『虹色にランドスケープ』
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- 2017/06/10(Sat) -
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熊谷達也 『虹色にランドスケープ』(文春文庫)、読了。
バイク好きの人たちを描いた連作短編集ということで、 正直、私は興味のない分野なのですが、 熊谷作品ということで読んでみました。 1話目は、リストラされ次の仕事が見つからない中年男が 将来を悲観して、バイク事故を装った自殺で保険金を家族に残そうとする話。 いきなり爽快さのない暗い話で、 しかも主人公の男が、全然、世の中が見えていない能天気ぶりで、 あまり共感できずに終わってしまったのですが、 2話目から引き込まれていきました。 ツーリング仲間だったり、バイク屋とその客だったりと、 各話の主人公たちが繋がりをもって話が展開していくので、 立体交差するような物語の構造が面白かったです。 そして何より、1つ1つの物語に、 その主人公の人生がぎゅっと詰まっている感じで、 バイクというモノを通して、その人が重ねてきた時間や、作ってきた人間関係、 そして、これからの出来事への思いといったものが描かれていて、 深みのある話たちでした。 バイク好きの方々は、バイクにのめり込んでいる感じが、 外野から見ていても伝わってくるのですが、 その、のめり込みぶりが、人生の姿と重なって、 味のある小説に仕上がっていると思いました。
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『ウエンカムイの爪』
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- 2010/11/01(Mon) -
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熊谷達也 『ウエンカムイの爪』(集英社文庫)、読了。
前回もそうでしたが、本作も夜中までかけて一気読み。 野生動物を相手にしているという緊張感や躍動感で 読み止めることができなくなるんです。 そして、作品自体も面白く読んだのですが、 阿刀田高先生による解説にも、なるほど、なるほど! 私が気になったところ(特にマイナス評価の点)が、見事に挙げられてて、 「あぁ、やっぱり私は、阿刀田先生の感性が好きなんだ」と納得。 女子学生、馬鹿すぎなんですよねぇ・・・。 ちょっと読みにくいなと感じたのは、 本作の軸となるテーマが、最初の段階ではあまり明確に見えてこなかったこと。 「クマ使いの真相」なのか「暴れるクマの退治」なのか「人生のやり直し」なのか。 最後、全てにきれいに結論は用意されているのですが、 メインテーマとサブテーマに区別してもらえていた方が、 何を目指して読んでいけばよいのかが分かって、読みやすかった気がします。 ただ、それでも、ぐいぐい読ませる力があるというのは、凄い作家さんだと思います。
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『漂泊の牙』
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- 2009/06/23(Tue) -
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熊谷達也 『漂泊の牙』(集英社文庫)、読了。
犯人像がわかるところまで、昨夜一晩で一気読みでした。 寝るに眠れず・・・夜3時まで (;一_一) オオカミの躍動感や生態についての解説が面白くて、 ぐーっと引き込まれました。 新田次郎賞は納得! ニホンオオカミかどうかの謎解きは 『凍える牙』を先に読んでしまっていたので、衝撃度は大きくなかったというか、 ちょっと先が読めちゃったところもありましたが、 町の人間と、山の人間と、山奥の獣という組み合わせが上手く作用していて面白かったです。 犯人の動機面は、 あんまり頭で考えても仕方がないのかもしれませんが、 「狂気」で済まされてしまうのも、ちょっと人間の描写としては味気ない・・・。 でも、犯人捜しよりもオオカミ探しがメインだと思えば、 さして気にすることでもないのかな。 そして、物語とは関係ないのですが、 それとなく男をコントロールしようとする癖。 自分では言わずに、男の口からこうしますと言わせようとするところ。 そういうところ、直した方がいいぞ。 この台詞は、結構刺さりました。
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