『花ものがたり』
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- 2018/08/06(Mon) -
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高橋治 『花ものがたり』(新潮文庫)、読了。
なんとなく手に取った積読本。 父の本棚から持ってきて、そのままになっていた作品かと思います。 短編8つが収められていますが、 どれも特徴的な作品が並んでいて、飽きることなく楽しめました。 個人的に好きだったのは、 俳句の世界観が軸になっている「夕顔ひらく」と 香りのプロ・パフューマーが主人公の「薫る朝」でした。 最初に読んだ著者の作品が、俳句を交えたエッセイだったので、 私の中で著者には俳句のイメージが強くあります。 「夕顔ひらく」は、夕顔を詠んだ歌がいくつも登場しますが、 小説の文章とはまた違って、俳句の数文字の中で描く世界観が 二重になって面白かったです。 「薫る朝」は、嗅覚という、五感の中で一番文章化しにくいだろうと思われるものを テーマにして、そこに、さらに娘の結婚と自分の再婚問題というものを絡めて 立体的な感覚の作品になっていると思います。 嗅覚って、映画作品で見た時も感じましたが、エロティックですよね。 そんなに派手な作家さんではないと思いますが、 作品には華がありますね。
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『片意地へんくつ一本気』
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- 2018/03/25(Sun) -
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高橋治 『片意地へんくつ一本気』(文春文庫)、読了。
下田のうなぎ屋の頑固親父が主人公。 離婚調停中の妻やら、うなぎ屋に勤める相思相愛の女中やら、 夜な夜な珈琲屋に集まる町内の面々やら、 下田の濃い人間関係が描かれていきます。 男たちが喋る威勢の良い言葉でどんどん会話が紡がれていき、 テンポよく話が進んでいきます。 このあたり、「下町うなぎ屋風流話」というサブタイトルの雰囲気にぴったりです。 で、交わされる会話というか、日々起こる出来事というのが、 明るい日差しが注ぐ南伊豆・下田の出来事の割には 意外と重たい話が多いんですよね。 ノミ屋行為で警察に引っ張られたり、税務署に目を付けられたり、 糖尿病になったり、娘が出来ちゃった結婚したり、出来てなかったり。 それとも、オヤジの世界って、結構、緊張感あるものなんですかね(笑)。 でも、そんな場面よりも、珈琲屋にいつもの面々が集まって どうでも良いことをワイワイ喋っている空間が一番面白いかな。 気の置けない仲間同士の日常の小さな幸せを感じると言いますか。 もしくは、おっちゃん達の小さな世界での勢力争いが微笑ましいと言いますか。 全編にわたって、空気感が好きな作品でした。
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『さすらい波太郎』
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- 2017/06/23(Fri) -
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高橋治 『さすらい波太郎 熊野灘対決』(読売新聞社)、通読。
「熊野灘対決」というサブタイトルに、 三重・和歌山沖での釣り対決のお話かぁ・・・・と思い買ったのですが、 男同士の戦いというよりも、横からチャチャを入れる女の方が目立っていて 全然、釣り対決っぽくないです・・・・・。 シリーズもののようで、登場人物たちの関係性もキャラクター説明も 必要最小限で冒頭に書かれているだけなので、 この作品から読み始めると、不案内です。 何より、文章が読みづらい。 主人公・波太郎の一人称で進んでいくのですが、 あまりにもアクが強くて、言葉が目を滑っていく感じです。 そして肝心の熊野灘対決は、 本の1/3あたりで終わってしまい、中盤から舞台はアメリカへ。 いろいろと想定外の読書でした。
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『うず潮のひと』
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- 2009/10/09(Fri) -
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高橋治 『うず潮のひと』(講談社文庫)、読了。
こちらは父の本棚からの一冊。 実家に戻った後家さんの淡い恋のお話ということで、 自分ではなかなか手にしないような本です。 舞台が熊本県なのですが、 九州弁がテンポのある会話で綴られていきます。 方言ものが好きな私としては、初の九州弁作品で、面白かったです。 物語のほうは、恋のお話は、ちょっと時代がかった感じがして あまり興味を持てなかったのですが、 漁師街に生きる人々の生活を描いているところは 面白く読めました。
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『ひと恋ひ歳時記』
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- 2009/01/10(Sat) -
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高橋治 『ひと恋ひ歳時記』(角川文庫)、読了。
父親の本棚より。 カバーデザインを見て、「渋い趣味だなー」と思って手に取ったのですが、 何の何の、非常に面白いエッセイでした。 俳句を中心に、短歌も交えながらのエッセイ。 でも、地の文で句の解説はほとんど無し。 この潔さと言いますか、 冷たいほどの突き放しぶりと言いますか、 距離を置いた紹介の仕方が読んでいて心地いいんです。 そして、エッセイで書かれている世界も 失恋あり、不倫あり、自殺あり、 山あり谷ありの人間模様。 でも、文章は冷淡。 面白い作品を創る人の才能というものを 実感した一冊でした。
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