まる・・・・・。

映画にもなったことから、
逃亡劇としてのサスペンス要素が強い作品なのかと思っていましたが、
それよりも、逃亡という設定を用いて、
昭和の終盤~平成あたりの時代を上手く描いているなぁというところに
目が行きました。

バブル前夜で取り残された廃墟のような地域に居残る老女、
共同生活と自然食品を謳い文句にしたカルト的な集団(これってヤ●ギシ?)、
そして、都会の生活から逃れる場所として描かれる小豆島、
時代を上手く切り取っていると感じました。

後半は、その誘拐された側の娘が大学生になったところを描きますが、
彼女が家族や周囲に向ける視線の冷徹さを、興味深く読みました。
特に、父と母への眼差しの冷静さ。
誘拐事件を通して、ダメな男、ダメな女ぶりを日本国中に知られてしまった両親に対し、
どのように振舞うべきかを考え、演じてきた年月を振り返っていきます。

彼女に課せられた、あまりにも思い過去。
それを、じっくり、時に溢れる思いと共に描いていくのですが、
しかし、最後、小豆島を訪れることで、何かしら掴んだような描写で終わるため、
なんとか救われたような気分で読み終われました。

読み応えのある作品でした。


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『薄闇シルエット』
- 2011/10/11(Tue) -
角田光代 『薄闇シルエット』(角川文庫)、読了。

主人公ハナの一つ一つの行動&発言に、
「そのとおり!」と大きく相槌を打ちまくってしまった本作。

「結婚なんてつまんない」「『結婚してやる』って何様だ」という出だしから、
仕事と日常の線引きの曖昧さ、部屋での過ごし方などなど、
どれもこれも、自分を見ているようで。

ハナほど感情を露わにしないところと、仕事に対する現状維持願望の強さが
ちょっと違うかな?というぐらいで、ほぼ自分のことだと思って読み進めていました。

そんな状態で、タケダくんからの
「あんたやおれの話って、したくないってことでしか構成されていないんだよ」
という指摘には、ガツンと頭を殴られたような衝撃を受けました。

確かに、リスクを取らない限り失敗は無いわけで、
例えば、結婚をして苦しんでいる人を「馬鹿だなぁ」なんて目で見ることが出来るんですよね。
結局、変化の無い人生=リスクの無い人生に逃げているだけなのかも・・・・・。

だからといって、「やっぱり結婚すべきだな」という思想転換には至らないのですが、
今まで、自分ではベストだと思っていた選択肢が、
ベターな選択肢に過ぎないのだということが実感できました。
全て様々な要素のバランスの上で成り立っていることであり、
絶対的にベストだという選択肢はないのだと・・・・。

気楽な気持ちで読み始めたのに、あれこれ考えさせられた一冊でした。


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『だれかのいとしいひと』
- 2010/07/05(Mon) -
角田光代 『だれかのいとしいひと』(文春文庫)、読了。

人生の送り方が不器用な人たちを主人公にした短編集。
文庫本の帯では「恋に不器用」となっていますが、
生きるということそのものに不器用なのではないかなと思ってしまいます。

「あぁ、そういうネガティブ思考、わかる、わかる」
「こういう時に、すぐに行動できないよねー」
という感じで、主人公たちのウジウジに共感できます。

でも、決して、マイナス思考なだけの作品なのではなく、
どこかポジティブなものも感じさせてくれるため、
読後感は、さわやかです。

なかなかの佳作だと思います。


だれかのいとしいひと (文春文庫)
だれかのいとしいひと (文春文庫)角田 光代

おすすめ平均
stars泣けますが。
starsドラマより現実の方がドラマチック
starsドラマチックな展開ではないけれど
starsいいものはいい。
starsだれかのいとしいひと

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